67巻6号

研究論文


ハイパースペクトルリモートセンシングによるイネの窒素保有量
 モデル作成及びモデルによる窒素保有量の推定

柳 讚錫・村主勝彦・西池義延・梅田幹雄

キーワード:窒素保有量,幼穂分化期,ハイパースペクトルリモートセンシング,重回帰分析

 

 最適穂肥量の計画のため必要な幼穂分化期のイネの窒素保有量を推定するためにハイパースペクトルリモートセンシング(AISA+,400nm〜1000nm,68バンド)の有効性を検証した。0.5haの圃場を二つに分け,基肥として3kgN/10aの均一施肥及び0kgN/10a〜7kgN/10aの可変施肥を行った。幼穂分化期のハイパースペクトルの反射率は,地上部データ,いわゆるSPAD値,草丈,分げつ数,乾物重,葉面積(LAI)及び化学分析による窒素保有量と比較した。可変施肥区のハイパースペクトルの反射率と地上部データの比較では,窒素濃度グループ(SPAD値及び葉と茎の窒素濃度)を除外すると,全ての乾物重グループ(草丈,分げつ数,LAI,葉と茎の乾物重)は,反射率と強い相関と同様のパターンを示した。化学分析によって得られた可変施肥区の15区画の窒素保有量とその区画のハイパースペクトルの反射率を用いて重回帰分析を行い,窒素保有量推定モデル(R2=0.85,有意差水準5%)を作成した。作成したモデルに基づく均一施肥区の12区画の窒素保有量推定した結果,モデルによる推定値と化学分析による実測値の最大誤差は0.97g/m2であった。


窒素肥料の多段階施用による食味値及び収量の変動

柳 讚錫・飯田訓久・西池義延・梅田幹雄

キーワード:窒素肥料,食味値,アミロース,タンパク質,生育量

 

 基肥を均一に穂肥を多段階に施用した区画(タイプ1)と基肥を多段階に穂肥を均一に施用した区画(タイプ2)を対象として,窒素肥料の施用量に対する食味成分,食味値,生育量,収量の変動及び各調査項目間の関係を調査した。タイプ1のタンパク質の変動は,タイプ2より多かったが,穂肥を多段階施用したにもかかわらず,変動係数が4%しかなかった。タイプ1のアミロース及びタンパク質と,穂肥量との相関係数は,それぞれ0.741と0.730であった。生育量データでもタイプ1の方が,登熟期のSPAD値,出穂期の草丈,幼穂分化期から登熟期までのSPAD値の変化及び幼穂分化期から出穂期までの草丈の変化を用いて,アミロース,タンパク質及び食味値を推定することが可能であった。タイプ1のアミロース,タンパク質,食味値及び穂肥量と,収量との相関係数は,それぞれ0.733,0.717,−0.764,0.710であった。今回の実験で,穂肥を可変施肥することによって,アミロース,タンパク質,食味値及び収量の調節の可能性が示唆された。


青果物の熱風乾燥特性と硬化

折笠貴寛・田川彰男・相馬真哉・飯本光雄・小川幸春

キーワード:青果物,熱風乾燥,乾燥速度,表面硬化,乾燥収縮,乾燥速度定数,Arrhenius型の式

 

 サツマイモ,ダイコンおよびナスの熱風乾燥を行い,乾燥特性および表面硬化について調査した。その結果,サツマイモは減率乾燥期間,ダイコンとナスは恒率乾燥期間と減率乾燥期間にあることが示された。恒率乾燥速度定数kcが新しく定義され,減率乾燥における乾燥速度定数と同様Arrhenius型の温度依存性が確認された。また,乾燥中の硬化については,表面硬化により試料の収縮が抑制されるため空隙が増加し,それにより密度が減少する結果が得られ,硬化が試料構造に影響を及ぼすことが示された。


システム同定によるレタス成長モデリング(第1報)
――画像処理による同定出力測定――

伊藤博通・山本博昭

キーワード:成長モデル,システム同定,画像処理,同定出力,レタス

 

 本研究は環境入力に対する植物の応答を普遍化するための基礎研究である。光量子束密度を入力,生体重を出力とする1入力1出力の伝達関数をシステム同定法によって求めた。本論文ではシステム同定に必要な同定出力の測定法について報告した。生体重を画像処理法によって非接触・リアルタイム測定することにより一定周期の連続測定を実現した。また,一般に密植栽培である植物工場現場の状況に対応するため2株の葉が重なり合った場合を想定し,2株合計生体重が正確に測定できる手法を開発した。


システム同定によるレタス成長モデリング(第2報)
――光強度を入力とするレタス成長システム同定――

伊藤博通・山本博昭

キーワード:成長モデル,システム同定,光量子束密度,生体重,レタス

 

 前報で報告した同定実験結果を使用し,光量子束密度を入力,生体重を出力とする1入力1出力の伝達関数をシステム同定法によって求めた。ARX, ARMAX, BJモデルを使用し,逐次最小2乗法によってシステムパラメータを求めたところ精度のよい同定が可能であった。また,システムパラメータの経時変化からレタス成長速度の変化を検出できることが解った。植物工場現場の状況に対応するため2株の葉が重なり合った場合を想定した複数株の成長システム同定が可能であることが解った。


ガラス球とガラスプレートを用いた接線方向付着力

王 秀崙・佐藤邦夫・伊藤信孝・鬼頭孝治・長谷川智史・P.P. ガルシア

キーワード:接線付着力,土の付着力,表面張力,水膜

 

 車両走行装置と土壌との接触面に生ずるせん断力には,摩擦力と接線方向付着力が共存し,その接線方向付着力は,車両の推進力の発生に寄与していることが確認された。一方,土壌付着は土を作業対象とする作業機械の走行性能と作業性能を低下させることもある。また,土壌の含水比の変化による接線方向付着力を実験により求め,その大きさによって含水比領域をそれぞれ乾燥相,付着相,潤滑相と呼び,土壌水分が接線方向付着力に大きく影響していることが分かった。水の表面張力による接線方向付着力への影響を調べるために,ガラス球とガラスプレートを用いた実験を行い,ガラス球の周囲に形成された水膜円の表面張力による接線方向付着力と水膜円直径を測定した。その結果,接線方向付着力は,本研究で用いたガラス球の大きさの範囲内ではガラス球の大きさにほとんど影響されることなくガラス球の周囲に形成された水膜の周囲長に比例することが分かった。また接線方向付着力と水膜周囲長との関係は,ほぼ直線で近似することができ,その近似式が示された。

 

技術論文


鏡面反射を利用したトマト果実の検出システム

太田智彦・林 茂彦・久保田興太郎・安食惠治・米田隆志・大塚庄一郎

キーワード:トマト,ステレオビジョン,鏡面反射,3次元位置測定,収穫ロボット

 

 トマト収穫ロボットの視覚部を開発する目的で,栽植状態で果実の3次元位置を測定するステレオビジョンシステムを開発した。ハロゲン光を果実の方向に照射し,着色果実に生じた鏡面反射部分を検出することにより,着色果実の重心位置を求める。2枚の画像において着色果実部分の対応付けを行った後で,鏡面反射の対応付けを行い,3次元位置の計算を行う。3次元位置の測定誤差はxyz軸で約±20mm以内であった。ハウス内実験の結果,太陽光の照度が120〜45,700lxで,果房状態のときカメラに最も近い果実を選択することが可能で,その果実の検出率は平均85%であった。


調理用トマトの真空乾燥

中村俊輝・田川彰男・折笠貴寛・飯本光雄

キーワード:調理用トマト,真空乾燥,真空乾燥特性,リコピン含有量

 

 調理用トマトを5段階の温度条件下で真空乾燥し,乾燥特性および成分変化を調べた。乾燥特性では,質量変化,体積変化,断面積変化を,成分変化についてはリコピン含有量について測定した。その結果,体積および断面積は乾燥開始から含水率250%(d.b.)付近まで含水率に対し1次の関係があり,また,乾燥速度は乾燥開始より含水率250%(d.b.)付近までほぼ一定の値を取ることが分かった。これより,調理用トマトの真空乾燥では含水率250%(d.b.)付近までは恒率乾燥期間にあることが推察できた。リコピン含有量は真空乾燥過程においてやや減少しており,酵素的酸化の可能性が示唆された。


マイクロ波減衰量計測による牧草水分の測定

塚本隆行・西崎邦夫

キーワード:マイクロ波透過法,牧草,含水率,マイクロ波減衰量,リアルタイム計測

 

 牧草の含水率を収穫・調製時に計測するマイクロ波透過式水分計測技術について検討した。含水率とマイクロ波の透過減衰量とは密接な関係にあり,牧草水分の非接触・リアルタイム計測の可能性が明らかになった。計測誤差要因には,計測容器内の牧草の密度,マイクロ波伝播距離,牧草の繊維方向の3つが挙げられ,本稿ではマイクロ波の伝播距離3水準の計測精度について検討した。また,牧草の繊維方向の影響については,牧草を細断し,繊維方向をランダムにすることにより改善できる見通しを得た。


開発途上国における米の調製条件の最適化(第1報)
――乾燥条件が脱ぷ特性に及ぼす影響――

Ly Hoang Tung・後藤清和・河野元信

キーワード:穀物ロス,乾燥条件,温度,過乾燥,脱ぷ特性

 

 東南アジアの開発途上国等において穀物ロスが多発している。その原因の一つとして,各地域により異なる気候条件や乾燥機の運転条件に対する不適切な脱ぷ条件を想定した。収穫後の籾の乾燥温度を3段階に設定した上で,過乾燥の影響を考察するために仕上げ水分を2段階として乾籾を調製した。それぞれの試料について脱ぷ条件に対する各種特性を求め,さらに,乾燥条件とそれら特性との関係を検討した。脱ぷ玄米の品質と脱ぷ時の電力消費に関して測定した結果,両者ともに低温(通風温度37℃)での乾燥および適正な仕上げ水分(14%w.b.)で良い結果を示した。


ショウジョウバエのレーザによる物理的防除(第2報)
――画像処理を用いた自動防除システムの構築――

大林弘嗣・佐藤邦夫・伊藤信孝・王 秀崙・今田恵介・高木滋樹

キーワード:害虫防除,ショウジョウバエ,画像処理,レーザ照射,ガルバノミラー

 

 第1報では,ショウジョウバエに対するレーザ照射の影響について示した。第2報では,画像処理を用いてレーザ照射を行う自動防除システムの構築を試みる。実験対象であるショウジョウバエは飛翔昆虫であり,レーザを自動で照射するためには,対象を画像処理によって認識,追尾し,空間内での正確な位置決めを行う必要がある。またこれらの動作は逐次瞬時に行われる必要がある。なお,レーザの照射方向を3次元で制御するためには,2要素のガルバノミラーを用いる必要があり,本研究ではこれらの動作を連動させるためのプログラムを開発し,実験と考察を行った。ガルバノミラーの制御は,キャリブレーションによる近似制御法を用いた。模擬飛翔体による照射実験を行った結果,照射対象が比較的高速に動いている場合,システムの動作速度に改善の余地が残ることが判明した。


炉内ガス速度がダウンドラフト式籾殻ガス発生炉の性能に与える影響

チャノクナン スーカムナード・伊藤信孝・鬼頭孝治

キーワード:ガス化,ガス発生炉,バイオマス,エネルギ,籾殻

 

 ガス化はバイオマス燃料を気体燃料に変換する技術である。本研究においてはガス発生炉の運転実験を行い,炉内ガス速度が籾殻を用いたダウンドラフト方式のガス発生炉に与える影響について考察した。実験から等価比及びガス化温度は炉内ガス速度の増加につれて増加し,ガス発生炉内のガスの成分に影響を与えることがわかった。ガス成分の変化はガス発生炉ガスの高位熱価及びガス化効率に影響を及ぼした。平均的なガス発生炉内のガスの高位熱価は炉内ガス速度が0.043ms−1のときに最大で3.87MJm−3に到達し,ガス化効率は炉内ガス速度が0.061ms−1の時に最大値60.9%であった。