79巻3号

技術論文

消化液返送による乳牛糞尿無加水高温メタン発酵

才川 彩・竹内良曜・潘 志飛・斉 光斗・Andriamanohiarisoamanana Fetra Jules・山城隆樹・井原一高・岩崎匡洋・梅津一孝

キーワード: 嫌気性発酵,高温発酵,糞尿処理,消化液,バイオガス,メタン

 

 湿式メタン発酵は含水率の高いバイオマスが投入原料として用いられる。繋ぎ飼い式牛舎から排出される乳牛糞尿は,敷料の混入によって固形物(TS)濃度が高いことから,湿式メタン発酵の投入原料とするためには大量の希釈水が必要となる。本実験では,希釈水の代わりに消化液を返送する無加水湿式メタン発酵を検討した。消化液ろ液を用いてTS濃度を調整した乳牛糞尿を投入原料として,発酵温度55℃の連続メタン発酵試験を行った。得られた結果は,乳牛糞尿の希釈処理に消化液を使用する無加水メタン発酵の有効性を示すものである。
 

遊休体育館における温泉排湯および沢水の熱利用による周年栽培システムの構築

大橋慎太郎・中野和弘・貴田勇真・小橋皐平

キーワード: 地域資源,地域活性化,ヒートポンプ,サツマイモ,地中加温

 

 中山間地域における農業生産活動の活性化を目指し,6次産業化への展開を視野に入れた地域資源利活用による施設栽培システムを構築し,その導入効果を評価した。
 本研究では,遊休体育館内に設置されたハウスを園芸施設として利用し,サツマイモ栽培を行った。サツマイモの栽培環境創出にはヒートポンプを導入し,沢水および温泉排湯をそれぞれ冷房および暖房の熱源として利用した。さらに,サツマイモの増収および塊根肥大促進のために,温泉排湯の熱利用による地中加温装置を組み込んだ多段栽培システムを構築した。その結果,温泉排湯熱の効率的な利用方法について考察し,沢水および温泉排湯の熱資源を有効利用した本システムによる増収効果について確認した。
 

タマネギ内部腐敗球の非破壊判別精度に及ぼす要因の解析

西野 勝・黒木信一郎・中野伸一・出口陽平・伊藤博通

キーワード: 可視・近赤外分光法,透過スペクトル,温度補正,サイズ統合,健全球混合比

 

 タマネギの内部腐敗球は,外観からの判別が困難であり,これらが出荷品へ混入すると産地の信用低下につながる。そこで,非破壊計測技術として近赤外分光法に着目し,実用を想定したコンベア搬送時における内部腐敗球の判別を試みた。取得したスペクトルから,部分最小自乗法により0~5の6段階に指数化した腐敗程度を推定する検量モデルを作成,評価した。試料温度,出荷サイズの異なるスペクトルデータを検量用データセットに含めること,および健全球混合比率を3倍程度とすることにより,堅牢な判別モデルが構築された。腐敗の有無となる閾値を腐敗レベル1.0としたときの合計判別率は95.0 %となった。
 

研究論文

コンバインにおける籾の揺動選別に関する考察
――籾と藁屑に非球形モデルを導入した3次元個別要素法によるシミュレーション――

廣松大樹・松井正実・松本 健・井上英二・光岡宗司・岡安崇史・平井康丸

キーワード: コンバイン,揺動選別,籾流下率,3D-DEM,非球形モデル

 

 本研究では,自脱コンバインの揺動選別部に籾・藁屑を供試して,チャフシーブ間での籾流下量を実験的に求め,制御因子の変化が選別性能に与える影響について考察した。また,籾・藁屑に非球形モデルを導入して3次元個別要素法による選別シミュレーションを行い,実験結果との対比検討を行った。実験の結果,チャフシーブ前方での流下率が高いこと,チャフシーブ開度,揺動駆動軸回転数が籾の流下に大きな影響を与えることが明らかになった。選別シミュレーションにおいては,実験と同程度の供試粒数を与えることで同様の結果を得ることができた。本研究によって,揺動選別状況を定性的かつ定量的に把握可能であることを示すことができた。
 

水田用歩行型除草機のロータ滑り率を変化させた場合の除草率および所要動力について

ジョコ ピトヨ,庄司浩一,川村恒夫

キーワード: 除草機,動力,歩行型,除草率,効率,水田

 

 本研究では,水田用歩行型除草機のロータの滑り率を変化させて,除草率および所要動力を評価することを目的とする。既存の抵抗棒に替えて駆動ラグ輪を装着し,ロータの回転数を約200 rpmに保持したまま,ロータの滑り率を79 %から93 %の間で変化させた。二筆の水田にて,移植後10または21日目に1回のみ除草試験を実施した。滑り率の減少に伴い,所要動力は0.62 kWから0.40 kWに減少し,移植後21日目に除草した場合にのみ,除草率および収量の減少がみられた。
 

技術論文

フラットホースを利用した豚舎処理水散布技術

新里良章・比屋根真一・比嘉 弘・上野正実

キーワード: 豚舎処理水,フラットホース,バキュームカー,サトウキビ

 

 トラック,タンク,ポンプおよび4 mmまたは9 mm穴を有する長さ50 m,径50 mmのフラットホースより構成される低コストで省力的な豚舎処理水の散布法を確立した。サトウキビほ場で,1人作業が可能で散布時はほ場進入が不要である。作業時間は4.0 h/10 aで2人作業のバキュームカーより短くできた。ポンプ側の畦端部の吐出量はホース終端の1.5倍程度であるが,生育ムラなどは少ないと考えられる。フラットホースは,開発した巻取り機により50~120 sで巻取れて容易に移動できた。さらに,処理水の窒素含有量は,ECを指標として簡易に推定できることを示した。これより,本研究で開発した散布システムは,耕畜連携の促進に有効であると考える。
 

主幹形ミカン樹に適するクローラ型防除機の試作開発と防除性能および作業性の評価

川﨑陽一郎・竹岡賢二・塩田 俊

キーワード: 主幹形ミカン,園内作業道,機械化,作業時間,労働強度

 

 主幹形のウンシュウミカン樹を一列に栽植した急傾斜地テラス園の園内道の幅に適合する小型クローラ型防除機を試作し,薬剤散布効果を検討するとともに,散布作業効率および作業者の労働強度を検証した。
 7,8および9月の防除作業時間は,小型クローラ型防除機の利用により,慣行手散布と比較して21~71 %に削減された。作業者の心拍数から推定した労働負荷軽減効果は,慣行手散布では,心拍数増加率110 %で作業強度分類「重」に区分されたのに対し,小型クローラ型防除機による防除作業は心拍数増加率86 %で作業強度分類「強」であり軽労化が図られた。
 

サトウキビ小型複数作業同時株出管理機の開発

新里良章・比屋根真一・島川泰英・屋比久朗・上野正実

キーワード: サトウキビ,株出,株揃,複合機,DCMU

 

 軽トラクタ用に開発したサトウキビ複数作業同時株出管理機は,株揃え,施肥,除草剤散布を同時に行う複合機で,適期に早期管理ができる。農薬タンクをトラクタ前方に搭載し,株揃部と施肥器を後方に装着する構造で,小型軽量化により前後の安定性が保たれた。施肥量はPWM制御により無段階に調整可能で,土中局所施用により肥料の流亡が防げる。安価なポンプなどで構成した散布機による除草効果は,動力噴霧機と変わらない。
 作業能率は1.48 h/10 aで,除草剤散布や施肥を別々に行う従来機種より45 %の省力化が図れた。開発機を用いた管理作業で株間の枯葉が除去され充分な除草効果が得られた。また,高培土作業では株揃えをすることで適正な覆土厚が確保された。
 

自脱コンバインの手こぎ部緊急即時停止装置の開発(第2報)
――女性の持上げ力測定と最終試作機の開発――

山﨑裕文・志藤博克・堀尾光広・積  栄・岡田俊輔・冨田宗樹・菊池 豊・竹内賢一朗・高木雅志・阿川陽一・古田東司

キーワード: 緊急停止装置,自脱コンバイン,持上げ力,手こぎ作業,挟やく桿

 

 自脱コンバインの手こぎ作業中に発生する巻き込まれ事故の重傷化を防止するため,こぎ胴カバーを片手で開放可能な仕様とするべく,女性を被験者として持上げ力を測定した。市販機のこぎ胴開放レバーの操作力と比較した結果,大幅な操作力の低下が必要と考えられた。また,こぎ胴にブレーキを搭載しその効果を確認したところ,コストの増加に対して大きな効果が得られなかった。これらの結果から,こぎ胴ブレーキは搭載せず,こぎ胴カバーあるいは挟やく桿の開放機能を付加した最終試作機を開発した。最終試作機は,挟まれた手を容易に抜き取れる可能性が確認され,重傷化防止に対して有効であると推察された。