68巻2号

研究論文


マルチスペクトルイメージングセンサを用いた生育診断システムの構築(第1報)
――画像処理法の確立及び水稲センシング――

石井一暢・杉浦 綾・深川知久・野口 伸・柴田洋一

キーワード:精密農法,産業用無人ヘリコプタ,近赤外画像,光環境補正,作物部抽出法,植被率

 

 本研究は,G, R及びNIRの3波長画像を同時に取得できるマルチスペクトルイメージングセンサを用いて,作物の生育状態をリアルタイムにセンシングできるシステムの構築を目標とした。短時間でほ場全体をセンシングするためプラットフォームに産業用無人ヘリコプタを採用した。ほ場において取得した画像から作物生育状態の指標となる草丈,茎数,SPADを精度よく抽出できる画像処理法を考案した。ほ場試験では,水稲を供試作物としたセンシングを試みた。その結果,移植,直播いずれの品種も精密農法への適用に耐えうる精度で草丈,茎数,SPADのセンシングが可能であった。


マルチスペクトルイメージングセンサを用いた生育診断システムの構築(第2報)
――小麦の生育状態推定とGISマップ作成――

杉浦 綾・深川知久・原 令幸・石井一暢・野口 伸

キーワード:マルチスペクトルイメージングセンサ,生育情報,リモートセンシング,GISマップ

 

 本研究はマルチスペクトルイメージングセンサ(MSIS)を用いて,作物の生育状態をリモートセンシングできるシステムの開発を目標とした。リモートセンシングで生育推定を行うには,屋外の環境光変化によらず,適切な画像が得られなければならない。そのため,事前にCCDゲインを自動調整し,センシング中に露光時間を制御できるシステムとした。また,植被率算出時に障害となる画像中の防除畝を自動認識・除去できるアルゴリズムを考案した。供試作物を小麦とし,止葉期及び開花期においてセンシング試験を行った。グランドトゥルースとしてSPAD値,草丈,茎数,窒素含有率,乾物重及び収量を扱った。センシングデータとグランドトゥルースとの重回帰モデルを生成し,推定精度を評価した結果,決定係数は止葉期ではSPAD値 : 0.72,草丈 : 0.59,茎数 : 0.58,乾物重 : 0.59,窒素含有率 : 0.62,収量 : 0.61となった。また,開花期ではSPAD値 : 0.72,窒素含有率 : 0.62,収量 : 0.54と推定の可能性を示した。一方,草丈,茎数,乾物重については相関がみられなかった。最後に,導出した校正式をもとにほ場全体の生育状態を示すGISマップを作成した。


地上および上空からのハイパースペクトル反射とリアルタイム土中光センサによる土中画像を用いた表土特性のモニタリング

スワパン クマール ロイ・澁澤 栄・岡山 毅

キーワード:土中画像,テクスチャー解析,分光法,リモートセンシング,人工ニューラルネットワーク,変数可変型線形重回帰分析

 

 本研究では,地中画像から抽出したテクスチャー特徴とハイパースペクトル反射を用いた水分含有比と有機物含有率の推定を試みた。テクスチャー特徴はリアルタイム土中光センサに備え付けられたビデオカメラで撮影された画像から抽出し,ハイパースペクトル反射は携帯型の分光光度計と空撮によって測定した。人工ニューラルネットワーク(NN)と変数可変型線形重回帰分析(SMLR)を用いて,それらのデータから土壌パラメータの推定を行った。その結果,テクスチャー特徴とハイパースペクトルデータを統合して用いることにより,個別に用いるよりも,より高い推定モデルが構築されることが明らかになった。また,NNがSMLRより高い推定能力を示した。


研削式精米の離散要素シミュレーション
――操作条件が精米状態に及ぼす影響――

鈴木基勝・坂口栄一郎・川上昭太郎・福森 武・松島秀昭・新畑茂基

キーワード:研削式精米,シミュレーション,離散要素法,粒子運動,せん断力,ロール粒度,ロール回転数

 

 研削式精米技術開発への離散要素シミュレーションの適用を試みた。その第一歩として,米粒物性変化の小さい精米初期を対象に2次元円要素シミュレーションモデルを開発した。小型試験用精米機を用いて,精米中の米粒運動を観察し,玄米質量減少率を求めた。実験と同スケールの本モデルは精米中の粒子運動の特徴を再現した。計算より得られた粒子−ロール間せん断力は精白作用に支配的で,その積算値は玄米質量減少率と良い相関を示した。粒子と研削ロール間の摩擦係数を変えた計算結果は,実験によるロール粒度が精米状態におよぼす影響を予測できた。研削ロール回転数が精米状態に及ぼす影響についても,本モデルによって予測可能であった。


農用電動車両用トラクションコントロール
――駆動力頂点探索法による滑り制御――

今西啓之・高田洋吾・脇坂知行

キーワード:農用電動車両,トラクションコントロール,駆動力頂点探索法,車両安定性,数値シミュレーション

 

 農用車両は,圃場のあぜ道を走行する際,タイヤのスリップを防止する必要がある。もし,農用車両の車輪駆動に電気モータを用いれば,各駆動輪の駆動力を容易に制御することができる。
 そこで本研究では,車両安定性向上のため,独自の駆動力頂点探索法によるトラクションコントロールを農用電動車両に適用し,その駆動輪のうち,一車輪の駆動系についてシミュレーションモデルを構築し,定置型駆動単輪実験装置との同定を行った。
 このシミュレーションモデルを用いて,非常に滑りやすい場合など実験装置では設定の困難な状況においても,常に最適なタイヤ〜路面間状態に保つよう滑りを制御できることを確認した。


アフリカ地域・小規模農家への対象農業機械開発に関する研究(第1報)
――モロッコにおける改良畜力プラウについて――

辻本壽之・櫻井文海

キーワード:畜力プラウ,アフリカ,小規模農家

 

 アフリカ地域・小規模農家を対象とする農業機械化はヨーロッパ先進国からの大型農業機械の導入によるのではなく,経済的に適切なものでなければならない。モロッコの小規模農家は,丘陵地,傾斜地での畜力プラウの利用が多く,狭いほ場の有効利用,適時作業の実施,過酷な労働からの解放などの課題を有している。この様な状態を改善するために,畜力プラウの操作安定性を良くし,けん引抵抗と作業走行低下率について畜力用プラウの耕起性能特性の実験を行った。
 ほ場実験結果によりけん引抵抗力は,改良畜力プラウ長床の場合731Nであり,操作性については,作業走行低下率によると,改良畜力プラウの長床が13%であり,最も操作安定性が良い結果が得られた。C.C. (Cover Crop Cultivation)と呼ばれる,耕深が浅い耕起作業が広く行われている状況の中で操作性の良い改良畜力プラウの長床が最も疲労も少なく安定しているとのオペレーターからの評価を得た。

 

技術論文


超音波センサによるグレーンタンク内の穀粒質量の推定

飯田訓久・姚  勇・木村 敦・錦織将浩・梅田幹雄

キーワード:精密農業,コンバイン,収量マップ,超音波センサ,穀粒流量センサ

 

 本報では,超音波センサを用いてコンバインのグレーンタンク内に貯まった穀粒の質量を推定した。この結果,超音波センサで測定したタンク天井から穀粒までの距離と穀粒質量の間には高い相関が認められた。その相関係数はR =0.961であった。また,この超音波センサによる検出分解能は,5.3kg/cmであった。さらに,穀粒質量は,水分の影響が大きいことを考慮して,穀粒水分を説明変数に加えて重回帰分析した結果,回帰式の相関係数はR =0.986であった。


ブームスプレーヤによる無人防除作業システムの開発

原 令幸・竹中秀行・野口 伸・石井一暢

キーワード:精密農業,散布量制御,無人防除作業,CAN-BUS,ブームの自動開閉システム

 

 北海道で多用されているブームスプレーヤを供試し,GPSからの速度と流量・圧力センサからの情報を用い,車速連動方式の散布量制御システムの開発を行った。また,無人防除作業を行うため,散布開始および終了時に作動するブームの自動開閉システムの開発を行った。本スプレーヤとGPSおよびCAN-BUSを装備したロボットトラクタを用い,てんさい圃場で無人防除作業システムの検証を行った。車速連動方式の散布量制御およびロボットトラクタによる自律走行の精度は高く,本システムは無人防除作業に利用可能である。


培土と施肥を中心とした長ネギの省力・高品質化技術(第2報)
――施肥同時溝切り機による省力化――

片平光彦・村上 章・進藤勇人・林 浩之・武田 悟・加賀屋博行・田村保男

キーワード:長ネギ,施肥機,溝切り機,黒ボク土,砂質土,省力化

 

 本報は,長ネギの省力・低コスト栽培を実現するため施肥同時溝切り機の開発とそれを基幹とした作業法を提案し,黒ボク土と砂質土の生産地で開発機の性能と長ネギの生育・収量を調査した。開発した施肥同時溝切り機は,長さ736mmのはつ土板によって移植に適した植溝を成形し,本体に組み込んだ施肥オープナで深さ1cm, 植溝の中心から4cmの位置に条施肥できた。開発機利用時の植溝切りと施肥の作業能率は,黒ボク土ほ場で慣行の10倍,砂質土ほ場で13倍となり,負担面積を慣行の3.8〜5.3倍に増加できた。同機を基幹とした作業法での長ネギの収量は,黒ボク土ほ場で慣行と同等であり,砂質土ほ場で追肥を1回加えることによって慣行と同程度になった。

 

速  報


コンバイン装着型試料収集装置を基幹とした品質把握

帖佐 直・大嶺政朗・細川 寿・柴田洋一

キーワード:コンバイン,試料,収集,品質マップ,収量マップ