83巻3号

研究論文

ディープラーニングを用いたエダマメの外観精選別用AIの作成と精度評価(第1報)
――物体検出AIによるエダマメの外観精選別の有効性の検討――

森 智洋・市浦 茂・片平光彦

キーワード: AI,ディープラーニング,エダマメ,物体検出,外観精選別,YOLOv3

 

 エダマメ生産では手選別が主流であり,作業能率が12 kg/hと他の作業に比べて低いため,外観品質を迅速かつ的確に判断して選別する外観精選別機の開発が求められている。本研究ではディープラーニングでエダマメの外観品質を分類する物体検出AIの作成とその精度評価を行った。選別対象の品種の画像のみを用いて作成した物体検出AIは,選別対象以外の品種の画像も一緒に用いて作成した物体検出AIよりも,適合率と再現率,F値が向上した。物体検出AIのニュートン効率は,データセットに良品と不良品の両画像データを混ぜることで向上し,最も精度が高いもので0.57と人間と同等であった。以上から,エダマメの外観精選別に物体検出AIが有効といえる。


ディープラーニングを用いたエダマメの外観精選別用AIの作成と精度評価(第2報)
――データセットに含まれるエダマメ品種の違いが物体検出AIの外観精選別精度に与える影響――

森 智洋・市浦 茂・片平光彦

キーワード: エダマメ,ディープラーニング,AI,物体検出,精選別,YOLOv3Faster R-CNN

 

 本研究は,エダマメの検出と外観の品質分類を行う物体検出AIを作成し,データセットに含まれるエダマメ品種と物体検出AIの種類の違いがAIの外観精選別精度に与える影響を調査した。実験では3品種のエダマメを組み合わせた7つのデータセットを設定し,それらのデータセットでYOLOv3Faster R-CNNの物体検出AIを作成した。適合率と再現率,F値の平均は,選別対象品種をデータセットに含むことで有意に高くなった。本研究で作成した最高精度の物体検出AIは,ニュートン効率(η)が0.79で手選別の0.59を上回った。物体検出AIによる品質分類項目の誤分類と未検出の内容は,YOLOv3Faster R-CNNのAIで異なっていた。


放散成分プロファイリングによるホールおよびカットキャベツの鮮度評価

曽我綾香・吉田 誠・黒木信一郎・蔦 瑞樹・中村宣貴・今泉鉄平・タンマウォン マナスィカン・中野浩平

キーワード: キャベツ,貯蔵積算温度,鮮度,ガスクロマトグラフィー・質量分析法,メタボローム解析,揮発性化合物

 

 ホールおよびカットキャベツの鮮度を反映する放散揮発性化合物を探索するために,ガスクロマトグラフィー・質量分析によるメタボローム解析を行った。ホールキャベツから40,カットキャベツから30個の物質がアノテートされ,そのうち20個は共通した。検出された揮発性化合物を用いたPLS回帰モデルは,貯蔵積算温度をうまく説明できた。変数重要度指標に基づいて選定された物質による階層クラスター解析では,貯蔵積算温度の増加に応じてそれらのプロファイルが異なった。以上のことから,選定された物質はホールあるいはカットキャベツの鮮度マーカー候補であり,それらのプロファイリングによる鮮度評価の可能性が示された。


技術論文

大豆用高速畝立て播種機の開発
――試作機と慣行機を比較する播種・栽培試験――

重松健太・大野智史・吉田修一・南山 恵・高山定之・遠藤 準・難波和彦

キーワード: 大豆,播種機,畝立て播種,高速化,耕うん同時畝立て播種機

 

 本研究では,大豆の生育初期の湿害を軽減するために,ディスク式の畝立て部とダブルプレート式種子繰り出し機構による高速畝立て播種機の開発を行っている。本報では,試作機の栽培実証試験を既存の耕うん同時畝立て播種機と比較しながら,宮城県,新潟県,富山県および埼玉県で行った。その結果,試作機は既存機の2倍以上の速度1.5 m/sで作業可能で,播種精度は同等以上であった。出芽率は両機とも95 %以上であり,収量に有意な差はなかった。事前耕うんが可能な地域では,適期播種による収量確保と高速化による作付面積拡大への寄与が期待できる。


排出用電磁弁を用いた画像選別機内の清浄作用

高橋史夫・片平光彦

キーワード: 枝豆,画像選別機,画像処理,排出用電磁弁,自浄作用

 

 枝豆生産現場では,調製作業効率化のため画像処理による選別機(以下選別機)が導入されている。本研究は,選別機のノイズ要因の空中浮遊物が排出用電磁弁で排除されることを明らかにするため,煙を用い効果を検討した。実験開始40~80秒で煙の濃度(V値(画像明度))が25.0~27.3となり,時間経過で差が解消し,測定部位間の差がなかった。排出用電磁弁は噴射空気圧が,0.6 MPa(2~6回/秒)で10秒,0.4 MPa(5回/秒)が20秒で選別機内を清浄した。0.4 MPa(2回/秒)では,煙の濃度低下が緩やかだが,約120秒で収束した。排出用電磁弁は,選別機内部の空中浮遊物対策に十分な機能を有している。


畳み込みニューラルネットワークおよびサポートベクターマシンを用いたバレイショの外部欠陥種別の分類

斎藤嘉人・山本一哉・板倉健太・今田伸二・二宮和則・近藤 直

キーワード: バレイショ,欠陥分類,短波長赤外(SWIR),畳み込みニューラルネットワーク(CNN),サポートベクターマシン(SVM),Local Interpretable Model-agnostic Explanations(LIME)

 

 バレイショ規格外品選別の自動化を目指し,バレイショ用選果ラインに実装された2種類の光学系でカラー画像と短波長赤外(SWIR)画像を撮影し,畳み込みニューラルネットワーク(CNN)とサポートベクターマシン(SVM)の2種類の分類モデルを作成し分類を行った。画像は目視にて6種類の欠陥種別にラベル付けを行った。結果,CNNによるSWIR画像の分類精度が96.8 %と最も高かった。また,欠陥分類の妥当性確認のため判断根拠の可視化を行った結果,カラー画像では表面の色や輪郭情報が,SWIR画像では反射率が高く白く強調された部分が,それぞれ特徴量として観察された。


速  報

トラクタ追突事故対策に関する北海道内の農業者の意識調査

皆川啓子・積  栄・舘山則義

キーワード: トラクタ,追突事故,事故対策,回転灯,北海道


近接型アレイセンサによる微量牛乳中の非標識大腸菌計測

山重貴久・菊池正二郎・原田昌彦・陳 思遥・小川雄一

キーワード: バイオセンサ,近接センサアレイ,細菌検査,増殖曲線,牛乳