86巻3号

研究論文

深層学習を用いたトマト収穫ロボットの果実検出モデルの構築
──背景削除画像適用による有効性評価──

大畑秀平・有馬誠一・上加裕子

キーワード: トマト収穫ロボット,植物工場,果実検出,深層学習,背景削除,三次元画像処理

 

 トマト収穫ロボットの果実検出システムにおいて,深度カメラを用いて前景と背景の植物を分離する背景削除アルゴリズムを開発し,前景の果実のみを検出可能にすることによって,果実検出システムの精度向上を図った。背景削除アルゴリズムは,検出対象となる前景の果実および茎葉のみを適切に抽出できた。生成した画像と正解画像との重なり具合を調査したところ,F値は0.894であった。また,背景削除画像を用いたFaster R-CNN,SSDおよびYOLOによる学習実験の結果,YOLOにおいてF値は0.965から0.987に向上し,学習用データの作成コストを削減しながら,背景に依存しない学習結果が得られた。


高精度ハイスループットフェノタイピングのためのトラクタ搭載型マルチカメラシステム

ンジャネ スティーブン ンジェヒア・伊藤淳士・吉田光希・朱里勇治・土屋史紀・辻 博之

キーワード: マルチカメラシステム,草高,PREPs,体積,ハイスループットフェノタイピング

 

 フェノタイピングのためのトラクタ搭載型のマルチカメラシステムを開発し,UAV-RGBを用いる従来手法との比較を行った。本システムは,斜方および鉛直下向きの6台のカメラから構成され,トラクタ走行時に十分にオーバーラップのある画像を取得できる。バレイショの3つの品種,キタヒメ,トウヤ,トヨシロについて,自動画像生成パイプライン(PREPs)を用いて植被率,草高および体積の変化を推定した。マルチカメラおよびUAVの両システムともに,生育旺盛期には体積はトヨシロの体積が最大であると推定された。また,両システムを用いた草高の推定値の間には,決定係数(R2)が0.97という高い線形相関が見られた。