68巻6号

研究論文

ヒッチ点位置制御の開発とその応用

瀧川具弘・本間 毅・張  強・トファエル アハメド・パユンサック ジュンユセン・小池正之

キーワード : トレーラ,内輪差,追従性,ヒッチ制御,操舵式トレーラ

 

本論文ではけん引されるトレーラの追従性の向上を目的として新しいヒッチ制御を提案する。トレーラの車輪を操舵してトレーラ追従性を向上させる方法はあったが,トレーラに操舵機構を装備する必要があり,現有のトレーラには応用できない。この論文では,トラクタ側のヒッチ点を移動させてトレーラの追従性を向上させる方法を提案する。よってこの方法は,現在のトラクタを改造しないでも全てのトレーラに応用できる。本論文では,ヒッチ点位置制御開発の背景,制御の理論的検討,コンピュータシミュレーションと実験による性能試験結果を報告する。最後にヒッチ点位置制御の得失を論じた。

マシンビジョンによる内成り栽培用イチゴ収穫ロボットの研究(第1報)
――ロボットの構造および果実の認識――

崔 永杰・永田雅輝・槐島芳徳・曹 其新

キーワード:イチゴ,内成り栽培,収穫ロボット,マシンビジョン,果実の認識

 

内成り栽培におけるイチゴの収穫は,連日長時間にわたって腰を曲げた姿勢で行われるために作業負担が大きいことから,その機械化が望まれている。果実は小粒で傷つき易く,熟した果実を選択して収穫することから,その機械化の条件は高度な機能が求められる。そこで,カラーカメラ2台(位置決め用と採果用)を装備し,果実を傷つけずに果柄を把持・切断するイチゴ収穫ロボットの研究を行った。第1報ではロボットの構造,果実の認識について検討した。その結果,試作したロボットは位置決め用カメラの画像から採果目標果実を認識し,採果用カメラを誘導して適切な採果目標果実の画像を取得することが確認できた。

リアルタイム土中光センサの土壌反射スペクトルと土中画像を用いたデータフュージョンによる土壌推定精度向上

岡山 毅・澁澤 栄・下保敏和・梅田大樹・平子進一

キーワード:土中画像,テクスチャ解析,データフュージョン,PLS回帰モデル

 

本研究の目的は,従来のリアルタイム土中光センサによる可視・近赤外分光法を用いた土壌成分の推定手法に,土中画像から得られた画像情報を加えることによる推定精度向上の検討である。土中画像から得られる情報源として,カラー情報,2次元高速フーリエ変換スペクトル,自己相関関数及び濃度共起行列を用いた。実験ほ場では,土壌反射スペクトル及び土中画像から得られた特徴量を選択的に説明変数として加えた部分最小自乗回帰モデルを作成したところ,有機物含有率推定モデルでは画像情報を加えることによる明確な精度向上は観測できなかったが,含水比推定モデルでは自己相関関数から得られた特徴量を加えたモデルが最もよい結果を示した。

技術論文

直播てんさいの出芽率向上に関する研究(第1報)
――播種機鎮圧輪による出芽率向上技術――

稲野一郎・桃野 寛・鈴木 剛・有田敬俊

キーワード:てんさい,出芽率,土塊径,鎮圧輪,コーン指数

 

てんさいの出芽率を85%以上に向上させるため,播種機鎮圧輪の適正な鎮圧力や砕土の状態を現地農家試験と十勝農業試験場の低地土試験ほ場試験から求めた。黒ボク土では播種前の土塊径4.75mm以下の割合が60%以上,播種後の深さ10〜20cmのコーン指数が1.1MPa以上であれば,出芽率85%を確保できた。低地土での試験結果から出芽率を目的変数とし,深さ5〜15cmの土層のコーン指数と土塊径4.75mm以下の割合を説明変数として重回帰分析を行った結果,5%で有意な結果が得られた。これらの結果から,土塊径4.75mm以下の割合が高く,種子位置より深い層のコーン指数が高いことが出芽に良好な播種床といえる。

直播てんさいの出芽率向上に関する研究(第2報)
――中層鎮圧による出芽率向上技術――

稲野一郎・大波正寿・鈴木 剛

キーワード:てんさい,出芽率,中層鎮圧,コーン指数,毛管現象

 

てんさいコーティング種子の出芽率85%を確保するためには砕土整地時の土塊径4.75mm以下の割合を60%以上とし,播種機鎮圧輪の鎮圧力を強化する必要があることを第1報で明らかにした。本報では砕土整地前の工程で鎮圧を施し(中層鎮圧),播種機鎮圧輪に10kgの錘を加えることで,出芽率は85%まで増加した。中層鎮圧は,深さ5〜20cmの層のコーン指数を高めるとともに深さ1〜11cmの層の液相率を増加させた。その結果,慣行耕法に比べ,出芽率が向上した。中層鎮圧と播種機鎮圧輪の加圧により土壌を緊密化することで砕土整地時に分断した毛細管が再生し,中層から種子への毛管現象が促進したものと推測できる。

エタノール生産のための木質セルロース前処理技術の開発(第1報)
――粗砕木質用フレール刃式木質微破砕機の開発――

山口大造・庄司浩一・川村恒夫・伊藤博通・堀尾尚志

キーワード:フレール刃ロータ,回転篩,比所要エネルギ,フラクタル次元,加重平均粒径

 

可搬型粗砕木質用微破砕機を開発し,エタノール生産のための前処理として微破砕材料を亜臨界水処理に適応させる観点から試験した。微破砕機は,同軸上で回転するフレール刃ロータおよび丸孔または長丸孔の回転篩から構成される。実験要因として,篩孔径,ロータおよび篩回転数,材料供給速度,材料含水率をとりあげ,比所要エネルギと微破砕材料の指標(フラクタル次元および加重平均粒径)により評価した。その結果,篩の孔径および材料含水率を有意要因と特定した。微破砕材料のフラクタル次元は加重平均粒径と負の相関関係にあり,実用的な指標として用いることができることを示した。実験を行った範囲での微破砕機の最適運転条件,つまり,低所要エネルギで最も細かい微破砕材料を産出する運転条件は両方の篩において,ロータ回転数 : 1,750rpm, 回転篩回転数 : −30rpm, 篩目孔径 : 1.5mm, 材料供給量 : 10gs−1.材料含水率 : 15.5% d.b. であった。

水稲の群落葉色計測技術の開発(第1報)
――計測システムの開発と計測性能――

大嶺政朗・柴田洋一・鳥山和伸・佐々木良治・帖佐 直・安田伸子

キーワード:水稲,群落葉色値,葉色,分光,SPAD値,生育診断,隔測,精密農業

 

水稲群落の生育状態を隔測する“群落葉色計測システム”を開発した。2波長(550nm, 800nm)の分光反射特性を用いた改良型の群落葉色計と記録・分析用コンピュータで構成された本計測システムは,一人で携帯し広範囲の群落葉色を約0.7s/計測で連続計測・記録できる。適正な計測条件は,対象群落の手前約5m, 地上高約1.6m, 計測方向は順光,照度は50,000lx以上である。また,異なる施肥条件下での試験により,群落葉色値はSPAD値や葉身窒素濃度,葉身乾物重と高い相関関係(r>0.93)があることを明らかにした。本システムは,接触式葉緑素計に比べ測定能率が高く,生育情報の隔測技術として有効である。

小麦末粉を使用したZymomonas mobilis によるバッチ式エタノール発酵生産の動力学的パラメータ

ネヴェス マルコス アントニオ・木村俊範・清水直人・椎葉 究

キーワード:乾燥パン酵母,Zymomonas mobilis , 小麦粉,末粉,アルコール発酵

 

発酵基質として小麦製粉副産物の基質濃度を最適化することによって潜在的なエタノール生産利用の見通しを得ることが出来ると考えられる。炭素源としてグルコースを使用し,乾燥パン酵母によってモデル発酵を行った。基質濃度によらず,全体のエタノールの収率(YP/S )はほぼ安定していた(0.35g-ethanol/g-glucose)。基質としてグルコース100g/Lを使用した場合,エタノールの生産性(Qv )は3.48g/L・hに達した。小麦製粉副産物の末粉(LG)を基質として3段階の濃度(100g/L, 200g/L, 300g/L)のスラリーを用いてZymomonas mobilis によって同時糖化発酵(SSF)を行った。小麦粉(WF)を参照基質として使用し,エタノール濃度(P),QvYP/S ,エタノールの生産率(Qp )およびグルコース消費率(Qs )に基づいて,LGとWFの発酵性能を評価した。基質濃度200g/Lの場合,Pが約52g/L, Qvが2.17g/L・hであった。ブラジルでの末粉の発生量が約0.34百万トン(2000年)であり,原料として全量使用できると仮定すると78.2百万リットルのエタノールが生産量が見積られる。

ウリ科野菜用接ぎ木装置の給苗自動化に関する研究(第1報)
――苗の子葉方向揃え機構に求められる精度――

小林 研・重松健太・笹谷定夫

キーワード:接ぎ木装置,自動給苗,ウリ科野菜,キュウリ,カボチャ,子葉展開方向,生長量,接ぎ木活着

 

ウリ科野菜用半自動型接ぎ木装置を対象とした自動給苗装置開発のための設計資料を得るために,キュウリ及びその台木となるカボチャを供試し,苗の子葉方向揃え機構に求められる精度を検討した。その結果,接ぎ木装置への給苗時に許容される子葉展開方向のずれは,所定の方向に対してキュウリで±45°,カボチャで±35°であり,この範囲内であれば,接ぎ木活着及び苗生育に影響を与えずに苗を切断できる見通しを得た。また,接ぎ木時に残すべき子葉への損傷は,その程度に応じて生長量を減少させること,さらに,接ぎ木活着には,穂木よりも台木の子葉切損による影響がより強く反映されることを確認した。

開発途上国における米の調製条件の最適化(第2報)
――インペラ式籾すり機の脱ぷ特性および貯蔵時の品質変化――

Ly Hoang Tung・後藤清和

キーワード:開発途上国,穀物ロス,乾燥条件,インペラ式籾すり機,脱ぷ特性,肌ずれ,新鮮度

 

東南アジアの開発途上国等におけるポストハーベストでは,不適切な処理のために大量の穀物ロスに繋がっているものと思われる。前報では,日本で通常に使用されるゴムロール式籾すり機について,籾の乾燥条件が脱ぷ特性に与える影響について述べた。インペラ式籾すり機はゴムロール式に比べて脱ぷ率が安定し,メンテナンスが比較的容易である。そこで,種々の乾燥および脱ぷ条件における玄米の品質を測定し,インペラ式籾すり機を導入することの是非を検討した。その結果,脱ぷ率が安定していること,エネルギー効率が高いこと等の理由により当方式は開発途上国にとって有効であると判断された。

乗用トラクタの稼働実態に即した排出ガス評価法に関する基礎研究

積  栄・杉浦泰郎・森本國夫・落合良治・重田一人・藤井桃子・古谷 正・清水一史

キーワード:排出ガス,評価方法,稼働実態,トラクタ,トラクタ作業機

 

農業機械に対する現在の排出ガス規制における評価法は特殊自動車全体を対象としており,農業機械固有の稼働実態とは必ずしも一致しない。このため,乗用トラクタに関する使用実態調査から稼働実態に関する情報を抽出し,それをもとに排出ガス評価法を仮定して,現行の評価法と比較した。比較にあたっては,乗用トラクタ8型式において計測した出力域内の排出ガス分布データを用いた。その結果,当稼働実態に基づく評価法では,現行の評価法と比較してCO, HCの排出率は同等もしくは少なめになる一方,NOxについては同等もしくは多めになる傾向にあり,乗用トラクタの稼働実態を反映した評価の結果が,現行とは異なる可能性が示された。

GPSとジャイロを用いた無人コンバインによる稲収穫

飯田訓久・山田裕介

キーワード:自脱コンバイン,自律走行,直進制御,旋回制御,目標軌道生成

 

本研究では,自脱コンバインにRTK-GPSとジャイロセンサを設置して,自己位置を逐次検出しながら,自律走行を行う無人コンバインの開発を行った。この無人コンバインに,GPSで測定した稲の位置情報を入力して刈取作業経路の自動生成を行い,6行程の刈取作業を行った。この結果,刈取作業のときの目標直線軌道に対するコンバインの横方向偏差はR.M.S. で95mm, 枕地における左旋回のときの目標旋回角に対する誤差はRMSで1.3度,旋回後の目標直線軌道に対する横方向偏差は140mm以下で稲の収穫を行うことができた。