70巻6号

研究論文

ラオスの農業機械化と制度的システムに関する工学的特質(第2報)
――かんがい農法における社会経済的特性について――

クーネ サックバヴォン・小池正之・瀧川具弘

キーワード: 社会経済的特性,制度的システム,技術伝播,農業機械化,ラオス

 

 ラオス国サバナケット県のかんがい地区に位置する一集落を対象として,農業機械化の社会経済的特性に関わる聞き取り調査を行い,その分析を行った。従来の自給農業の影響が営農行動にみられたものの,貨幣経済の定着と新技術導入という社会状況を比較して,農民の意識変革が制度的に求められていることが分かった。機械所有形態に基づく3グループの分類について,単位面積当たり収益と総収入を求め,その結果賃耕と搗精サービスを行っている農家において比較優位性が認められることを指摘した。現行の賃作業サービスについて規模拡大の兆しはあるが,少子化と後継者難の問題を抱えている農家の存在が浮き彫りとなり,現地では新たな営農展開の構築を行う必要性に迫られていることが明らかになった。農民に求められている移転技術としては,耕種に関する限り,水稲作を中心とする技術に関心が高く,質的向上の技術よりも比較的導入しやすい量的拡大の技術が現実的であると把えられていることが判明した。技術移転を担う専門技術員の育成体制は遅れており,このことが農業の低収性の一因となっているものと考えられた。

精米の賞味期限の設定(第2報)
――貯蔵中の食味の変化――

横江未央・川村周三

キーワード: 賞味期限,官能試験,総合評価,普通精米,無洗米,貯蔵温度

 

 本研究は,普通精米と無洗米を用いて貯蔵試験を実施し,精米の賞味期限を設定することを目的とした。本報では官能評価結果について検討し,前報の理化学測定結果と合わせて精米の賞味期限を検討した。その結果,理化学測定に比べて官能試験は敏感に品質劣化を検出することができたことから,官能試験の総合評価を賞味期限設定のための最重要測定項目とした。精米の賞味期限は普通精米,無洗米ともに温度25℃で2カ月,20℃で3カ月,15℃で5カ月,5℃で7カ月が適当であると考えた。

果樹園作業のための自動走行システム(第1報)
――レーザスキャナを用いたシステムのココナッツ園への適用―

バラウィッド オスカー ジュニア・ファロイ テイモロウ ラーマン・野口 伸・石井一暢

キーワード: (ROI)region-of-interest,2次元レーザスキャナ,ハフ変換,最小二乗法,単純移動変換,ココナツ園

 

 ココナッツ園における作業を想定して,レーザスキャナを航法センサとした自動走行システムの開発を研究の目的とした。本研究では,自動走行システムを開発する上で7つのプロセスが採用された。レーザースキャナによるデータ取得・処理,ハフ変換による樹列認識,取得された距離空間情報のマスキング処理,擬似的ココナツ園における試験,ナビゲーションシグナルのノイズ除去のための移動平均処理,操舵制御アルゴリズムおよび自動走行試験である。また,採用したハフ変換は樹列を直線として認識・処理し,車両はその認識された直線を走行するように操舵制御した。

移動機能を有する農業ロボットのための理論作業量の拡張

酒井 悟

キーワード: 農業ロボット,評価指標,作業環境モデル,理論作業量

 

 本論文では農業ロボットのための大域的な作業性能を評価する指標を提案する。農業ロボットの設計と実証の反復回数を低減するために設計指標は不可欠であるが,農用車両のための評価指標を農業ロボットに適用することは一般にはできない。まず,農業ロボットのための巨視的な作業環境モデルを導入する。つぎに,巨視的な作業環境モデルと規範的な作業計画に基づいて,作業空間と作業時間に関する基礎式をそれぞれ導出する。そして,基礎式を用いて農業ロボットの作業性能を評価する指標を提案する。提案された評価指標が理論作業量の拡張であることを示し,力学的自由度の高い作業機をもち,かつ,作業環境の影響が重要な農業ロボットの作業性能を評価することを確認する。

トラクタ用作業機のうね自動追従システムのためのレーザ式作物列センサの開発

申 宝明・佐藤禎稔・弘中和憲・張 樹槐

キーワード: 播種移植,中耕除草,レーザ変位センサ,ポリゴンミラー,うね合わせ,うね追従,ラインマーカ跡

 

 トラクタ用作業機のうね自動追従システムを開発するためにその核となるレーザ式作物列センサを開発した。センサは,主にレーザ変位センサと6面体ポリゴンミラーで構成され,下方のうね断面形状を非接触で計測し,コンピュータによって作物列などの水平位置を算出する。室内実験では,V字対象物と作物モデルでの精度評価を行った結果,センサはその水平位置を左右約180mmの範囲で検出可能であり,その回帰直線の決定係数は0.99以上であった。また,圃場実験での評価では作業速度0.5〜1.5m/sの場合,センサは作物列の位置を十分に検出可能であり,作業速度1.0m/sのときの位置検出誤差のRMSは22.6mmであった。

技術論文

テンサイ根部の精密計測手法に関する研究

嶋津光辰・柴田洋一・岸本 正・張 春峰・市橋沙菜

キーワード: 生育情報,テンサイ,根径,非破壊,変位計,ひずみゲージ

 

 気象情報からテンサイの収穫適期,収量を予測するために,テンサイ根部の肥大生長を非破壊に,かつ高精細に捉えるシステムの開発を試みた。土中に埋設した変位計でテンサイの根径を計測するシステムを考案し,試作した。性能試験の結果,テンサイ1個体に対し変位計2つを用いる設置方式で測定精度が高いこと,および地温等の外乱影響は極めて小さいことを得た。また,テンサイ根部の生長を測定した結果,生長特性と考えられる1日の膨張・収縮と,生長末期の肥大生長の鈍化を捉えた。今後,本システムによる計測データと気象データの蓄積,分析等により,収穫適期,収量予測の高度化が期待できる。

コールドショック処理及び電場印加処理が黒大豆の発芽吸水過程に与える影響

山下正照・谷脇 憲・金谷 豊・光瀬愛子

キーワード: 電場,コールドショック,黒大豆,発芽,胚軸長,吸水速度,タンパク質漏出度

 

 コールドショック処理及び電場印加処理が黒大豆種子の発芽吸水過程に与える影響を調べる試験を行い,もやしなどのスプラウト製品への応用について検討を行った。すなわち,コールドショック処理(−20℃・24時間)後に電場印加処理(電界強度333kV/m)を行った結果,吸水開始30分後の吸水率やタンパク質漏出度が無処理区に比べ1/2に抑えられた。また,これらのコールドショック処理後に電場印加処理を行うことにより,吸水開始5日後の胚軸長が,無処理区に比べ139.9%になった。これらのことから,黒大豆種子にコールドショック処理後に電場印加処理を行うことで,急激な吸水による種子内部の破壊が軽減され,初期の吸水速度が一定になるとともに,発芽後の生長が促進されることがわかった。