70巻3号

研究論文

貯蔵米の品質維持に対するヒートショック処理効果の研究
――白米について――

グエン クォク トアン・後藤清和

キーワード: マイクロウェーブ加熱,ヒートショック処理,白米貯蔵,米品質,熟成過程,老化過程

 

 白米(コシヒカリ,2005年岐阜県産)に対して熱処理を行い,その後の貯蔵中における品質維持に対する効果を検討した。加熱機器として,一様加熱が可能な熱源としてマイクロウェーブを使用し,加熱温度を60,70,80℃,それぞれの温度について保持時間を0,1,3分に設定した。熱処理後,40℃の過酷な条件で6ケ月間貯蔵し,経時的に各種の品質指標の変化を測定した。無処理の対照区については高温貯蔵のため,熟成過程(aging)およびそれに続く老化過程(deterioration)は次のとおり促進された。つまり,炊飯時の容積膨張率は初期に増加し,その後ゆるやかに減少する傾向を示した。加熱吸水率,可溶性糖含量,総デンプン含量および可溶性アミロース含量は処理後の1〜2ケ月で急激に減少し,その後は低い値で推移した。滴定酸度,総アミロース含量,不溶性アミロース含量はいずれも増加した。 一方,ヒートショックを受けた米も上記のような傾向を示すが,その変化は特に処理後の1〜2ケ月において遅延した。60℃と70℃でのヒートショックが熟成,老化過程の遅延に効果的であることが明らかとなった。今回の実験の範囲では,処理温度が同じ場合,温度の保持時間が長いほどその効果が大きい傾向が見られた。実験結果を総合的に判断すると,ヒートショックは貯蔵中の白米の品質管理に有効であることがわかった。

穀粒群が受ける空気抵抗に関する研究

古野裕子・松井正実・井上英二・森  健・岡安崇史・深田龍介

キーワード: 穀粒群,飛行速度,粒子画像流速測定法,空気抵抗,補正係数,終末速度

 

 穀粒群が受ける空気抵抗の解明は,風選別メカニズムを研究する上で重要である。コンバイン脱穀部に流入する穀粒流量は作業速度とともに時々刻々変化するため,穀粒群が受ける空気抵抗と穀粒流量の関係を明らかにする必要がある。  本研究では,流体計測で使われる粒子画像流速測定法により籾群の飛行速度を測定した。その結果,空隙率の低下に伴う空気抵抗の影響が明らかとなった。その影響を考慮するための補正係数を理論的考察および実験より導出した。穀粒群の終末速度を算出し実験結果と比較したところ,導出した補正係数の妥当性を確認した。

ロボット車両を利用した草地空間情報化に関する研究(第2報)
――レーザスキャナを用いた効率的な地形測量法――

姜 太煥・横田雅彦・石井一暢・海津 裕・野口 伸

キーワード: ロボットトラクタ,レーザースキャナ,GIS,RTK-GPS,地形測量

 

 本研究は前方180°にわたり対象物の距離と角度が計測可能なレーザスキャナとRTK-GPSを利用した地形測量システムを開発することを目的した。ロボットトラクタにレーザスキャナを搭載し,ほ場を2m間隔で自律走行を行い,ほ場位置に対する地形データを収得した。レーザスキャナを用いて測定した地形データの精度はロボットトラクタの走行軌跡から基準となる地形データを算出して比較し検証した。その結果,ほ場面積1.2haで,2m間隔でのロボットトラクタの走行による地形測量では作業に74分要したのに対して,スキャン幅を4,8,12mと広げると,それぞれ誤差の平均は4.3,5.6,5.0cm,誤差の標準偏差は5.4,5.7,6.3cmとなり,測定精度はスキャン幅の増加によって多少低下したが作業時間は各々25,15,11分に短縮された。以上の結果から開発した測量システムはほ場の地形測量において高精度,高能率なシステムと判断された。

数種青果物に対する呼吸に基づくアスコルビン酸含量変化予測モデルの適用性

チャイラット テーチャブティポーン・中野浩平・前澤重禮

キーワード: アスコルビン酸,呼吸速度,モデリング,Brassica, Spinacia, Capsicum

 

 先に提案した呼吸量を関数としたブロッコリーの総アスコルビン酸(AA,還元型および酸化型アスコルビン酸の総量)含量変化予測モデルの広範な青果物における適用性を検証するため,キャベツ,カリフラワー,ホウレンソウおよびピーマンを対象に,種々の温度環境(5,10,20,30℃)に貯蔵した際の,AA含量変化とCO2排出速度との関係について検討した。AA含量の初期値に対する割合(AArel, %)を積算呼吸量(ARCO2 )に対してプロットした結果,キャベツ,カリフラワーおよびホウレンソウのAArelARCO2 の増加に伴い減少し,これらの関係は先に提案したモデル式(AArel =100exp(−βARCO2 ))によってうまく表現できた。一方,ピーマンでは上記の関係は認められず,モデルの限界性が示された。また,回帰係数(パラメータβ)の同等性について統計解析したところ,Brassica種であるブロッコリー,キャベツ,カリフラワーの間では有意差がなかったが,Spinacia 種であるホウレンソウのβ値は,他の品目と有意に異なった。本研究により,提案したモデルはブロッコリーのみならず他の品目にも適用できることが示され,これら品目の最適な流通設計を行うための有用なツールとなろう。

技術論文

耕うんロボットの適応性と信頼性の向上(第2報)
――無人作業方法の適応性拡大――

松尾陽介・行本 修・野口 伸

キーワード: 無人作業,経路計画,慣行作業,斜め作業,回り作業,耕うんロボット

 

 実用レベルの無人ロータリ耕を行うことができる耕うんロボットについて,ほ場や作業に対する適応性向上を目標に,無人作業における作業重複幅の設定や作業経路の履行順等を選択できるように作業ソフトの改良を行った。また,区画長辺に対して斜めの往復直進作業を行う「斜め作業法」と区画4辺に平行な直進作業を区画全面に対して行う「回り作業法」を提案し,その作業ソフトの開発を行った。作業試験の結果,いずれの作業法についても良好な無人作業が行えることを確認した。

メタノリシス反応と熱分解を併用した軽油代替燃料製造技術の開発(第2報)
――グリセリン生成抑制条件の検討――

飯嶋 渡・小林有一・竹倉憲弘・谷脇 憲

キーワード: バイオマス液体燃料,軽油代替燃料,超臨界メタノール,グリセリン,熱分解,メチル化

 

 副生グリセリン処理に要する製造コスト低減を目的として,グリセリン生成抑制,およびメチル化または分解による他成分へ変換のための反応条件を検討した。条件の決定には生成物のグリセリン,モノグリセリド,ジグリセリド,トリグリセリド,および脂肪酸メチルエステルの各含有率,生成物組成,粘度を基準とした。その結果,本試験装置においては,反応温度440〜460℃,油脂 : メタノール混合比2 : 1(v/v)が適当な反応条件と考えられた。

バイオガストラクタのための二燃料機関制御アルゴリズムの開発(第1報)
――二燃料機関の基本性能と試作アルゴリズム――

ニザル ジャベル・塚本隆行・野口 伸

キーワード: バイオガス,軽油,二燃料機関,制御アルゴリズム,燃料代替率,正味熱効率

 

 環境負荷低減を目的として,バイオガス・軽油二燃料機関による農用トラクタの開発を行った。本研究では,バイオガス・軽油二燃料トラクタ機関について,バイオガス供給量を自動制御するバイオガス供給アルゴリズムの開発を目的とした。  二燃料運転によるディーゼル機関の基本性能について,特にバイオガスと軽油の熱量換算の燃料消費率(BSHC)及び燃料代替率の検討を行った。二燃料運転の基本性能を把握した後,吸気管内圧力(MAP)を機関負荷推定のパラメータとして,バイオガス供給制御アルゴリズムの試作と性能試験を行った。試験の結果,試作アルゴリズムは安定して機関回転数と負荷に応じてバイオガス供給量を制御できた。

傾斜地果樹用多目的モノレールの開発(第1報)
――回行式の開発と耐久性の評価――

金光幹雄・山本聡史・安食惠治・久保田興太郎・長木 司・ 小川幹雄・久保田太郎・藤原 惠・池田彰美・田中健治・ 米山徹朗・藤井初郎・大塚豊史

キーワード: 急傾斜地果樹園,モノレール,薬液散布,施肥,収穫物運搬

 

 30°以下の急傾斜地果樹園での薬液散布,施肥,収穫物の運搬等の各種作業を省力・軽労化するため,傾斜方向の縦方向に設置した主軌条及び等高線方向の樹列2〜3列おきに園内くまなくS字状に設置した副軌条及び作業機で構成する回行式傾斜地果樹用多目的モノレールを開発し,カンキツ園において27〜100時間の耐久性試験を実施した。その結果,110kg積載時の荷物台車の硬質樹脂製ローラの摩耗量は,走行距離10km当たり最大0.15mmであった。

傾斜地果樹用多目的モノレールの開発(第2報)
――回行式の姿勢安定性と作業性能――

金光幹雄・山本聡史・安食惠治・久保田興太郎・長木 司・ 小川幹雄・久保田太郎・藤原 惠・池田彰美・田中健治・ 米山徹朗・藤井初郎・大塚豊史

キーワード: 急傾斜地果樹園,モノレール,薬液散布,施肥,収穫物運搬

 

 回行式傾斜地果樹用多目的モノレールの姿勢安定性,薬液散布時の付着性能,薬液散布作業,施肥作業,収穫作業における作業能率を調査した。姿勢安定性として,台車の進行方向に対しロール軸方向にモーメントを加え,台車フレームの傾斜等を計測した結果,833Nmで15°傾斜し,980Nmで軌条支持金具が破損した。薬液散布時の付着度は,樹列が3列で軌条に面していない樹列でも75%程度で,スプリンクラと比較し,特に葉裏の付着で顕著な差が確認された。薬液散布作業,施肥作業におけるほ場作業量は,それぞれ18〜27a/h, 20〜27a/hであり,収穫時の等高線方向の運搬作業能率は2.2t/hで,慣行作業と比較し,能率が大幅に向上した。

速  報

ハイパースペクトルカメラ利用による土地利用別の土壌炭素の評価

牟 英輝・馬 稚c・小松崎将一・清水 浩・岡本博史

キーワード: 土地利用,PLS回帰,土壌炭素,スペクトルカメラ

接地した導電性ネットによる帯電農薬粒子の遮へい

西村 亮・西守克己・石原永伯

キーワード: 農薬ドリフト,静電農薬散布,ポジティブリスト制度,帯電液滴,導電性ネット

農用車両用ナビゲータの開発

濱田安之・松尾陽介・山下貴史

キーワード: 農用車両,ナビゲーション,経路誘導,GPS,ソフトウエア