76巻2号

研究論文

遺伝的アルゴリズムを用いたバイオディーゼル燃料生産体系の最適化

植田麻央・柴田洋一・岡本博史・荒木宏通・王  欣・片岡 崇

 

 環境負荷の少ない農業生産体系の確立を目的として,ブロックローテーション方式の畑輪作体系を対象にバイオディーゼル燃料(biodiesel fuel, BDF)を自給利用するための最適な面積比率を算定する手法を,遺伝的アルゴリズム(GA)を用いて開発した。本手法は,耕地面積,BDF生産量,所要労働時間および連作回避に関する設定条件を満たし,収益性の高い畑作品目の面積比率を導き出す。北海道十勝地方のモデル農家を想定し本手法を適用した結果,同水準の収益で様々な面積配分を提示できるなど,有効性が確認された。

キーワード: ナタネ,バイオ燃料,面積比率,持続的農業,輪作,収益性

Radio Frequencyタグを用いた農業用クローラ型車両の自動走行システム

入江 響・倉鋪圭太・深尾隆則・村上則幸

 

 日本の農業現場では労働力不足が深刻であり,生産効率の向上のために農作業の自動化が求められている。そこで本研究では農業用クローラ型車両の自動化を目標とし,自己位置同定を高精度かつ低コストに測定するセンサとしてRadio Frequency(RF)タグを用いた自己位置同定法と農業用クローラ型車両の自動走行制御システムを考案し,実機試験によってその有効性の検証を行った。その結果,RFタグを用いた制御では直線走行時の横偏差を±0.3 m以下で制御可能であった。なお,制御則検証のために行ったReal Time Kinematic GPSを用いた制御では横偏差が直線走行時で±0.1 mであった。

キーワード: Radio Frequency(RF)タグ,自己位置同定法,Unscented Kalman Filter,農作業車両,パスフォロウイング,スライディングモード制御

米の官能評価に対するパネルの地域間差と年齢間差およびパネル数の影響

横江未央・川村周三

 

 パネルは官能試験における重要な分析機器である。本研究では官能試験においてパネルの地域間差や年齢間差が米の官能評価に与える影響について検討した。さらに,米の官能試験において,官能試験の経験がないパネルを用いた際のパネル数が官能評価の精度に与える影響について検討した。その結果,米の官能評価ではパネルの地域間差は認められなかった。パネルの年齢間差は特定の傾向は認められなかったが,パネルの年齢は官能評価の結果に影響を与える可能性があることがわかった。また,官能試験の経験のないパネルであっても,その人数を40人以上とすることで精度が良い官能評価が可能であることがわかった。

キーワード: 米,官能評価,パネル,総合評価,多重相対比較法

技術論文

バレイショ茎葉処理機の開発(第2報)
――開発機の構造と性能および茎葉処理方法の違いが収穫作業能率に及ぼす影響――

貝沼秀夫・青木 循・鈴木 剛・大波正寿・鎌田 誠・菅原和之

 

 根茎部まで処理できる引抜き機構と,引抜いた茎葉を細断する機構を併せて備えたバレイショ茎葉処理機を開発した。開発機は,自走型の2畝同時処理機で,一対のスポンジ付き平ベルトで茎葉を挟持し引抜きを行う。その際に塊茎が露出しないよう,2枚1組の板状の部品で構成した畝押え部で畝の崩れを防止しつつ,茎葉の引抜きを行う。開発機は97~99 %程度の茎葉を処理することができ,塊茎の露出については1 %以内であった。作業速度は1.1 m/s,50 a/h程度のほ場作業量でほ場作業効率は90 %であった。開発機で茎葉を引抜き処理すると,根茎部などの夾雑物が少なくなり,細断処理した場合と比較して,収穫時のピッカによる拾い上げ作業の能率が40 %向上することが確認できた。

キーワード: バレイショ,茎葉処理機,引抜き,細断,自走型

堆肥化処理による放射能汚染牧草サイレージの減量化

阿部佳之・小島陽一郎・井上秀彦・天羽弘一

 

 放射能汚染牧草の一時保管や高次処理の負担を軽減するために,堆肥化処理を利用した汚染牧草サイレージの減量化を検討した。吸引通気方式で汚染牧草サイレージに強制通気を行った場合,堆肥化初期の発酵温度やpHの立ち上がりは低調であったが,中盤以降は発酵熱による乾燥が進み,加水が必要なほどに堆肥化反応が活発であった。強制通気せずに堆積した場合も含めて,10週間での有機物分解率は53~69 %であり,17 MJ/kgDMの高位発熱量(低位発熱量推定値で5.5~11 MJ/kgDM)が堆肥中に残存した。強制通気の排気中および堆肥化試験装置周辺空気の放射性セシウム濃度は検出限界以下であった。

キーワード: 放射性セシウム,牧草,サイレージ,減量化,堆肥化,一時保管

レタス移植機用植穴施肥装置の開発(その1)
――装置試作と施肥精度の検証――

ヌウェン ヴァン ナン・山根 俊・望月達史

 

 レタスの生育を揃える可能なスタータ肥料施用方法が検討されている。本研究では,市販の半自動レタス移植機(ちどりさん)に搭載する植穴施肥装置を試作し,同装置の被覆粒状肥料を植穴に繰出す精度と,移植作業性を検証した。二種類の繰出機構を開発し,繰出ロール容積2 mlから7 ml,繰出ロール回転速度31 rpm,47 rpm,70 rpmにおける被覆粒状肥料の繰出精度を調査した。室内試験の結果,試作した植穴施肥装置は,個々の施肥ロール繰出量のCV値が0.9 %から5.3 %,施肥装置の全体CV値が7 %以下を示し,均一性の高い施肥ができた。圃場での機能試験の結果,施肥装置は順調に移植機の動作と連動し,約3.60 gの被覆粒状肥料をレタスの植穴に施肥できた。今後,移植機の走行性や施肥量調整機能などを向上するための改良が必要と考えられた。

キーワード: 施肥機,スタータ肥料,植穴施肥,結球レタス