農業食料工学会

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学会概要

会長挨拶

農業食料工学会長 近藤 直

農業食料工学会長 近藤 直

大学4回生の時に入会以来,今後の食料生産,環境保全において,数ある農学の学協会の中でも最重要の学会と考えている農業食料工学会長を2017年(平成29年)度より務めさせていただくこととなり,緊張してこのご挨拶を書いております。歴代の会長のようにご期待に沿う学会運営ができるか否かは甚だ不透明で,不安に感じておりますが,会員の皆様のご教授により歩んでいきたく存じますので,よろしくお願い申し上げます。

まず,今期の課題と考えていることは,前会長の内野敏剛先生が大下誠一先生から引き継がれた「農業機械学会」から「農業食料工学会」への流れ,および部会制や産官学連携等を発展させること,法人化に向かって走り始めている路線を無事軌道に乗せることです。法人化への移行にはこれまでも議論の対象となってきた支部会員の問題も含まれていることより,納得のいく議論の上で全国の農業食料工学会会員のみなさまのコンセンサスを得て実現できればと思う次第です。

もう一点,今期の執行部のみなさまに議論していただきたいことは「学会の国際化」です。学会誌の78巻3号ならびに79巻3号の論説で述べさせていただきましたが,学会としてこの国際化に取り組むことができれば,学会自身の発展,産官学のメンバーに大きな利益をもたらすと同時に,世界の「食料―環境問題」に大きく貢献することができると考えています。

色々な資料で議論されていますが,食料生産の技術開発は待ったなしの最重要課題です。その課題を解決するには当学会の有する生産性を飛躍的に向上させられる農業機械,農業施設を初めとした食料生産に関わる技術が必須であり,学会としても日本企業の優れた食料生産技術を適切な方法でアジア,アフリカ各国への導入を後押しすべきと思います。一方,食料生産も含め,いかなる生産活動も環境を少なからず破壊することから,最小限の環境負荷で最大の収量や品質を得る生産方法(例えば,当学会で研究推進してきた精密農業)が必須であることに疑う余地はありません。しかし,世界の農地面積が減少する中,現在の74億人に加えて20億人の食料確保を行うことは容易ではありません。

他方,世界の食品ロスは30%とも言われており,熱帯地域だけでなく,温帯地域における貯蔵および流通中の腐敗,品質劣化等による廃棄,消費時の食べ残しや賞味期限切れによる廃棄を削減することが切実に望まれます。単純に,もし30%の食品ロスを実際の食料に回せられれば,現在の生産量でもエネルギベースでは,ほぼこれ以上増産する必要がない計算になります。この食品ロスの削減は,食料-環境のトレードオフ問題を解決する一つの方法として社会が望むものです。そのためには収穫直後,生産物の微小欠陥まで検出可能とする選別の高精度化,貯蔵中の品質保持技術,鮮度のモニタリング等,本学会がこの地球規模の最重要課題に貢献する技術は数多いと考えています。これらの点からも,当学会として他国の学会とさらなる学術・技術交流をし,日本の貢献可能な技術をプロモートすることが一つの重要な活動と思います。

現在までの大学の留学生の統計的データを見ると,その多くは中国および東南アジアの学生で,卒業後も我々の分野の仕事を希望する将来のリーダや大学教員になっています。つまり,これまで我が国で積み上げてきたきめ細かな技術や知識を日本の大学教育によって,直接的あるいは間接的にアジアの農業や産業へ貢献できる時代になってきたとも言えます。各教育機関では,その優れた技術を日本の文化や精神と共に正しい形で母国に持ち帰り,帰国後も我が国や各国と連携しながら母国および地域の問題解決を図れるよう教育頂くと同時に,世界の食料と環境に貢献可能な人材育成にご尽力頂ければと存じます。

ただし,大学等の教育機関ではそれらの学生が卒業後,指導教員の退職等で必ずしも長く交流できないこともあります。しかし,在学中に加入した当学会のような産官学のバランスのとれた学会員との付き合いは退職するまで続けられます。特に今から人口が20億人増加する30年間の当学会の役割はその技術開発のみならず,同窓会としての人脈形成においても大変重要であると考えます。

人脈形成ならびに帰国してからの長い付き合いを実現するには,まず日本滞在中に学会への加入,本部や支部のイベントへの参加,EAEFへの投稿を促し,学会に親しんでもらうのがその第一歩です。そのためには,講演会における英語セッションの定着,特別会員の各企業の方から英語での新製品の紹介などのアイデア等も考えられるかと思います。そのような日本滞在中のサービスは比較的容易ですが,帰国後のサービスについても議論頂ければと存じます。例えば,近年日本語ができなくても卒業可能な英語コースに属する留学生は日本語の学会誌から情報を得るのが難しい状況です。そこで,海外会員に対してはむしろ定期的にホームページやフェイスブックなどのSNSを通じて英語の情報を共有したり,特別会員の担当の方とリンク可能な技術相談窓口などを設けるのが効果的で実現性の高い方法かも知れません。

ご存知の方も多いと存じますが,当学会では現在若手研究者海外学会発表支援を行っています。将来,この制度を海外会員に拡張して頂くだけでも母国に帰るときに退会する留学生は減少すると考えています。ただ,海外からの会費の支払いが今のままでは困難なことから,学会を法人化してクレジットカード等が利用可能とするなどの工夫も必要です。海外会員の会費のレベルに関しても配慮の必要があるように思います。日本語の学会誌を各国に配送せず,SNS等を通じて情報提供を行う場合および物価や収入のレベルが異なる場合には,日本在住の正会員と同じ学会費とする必要はないように思えます。

将来,会員が増えてきた国ではその国の学会と共催あるいは協賛するシンポジウム等で,ローカルな地域の問題や現地の研究者や技術者の悩みを実際に議論できる場を作ることにより,食料―環境問題に大きな貢献が可能と考えます。そのためには各国の当該学会長や理事と直接交流をする機会を設けることも技術連携,共同研究,会員増につながるかと思います。もちろん,このような活動はアジアのみならず,ヨーロッパ,アメリカ,アフリカ等の当該学会との連携にも拡張すべきことでしょう。

当学会の特徴は前述しましたように産官学のバランスのよい会員構成で,将来的には海外の企業の参画も期待されることから,海外特別会員についても議論すべきかと思います。また,企業としても海外会員との連携,技術導入における連携企業の発掘あるいは現地での雇用等でメリットがあると考えますので,海外会員の機能が新たな正会員や特別会員の加入を促す相乗効果にも期待できます。

昔から使い古された言葉ですが,現在の国際化によって新たな「激動の時代」が始まった感があります。「産」においては海外へのさらなる技術導入が,「官」においては世界標準を見据えた新たなアジア標準の確立と新しい政策の企画立案,規制緩和等が,「学」ではアジアのリーダを創出する人材育成が,この国際化をステアリングしていくと思います。また,この国際化は人的多様性,地域の多様性に対応した新たな食料生産技術の開発ならびに価値を生むものです。他学会と比較しても当学会は,国際化・海外進出が重要なポイントとなる技術を有していますので,他に先駆けて産官学の会員の皆様と共に取り組むべき重要課題と考え,ここで紹介させて頂きました。これを機会に,会員各位が10年から30年先の農業食料工学会の将来展望と発展方向に対して議論して頂ける一助になれば幸甚です。

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沿革

 本学会は、農業機械、農業施設及び農業機械化に関する学術進歩を図ることを目的に「農業機械学会」として1937年に設立されました。以降、農業の機械化・近代化を進め、日本農業さらには世界農業の発展と食料生産に大きく貢献してきました。現在では約1,200名の会員を擁するに至っています。この間、幾多の社会情勢の変遷を経て、学会の活動領域はトラクタや田植機、コンバインといったいわゆる“農業機械”そのものに関わる研究開発から、センシング技術や電子制御、ICTの活用さらには環境やエネルギ、食料生産・流通に係わる技術分野の領域に活動範囲が拡大してきました。

 こうした対象領域における学術発展と学会活動の更なる活性化をねらいとして,76年続いた農業機械学会は、2013年9月から学会名称を「農業食料工学会」と改称して新たに出発しました。この改称をトリガーとして、機動性の高い学会活動に向けて“農業機械”、“食料・食品工学”、及び“IT・メカトロニクス”という3つの部会を立ち上げました。その他にも、学会活動活性化に資する様々なアプローチを模索しています。

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