78巻3号

研究論文

温州ミカンの集団力学系における共通ノイズ同期

ニーナ スヴィリドヴァ・酒井憲司

キーワード: 隔年結果,非線形力学,物質収支モデル,分岐図,ノイズ印加同期

 

 農業生態系において非線形現象は遍在的である。例えば,柑橘類における隔年結果現象は非線形ダイナミクスの典型例として知られている。温州ミカンの樹木個体レベルで隔年結果現象は,いわゆる資源収支モデルで記述されるメカニズムによって説明されている。一方,隔年結果という用語は,樹木個体レベルの収量変動の現象だけではなく,温州ミカンの国内市場における収量や価格の変動現象に対しても用いられる。本研究では,個体レベルの変動モデルを振動子と考えて,大量の振動子集団に共通ノイズを加えることによって,振動子間に結合を有しない場合にも集団レベルでの同調現象が隔年結果とし生じることを数値実験によって明らかにした。

踏車の揚水量と揚水係数

木下 統・御手洗正文・豊満幸雄

キーワード: 鞘箱,羽根車,踏車,揚水係数,揚水量

 

 踏車が我が国の農業生産に与えた影響を理解するには,揚水量等の踏車の性能に関する正確な資料を得ることが重要である。そこで本研究では,踏車の揚水量の理論式を再検討し,揚水量を実測して揚水係数を吟味することで,踏車の基本的な揚水性能を明らかにすることを目的とした。その結果,これまで実測例が少なかった踏車の揚水量について,種々の運転条件において実測することができた。足踏回数すなわち羽根車回転数が大きくなるにつれて,揚水量も多くなった。踏車の揚水係数は従来から言われていた値よりも低い値をとることと,羽根車回転数に応じて変化することが実測により明らかとなった。

技術論文

ウリ科接ぎ木装置用自動給苗装置の開発(第2報)
――台木用自動給苗装置の実用性評価――

大越崇博・小林 研・重松健太・中山夏希・吉永慶太

キーワード: 接ぎ木装置,自動給苗,ウリ科野菜,接ぎ木苗,カボチャ,子葉展開方向,子葉方向揃え

 

 ウリ科用の半自動接ぎ木装置に適応する高能率な自動給苗装置の開発を目的に研究を行った。子葉展開方向が均一ではない栽植状態の苗を対象に,子葉展開方向を一定範囲内へ誘導する予備整列機構の可能性を検討した後,試作した台木用自動供給試験機による精度試験から実用性を検討した。その結果,予備整列機構は,子葉展開方向が接ぎ木装置への適正受渡し方向に対して ±50º以上ずれている苗のうち89 %を ±50º以内に誘導することができ,整列播種と同等の効果を有することを確認した。台木を自動給苗した接ぎ木精度は,接合率および活着率100 %,成苗率98 %となり,十分な実用性を確認した。

自然吸気式ディーゼル機関の性能試験に関する実験研究(第2報)
――大気条件係数を一定とした場合の試験結果への効果――

清水一史・西川 純・藤井桃子・紺屋秀之・滝元弘樹

キーワード: ディーゼル機関,性能試験,大気条件係数,吸入空気温度,大気圧,機関出力,燃料消費率,排出ガス

 

 温度や大気圧など試験環境条件の違いにより生じる試験結果のばらつきが小さい,より公正な機関性能試験を実施するための試験手法の研究を行った。これまでの研究で,吸入空気温度と乾燥大気圧から算出する大気条件係数の違いが,機関性能試験の結果に影響を及ぼすことが明らかとなっているため,本報では,大気条件係数を一定として機関性能試験を実施し,試験結果のばらつきへ及ぼす効果を確認した。その結果,出力,燃料消費率及び粒子状物質の試験結果のばらつきを,より小さくできることが明らかとなった。

自脱コンバインの手こぎ部緊急即時停止装置の開発(第1報)
――手こぎ作業の実態調査と試作機の開発――

山﨑裕文・志藤博克・堀尾光広・積  栄・岡田俊輔・冨田宗樹・竹内賢一朗・高木雅志・阿川陽一・古田東司

キーワード: 緊急停止装置,自脱コンバイン,安全装置,手こぎ作業,フィードチェン停止距離

 

 自脱コンバインの手こぎ作業中に発生する巻き込まれ事故の重傷化を防止するため,手こぎ作業に対する農家の意向を把握した上で,開発する装置が満たすべき要件を検討し1号機を試作した。手こぎ作業について,7割以上の農家が今後も手こぎ作業を継続せざるを得ないとの意向を示した。フィードチェン駆動部にクラッチを内蔵,もしくは駆動制御をHSTとし,さらに手こぎ作業時にフィードチェン速度を低下させることで,巻き込まれた手がこぎ胴へ達する前にフィードチェンを停止させる可能性を見出した。また,緊急停止ボタンの高さについては,身長の低い女性高齢者でも届くよう,ボタン上端高さを1700 mm以下とした。