70巻5号

研究論文

可動転輪を有する農用ゴム履帯車両の振動特性の予測と評価

光岡宗司・稲葉繁樹・井上英二・福島崇志・原 定宏・岡安崇史・森  健

キーワード: 可動転輪,ゴム履帯,力学モデル,走行シミュレーション,転輪配置

 

 本研究では,可動転輪を有する農用ゴム履帯車両について,可動部のピッチ運動を考慮して力学モデルを構築し,運動方程式の導出を行った。本モデルの妥当性の検証と機体の振動特性を調べるため,実機による走行実験を行った。さらに,従来の固定転輪のみを有する農用ゴム履帯車両の実測および解析結果の比較をした。その結果,同じ転輪配置であっても転輪の違いによって,機体の振動特性は異なることが明とかなった。

非線形ばねを有する農用ゴム履帯車両の力学モデル(第1報)
――転輪と農用ゴム履帯間の非線形相互作用――

光岡宗司・稲葉繁樹・井上英二・福島崇志・岡安崇史・森  健

キーワード: ゴム履帯,転輪−ゴム履帯間相互作用,硬化非線形特性,動ばね定数,粘性減減衰係数

 

 本研究では,転輪−ゴム履帯間の静的および動的作用相互作用特性に関して研究を行った。ゴム履帯の動ばね定数,粘性減衰係数は動的粘弾性測定装置を用いて,加振周波数および初期荷重を変化して測定を行った。  その結果,転輪荷重−ゴム履帯の変位間の関係は,動的および静的な場合においても,ラグピッチ間中央付近では硬化ばね特性を持つ非線形性を示すのに対して,ラグ(芯金)付近では線形であることが示された。さらに,加振周波数が高くなるにつれて,動ばね定数は増加し,粘性減衰係数は減少することが明らかとなった。

精米の賞味期限の設定(第1報)
――貯蔵中の理化学特性の変化――

横江未央・川村周三

キーワード: 市販精米,普通精米,無洗米,理化学測定,脂肪酸度,つや,低温

 

 本研究は,市販の普通精米と無洗米を用いて貯蔵試験を実施し,理化学測定と官能試験を行い,精米の賞味期限を設定することを目的とした。本報では特に貯蔵中の精米の理化学特性の変化について検討した。貯蔵試験は−20℃,−5℃,5℃,15℃,25℃の温度で1年間行った。さらに翌年−20℃,5℃,15℃,20℃,25℃で6カ月の貯蔵試験を行った。その結果,脂肪酸度は貯蔵に伴い貯蔵温度が高いほど大きく増加したが,多くの理化学測定項目において普通精米,無洗米ともに,温度15℃以下では貯蔵終了時まで変化が認められなかった。炊飯米外観および米飯粘弾性では,貯蔵前の品質が良い米は貯蔵中の品質劣化が小さく,貯蔵前の品質が悪い米は貯蔵中の品質劣化が大きかった。

リンゴ果実表面の打撲傷の検出分光波長の検討

上野有穂・張 樹槐・高橋照夫

キーワード: 打撲傷,非破壊計測,分光反射特性,回帰直線,傾き,決定係数

 

 本研究はリンゴ果実の打撲傷を非破壊かつ変色前に検出する方法を検討したものである。リンゴ果実それぞれに打撲あり部と打撲なし部を設け,経時的に分光反射率を測定し,その傾向を統計的に比較・解析することを試みた。波長域738〜812nmでの分光反射率の回帰直線の傾きが打撲あり部と打撲なし部とで相違が確認され,それらを1%有意水準でt検定を行った結果,打撲前では有意差が認められなかったのに対し,打撲後の全測定において有意差が認められた。これにより,波長域738〜812nmでの分光反射率の回帰直線の傾きは打撲傷の有無の判別に利用可能であるとの結果を得た。

牧草地において使用するロボット車両の知能化システムの開発(第1報)
――全方位カメラを使用したロールベール検出システム――

ファロイ ティモロウ ラーマン・野口 伸

キーワード: 画像処理,全方位カメラ,マシンビジョン,位置推定,障害物認識

 

 農用ロボットのナビゲーションにおいて,障害物を認識し,適切な衝突回避動作を採ることは安全な作業を行う上で重要である。本研究では,牧草収穫作業のロボット化を目指し,全方位カメラを用いて,収穫対象でかつ障害物になるロールベールを画像から抽出し,ベールの位置推定する方法を考案することを目的とした。  画像処理により最大40m遠方まで約90%のロールベールを認識できた。さらに,判別分析を導入することで,ベール位置の推定精度を向上させた。カメラからロールベールまでの距離推定の精度はR.M.S. で1.07mであった。この精度は牧草地においてロボットがロールベールをリアルタイムに認識するに十分な精度と判断された。

ヒマワリオイルケーキのエネルギー利用に向けたペレット燃料化

小林有一・飯嶋 渡・加藤 仁・竹倉憲弘・谷脇 憲・金井源太

キーワード: オイルケーキ,ペレット,バイオマス,カスケード利用,ヒマワリ

 

 ヒマワリオイルケーキを原料としたペレット燃料を試作した。材料水分の条件により,ペレットの長さおよび,風乾後の粉化性,硬度に差異が生じた。本研究条件下での適当な材料水分値は20%w.b. であった。オイルケーキペレットの高位発熱量は20.99MJ/kgであり,灰分は木質ペレットの規格範囲内の6.07%であった。試作したペレットを,木質ペレット用の市販ペレットストーブに適用したことろ,燃焼は良好であり,木質ペレットの代替燃料としての可能性を示した。

技術論文

RTK-GPSを用いた圃場の高低差マップの精度評価

庄司浩一・山口雄司・川村恒夫・安藤和登

キーワード: 位置精度低下率(PDOP),周期変動,補正,移動平均,標準誤差,基準点

 

 一周波RTK-GPS受信機をコンバインに搭載して高低差マップを作成し,レーザーレベルで得たマップとの比較を行った。衛星配置がよい条件(PDOP<2.0)での標準誤差の最小値は,コンクリート路面の空き地で5.1mm, 水田作後の圃場で7.7mmであった。PDOPの上昇とともに測位値に周期変動が観測されたことで,標準誤差はそれぞれ最大で16.9mmおよび13.6mmとなった(PDOP≒3.0)。車両の行程間方向への範囲を広げた移動平均によって,標準誤差はコンクリート路面の空き地で最大47%,水田作後の圃場で最大34%減少した。しかしながら水田作後の圃場においては微地形情報の消失を考慮する必要があり,この指標として誤差高低変動比を最小にする移動平均範囲は,6.0m×6.0mであった。コンクリート路面の空き地において,基準点の高さを3〜4分毎に更新して補正することにより,PDOPが高い時間帯で標準誤差は17%減少した。

産業用無人ヘリコプタ搭載カメラによる斜め観測画像を用いた圃場マップの作成

横堀 潤・丹羽勝久・野口 伸

キーワード: 産業用無人ヘリコプタ,リモートセンシング,幾何補正,小麦倒伏

 

 本研究の目的は,産業用無人ヘリコプタをプラットフォームとして圃場を撮影する場合の所要時間と画像データ数を低減することである。そのため,圃場全体を1枚の画像に撮影するようにカメラに俯角をつけた画像取得方法に着目し,幾何補正を行った。さらに,上記の幾何補正法を用いた作物生育図として,小麦倒伏地図の作成を試みた。その結果,俯角をつけた撮影法による幾何補正手法として,圃場4隅点を利用した2次元射影変換による幾何補正法が有用であった。また,俯角をつけた撮影方法による幾何補正手法を利用した小麦倒伏判別モデルの正判別率は98.0%であり,そのモデルから作成した小麦倒伏図は実際の倒伏の状況を的確に捉えていると判定された。