69巻1号

研究論文

コンバイン選別部の穀粒流れモデル

姚  勇・飯田訓久・野波和好・木村 敦・錦織将浩

キーワード: 精密農業,自脱コンバイン,収量モニタ,流量センサ,搬送時間,分配率

 

本研究では,自脱コンバインの選別部に関して,搬送による時間遅れとチャフシーブにより1番搬送系と2番搬送系に分配される穀粒の分配率,及び3番穀粒損失率でモデルを作成した。この穀粒の流れモデルでは,入力を脱穀されてグレーンパン上に落ちる穀粒流量とし,出力はグレーンタンクへ流入する穀粒流量とした。パラメータ同定するための室内実験では,3番穀粒損失は十分小さいとして無視し,選別部に一定流量で穀粒を供給したときの1番搬送系と2番搬送系の穀粒流量を2つの流量センサを用いて測定した。この結果,供試コンバインの各搬送での時間遅れと,チャフシーブのフィン開度に対する分配率が定量的に明らかになった。

耕耘土壌の破砕度計測への画像情報の適用

伊藤博通・北沢希三子・笈田 昭・中嶋 洋・宮坂寿郎・泉 貴仁

キーワード: 土壌破砕度,画像特徴量,分散分析,多重比較,重回帰分析

 

本研究の目的は土壌破砕度のリアルタイム計測を可能にするために画像情報の適用可能性を検証することである。破砕度は篩い分け試験によって得られる加重平均粒径によって定義した。26種類の加重平均粒径をもつ土塊を用意し,これらの表面画像から34種類の画像特徴量を測定した。各画像特徴量について加重平均粒径を水準とする1元配置の分散分析を適用した。粒径間で特徴量数値に有意差があるかどうかを確認することにより破砕度測定に有効な特徴量を抽出した。これらの特徴量を使用して加重平均粒径を推定する重回帰式を導出した。回帰式の寄与率は0.94以上となり土壌破砕度リアルタイム測定への画像情報の適用可能性が示された。

施肥量による食味成分の変動及び隔測による推定

柳 讚錫・村主勝彦・飯田訓久・梅田幹雄

キーワード: 窒素肥料,アミロース,タンパク質,リモートセンシング

 

基肥と穂肥を多段階施用した試験区1(40区画,面積0.2ha)と,基肥を多段階に,穂肥を生育量に応じて可変施用した試験区2(40区画,面積0.2ha)を対象とし,窒素施肥量による食味成分(アミロースとタンパク質)の変動を調査した。食味成分と食味値は負の相関を,食味成分と穂肥量は正の相関を示した。出穂期のマルチ及びハイパースペクトルリモートセンシング画像と試験区1のデータで食味成分推定モデルを作成し,試験区2のデータを適用してモデルの検証を行った。マルチ及びハイパースペクトル推定モデルのRMSEC(RMSEP)は,アミロースが0.774(0.883)及び0.117(0.122)として,タンパク質は0.862(0.965)及び0.136(0.121)であった。

自律走行車両に搭載した2次元レーザスキャナのキャリブレーション法の開発

バラウィッド オスカー ジュニア・石井一暢・野口 伸

キーワード: 2次元レーザスキャナ,ロボットトラクタ,ハフ変換,最小二乗法

 

本研究は果樹園のような環境で自動走行させるために,自動走行車両に搭載した2次元レーザスキャナの正確な取付位置を取得できるセンサキャリブレーション法の開発を目的とした。センサ前方に存在する対象物までの距離と角度を出力できるレーザスキャナについて航法センサとしてのキャリブレーション法を検討した。開発したキャリブレーション法はハフ変換,回転座標変換,最小二乗法を組み合わせたものである。開発したキャリブレーションを行った結果,レーザスキャナの設置位置を車両座標系のもとで正確に同定できた。最後に,センサキャリブレーション値を使用して自律走行を行った場合,キャリブレーションしない場合よりも,走行精度が向上することを確認した。

技術論文

果実全面の画像検査を可能としたロータリトレイを有するナス選果システム

近藤 直・二宮和則・鎌田順三・ブイキョン チョン・門田充司・ケーシー ティング

キーワード: ナス,選果,自動化,マシンビジョン,ポストハーベスト,検査,トレーサビリティ

 

選果システムにおいては,果実の全面計測が強く要望されている。本研究では,ナスのような長形の果実に対して,その反転前後にカラーおよび白黒カメラで検査可能となる新タイプのロータリトレイを開発した。本報では,特にその反転機構について詳しく説明する。各ラインは348のロータリトレイから成り,38.1m/minで移動する。全部で6ラインから構成されることより,本システムは約50万個の果実(約40t)を1日に処理可能である。しかし,実際には果実を供給する作業者の速度より,85%の能力が発揮されるにとどまった。本システム中で,自動化の余地がある作業は果実供給と箱詰めであるが,今後の労働力削減およびトレーサビリティ情報付加を考慮した場合,箱詰め作業の自動化が特に期待された。

農用電動車両を対象とした燃料電池ハイブリッドパワーシステムの高効率化の基礎的検討

今西啓之・高田洋吾・脇坂知行

キーワード: 農用電動車両,自立型固体高分子燃料電池,ハイブリッドシステム,モデリング,電気化学理論,電力制御,時分割方式,効率

 

農用電動車両用に,自立型の固体高分子燃料電池(PEFC)と電気二重層キャパシタからなるハイブリッドパワーシステムを構築するため,基礎的検討を行った。そのハイブリッドシステムの数値シミュレーションを行うために,電気化学理論と実験結果に基づいて燃料電池の等価回路モデルを作成した。そして,実際の電流−電圧特性を良好に再現できる燃料電池等価回路モデルを用いて,独自の時分割方式(TSM)パワー制御によるPEFCの効率について,様々な条件(TSMの周波数,デューティ比,外部負荷抵抗)のもとで回路シミュレーションを行って検討した。その結果,TSMにおいて自立型PEFCの効率が向上することを確認した。

速  報

乳牛ふんのマトリックポテンシャルおよび浸透ポテンシャル

岩渕和則・ランバート オッテン

キーワード: 乳牛ふん,堆肥化,水分,マトリックポテンシャル,浸透ポテンシャル

レビュー

バイオガスとディーゼル機関への適用に関する研究動向に関するレビュー

ニザル ジャベル・野口 伸

キーワード: バイオガス,ディーゼル機関,二燃料機関,着火特性,排ガス特性

 

農産物残渣物から得られるバイオガスを,脱硫・高濃度化し農用車両の燃料へ適用することは,これまでの電気熱源利用同様,有益な技術である。
適用に当たって,農用車両に用いられるディーゼル機関の点火機構は,排ガス性能へ直接影響することから,十分に文献調査した。天然ガスやバイオガスなどのメタンを軽油とともにディーゼル機関の燃料とする二燃料運転では,NOxと黒煙を減少させるが,高負荷ノックを起こし,低負荷では失火を起こすことが明らかにされている。これら問題の解決方法は世界中で研究されており,一部実用化に至っているものもあるが,未だ様々な試みが行われている。