会長あいさつ

農業食料工学会長 近藤 直 

 農業食料工学会は,本年(2019年)4月より一般社団法人に移行いたしました。年号が令和になった後の7月13日には法人化後初めての定例総会が開催され,その第一歩を踏み出しました。今後,当学会は従前と比べ,対外的にも高い信用,信頼を得ることとなり,海外を含めた他の学会や法人との連携,Agreementなどの締結促進が期待されます。一方,法人化していない当学会関連の5ブロックの団体(元支部)とも,より密接に連携することで,当学会が保有する技術の多様性を高め,地域の問題解決に留まらず,世界の食料-環境問題の解決に向けて貢献することを目指しています。

 もう一つの大きな変革は,本年より当会の国際化の一環として,「海外会員」が新たに設置されたことです。この「海外会員」は海外に在住し,本会の趣旨に賛同いただける個人で,この会員が増えることにより,今後日本の大学を卒業,修了して帰国された留学生が出身大学のみならず,当学会を通じ,種々の関係業種の方々とも連携して母国および地域の問題解決に取り組まれることが期待されます。また,教育面でも国内の会員と「海外会員」との連携による人材育成が促進されると期待しています。

 その「海外会員」に当学会への積極的な参画を促すため,母国の問題点や解決策などを当学会講演会で発表できるよう,若手には渡航費の補助も行うことになっています。これにより,当学会は国内の会員には海外での発表を,「海外会員」は日本での発表を行う,という双方向の交流を支援する仕組みができました。その他,「海外会員」へのサービスとして,当学会の英文誌であるEAEF(Engineering in Agriculture, Environment and Food)の閲覧,投稿に加えて,和文誌(情報・論文誌)配布の代わりに,学会ホームページにて特別会員(企業)の優れた技術の紹介ページを英語で提供することを新たに行います。「海外会員」にはこれらのサービスを通して,国内の産官学の会員との連携を末永く続けて頂くことを望んでいます。

 当学会は1937年に農業機械学会として創設され,既に80年が経過いたしました。その記念事業として新たなハンドブックの出版を進めています。タイトルは2013年に名称変更した学会名を冠した「農業食料工学ハンドブック」で(全17編240名超の執筆者),本年度中にコロナ社より刊行予定です。これで「農業機械ハンドブック」(1957年),同改訂版(1969年),同新版(1984年),「生物生産機械ハンドブック」(1996年)に続き,5冊目のハンドブックとなります。

 これらのハンドブックを紐解くと,当学会においては創設時から1960年代までの農用エンジン,トラクタ,コンバイン,田植機等の米作用農業機械の開発・研究(機械化),1970~1990年代の物理的特性,品質評価,非破壊検査,野菜用機械,選果機等の開発・研究(自動化・ロボット化),2000年代~現在までの精密農業,リモセン,6次産業化技術,情報化,機能性物質検出,バイオセンサ等の研究(研究対象のマクロ化,ミクロ化,研究の多様化)といったアクティビティの変化が見て取れます。

 また,当学会のアクティビティを示す一つの形として,部会があります。これまで,「農業機械部会」,「IT・メカトロニクス部会」,「食料・食品工学部会」の3つの部会が活発に活動を行ってきましたが,それに加えて,本年度からは新たに「生物資源部会」の活動が始まりました。これは,主に第一次産業ならびにその地域に由来する生物資源に加え,取得できるエネルギーの生産,管理,利用技術を対象として議論を深めることを目的としています。サステイナブルな農林水産業を行うために会員非会員を問わず,活発な交流が期待されます。

 現在の「スマート農業,AI,IoT,ICT,ロボット」等のキーワードで代表される農業・食料関連の新技術ならびに多様化した研究を背景に,当学会のアクティビティを対外的に示すことにより,海外だけでなく国内においても当学会,当該分野へ新規参入される個人,企業,農業工学以外の研究機関も増加可能と思われます。そのための努力は惜しみませんが,産官学の会員のみなさまにおかれましても,当学会の種々の活動を通じて,新たな共同研究,技術開発のパートナーを見つけていただきますよう,ご協力をお願いいたします。先に述べました大きな変革および新しい試みを,いち早く軌道にのせることにより,会員のみなさまにとってより有益で,世界の食料―環境問題への貢献度の高い学会とするため,各種委員会,事務局の執行部とともに努めてまいりますので,ご支援を賜りますようお願い申し上げます。