71巻1号

研究論文

圃場情報収集用六脚ロボットの歩行制御

姜 東賢・飯田訓久・梅田幹雄

キーワード: 精密農業,昆虫ロボット,情報収集ロボット,自律制御,障害物回避

 

 本研究では,農場の中で作物の生育や障害を調査するのに,圃場中を移動する脚型ロボットが有効に活用できるかを明らかにするための試験用プラットフォームとして,六脚ロボットを開発した。この六脚ロボットは,赤外線無線通信による遠隔制御と赤外線測距センサを用いた自律制御の2つの方法で制御される。ロボットは不整地を移動するため,三脚台歩容,四脚台歩容,及び五脚台歩容のような歩行パターンを適用した。実験では,各歩容に対する歩行速度や電池の持久力の関係を測定した。この測定結果から,ロボットは最高2.8m/minの速さで歩くことができ,1個のバッテリーで30m以上歩行できた。また,傾斜角15°の斜面をロボットは登ることが出来た。最後に,赤外線測距センサを用いて衝突を回避しながら,2列に並べた木柱やトウモロコシの間を自律的に通り抜けることができた。

メタン発酵消化液の固化と農業利用性

北川雅一・東城清秀・渡邉兼五

キーワード: メタン発酵消化液,固化,ケイ酸ナトリウム,寒天,高吸水性樹脂,環境負荷ガス,作物栽培

 

 ケイ酸ナトリウム,寒天,高吸水性樹脂の3種の固化剤を用いてメタン発酵消化液の固化を試み,固化した消化液の農業利用性について検討した。寒天による固化で消化液は固体となったが,ケイ酸ナトリウムと高吸水性樹脂による固化では流動性が残った。環境負荷ガスの揮散について消化液と固化消化液を比較すると,アンモニアの7日間の積算揮散率はケイ酸ナトリウムによる固化消化液で9〜47ポイント,高吸水性樹脂による固化消化液で6〜39ポイント減少した。4時間のメタン積算揮散量を消化液と比較するとケイ酸ナトリウムによる固化では0.25〜1.08mg/m2,寒天による固化では0.31〜1.41mg/m2減少したが,高吸水性樹脂による固化では逆に0.17〜0.99mg/m2増加した。固化消化液を用いた作物栽培ではケイ酸ナトリウムを固化剤に用いた実験区で発芽が抑制され,その他の実験区では生育速度が異なった。

画像解析による土壌破砕度の非接触計測
――照明条件が土壌破砕度計測に与える影響――

伊藤博通・松尾幹太・笈田 昭・中嶋 洋・宮坂寿郎・泉 貴仁

キーワード: 精密農業,土塊径,画像処理,照度,分散分析,重回帰分析

 

 本研究の目的は画像処理法を使用して土壌破砕度のリアルタイム計測を可能にするアルゴリズムを開発することである。5種類の土塊径を有するサンプルを用意した。これら土塊表面画像を22段階の照度条件下においてデジタルビデオカメラで撮影し,34種類の画像特徴量を測定した。照度が画像特徴量の変動に与える影響をノンパラメトリック分散分析により明らかにした。土塊径とテクスチャ特徴量の関係について重回帰分析を行った。土塊径の実測値と重回帰式推定値との寄与率は0.9100より大きくなった。この重回帰式は様々な照度条件下において土塊径を高精度で推定できることがわかった。

技術論文

有機性廃棄物から製造した浄化槽用シーディング剤の開発(第1報)
――シーディング剤の作成――

小島陽一郎・吉田毎郎・武部史彦・松田従三・近江谷和彦

キーワード: 浄化槽,シーディング剤,有機性廃棄物,堆肥,Bacillus属

 

 浄化槽の浄化促進剤として使用されるシーディング剤を,有機性廃棄物を原料として用いた。原料を堆肥発酵させ,乾燥・選別したものの一部をシーディング剤とした。原材料混合物の質量の4%程度をシーディング剤として用いた。堆肥発酵を経た,開発したシーディング剤は,堆肥発酵を経ることで,汚水浄化効果が高まる傾向があった。本シーディング剤は,微生物の代謝に必要な有機物と無機塩類が堆肥の推奨品質基準よりも多く含まれていた。本シーディング剤中の微生物のほとんどは,Bacillus属に属していた。

有機性廃棄物から製造した浄化槽用シーディング剤の開発(第2報)
――シーディング剤の汚水浄化効果――

小島陽一郎・松田従三・近江谷和彦

キーワード: 浄化槽,シーディング剤,COD除去率,低温,汎用性,MLSS

 

 浄化槽の浄化促進剤として使用されるシーディング剤を,有機性廃棄物を発酵させて製造した。このシーディング剤の汚水浄化特性を,その他の浄化促進剤と性能を比較した。本シーディング剤は,COD除去において,活性汚泥添加よりもCOD低下開始が遅かったが,汚水の種類や温度によるCOD除去率の差が小さく,全体的に高い水準であった。また,20℃において,シーディング剤添加は,ペプトン汚水,合成下水区では,汚泥添加より少ないMLSS,菌数で同程度のCOD除去率であった。

有機性廃棄物から製造した浄化槽用シーディング剤の開発(第3報)
――シーディング剤の固形化――

小島陽一郎・松田従三・近江谷和彦

キーワード: シーディング剤,浄化槽,固形化,混練,崩壊時間

 

 著者らが開発したシーディング剤は粉末状のため,運搬,取扱い性が悪く,浄化槽外に流出しやすい。これを解決するために,シーディング剤を固形化した。固形化は,シーディング剤とバインダとして米粉の混合物に水を加えて混練し,混練後に型に入れて荷重をかけて行った。実験条件として,混練回数,加水量,米粉量,固形化時荷重を変えた。実験の結果より,混練回数20回以上,加水量25〜27.5w/w%,添加米粉量5〜15w/w%,固形化時荷重147N以上の条件で良好に固形化が可能であった。

農用トラクタエンジンの排出ガス低減化作動線

日吉健二・積  栄・落合良治・高橋弘行・古山隆司・遠藤 準・槐島芳徳

キーワード: トラクタ,エンジン,排出ガスマップ,出力性能曲線

 

 トラクタの排出ガスの排出特性を表現するため,PTO出力性能曲線の内側に,各種排出ガスの排出量などを等値線で表した排出ガスマップを作成した。排出ガスは,排気煙濃度,NOx (窒素酸化物),CO(一酸化炭素),THC(全炭化水素)である。エンジンの作動域内の排出特性を3次元的に表現することができた。次に,このマップを利用して,燃料消費量と各種排出ガスの排出特性を組み合わせた総合排出性能値を求め,排出ガス低減化作動線を作成した。エンジンをこの作動線上で運転させることで,排出ガスの低減化に寄与できる可能性が示された。

飼料イネ籾の消化性を向上させる効率的調製技術(第3報)
――イネWCSの籾殻剥離・籾破砕処理と去勢牛への給与――

重田一人・松山裕城・喜田環樹・松尾守展

キーワード: イネWCS,籾殻剥離・籾破砕,消化性,未消化子実排泄率

 

 イネ発酵粗飼料(Whole Crop Rice Silage : イネWCS)の乳肉牛への給与においては,籾が消化されにくい籾殻で覆われているため,未消化のまま排出される籾の多いことが問題となっている。そこで,物理的にイネWCSの籾から籾殻を剥離するか,または籾ごと破砕することによって消化性を向上させる装置(Rice Silage Crusher : RSC)を開発した。本装置を用いて実際に飼料イネサイレージを処理して籾殻を剥離または籾を破砕したところ,サイレージ中に含まれる籾の籾殻剥離・籾破砕率は90%以上となった。この飼料(RSC処理イネ)を去勢牛に給与したところ,物理的処理を施してないもの(無処理)に比べて消化率,栄養価ともに高まる傾向となり,未消化子実の排泄率は66%低下した。さらに,RSC処理と無処理の間で採食行動に変化は観察されなかった。

農用トラクタの6つの振動モードとタイヤラグの影響について

武田純一・嶌田 優・菊池 豊・中野 丹・岡田俊輔・鳥巣 諒

キーワード: 農用トラクタ,ラグ振動,ラグタイヤ,振動モード,ロール,ピッチ,ヨー,並進

 

 平坦なコンクリート路面上の直進走行下における,タイヤラグを起振力とする農用トラクタ単体の6つの車体振動モードを分析した。この結果,ピッチ運動と上下の並進運動は,左右の後輪ラグに起因する振動で発生したが,ヨー運動と左右並進運動は対向する後輪ラグにより励振される強制振動として発生していた。また,ロール運動は両方で発生したが,これは各々のラグの接地が上下方向への励振源となり,対向ラグが左右方向への励振源となることを示していた。前輪ラグの振動数によってもピッチ運動と上下方向の並進運動が発生したが,前輪対向ラグ振動数によって発生する振動については明確な結果は得られなかった。

速  報

生物系固形廃棄物の熱容量

岩渕和則

キーワード: 熱容量,熱物性,廃棄物,家畜糞,堆肥