76巻5号

研究論文

ブランチング処理がカットキャベツの遠赤外線乾燥過程における水分蒸散速度および品質変化に及ぼす影響

渡邊高志・折笠貴寛・佐々木邦明・小出章二・椎名武夫・田川彰男

 

 熱湯およびマイクロ波によるブランチング処理が,キャベツの遠赤外線および熱風乾燥における水分蒸散速度と品質変化(Brix糖度,L-アスコルビン酸)に及ぼす影響を検討した。ブランチング処理における水分蒸散速度の増加は,熱湯ブランチング処理における試料の軟化と,熱湯およびマイクロ波双方のブランチング処理における収縮抑制によるものと推察された。乾燥物におけるBrix糖度とL-アスコルビン酸は,熱湯処理と比較してマイクロ波処理で保持される傾向にあった。

キーワード: マイクロ波ブランチング,遠赤外線乾燥,キャベツ,水分蒸散速度,L-アスコルビン酸,Brix糖度

農作業機械の測位システムのためのスペクトル拡散(SS)音波による距離計測の計測周期高速化手法

椎木友朗・近藤 直・小川雄一・鈴木哲仁

 

 本報告では,農業用に用いることを目的とし,SS音波に出力順番を示す番号(出力番号)を付加して計測周期を高速化する方法を提案する。出力番号を付加することにより従来法の約4倍速い1/20 sの計測周期で,屋内の距離50 mまでの静止位置の計測を行ったところ,ビットエラーレート0 %,計測誤差15 mm以内,標準偏差2.5 mm以内と高精度で安定した結果を得た。誤差の原因は,直接波と反射波の到達時間差がチップ長の1.5倍より短くなることと,SS音波と雑音の信号強度比が低下することで生ずる,拡散符号の遅延時間の推定誤差であることが明らかになった。

キーワード: スペクトル拡散音波,M系列符号,距離計測,計測周期,遅延ロック追跡ループ,S曲線

稲のロボット収穫作業における作業能率の予測手法

栗田寛樹・飯田訓久・趙 元在・村主勝彦

 

 自脱コンバインロボットによる収穫作業を行い,無人収穫における作業能率を解析した。ロボットは走行経路を計画し,Global Navigation Satellite System(GNSS)及びGPSコンパスから取得した航法データによって経路追従走行を行い,マシンビジョンを利用して収穫した穀物の排出作業を行う。ロボット収穫作業を構成するアルゴリズムに基づき,走行経路及び作業時間の予測手法を提案した。圃場実験の結果,収穫に要した作業時間の予測に対する誤差は7.8 %であった。作業能率は14.7 a/hと予測されたのに対し,実験結果では13.6 a/hとなった。予測の精度向上のためには,グレンタンクに貯留する穀物量をより正確に把握することが必要であり,これは同時に作業全体の効率化に資すると予想される。

キーワード: 自脱コンバインロボット,ロボット収穫,刈取作業,排出作業,作業能率

技術論文

豚舎処理水散布機の開発とサトウキビへの施用効果

新里良章・大城正市・屋比久朗・上野正実

 

 豚舎からの曝気処理水をサトウキビほ場などに散布するトラック搭載型の散布機を開発した。散布機はホース,巻取りドラム,散布・吸水用ポンプおよびエンジンより構成され,4 tトラックにローリータンクとともに搭載できる。直径32 mm,長さ50~75 mのホースをほ場に伸ばし,リモコン操作で巻取りながら人力散布する方式によって1人作業が可能となり軽労化が図れた。散布に利用されているバキュームカーに比べて,トラック,タンクおよび散布機の価格は安価で,散布コストも安く,1人当たりの作業能率は高いことを示した。サトウキビ栽培において処理水は液肥として化学肥料の代替になり,慣行施肥より窒素量換算で処理水を多めに散布したところ増収した。固形の化学肥料より肥切れの良い液肥は,サトウキビの品質に悪影響を与えずに台風襲来前の8月頃まで散布可能で,施用期間を長くできた。

キーワード: 豚舎処理水,散布機,バキュームカー,サトウキビ,液肥

ボールレンズを装着した近赤外分光法による携帯型テンサイ糖分計測装置の開発

嶋津光辰・柴田洋一

 

 生育中のテンサイの根中糖分を非破壊的に計測する技術を確立するため,携帯型のテンサイ糖分計測装置を開発した。本装置は,根部の地表面からの露出部位に近赤外光を照・受光するプローブを接触させ,得られた近赤外スペクトルから糖分を推定する。本装置では,根部の不規則な表面形状による計測誤差や露出面積が既存の計測法では狭すぎる問題への対処として,照・受光部にボールレンズを装着しテンサイとの接触を点に近い小面積で接触させることで照・受光量の安定化と接触面積の縮小を図った。検証試験の結果,本装置は,テンサイ内部30 mmまで計測可能であり,表面の凹凸,プローブの接触角の影響を軽減し,計測精度が向上することが確認された。

キーワード: 近赤外分光法,テンサイ,非破壊,糖分,ボールレンズ,内部拡散反射光到達深度