研究論文
機械学習を用いたシカの行動認識
──部位軌跡情報を用いたカメラトラップ動画自動分析手法の検討──
木俵 稜・増田良平・村主勝彦・飯田訓久
キーワード: 獣害,画像認識,ニューラルネットワーク,行動分析,YOLOv5
獣害対策や生態系調査における野生生物の行動分析手法の一種のカメラトラップは,人力でデータを確認するため分析コストが高いという問題がある。本研究ではシカを対象としたカメラトラップデータを自動で分析する手法として,動画中のシカの部位の位置や軌跡を描いた「BoxFlow画像」を用いてCNNにより行動や状態を判定する手法を提案した。Moving,Eating,Distanceの3つのカテゴリを出力に設定し,交差検証の考え方を用いたテストを行った結果,部位検出に成功しBoxFlow画像が得られた場合Moving 0.789,Eating 0.862,Distance 0.872の平均精度で分類が可能であった。
魚眼レンズカメラを用いたセマンティック・セグメンテーションによるほ場内の倒伏した稲の検出
陳 思カイ・飯田訓久・李 楊・朱 佳俊・程 詩景・村主勝彦・増田良平
キーワード: 農業ロボット,人工知能,ディープラーニング,稲倒伏,セマンティック・セグメンテーション
倒伏した稲の検出のために,2つのセマンティック・セグメンテーションモデルが構築した。モデルは魚眼画像とノーマル画像を変換した画像で学習した。2つのモデルでコンバイン前方の未刈取りの稲と倒伏した稲を検出できる。モデルは以下の7つのクラスで学習された。1)未刈取りの稲,2)既刈取りの稲,3)倒伏した稲,4)畦,
5)人,6)他のコンバイン,と7)それ以外の背景である。この研究では未刈取りの稲と倒伏した稲の検出について述べる。モデルの中で推定精度が最も高いのは,魚眼と
変換画像両方で学習したFCNResNet50であった。未刈取りの稲と倒伏した稲のIoUはそれぞれ0.8446と0.8524であった。
技術論文
山根 俊・村上 覚・中村浩一
キーワード: 果樹,人工受粉,静電気,比電荷,付着
果樹の人工受粉作業における花粉使用量削減と作業の効率化を企図し,花粉に静電気を帯電させ効率的に花へ付着させる,手持形の静電風圧式受粉機を開発した。開発機の構造は,空気流で花粉を吹き付ける方式の市販果樹用受粉機を基本に,花粉吐出口付近に針形状のコロナ帯電電極を付加し,高電圧直流可変電圧電源を接続した。その結果,花粉の比電荷並びに人工標的に対する花粉付着粒数は,電極印加電圧の上昇と比例的に増加した。また電極印加電圧-15kVにおけるスモモウメの雌ずいに対する花粉付着粒数は,無荷電散布の約8倍であった。