70巻4号

研究論文

近赤外分光法を用いたモミ単粒の水分とタンパク質の推定に関する研究

松崎優之・飯田訓久・梅田幹雄

キーワード: 近赤外分光法,PLS回帰分析,Lambert-Beerの法則,レーザ変位計,厚み補正

 

 本研究は,波長750〜1000nmの近赤外光を用いて,モミの水分とタンパク質含有量の非破壊測定を目的として,モミ単粒の透過スペクトルの測定装置を試作し,PLS回帰分析によって検量線を作成した。作成した水分検量線の検証を行った結果,R=0.943,RMSEP=0.788%w.b. であった。タンパク質含有量に関しては十分な精度の検量線を作成できなかった。また,モミの厚みをレーザ変位計で測定して,透過スペクトルの光路長補正を行い,水分推定の補正を試みたが,本研究の範囲では効果はみられなかった。

農耕タイヤの動荷重の測定および周波数分析

ナン ヌエン ヴァン・松尾隆明・甲本達也・稲葉繁樹

キーワード: 動荷重,ひずみゲージ式トランスデューサ,土壌断面,タイヤ特性,周波数分析

 

 本研究では,様々な土壌条件や荷重条件ならびに空気圧における定常走行状態の2WDトラクタの駆動輪の垂直動荷重を測定した。今回開発した土壌の垂直反力計測法によって走行時の車輪垂直荷重をリアルタイムで計測した。実験データの時間及び周波数領域から,土壌特性・車輪特性(空気圧,不均一性,ラグ数など)は車輪に作用する動荷重に大きく影響してることが分かった。周波数解析より車輪とタイヤラグに起因する荷重変動は主に1次成分と2次成分を有することが分かった。

流量センサを用いた2番還元流量制御

飯田訓久・木村 敦・姚  勇・錦織将浩

キーワード: 精密農業,自脱コンバイン,穀粒流れモデル,2番還元流量センサ,穀粒品質

 

 本研究では,自脱コンバインの2番還元流量を目標値に調節する制御システムを開発した。この制御システムでは,インパクト式流量センサで検出した2番還元流量に応じて,チャフシーブの開閉制御を行い,2番還元流量を調節することができた。  また,2番還元流量制御による選別性能を評価するため,脱穀試験を行ってグレーンタンクに回収された穀粒品質と3番口穀粒飛散について測定を行った。この結果,穀粒損傷率,枝梗付着粒率,穂切粒率,および3番口穀粒飛散率は,それぞれ1.31%,2.77%,1.44%,3.98%以下であった。

技術論文

イチゴの品質保持技術に関する研究(第2報)
――果実の包装形態が品質に及ぼす影響――

紺屋朋子・大森定夫

キーワード: イチゴ,包装形態,包装容器,果柄,品質,傷

 

 イチゴ果実に損傷が生じにくいハンドリングや包装技術の開発に資することを目的として,慣行の包装形態におけるイチゴの品質低下について調査するとともに,果実に触れないように,果柄を把持して取り扱う新たな包装形態を検討した。その結果,慣行の包装形態では,下段の果実に上段の果実の荷重が作用して生じた損傷のほか,果実同士やパック面,フィルムとの接触による損傷も多く観察された。また,収穫時から果柄を把持して取り扱うことで,果実への損傷を軽減できることを確認した。さらに,考案した新たな包装形態は,振動が加えられても果実同士が接触せず,品質保持に有効であることを確認した。

コンバインの湿材適応性拡大に関する研究(第1報)
――揺動選別部はっ水方法の検討――

栗原英治・日高靖之・杉山隆夫・澁谷幸憲

キーワード: 自脱コンバイン,揺動選別部,はっ水加工,湿材

 

 本研究は,自脱コンバインの湿材適応性拡大を図ることを目的とした。本報では,湿材収穫作業時の選別性能を向上させる目的で,はっ水処理を施した揺動選別部の効果について述べた。揺動選別部へのはっ水加工やはっ水性樹脂の採用により,従来機よりも優れたはっ水性能を示し,湿材収穫作業時における排塵口損失が低減し選別性能が向上した。また,ほ場において約8haの耐久性試験を行った結果,はっ水加工の顕著な剥がれや著しい摩耗は確認されなかった。以上より,自脱コンバインの湿材適応性拡大には揺動選別部へのはっ水加工が有用であった。

コンバインの湿材適応性拡大に関する研究(第2報)
――送塵弁開度制御機構の検討――

栗原英治・日高靖之・杉山隆夫

キーワード: 自脱コンバイン,脱穀部,送塵弁制御,湿材

 

 本研究は,自脱コンバインの湿材適応性拡大を図ることを目的とした。本報では,湿材収穫作業時の脱穀所要動力を低減させる目的で,脱穀処理物の流量に応じて送塵弁開度を調節することができる弾性部材を用いた送塵弁開度制御機構について述べた。送塵弁開度制御機構を備えた自脱コンバインを用いてほ場試験を行った結果,湿材収穫作業時における脱穀部の詰まりの発生が抑制され,脱穀部所要動力が日平均で7%程度低減した。また,本機構を用いた場合の排塵口損失及び排稈口損失は,送塵弁制御無しの場合と比較しても増加せず,穀粒口の品質にも悪影響を及ぼさなかった。以上より,自脱コンバインの湿材適応性拡大には送塵弁開度制御機構が有用であった。

イチゴの高密植栽培のための移動栽培装置の開発

吉田啓孝・山本聡史・林 茂彦・岩崎泰永・漆山喜信

キーワード: イチゴ,移動栽培ベンチ,高密植,養液栽培,加速度,果実挙動

 

 本研究は,イチゴを高密植に栽培して収量の増大を図ることを目的として,栽培ベンチを水平循環させる縦移送ユニットと横移送ユニット,頭上かん水ユニット,底面給水ユニットおよび防除ユニットから構成される高密植移動栽培装置を開発した。開発した高密植移動栽培装置は,1つの栽培ベンチ上に13個の栽培ポットを搭載でき,10aあたりの栽植本数は12,500本であった。基本性能を評価した結果,1サイクルあたりの所要時間は71.2秒で,その際の消費電力量3.67Whであった。移動中の栽培ベンチにかかる加速度は,横移送ユニットの停止時および,横移送ユニットと縦移送ユニットの乗り移り時に最大となり,およそ1.47m/s2 (0.15G)であった。また,着果果実は横移送時に揺れが最大となったものの果実同士の接触はなく,イチゴを高密植で移動栽培できる可能性が示された。

傾斜地果樹用多目的モノレールの開発(第3報)
――支線式の開発――

金光幹雄・山本聡史・安食惠治・久保田興太郎・長木 司・ 小川幹雄・久保田太郎・藤原 惠・池田彰美・山内嘉人・ 田中健治・米山徹朗・藤井初郎・大塚豊史

キーワード: 急傾斜地果樹園,モノレール,遠隔操作,薬液散布,施肥,収穫物運搬

 

 35°以下の階段園等の急峻な傾斜地果樹園を対象として,傾斜縦方向に設置した主軌条及び等高線方向の樹列2〜3列おきに園内くまなく設置した副軌条から構成され,主軌条の乗移り台車により,副軌条の作業機を副軌条間で移動する支線式傾斜地果樹用多目的モノレールを開発した。副軌条のけん引車は,前後進や停止,薬液散布方向の調節や散布の開始と停止等が遠隔操作できる。園地に隣接した農道に動力噴霧機とタンクを定置して,主・副軌条のホース巻取装置により薬液を供給する機能を装備した。これにより,防除作業を23a/h, 肥料散布作業を18a/h, 収穫箱運搬作業を85箱/h・人で行った。

低濃度多量散布における静電散布装置の帯電性能

山根 俊・宮崎昌宏

キーワード: 多量散布,付着率,静電散布,一流体ノズル,比電荷

 

 低濃度多量散布における付着率の良い静電散布装置の開発を目標として,動力噴霧機用一流体ノズルに環状誘導帯電電極を組み合わせた散布装置を試作し,噴霧液滴の帯電特性を明らかにした。電極印加電圧+4kV以下では電極からの放電や漏電が少なく,電圧上昇と共に比電荷が増加した。電極と噴霧液滴間のギャップ距離が小さいほど比電荷は大きかった。ノズル吐出量が増大すると比電荷は減少した。本装置は吐出量0.56〜2.6L/minの多量散布液滴に対して,−0.2〜−0.45mC/kgの比電荷を帯電させることができた。

自動連続土壌サンプリングシステムの開発

斎藤正博・片岡 崇・岡本博史・端 俊一

キーワード: 精密農業,GPS,土壌,土壌マップ,GIS

 

 本研究では耕うん作業と同時に土壌採取が行える自動連続土壌サンプリングシステムを開発した。ロータリ耕うん機に取付け,GPSの位置情報に基づき,予め計画した土壌採取位置で,耕うん,砕土された土壌を採取缶に採取・保管すると共に,土壌水分計を組込み,リアルタイムで含水比測定を可能とした。さらに,GPSの位置情報と土壌データを併せて保存することで土壌状態を容易にマップ化することが可能である。本システムで170m×30mのほ場で,長辺方向に10m×5m間隔を計画し,耕うん作業と同時に土壌採取を行なったところ,平均作業速度0.3m/sの耕うん作業に要した約50分で済んだ。

速  報

ウンシュウミカン隔年結果現象の予測
――線形ダイナミクスを用いた1年先の果実数予測手法の提案――

野口優子・酒井憲司・浅田真一

キーワード: ウンシュウミカン,隔年結果,ダイナミクス,予測