研究論文
パワーアシストスーツの動的なアシスト力の直接的な測定方法の開発
田中正浩・梅野 覚・菊池 豊・向 霄涵・難波和彦
キーワード: パワーアシストスーツ,アシスト力,動トルク,電動シリンダ,性能試験
近年,農業分野でもパワーアシストスーツ(PAS)が導入されつつあるが,その性能を評価する,運動状態でのアシスト力を直接測定する方法はまだ無い。また,モータの電力変化から推測する方法や回転軸からトルクを求める方法は,PAS全体を評価できているとは言い難い。そこで本研究では,PASに実際に荷重を与えながら稼働させ,動的にアシスト力を測定する方法を開発した。簡便性と再現性を重視し,一定速度で駆動する電動シリンダを,PASでけん引したときの張力をロードセルで測定した。農業用のPASを測定した結果,回転角度に対するアシスト力の変化を明瞭に表すことができ,5回の測定で同じ回転角度の標準偏差は平均0.2Nmと高い再現性を得た。
上加裕子・横川 巧・大畑秀平・有馬誠一・松井正実・野波和好
キーワード: コンバイン,電動化,風選別,選別精度,異常検知
コンバイン風選別部を電動化し無段変速機構を実現することで,選別風の微調整が可能となり,選別精度向上につながるとともに汎用性向上も期待できる。また,コンバインの自動化に向けて,トラブル発生時の対応策として利用できる可能性がある。本研究は,穀粒流量の変化前と後の電動唐箕ファンの負荷電流から穀粒流量の変化点を状態空間モデルで検出することとした。また,判別分析で選別精度の良し悪しに分類し,交差検証で判別分析の妥当性を確認した。これらの結果に基づき,検出アルゴリズムを立案した。
平井康丸・藤井美来・井上真大朗・稲垣紫緒・西津貴久・井上英二・岡安崇史・光岡宗司
キーワード: 共鳴,空隙率,グレンタンク,コメ,コンバイン,収量,スマート農業,登熟歩合,粘性減衰係数,粒子層
コメの登熟歩合を推定するためには,コンバイングレンタンク内の籾層の質量に加えて,体積の計測が必要である。ヘルムホルツ共鳴は農産物の体積計測に用いられる。しかし,籾層に対しては粒子間の空隙により音圧が減衰し,計測精度が低下する。本研究では,減衰を考慮した体積推定式における粘性減衰係数αの性質を明らかにし,体積推定精度を評価した。その結果,αは空隙量と高い直線関係で表された(R2≥0.975)。また,αは籾層の質量を説明変数とする直線式で表された(R2=0.988)。体積の推定値の相対誤差は概ね±5%未満であり,減衰を考慮しない推定式の-20%から大幅に改善した。
伝達経路解析に基づく歩行式トラクタの目標振動予測のための参照点の検出法
プン ソヴァタナ・井上英二・光岡宗司・岡安崇史・平井康丸
キーワード: 伝達経路解析,振動特性,ハンドトラクタ,参照信号,目標信号
本研究では,伝達経路分析(TPA)により,歩行式トラクタの応答点振動に対する最適な参照点の推定を試みた。エンジン右側の前後,エンジン上部,シャーシ,ギアボックス,アーム中央の6箇所を参照点,ハンドグリップを応答点とした。TPA分析では,参照点と応答点のパワースペクトル密度の3階テンソルデータを用いて解析を行った。応答点振動の推定精度を向上させるため,6つの参照点から2つを選びTPA解析を行った。参照点信号から推定された応答点振動の二乗平均平方根誤差より、最も寄与度の高い参照点の組を決定した。その結果,応答点の振動の推定に最適な参照点は、シャーシとギアボックスの組み合わせであることが示された。
速 報
子実用トウモロコシの絹糸抽出期防除作業における高所式ブームスプレーヤの適用可能性
湯木正一・森田聡一郎・篠遠善哉・内野 宙
キーワード: ブームスプレーヤ,子実用トウモロコシ,防除,アワノメイガ,感水紙