69巻6号

研究論文

イチゴ果実硬度の非破壊測定に関する基礎的研究(第1報)
――果実硬度と細胞壁構成成分の関係――

柏嵜 勝・永末 健・五月女英平・中島教博・大森定夫

キーワード:イチゴ,果実硬度,非破壊計測,細胞壁構成物質,ペクチン類,アルコール不溶性固形物,塩酸可溶性ペクチン

 

 イチゴ果実は表皮が薄く,果肉が軟弱であるため,果実の硬さが取扱いや輸送,日持ち,食味等に大きく影響を及ぼす。輸送等の状況に適した硬さのイチゴ果実を選別することは,より高品質な状態のイチゴをより遠隔地へ出荷することが可能になる。本研究は,イチゴ果実硬度の非破壊自動計測方法の開発を目的とし,本報では植物細胞壁の構成成分であるペクチンに着目してイチゴ果実硬度との関係を明らかにした。即ち,イチゴ果実を着色度合ごとに分け,果実硬度を測定した後,個々のイチゴ果実のペクチン類を抽出,定量した。その結果,アルコール不溶性固形物(AIS)および塩酸可溶性ペクチン(HSP)の含有量と果実硬度との関係が相関係数で0.814および0.875であり,強い相関がみられた。

技術論文

太陽光発電エネルギーで作動する遮光カーテン開閉装置の開発

谷野 章・古江 彩・森山友幸・井手 治・土屋 和

キーワード:太陽電池,アモルファスシリコン,エネルギー,園芸施設,遮光

 

 定格4.8Wのアモルファスシリコン太陽電池および5時間率容量28Ahの蓄電池で構成される独立電源システムで遮光カーテンをハウス内気温に応じて自動開閉させるシステムを開発した。2004年7月および8月に福岡県農業総合試験場の研究ハウス(間口6m×奥行20m)で開発したシステムの実証試験を実施した。試験期間中,電力不足になることなく,遮光カーテンはハウス内気温に応じて1日あたり0から2往復作動した。0往復と2往復はそれぞれ1日ずつであり,他の日は1往復であった。蓄電池は期間中ほぼ満充電で推移したことから電源の容量は遮光カーテンの作動のためには充分な規模であった。遮光カーテンの動作により,著しい高温時には顕著にハウス内気温の上昇が抑制された。

最小耕うんにおける溝切り器の圃場性能評価(第1報)
――イネ残さが条播性能に及ぼす影響――

イサラー チャオラカム・小池正之・瀧川具弘・余田 章・長谷川英夫・バンチョー バハラヨーディン

キーワード:イネ,溝切り器,作物残さ,最小耕うん,条播性能

 

 本研究は,4種類の溝切り器を供試して,栽培現場で解決策が待たれている,イネの残さ散布密度と土壌含水比が,条播性能に及ぼす影響について実験的検討を行ったものである。供試土は砂壌土とし,イネ刈株跡地で播種性能試験を実施した。まず,生成した播種溝壁面の土壌硬度と残さ散布密度との関係を解明するため,供試器の性能評価指標の要因のひとつとして土壌硬度を採り上げることの妥当性を検討した。予備試験の結果,両者は評価指標要因として利用できることを確認した。波形円板とV字形円板の通過前後の土壌貫入抵抗は,いずれの残さ散布密度においても増加する傾向を示し,生育上の障害となる可能性が指摘できた。一方,改良形のVRA形及びVRB形円板では,土壌貫入抵抗の増加分は残さ散布密度に関係なく極めて小さく,予測式による土壌貫入抵抗の模擬においてもそれぞれの硬度変化状況は定量的に裏付けられた。円板の土への切込み及び播種溝の成形性能に関わる円板の設計指針についても検討した。

最小耕うんにおける溝切り器の圃場性能評価(第2報)
――残さ処理と条播性能に関わる検討――

イサラー チャオラカム・小池正之・瀧川具弘・余田 章・長谷川英夫・バンチョー バハラヨーディン

キーワード:イネ,溝切り器,残さ処理,最小耕うん,ヘアピン状残さ

 

 前報に引続いて,4種類の溝切り器を供試し,残さ処理部が種子の出芽・生育環境の調整に及ぼす影響について,実験的検討を行った。その結果,残さ処理部を装着していない波形及びV字形円板の播種溝の内部には,ヘアピン状残さが相対的に多く観察され,とりわけ波形円板では溝周辺の断面形状の変化が少なく,種子と土壌の接触が阻害される状況が現れた。これは,ヘアピン状残さの溝への移動とそれに伴う土の切込み効果の減少に起因する機械的現象と考えられた。残さ処理部の作業効果は,VRA形及びVRB形円板において顕著に現われた。本処理部の残さ排除機能の有効性は高く,溝形状の成形にも良好な作業性が認められた。VRB形は,残さ処理機能においてVRAよりも更に優れており,良好な現場適用性を有することが結論づけられた。東北タイの天水田地帯は砂質土壌で占められている状況に鑑み,これまでの研究報告を踏まえた本成果の適応の可能性についても検討した。

GPS速度計を用いた粒状物散布機の制御システム

帖佐 直・大嶺政朗・深山大介・森本英嗣・柴田洋一

キーワード:GPS速度計,搬送波位相,粒状物散布機,VRT,精密農業

 

 本研究の目的は,実用的な可変制御技術を確立することである。  GPS速度計によって制御される粒状物散布機の可変制御システムを開発した。供試したGPS速度計は1周波の単独測位システムであるが,基線解析によらず,複数の衛星から受信する搬送波の位相変化から速度を算出するものである。  開発した粒状物散布機の制御システムについて,その精度試験を行なうとともに実際の施肥作業へ適用した。散布量は設定した値で適切に変化し,可変位置の誤差は0.7m未満,散布量の誤差は10%未満であった。開発したシステムは単独測位GPSを用いて高精度な制御を実現する技術として,実用化が期待される。

穀粒品質モニタリングのための試料採取装置の開発

帖佐 直・大嶺政朗・細川 寿・太田和弘・渡辺政一郎・柴田洋一

キーワード:品質,分析試料,採取,収穫,自脱コンバイン,精密農業

 

 品質解析のための試料を効率的に採取するために,通常の収穫作業時に自脱コンバインに装着して使用する試料採取装置を開発し,開発装置により適切に試料採取が行われているか否かについて検討した。  グレンタンク内での穀粒拡散時の風選の作用について検討するため,グレンタンク内の複数の場所で試料を採取した。開発装置により採取される位置での試料の理化学特性は,全体の収穫物の平均値とほぼ同等の値であった。  二番還元の影響を調査するため,開発装置を用いて収穫時に採取された試料とその採取位置に対応する場所で手刈りした試料とを比較した。開発装置により採取された試料のタンパク含量の二乗平均平方根誤差は0.35で,圃場内の品質変動を把握するうえでは,充分に小さな誤差であった。