87巻2号

研究論文

肥育牛全血の励起蛍光マトリクスにおける血球の影響評価および血中レチノール濃度の推定

芝﨑美月・鈴木哲仁・斎藤嘉人・LI Nanding・福島護之・大前孝彦・西木紀夫・近藤 直

キーワード: 黒毛和種,レチノール,ビタミンA,励起蛍光マトリクス,全血

 

 日本において霜降り牛肉を生産する際,多くの農家は肥育期間中に血中レチノール濃度を制限する処置を行うものの,従来の検査法ではコストと手間の点から日常的な診断が難しい。本研究では,血中レチノール濃度の簡便な推定技術の開発を目指し,全血の表面蛍光の計測を行った。励起蛍光マトリクスを用いたPLS解析の結果,血中レチノール濃度推定値のR2は0.87,RMSEPは11.2IU/dLが得られた。また,血中レチノール濃度30IU/dL以下の欠乏状態の牛を判別するPLS-DAでは正解率91%が得られた。10分間程度の測定時間で有用な推定精度が得られるため,実用性の高い手法となることが期待できる。


FT-IRによるサトウキビ搾汁液中のスクロース定量法の開発

堀榮美希・幸地利輝・石嶺邑弥・白川 徹・田中宗浩・鹿内健志・平良英三

キーワード: サトウキビ,スクロース,旋光糖度,FT-IR,迅速分析,ケミカルフリー

 

 旋光法によるサトウキビ原料の品質測定は試料の前処理および測定値(旋光糖度)の解釈に課題がある。本研究では旋光法に代わる品質評価法として,透過法によるフーリエ変換型赤外分光法(FT-IR法)を用い,サトウキビ搾汁液(蔗汁)中のスクロース濃度を推定する検量モデルの開発を行った。蔗汁サンプルで作成した検量モデルは良好な推定精度を有し,FT-IR法によるスクロース定量が測定前処理なしで可能であった。また,糖標準液で作成した検量モデルでも蔗汁サンプルのSEPは1.0%程度と高い推定精度が得られたことから,糖標準液がモデル蔗汁として機能する可能性が示された。

技術論文

くし状こぎ歯の脱穀機構を導入したコンバインの脱穀性能

嶋津光辰・栗原英治・梅田直円・野波和好・阿川陽一

キーワード: コンバイン,脱穀機構,くし状こぎ歯,省エネ,価格低減

 

 近年,コンバインは高機能・高出力化が進んでいる。そこで,コンバインの価格低減に寄与することを狙いとし,くし状こぎ歯を備えた脱穀機構を導入したコンバインを試作した。くし状こぎ歯は切わらの発生が少ない特性を持つ。試作機を用いて水稲の収穫試験を行い,くし状こぎ歯の素材,形状,配置等の構成が脱穀性能や脱穀所要動力に及ぼす影響を調査した。その結果,試作機の脱穀所要動力は同サイズの自脱コンバインより2割程度低かった。また,実用化のための課題についても考察した。


遠隔操作式高能率法面草刈機の開発

青木 循・林 和信・国立卓生・木島悦男・佐野修一・渡邊善仁・江川孝二

キーワード: 草刈機,遠隔操作,ハンマーナイフ,急勾配法面,雑草

 

 法面における草刈作業を安全かつ省力的に行うため,急勾配法面において,1m以上に繁茂した雑草をリモコン操作で刈ることができる小型のハンマーナイフ式草刈機を開発した。開発機は,市販リモコン草刈機の2倍,市販の歩行型草刈機の2.6倍の能率で作業を行えた。また,茎が硬く草丈の高いセイタカアワダチソウが群生する平坦ほ場においても,刈払機の2倍の能率で作業が可能であった。


太陽光型植物工場におけるエネルギー管理指標を活用した栽培スケジュールの評価

花形将司・玉城 鉄・古橋賢一・海津 裕・本條 毅・芋生憲司

キーワード: 太陽光型植物工場,ヒートポンプ,冷房,栽培スケジュール,夏越し栽培,作型,エネルギー管理指標,省エネ性,生産性,収益性

 

 ヒートポンプを活用し通年栽培を行う太陽光型植物工場において年間収益向上を図るためには,夏期夜間の冷房を利用した年間栽培スケジュールの最適化についての分析・研究が有効である。本研究ではエネルギー管理指標(日面積原単位,日可販収量原単位)を活用して,栽培開始時期を任意に変更した場合の年間の省エネ性,省エネと生産性向上との両立性,収益性を定量化・評価する手法を開発した。本手法によってトマト栽培を評価すると,12月または2月に栽培を開始する夏越し栽培では現状の夏越しを回避する作型に比べて,年間の省エネ性の向上,可販収量の増加が見られた。年間収益は,12月栽培開始の場合に約27%増加すると試算された。

速   報

小型乗用型農用トラクタ用2柱式安全フレームの強度試験シミュレーションにおける荷重条件の影響について

原田一郎・冨田宗樹・松本将大・塚本茂善

キーワード: トラクタ,安全キャブ・フレーム,静的強度試験シミュレーション,CAE,有限要素法