86巻1号

研究論文

空撮画像を活用したスイートコーン雄穂の開花状況検出技術の開発

大澤 央・齋藤正博・長南友也・林 怜史・八木岡敦・中村卓司・趙 元在

キーワード: スイートコーン,空撮画像,無人航空機,物体検出,YOLOv5,人工知能

 

 スイートコーン雄穂を生育段階に応じて検出する技術を開発した。物体検出法はYOLOv5を利用し,雄穂を3クラスで検出する色調変化モデル・開花状況モデルを作成した。色調変化モデルおよび開花状況モデルは,それぞれ1)未開花2)開花前期3)開花後期または1)未開花2)一部開花3)完全開花で雄穂を検出する。画像は無人航空機でほ場を空撮することで取得し,学習前に画像を640または1080ピクセルにリサイズした。モデル精度はmean Average Precisionで評価し,色調変化モデルと開花状況モデルでそれぞれ0.71と0.61であった。本研究で作成した雄穂検出モデルは収穫適期予測技術に利用できる。


車両のクローズドループ制御系に基づく農業用連結車両の安定性考察

風間恵介・柏原一真・渡辺将央・酒井憲司

キーワード: 農業用連結車両,ジャックナイフ現象,クローズドループ制御系,前方注視時間,減衰性能

 

 系の安定解析ではオープンループ制御として考察することが一般だが,実際の人による運転ではクローズドループによる操舵制御が行われており,事故もその過程で発生する。本研究では,クローズドループ制御系による農用トラクタ-トレーラ系の安定性解析を行った。その結果,オープンループ系では不安定化するが,クローズドループ制御系では安定化できることを確認した。また,ドライバの前方注視距離が車両近傍になると,目標コース追従時の減衰性能が悪化し,不安定になることもわかった。国内で使用されている小型トラクタであっても,走行速度が速い状態では,前方注視距離が短くなる運転の仕方をすると不安定挙動を発生させ,事故に至る危険性があることを理論的に明らかにした。


雑草検出マップによる除草剤のスポット散布作業の省力効果

大出亜矢子・長坂善禎

キーワード: GNSS,雑草検出マップ,雑草防除,Rumex obtusifolius L.,省力効果,意思決定支援システム

 

 草地の強害雑草の検出マップを除草剤のスポット散布作業に活用した場合の省力効果を検証した。GNSSにより被験者の移動軌跡を記録し,平均所要時間,平均移動距離,作業精度の省力指標を算出した。この結果,検出マップの使用により,作業精度は9.61%向上し,防除1個体当たりの平均移動距離は8.31%削減した。検出マップを用いて最短経路をとった場合,事前情報なしで網羅的経路をとった場合と同等に高い作業精度で,平均移動距離を34.7<6分>%削減する効果が得られた。また雑草個体密度が一定(0.117<6分>/m2)以上の草地において検出マップによる有意な省力効果が得られた。本研究により検出マップによる防除作業の省力効果および効果が期待される条件が示された。


技術論文

小型汎用コンバインの開発

嶋津光辰・梅田直円・木村 敦・野波和好

キーワード: 汎用コンバイン,コスト低減,中山間地域,小型化,軽量化

 

 中山間地等の条件不利地域における水稲,麦,大豆等の収穫に要するコストの低減のために,小型汎用コンバインを開発した。開発機は,新技術(送塵弁開度自動制御機構,撥水加工揺動選別部,狭ピッチ切断部)を導入し,従来の汎用コンバインよりも全長と全幅を約1割,質量を約2割縮小し,小区画のほ場でも効率的に収穫作業ができる。開発機を水稲,麦,大豆の収穫に供試し,小型化のために導入した新技術の効果及び収穫性能を調査した。その結果により,開発機が水稲,麦,大豆に対して実用的な収穫性能を有していることを実証した。また,実用化のための課題についても考察した。


速   報

エゾノギシギシの個体密度に応じた検出マップの精度検証

大出亜矢子・長坂善禎

キーワード: UAV,雑草検出,Rumex obtusifolius L.,ニューラルネットワーク,採草地,植生