76巻6号

研究論文

ロータリ耕うんの動的現象の解析研究(第3報)
――ロータリ耕うん機の均平性能の予測と評価――

平澤一暁・片岡 崇・久保孝之

 

 前報(Hirasawa et al., 2014)までに,ロータリ耕うんの土の投てき現象と所要動力を予測できるロータリ耕うんモデルを個別要素法で構築した。本報では,このモデルを用いて,2種類のロータリ耕うん機の耕うん後の土壌の堆積形状を予測した。実測結果との比較から,耕うん後の土壌の堆積形状を本モデルで予測できる可能性が示された。加えて,本モデルは土壌の堆積高さの二乗平均平方根に対する機械設計パラメータ(耕うん幅,耕うん爪配列,耕うん爪形状)の影響を予測できることが分かった。堆積高さの二乗平均平方根の予測値と実測値の決定係数は0.799であった。

キーワード: ロータリ耕うん,ロータリ耕うん爪,耕うん爪配列,均平性能,個別要素法,ロータリ耕うんモデル,シミュレーション,モデリング,性能予測

技術論文

エコフィード栄養成分測定用近赤外分光計の開発

朴 善姫・大倉 力・入江正和・米持千里・甘利雅拡

 

 エコフィードは,未利用食品資源を原材料とする飼料であり,環境問題の解決,飼料自給率の向上に寄与するが,栄養成分のばらつきが大きいことが普及の障害となっている。栄養成分の化学分析には時間と費用がかかるので,我々は,エコフィード分析を目的とした低価格・高性能の小型近赤外分光計の開発を進めた。多数の乾燥飼料エコフィードを各地から集め,高精度近赤外分光計によりスペクトルを測定した。その結果から開発する装置に必要な性能を決定し,それに基づき装置を完成させた。開発した装置の分析性能は高価な大型近赤外分光計と同程度で,重要な成分である水分,粗蛋白質,粗脂肪を,1分以内で分析できる。

キーワード: 近赤外分光,エコフィード,飼料,分光反射率,分光器,栄養成分,一般成分

施肥溝切り機を用いたネギ栽培における生産性改善に関する研究(第1報)

進藤勇人・大竹智美・片平光彦・本庄 求・齋藤雅憲・夏賀元康

 

 本報はネギの定植・植え溝切り作業を効率化するため,施肥溝切り機に作溝チゼルを組み込んだ作業技術の特性を検証した。植え溝切りは,作業能率が1.31~1.76 h/10a,溝幅50~52 cm,溝深さ16~19 cm,溝底幅19~20 cm,側条施肥を溝底中央から水平に6 cm,深さ2~3 cm,作溝チゼルを深さ11 cmで施工した。植え溝底中央部の矩形板沈下量は作溝チゼル施工区と無施工区との間に有意差を示した。定植作業は各試験区間に作業能率の差がなく,正常植えの割合が作溝チゼル・両側施肥区で86 %と最も多くなった。植え付け姿勢は,作溝チゼルと簡易移植器による側条施肥の攪乱が溝底浅層の土壌膨軟化を誘引して改善した。

キーワード: 長ネギ,施肥溝切り機,側条施肥,施肥オープナ,作溝チゼル,膨軟化

トマト低段密植栽培に対応した着果処理ロボットの開発(第2報)
――ロボットの位置認識システムの開発と温室内での動作試験――

黒崎秀仁・大森弘美・岩崎泰永・高市益行

 

 前報で開発した着果処理ロボット試作機に磁気テープ誘導方式の走行部分を付加して走行制御を行い,ロボットの位置を標識の読み取りによって算出するシステムを開発した。さらに,花房の座標と処理状態の記録との照合を行い,過去に着果処理した花房の重複処理を回避する機能を実装した。この試作機を温室内で夜間に動作させ1段目花房の着果処理を行った。ロボット処理区では開花時期のばらつきに対応するため,2回の着果処理を行った。ロボットの総噴霧成功率は100~92 %の範囲で,着果率も手作業と有意差が見られず,十分に実用的な精度と考えられた。処理時間は2回の処理の合計時間で1花房あたり30 sであった。

キーワード: 着果処理,花房,ロボット,精度,処理時間,トマト,低段密植栽培

エタノール生産を前提とした稲わら茎葉の気流選別システム

小林有一・塚本隆行・重田一人・横江未央・竹倉憲弘・加藤 仁・薬師堂謙一

 

 稲わらから,易分解性の糖質であるスクロースやデンプンが多く蓄積している茎をバイオエタノール原料用に選別して利用することを前提に,細断した稲わら茎葉の混合物から,茎と葉を分離する気流選別システムを開発した。本システムは,フレール形カッタで稲わらを細断した後に,茎と葉を気流により分離するものである。細断部,供給部,選別部から構成され,風上に茎を,風下に葉を回収する連続処理が可能な装置である。試験の結果,気流速度5.3 m/sでは,ニュートン効率が0.84であった。また作業効率は,44.4 kg/hであった。

キーワード: 稲わら,気流選別,ホイール形カッタ,バイオエタノール,セルロース,バイオマス

水蒸気の凝縮熱を利用した環境保全型水稲種子消毒技術に関する研究

野田崇啓・伊與田浩志・日髙靖之・井上 保・横江未央

 

 農薬を用いない環境保全型水稲種子消毒技術の能率向上と低コスト化を目的に,水蒸気加熱による水稲種子消毒技術を検討した。本技術は,水蒸気の凝縮を利用して種子表面近傍を高温短時間で湿熱処理すること,慣行の温湯浸漬消毒と比べ,冷却・乾燥処理を簡素化することをねらいとする。
 水稲種子の発芽率に悪影響を及ぼすことなく高い殺菌効果を得られる条件を検討した結果,「気流温度200℃,気流湿球温度80℃,加熱時間2 s,加熱流速1.8 m/sで加熱後,常温通風による60 s以上の通風冷却」を適処理条件と見出した。同条件の水稲種子消毒効果は,いもち病,もみ枯細菌病に対して温湯浸漬消毒と同等であった。

キーワード: コメ,種子消毒,過熱水蒸気,湿度,高温高湿度空気,加熱殺菌,熱療法

レタス移植機用植穴施肥装置の開発(その2)
――装置の改良と実証試験の結果――

ヌウェン ヴァン ナン・山根 俊・望月達史

 

 本研究では,前報で報告したレタス移植機用植穴施肥装置に対し,施肥機構および圃場での作業性能を改良した2号機を試作した。さらに,同装置による植穴施肥がレタス生育・収量に及ぼす影響を圃場試験により調査した。植穴施肥装置の構成機器を軽量化・位置最適化した結果,装置の重量を15 kg削減し,圃場での作業性を向上できた。圃場試験の結果,レタス移植同時植穴施肥作業による作業能率の低下とバッテリ持続時間の減少は,移植作業のみと比べると各々1割以下に抑えられた。また,植穴施肥によるレタス結球重量増大の効果が見られた。

キーワード: 施肥機,スタータ肥料,植穴施肥,結球レタス