82巻3号

研究論文

ベトナム・メコンデルタ水田におけるリアルタイム雑草検出法

グエン タン ティン・オスピナ リカルド・野口 伸・岡本博史・ゴ ワン ヒュ

キーワード: 精密農業,雑草,水田,画像処理,リアルタイム検出,Faster R-CNN

 

 本研究はベトナムメコンデルタの水田に多い雑草をリアルタイムで検出できる画像処理法を開発した。本研究で考案した2種類の画像処理法の認識精度を評価した。採用した画像処理法はFaster R-CNNおよびbounding blob解析をベースにしたものである。画像データはメコンデルタの水田圃場においてRGBカメラを使用して取得した。考案した画像処理法の性能は雑草の検出精度と解析時間を用いて評価した。採用した2法とも水田の光条件が制御されていない雑草出芽後の段階から葉が細い形状の雑草と広い形状の雑草を正確に検出できた。試験結果ではバウンディング・ブロブ分析法の方が解析時間が短く,検出精度も高いことが明らかとなった。

ナス科接ぎ木苗生産におけるシステム化に関する研究
――接ぎ木切断接合装置と人工光型環境制御育苗装置――

西浦芳史・島田耕治

キーワード: ナス科,接ぎ木,切断接合,育苗,人工光型環境制御

 

 本研究は農繁期の接ぎ木苗生産での労働力不足問題を解決しようとするものである。多くの市販接ぎ木装置では接ぎ木用苗の寸法や活着能力により接ぎ木の成否が左右される。我々は播種から養生までの装置化を試みている。本報は,穂木と台木を切断した時の茎の逃げを軽減する接ぎ木方法を提案した。また,育苗室内の温湿度は干渉系であり,育苗室に接する水槽と空調室の静的システム同定により制御できる人工光型環境制御育苗装置を製作した。この装置で穂木と台木が育苗できた。接ぎ木試験ですべての苗が切断接合できたが,穂木と台木の中心がずれている苗が認められた。このことから,育苗方法の改善と苗の選別が必要であると考えた。

自脱コンバインの転輪配置による旋回性への影響

松井正実・青柳悠也・福島崇志

キーワード: 自脱コンバイン,挙動モデル,シミュレーション,旋回抵抗,転輪配置

 

 自脱コンバインのゴム履帯走行装置は走破性に優れ,機動性や安全性,快適性などを考慮して設計されている。これらの性能には転輪配置が影響すると考えられる。本研究では機動性に注目し,スムーズな旋回を目標とした転輪配置を検討するために,旋回時における前後・上下・ピッチング・ローリング方向の運動方程式を立案した。また,模型実験を行って妥当性を検証し,様々な転輪配置で数値解析を行った。その結果,本研究手法を用いれば,剛性路面走行時における様々な転輪配置の機動性への影響が評価可能になることを示した。また,転輪を重心付近に集中して配置することで旋回抵抗モーメントが小さくなり,機動性が向上することを示した。

ステレオビジョンによる再構成路面情報に基づくトラクタの挙動予測に関する研究
――ステレオカメラの測定条件が路面再構成精度に及ぼす影響――

シン ソヨン・光岡宗司・井上英二・岡安崇史・平井康丸・崔 重燮

キーワード: トラクタ,転倒,路面再構成,ステレオビジョン,カメラ配置条件

 

 本研究では,トラクタの前面に設置したステレオカメラから路面の3次元情報の再構築を行った。カメラの設置位置および取り付け角度が路面再構成精度に与える影響を把握するため,条件を変更してカメラ設置した。計測された画像データはMatlabを用いた画像処理により,3次元空間情報に変換した。トラクタの左右のタイヤが通過する0.5 m毎の路面高さの実測値と再構成値を比較することで路面再構成精度を評価した。その結果,RESEは約1.3-2.1 cmであった。傾斜角20度で機体前方のウェイトの上面にカメラを設置した場合が最も高い再構成精度を示した。

技術論文

DCブラシレスモータの農作業利用

塚本隆行・ファン ダン トー・大西明日見

キーワード: 電動化,省エネルギー,耕うん作業

 

 自動車では電動化技術が普及し,EV,HEV,FCEVが一般に普及しているが,農業機械において電動化技術は普及していない。電動の農業機械の作業上の特性を明らかにするために,出力,エネルギー消費を検討した。歩行型耕うん機のロータリをDCブラシレスモータで駆動する電動耕うんシステムを開発し,その性能について,定置試験,ほ場耕うん試験を行った結果,耕うん作業時に80 %以上の高いエネルギー効率となることのほか,低い回転数において瞬時に高トルクを出せるため,負荷変動に対応しやすいことなど,農業機械に適した特性を明らかにした。また,耕うん作業のエネルギーコストを試算した結果,消費電力のコストは軽油運転に比べて43 %低減した。