69巻5号

研究論文

牧草成分の推定システムの開発
――ハイパースペクトルイメージングセンサを利用した牧草成分の推定――

鈴木由美子・田中勝千・加藤 亘・岡本博史・片岡 崇・端 俊一・嶋田 浩・杉浦俊弘・嶋 栄吉

キーワード:ハイパースペクトルイメージングセンサ,リモートセンシング,牧草,化学分析値,重回帰分析,検量線の評価指数

 

 圃場段階における牧草の成分を推定するシステムを開発した。トラクタにハイパースペクトルイメージングセンサを搭載したセンシングシステムにより得られたスペクトルデータを用いて,重回帰分析により6種の牧草成分を推定した。交差検証法による推定値の標準誤差(SECV),検量線による推定値と化学分析値との決定係数(R2)および平均誤差(Bias)により推定精度を検討し,その後EI法により検量線を評価した。その結果,本センシングシステムを利用した牧草の成分推定の可能性が示された。

ラオスの農業機械化と制度的システムに関する工学的特質(第1報)
――かんがい農法における耕うん技術の特色――

クーネ サックバヴォン・小池正之・瀧川具弘

キーワード:農業機械化,制度的システム,稲作耕作技術,かんがい農法,ラオス

 

 本研究は,ラオス国サバナケット県の一集落を調査対象として,かんがい農法における在来耕うん技術の特色を調べ,その工学的特性を明らかにすることを目的とした。判明した結果は,以下のとおりである。
(1) ラオスで農業機械化の気運が生じたのは20年程前のことであり,機械導入はかんがい地域に集中しながら広がっていく傾向をたどった。
(2) 国策である新経済機構(NEM)の施策以前には,天水田農業が畜力主導で行われていたため,市場主義経済の進展に伴う農産物需要への対応が円滑にいかない状況が発生した。農産物増産の動きに対応する形で,農業機械化の必要性が唱えられ始めたことが指摘できた。
(3) NEM施行後,水利用組合(WUA)が結成され,多毛作化が推進された技術的背景について論及した。
(4) 調査地の耕うん作業形態を機械所有形態の観点から3グループに分類し,それぞれのグループの営農上の特色について検討した。特に,萌芽的段階にある賃耕方式について,その実情と問題点について検討した。

ファジィ・ニューラルネットワークを用いた装軌式車両沈下の知的予測法

レニー サウリア・陳山 鵬・鬼頭孝治・伊藤信孝

キーワード:圧力―沈下,装軌車両,可能性関数,ファジイ・ニューラルネットワーク

 

 オフロード走行用の履帯式車両の走行装置を設計する場合,走行装置の沈下量を予測することが必要である。これまでにプレートを用いて沈下量を予測するための経験式や実験式がBekkerやReeceらによって提案されている。本研究では,これら従来式の精度を評価するために,マニピュレータを利用して,圧力―沈下量を精密に計測する装置を開発した。この装置を用いて実験した結果,従来の経験式や実験式が全ての土条件下において有効でないことが分かった。そこで,本論文では,圧力―沈下量をより正確に予測するために,ファジィ・ニューラルネットワークによる圧力―沈下量の知的予測法を考案した。また,沈下量のバラツキも予測・表示するために,可能性理論により沈下量の可能性関数を求め,土の特性パラメータと接地圧をファジィ・ニューラルネットワークへ入力すれば,沈下量の可能性関数が出力される方法を提案した。最後に実際のデータを用いて提案した方法の有効性を検証した。

ウリ科野菜用接ぎ木装置の給苗自動化に関する研究(第2報)
――台木用子葉方向揃え機構の検討――

小林 研・笹谷定夫

キーワード:半自動接ぎ木装置,自動給苗,ウリ科野菜,カボチャ,子葉展開方向,子葉方向揃え

 

 ウリ科野菜用半自動型接ぎ木装置を対象とした自動給苗装置開発のために,同装置に組み込む台木の子葉方向揃え機構について検討した。レーザセンサを用いた非接触方式,固定平板をガイドとした接触方式及び両方式を組み合わせた子葉方向揃え試験装置をそれぞれ試作し,台木用カボチャを供試して精度試験を行った。その結果,非接触方式または接触方式単独では,第1報で明らかにした子葉方向揃え機構の必要精度(所定の方向に対して±35°以内)を満たすことは困難と判断されたが,両方式を組み合わせて2段階の処理を行うことにより,子葉展開方向を目標方向に対して±30°以内とすることができた。

小容積堆肥化実験装置を用いた家畜ふんの間欠通気実験

木村俊範・清水直人・ジョコ ヌグロホ・佐藤圭介

キーワード:家畜ふん,コンポスト化,小規模リアクタ,間欠通気,効率

 

 コンポスト化プロセスの省エネ化によるコストの低減を目指し,小容積堆肥化実験装置を用いた間欠通気の効果を検証した。コンポスト化の進行状況に影響を与える因子としては,通気中の通気量,通気時間と休止時間との比,および間欠1サイクルの所要時間などが主要なものと考え,これらを変化させて実験した。
 その結果,改善効果を得るための適正間欠通気条件の選択にとって示唆的な知見が得られた。また結果の動向は連続通気反応解析の知見ともほぼ整合するものであった。

収量モニタリング機能付きコンバインの開発(第2報)
――測定システムとマップ作成――

牧野英二・杉山隆夫・市川友彦・浜田健二・川中道夫

キーワード:コンバイン,収量モニタリング機能,収量,水分,マップ,精密農業

 

 試作した収量コンバインを供試して,収穫情報測定およびマップ作成に必要な時間遅れの測定,質量測定における傾斜補正方法および検量式の作成,GPSを利用しない簡易な位置情報測定の精度確認を行った。この結果,時間遅れは質量測定および水分測定ともに15.0秒であった。また,ロードセル近接に設置した傾斜センサによる傾斜補正によって質量測定精度の向上が確認され,水稲,小麦ともにR=0.99以上の検量線を得ることができた。位置情報測定は,収穫作業下でほぼ1m以内の精度で測定することができた。さらに,収量コンバインを供試して水稲収穫を行い,収量マップ,水分マップを作成した。

収量モニタリング機能付きコンバインの開発(第3報)
――水稲および小麦の収穫情報測定とマップ――

牧野英二・杉山隆夫・市川友彦・浜田健二・川中道夫

キーワード:コンバイン,収量モニタリング機能,収量,水分,マップ,精密農業

 

 実際の収穫作業下における収量モニタリング機能付きコンバインの測定性能を調査した結果,質量については,水稲,小麦ともに試験結果の90%が誤差5%以内(最大でも8%以内)と高精度であった。水分についても,水稲で相関係数R=0.99,予測標準誤差SEP=0.98,小麦でR=0.98,SEP=1.28と高精度であった。また,質量マップ,水分マップ,水分15%換算した10a当たりの収量マップの3つのマップを同時に解析することにより,施肥計画や土壌改善などのための情報取得が適切に行えることが示された。