68巻1号

研究論文


砂利路面におけるタイヤ特性の計測
――タイヤに作用する力と計測システムの安定性に関する考察――

佐藤邦夫・田尻功郎

キーワード:不整地用タイヤ,試験機,4輪駆動,砂利路面,駆動力,サイドフォース,横すべり角

 

 4輪駆動装置を用いる計測システムにより,すべりやすい砂利路面における不整地用ブロックタイヤの駆動力とサイドフォースを調べた。本計測システムは直結型4輪駆動装置をその対称軸上にないけん引点において定速度でけん引するものである。取得した駆動力係数とサイドフォース係数は,タイヤすべり率と横すべり角をパラメータとする多項式で近似し,その応用を容易化した。さらに,計測システムの基礎原理を調べるために,4輪駆動装置に関する運動方程式を線形化して1自由度数値モデルを構成した。この数値モデルを用い,4輪駆動装置の平衡点の回りの安定性について調べた結果,タイヤ特性を計測した実験では,システムが原理的にも安定であったことが確認された。また,計測実験においてはけん引点角が90度を超える領域においてシステムが平衡状態に収束しなかった。この現象もまた上記の一自由度数値モデルを用いて解析的に確認することができた。


堆肥化における生成物窒素と微生物増殖との関係
――人工試料の堆肥化による検討――

前田武己・峠舘大介・中野芳雄

キーワード:堆肥化,微生物反応生成物,有機性窒素,窒素成分変化,生菌数

 

 堆肥化により材料に蓄積される微生物反応生成物を構成する有機性窒素(TON)について,平板培養による生菌数との関係を検討した。堆肥化は初期TONを無視できる人工試料を材料とし,室内装置を用いて試料温度を65℃まで自己昇温させて最長5日間行った。TONと生菌数はいずれも堆肥化により増加し,CFU当たりTONは堆肥化前や中温領域で堆肥化を終了した試料では10−7〜10−5mgN・CFUTotal−1程度,実験終了時では10−8mgN・CFUTotal−1程度となった。生成物収率は有機物消費量の増大により指数関数的に低下し,最大5日間の実験終了時の値は13〜16%であった。


レーザ・レンジ・ファインダを用いた農業用自律トラクタの走行制御(第1報)
―作業機位置の測定方法―

アハメド トファエル・瀧川具弘・小池正之・本間 毅・長谷川英夫・張  強

キーワード:レーザ・レンジ・ファインダ,最小二乗法,リフレクタ,軌跡追従制御

 

 農作業の自動化のためには,作業機自動装着のための接近誘導が重要である。このような接近誘導では頑健な作業位置計測法が求められる。本研究の目的は,自律走行トラクタが作業機へ接近するための屋外型レーザ・レンジ・ファインダ(LRF)を利用した位置計測法の開発にある。また,リフレクタを利用した位置計測を用いた接近走行制御性能を実規模の自律走行トラクタによる実験で検討した。まず,平面形リフレクタを用いた位置計測精度を調べた結果,LRFから15mの範囲での精度は5cm以下であった。続いて,コンクリート路面及び草地でこの位置計測法を用いて作業機への接近試験を行った。その結果,単一のリフレクタを用いた場合には,コンクリート路面と草地の両方で,自律トラクタは作業機装着位置に位置精度1cm,方向精度1°で接近できることがわかった。2個のリフレクタを用いた接近制御の場合でも,位置精度はコンクリート路面で1cm,草地で2cm,方向精度は両路面で1°であった。これらの結果から,リフレクタをランドマークとして利用するLRF位置計測法により車両を作業機に精度良く誘導できると結論できた。


レーザ・レンジ・ファインダを用いた農業用自律トラクタの走行制御(第2報)
―複数パスを経由しての作業機への接近―

アハメド トファエル・瀧川具弘・小池正之・本間 毅・長谷川英夫・張  強

キーワード:接近制御,駐車,センサ切り替え

 

 本研究では,前進と後退の切り替え及び位置計測法をデッドレコニングからレーザ・レンジ・ファインダ(LRF)による計測法へと切り替えることで,自律走行車両を目標物への誘導する制御を検討した。第1報では,トラクタの後退走行時のLRFによる位置計測法を検討した。本報告では,複数の経路で構成されるコースへの追従制御と,追従時のセンサ切り替えについて検討した。追従可能な経路は,直交座標または極座標で設計した。直交座標では幅寄せなどの誘導制御が可能であり,極座標では90°以上の旋回を伴う運動を実現できた。実験により自律トラクタが複数経路を走行する誘導が可能であることが確認できた。まず,直交座標での2経路を接続した走行では,目標地点での位置誤差が2cm,方向誤差が1°であった。極座標での90°旋回と直交座標での接近とを組み合わせた駐車走行では,位置誤差が1cm,方向誤差が1°程度であった。

 

技術論文


普通コンバインによる高水分小麦収穫
――作業条件による品質改善の可能性――

金井源太・玉城勝彦・長崎裕司・佐竹隆顕

キーワード:高水分小麦,普通コンバイン,作業条件,乾燥条件,小麦品質,粉色

 

 普通コンバインで穀粒水分18〜47%の高水分小麦の収穫試験を行い,収穫条件並びに収穫後の乾燥条件を作業精度および品質面から検討した。
 千粒重,屑粒割合,作業精度,乾燥作業の困難さ等から穀粒水分40%以下での登熟後の収穫が望ましいが,機械的には穀粒水分45%程度でも収穫可能であった。その際,収穫時の穀粒損失が3%以下,穀粒損傷が穀粒水分45%以上では最大5%程度,40%以下では1%以下であった。
 扱胴回転数を低くし,通常の作業速度で収穫することにより製粉後の粉色の改善が認められ,特に穀粒水分40%以上で顕著であった。また,穀粒水分45%程度では常温通風乾燥より実験用オーブンによる40℃加熱乾燥のほうがRVAによるデンプン品質が優れた。作業条件のデンプン品質および生地特性への影響は認められなかった。


循環式乾燥機による大粒品種の大豆乾燥における裂皮,機械的損傷粒の発生

井上慶一・村上則幸・宮浦寿美

キーワード:乾燥,大豆,平衡水分,循環式乾燥機,裂皮,損傷

 

 汎用型の循環式乾燥機を用いて大粒品種の大豆のツルムスメの乾燥を大豆の自動乾燥モードで行った結果,水分が17%w.b.以下になると割れや皮切れ等の損傷が多くなり,仕上がり水分15%w.b.以下にするまでに損傷粒は4%以上発生した。そこで,大豆の子実水分と外気の温・湿度に対する裂皮限界の加温程度を,大豆種皮の限界歪み特性と種皮における歪み近似式から計算する方法によって,送風温度を,単粒層試験では裂皮しない温度に設定して乾燥したが,損傷粒は3%以上発生した。損傷粒の状態から,乾燥機の乾燥層での乾燥による種皮のストレスと搬送過程での機械的な衝撃が影響していると考えられ,ツルムスメでは,循環式乾燥機による仕上げ乾燥は難しいと判断された。


連結車両型移動ロボットの後退制御について(第1報)
――直線経路への追従走行――

陳  軍・武田純一・鳥巣 諒・朱 忠祥

キーワード:移動ロボット,連結車両,直進後退,線形2次レギュレータ,不安定システム

 

 本研究では,線形2次制御理論を用いた連結車両型移動ロボットの直進後退の追従制御を検討した。設計した制御器を移動ロボットに実装し,三つの異なる場所で実車実験を行った。また,制御系の安定性に対する評価関数の状態重みの影響を検証した。その結果,適切な重みを選択した制御器を用いて,不安定な制御対象である連結車両型移動ロボットの直進後退の制御をフィードバック制御によって安定化することができることを実証した。


連結車両型移動ロボットの後退制御について(第2報)
――曲線経路への追従走行――

陳  軍・武田純一・鳥巣 諒・朱 忠祥

キーワード:移動ロボット,連結車両,曲線経路,追従制御,予見制御,最適制御

 

 本研究は,事前情報として走行経路が与えられたとき,はじめに予見制御の概念を導入し参照点を推移させて曲線経路へ追従走行するLQ制御器を設計した。次に,設計した制御器の適応性を検証するため,与えた円経路と正弦波経路の2種類のコースへ追従走行する実車実験を行った。その結果,1)設計した最適レギュレータを用いることにより,不安定な制御対象である連結車両系を曲線経路へ追従走行させるフィードバック制御系を構成することができた。2)追従すべき曲線軌道の曲率と車速は,追従精度に関して大きい影響があることが分かった。


循環式乾燥機を利用した上部加温通風による大豆の低損傷高品質乾燥調製法

井上慶一・村上則幸・宮浦寿美

キーワード:乾燥,乾燥機,大豆,循環式乾燥機,裂皮,損傷,ヒータ,ツルムスメ

 

 既存の汎用型の循環式乾燥機を利用して,乾燥機上部から温度制御付きの温風ヒータで大豆の子実水分と外気温・湿度に応じて裂皮の発生しない温度に調節した温風を外部から通風し,約2.5時間で一巡する搬送量で循環する方法で,損傷しやすい大粒品種のツルムスメの乾燥を行った。その結果,平均乾減率0.26〜0.35%/hで,乾燥による裂皮粒の発生をなくして,水分15%w.b. 以下の均一な水分の大豆に乾燥調製することができた。また,上部から加温した空気を吸引して通風するため,下層では乾燥による種皮にかかる歪みが緩和され,スクリューコンベアやバケットコンベアなどの搬送装置での衝撃による損傷も低く,1%以下とすることができた。


強制デフ式操舵システムの開発(第3報)
――実機に合わせた操作技術の追求――

日高茂實

キーワード:円錐リンク機構,HST,容積効率,斜板角,ニュートラルデテント,長穴,非円形ギヤ,オーバーストローク

 

 前報にて,履帯車両に強制ディファレンシャル方式トランスミッシヨンを用いると旋回性能が大幅に向上し,更に円錐リンク機構を付加することで,履帯車両は通常のハンドル操作で旋回動作を行えることを報告した。
 本報では,HSTの持つ容積効率の影響により,低車速域では旋回不能になる等の問題の解決手法として,円錐リンクの出力ロッドを,ガタを持たせてHST操作アームに連結する長穴連結機構,旋回用出力のストロークを故意に増大させるオーバーストローク機構,更に旋回動力低減と低車速域での旋回性能向上の2点を実現できるハンドル出力の非円形ギヤ減速について報告する。

 

速  報


糖溶液浸漬した野菜組織の低温顕微鏡観察

小出章二・上村松生

キーワード:細胞内凍結,紫タマネギ,低温顕微鏡,凍害防除剤,低温保存