研究論文
促成栽培イチゴの生育診断に資する生体計測手法
──若葉観測に利用可能な気流強度──
坪田将吾・難波和彦・深津時広・内藤裕貴・山田哲資・太田智彦
キーワード: イチゴ,葉,風速,荷重,抗力係数,葉柄,損傷
イチゴの生育診断に重要な若葉を,気流で露出させて画像観測することを想定し,利用可能な風速範囲を考察するための葉の物理特性を調べた。まず,風洞実験で葉身の抗力係数が風速の増加に伴い漸減することを明らかにし,風荷重を風速と葉面積で表現した。つぎに,物理特性として求めた葉柄の曲げ応力は,第3葉で44MPaに対して,その他の葉では32MPaであり,生長の過程で強まり,劣化の過程で弱まると考えられた。ヤング率は,新葉,第2葉,第3葉以降でそれぞれ89,194,297MPaと古い葉ほど高く,座屈に対する強度が高かった。また,株元が損傷する曲げモーメントは,葉柄断面積に比例することを明らかにした。
ICTを活用したナシ栽培管理における継承技術の開発(第2報)
──徒長枝量推定アルゴリズムの開発──
LEE JAEHWAN・吉田 剛・野波和好・松村一善・谷野 章・佐藤 聡・岡村啓太・森本英嗣
キーワード: 点群データ,徒長枝,ボクセル化,DBSCAN,RANSAC
本研究では,3次元点群データに基づく徒長枝抽出と徒長枝量推定手法を開発した。アルゴリズムは点群のボクセル化,徒長枝抽出,Density Based Spatial Clustering of Applications with Noise(DBSCAN)とRandom Sample Consensus(RANSAC)を適用した葉の点群除去と徒長枝量推定の4つのサブルーチンで構成した。教師データとして0.56aの点群を適用し,評価データには3.14aの点群を適用して精度評価を行った。その結果,徒長枝の抽出精度は97.3%,抽出された徒長枝の推定量と実測値との決定係数はR2=0.99であった。
輿水美奈・村上則幸・津田昌吾・赤井浩太郎
キーワード: バレイショ,塊茎表皮,破壊強度,打撲,保湿
バレイショ生産において塊茎の打撲は重要な問題であり,塊茎の表皮物性も打撲耐性に関与する要因と考えられている。本研究では,打撲低減を目的に高水分土壌で保湿させた塊茎の打撲調査を行った。試験は北海道十勝地方の火山性土壌を用いて行った。機械収穫の打撲試験では,土壌水分(%WB)を31%以上に灌水した区画で打撲塊茎が有意に減少した。打撲試験機を用いた試験では,衝撃強度が弱い場合と打撲耐性の高い品種を用いた場合を除いて,土壌水分を31%以上に調整した土壌で保湿した塊茎の打撲が有意に減少した。以上より,バレイショ塊茎に接する土壌の水分率が高いと,塊茎の表皮物性が変化し,打撲が減少すると考えられた。
山中章弘・山﨑歓友・野口 伸
キーワード: 自動走行,ぶどう果樹園,電動車両ロボット,ビジョンセンサ,画像処理,ニューラルネットワーク,ArUcoマーカー,方位偏差,横方向偏差
垣根仕立てのぶどう果樹園において,ビジョンセンサを用いた自動走行を実現した。電動車両ロボットに搭載した前後2台のビジョンセンサの画像からニューラルネットワークを用いて消失点を検出し,経路に対する方位偏差と横方向偏差を幾何的に算出し,操舵制御した。次行程への旋回はマーカーをビジョンセンサによって検出し慣性計測装置を用いて行った。EVRを手動で走行させたとき,推定精度は方位偏差のRMSEが1.3°,横方向偏差のRMSEが0.12mであった。一方,自動で樹間内を直線走行させたときの経路中心との横方向偏差のRMSEは0.06mであった。また,旋回完了時の方位偏差は1.8°,横方向偏差は0.04mであった。
速 報
牧田英一・桜井昌広・山根 俊・伊藤尚武
キーワード: 方位推定,準天頂衛星システム,CLAS,電子コンパス,超信地旋回