82巻4号


研究論文

無人航空機(UAV)と人工知能(AI)を利用したバレイショの収量予測のためのモニタリングシステムの開発(第1報)

田邊 大・市浦 茂・中坪あゆみ・小林 隆・片平光彦

キーワード: UAV,NDVI,ICT,人工知能,深層学習,バレイショ

 

 UAVをバレイショ生産におけるリモートセンシングデバイスとして利用し,そこで得られる画像情報と収量との関係を検討した。実験は施肥条件を6段階に設定したバレイショほ場で行い,空撮画像の取得と生育,収量調査を行い,収量と空撮画像を組み合わせて重回帰分析とAIによる収量予測モデルを構築した。UAVによる空撮画像には処理区によって被覆の違いが確認され,生育の進行に伴い草丈に処理区間差が生じた。バレイショの収量予測に関しては,生育期と開花期のNDVI,草丈データを基にした重回帰分析で高い精度で予測できた。また,AIによる収量予測の場合,データセットの不均衡,過学習によって精度が低く,精度の改善が必要である。


枝の機械的パラメータを利用したトマト葉面積の簡易推定法

福島崇志・長菅輝義・稲垣陽介・滝沢憲治

キーワード: トマト葉面積,機械的パラメータ,曲げ剛性,重回帰分析,推定モデル

 

 施設栽培面積1位の品目であるトマトの栽培では,光合成産物の最大化のため,葉面積を指標とした栽培管理が実施されている。本研究では,葉の展開による葉重増加に伴い,枝の支持機能つまりは枝の機械的パラメータも増大すると仮説を立て,枝の機械的パラメータを用いた葉面積の簡易推定法の開発のため,トマト株における葉面積と枝の形態的・力学的パラメータの相関関係を明らかにすることを目的とした。結果,成長初期~中期における個葉では,葉面積と機械的パラメータの間には高い相関がみられ,仮説を支持する結果となった。また,葉面積推定モデルには,枝径の長軸方向の径と曲げ剛性を用いることで,高い推定精度を得た。


近赤外分光法によるサトウキビの迅速な劣化原料判定法の開発

泉川良成・金城あつみ・アーパ―ラタナ キッチポン・寳川拓生・中村真也・田中宗浩・平良英三

キーワード: サトウキビ,劣化原料,近赤外分光法,品質指標,品質取引

 

 品質の低下したサトウキビ(劣化原料)が製糖効率を低下させることが報告されている。本研究では,近赤外分光法(以下,NIR法)を用いてサトウキビ劣化程度の迅速な判定法を検討した。ショ糖,ブドウ糖,果糖濃度の合計に対するショ糖濃度の割合を劣化程度の簡便な判定指標(純ショ糖率)とした。NIR法によるショ糖,ブドウ糖,果糖の検量モデルはいずれも良好な精度を示し,純ショ糖率も推定可能であった。製糖工場で測定されたNIRスペクトルから純ショ糖率を推定した結果,845 tの劣化原料が製糖工場へ搬入されており,収穫方式の違いによる劣化原料の実態を推察した。NIR法によるサトウキビ劣化原料判定の可能性が示された。


グレンタンクに種々の形状で堆積した籾層の重量検量式

平井康丸・樫野雅和・上加郁朗・光岡宗司・井上英二・岡安崇史

キーワード: コンバイン,ロードセル,収量,堆積形状,重心,スマート農業,営農支援システム,水稲

 

 収量コンバインの籾重量計測には,グレンタンク底面で計測したロードセル荷重を説明変数とする検量式が用いられている。本研究の目的は,籾層の種々の堆積形状に対して,現方式の検量式の推定精度を評価し,推定誤差を低減する検量式を検討することであった。現方式のクロス・バリデーション時の二乗平均平方根相対誤差(RMSRECV)は22 %であった。特に質量100 kgにおいて堆積籾層の重心のx座標の変動が大きく,相対誤差の範囲が-41 %~60 %と大きかった。堆積形状に起因する誤差を低減するには,前方・後方ロードセル荷重を説明変数とする検量式が実用的と考えられた。RMSRECVは4.4 %であった。

技術論文

コンバインの事故要因分析に基づくリスク低減効果と機械特性による危険要因の違いに関する考察

松井正実・青柳悠也・棚橋拓也・武田純一・福島崇志

キーワード: コンバイン,事故,要因分析,リスク評価,農作業安全

 

 コンバインは構造や作業特性から重大事故が多い。それらのリスク算出と事故形態の特徴整理は効果的な対策に資する。本研究ではコンバインの事故調査結果から各事故の要因と事例のリスクを算出し,トラクタの事故リスクと比較して機械特性について整理を行った。その結果,「運転席からの死角が多い構造」,「場所の傾斜・段差・凹凸」,「安全性や操作性の低い機械」,「場所の軟弱さ,滑りやすさ」の4要因の対策により,死亡・重傷リスクは平均で26.6 %低減する見込みを得た。また,コンバインの「大きさ」,「運転席の配置」,「回転部の多さ」の特性から,転倒・転落や巻き込まれによる重大事故発生の危険性を示した。


営農型太陽光発電のパネル制御が水稲栽培に及ぼす影響

合原亮一・高橋伸英・加藤茂春・堀江智明

キーワード: 水稲栽培,コシヒカリ,有機農法,営農型太陽光発電,パネル自動制御,一軸自動太陽追尾

 

 顕在化する気候変動と我が国の農業就業者の高齢化に起因して,農作物収量の減少と農業の衰退が懸念されている。低炭素社会の実現と食料・エネルギー生産の両立による農業就業者の確保を目指すために,営農型太陽光発電は魅力的な技術の一つである。しかしながら,実フィールドにおける発電効率と作物収量に関する知見は極めて乏しい。本研究では,実規模の有機栽培水田内にパネルの動きが異なる3つの太陽光発電領域を設置し,水稲の生育や収量と光制御の関係の実証試験を行った。影の比率が58 %の区画も存在したが,玄米収量と影の比率に相関関係は認められなかった。更にパネル比率を上げ,架台当たりのパネル容量を増加できる可能性が示唆された。


水田土壌スペクトルを用いた粒径組成検量モデルと予測精度

小平正和・澁澤 栄

キーワード: 粘土,シルト,砂,検量モデル,予測精度,外れ値,相対定量値

 

 土壌の粒径組成を迅速・簡便な方法で把握できると,ばらつきに応じた局所管理や土壌改良の判断が可能になり,作物の収量や品質およびほ場での農作業効率の改善が期待できる。
 本論では,水田で測定した,土壌拡散反射スペクトルを用いて,粘土と砂およびシルトの検量モデル推定と予測値の精度について検証を行った。検量モデルは,R2Cal>0.90の精度を得た。未知試料185点の予測値精度は,R2が0.37~0.48であった。予測値は,定量値の分布傾向に追従し,平均値の誤差は0.60~1.41 %であり,相対定量値のばらつき可視化は可能と判断した。ほ場測定では,予測値の外れ値を適切に除外する手法の構築が課題である。


高機動畦畔草刈機の開発

栗原英治・山下晃平・西川 純・林 和信・戸田 勉・田村宏樹・小林太一・日吉健二

キーワード: 草刈機,電動式,畦畔,整備法面,遠隔操作,自動走行

 

 草刈り作業の軽労化や作業環境の改善を目的として,主に水田や転換畑の草刈り作業を対象とし,畦畔及び整備法面を安定走行できる走行部を備え,一定条件下では畦畔に沿って自動走行しながら作業を行う機能を備えた高機動畦畔草刈機を開発した。開発機は遠隔操作式の電動草刈機で,1台で畦畔及び整備法面における草刈り作業が可能である。ほ場試験の結果,開発機の作業能率は畦畔では151.0分/10 a,整備法面では99.1分/10 aで,作業者は無線リモコンにより機体から離れて作業できるため,市販機と比較して軽労化が図られるとともに,騒音,排ガス,振動の影響が小さく作業環境が改善することが明らかとなった。

速  報

市販芝刈ロボットの農業利用の可能性

金井源太・好野奈美子

キーワード: 芝刈ロボット,除草機,雑草,果樹園,休耕地


前加熱処理がトマトパウダのグアニル酸,グルタミン酸および食味に及ぼす影響

折笠貴寛・中村千波・小出章二・松嶋卯月・岡田益己

キーワード: トマトパウダ,熱風乾燥,官能評価,グアニル酸,グルタミン酸


国産コンバインでのスナッパヘッダ利用可能性

金井源太・篠遠善哉・山下善道

キーワード: コンバイン,スナッパヘッダ,トウモロコシ,頭部損失,脱穀損失