67巻3号

研究論文


音響による農産物・食品体積計測法の耐騒音性向上に関する検討

西津貴久・鳥潟康雄・吉岡宣明・池田善郎

キーワード:農産物,食品,体積,ヘルムホルツ共鳴,ボイスコイル,電気インピーダンス

 

 これまで報告してきたヘルムホルツ共鳴現象を利用した農産物・食品の非接触体積計測法では,共鳴器へ入力するスウィープ音に対する応答をマイクロフォンで検出していた。農産物の選果施設や食品工場への導入を考えた場合,施設内機械の操作音が雑音としてマイクロフォンの検出信号に重畳するために,体積の繰り返し測定精度が低下するおそれがあった。
 そこで音声信号入力用スピーカのボイスコイルの電気インピーダンス変動からヘルムホルツ共鳴周波数を同定する計測システムを試作し,マイクロフォンを用いた従来法よりも耐騒音性に優れることを確認した。


極低周波磁界がトウモロコシ種子の吸水および初期生長に及ぼす影響(第1報)
――トウモロコシ種子の吸水特性――

山田龍太郎・田川彰男・飯本光雄・谷野 章

キーワード:極低周波磁界,トウモロコシ,吸水,拡散,アレニウス型

 

 トウモロコシ種子の初期吸水時にELF磁界と静磁界の合成磁界を曝露し,各設定温度における含水率の増加を調べた。その結果,全ての浸漬温度において曝露区と対照区間に有意な差はみられなかった。また,トウモロコシ種子の吸水特性は拡散方程式の厳密解を用いた無限平板モデルによって説明が可能であり,厳密解より求められた値は磁界の曝露の有無に関わらず,実測値とよく一致した。得られた拡散係数は3.0×10−9−1.1×10−8m2・s−1であり,Arrhenius型の式に従う温度依存性より,見かけの活性化エネルギは43.4kJ・mol−1と推算された。拡散係数および見かけの活性化エネルギは曝露区と対照区間に有意な差はなく,磁界の曝露は種子の初期吸水にはほとんど影響を及ぼさないことが推察された。


レーザスキャナを用いた農用車両の直進追従制御に関する研究

阿部 剛・水島 晃・野口 伸

キーワード:ロボットトラクタ,レーザスキャナ,追従制御

 

 収穫作業は,最も機械による高能率化が求められる作業の一つである。しかし現在,サイズ制限や土壌踏圧などの点から作業機械の大型化は難しく,複数のトラクタによる協調作業によって行われる場合が多い。本研究はレーザスキャナを使用することで,安全性の確保と同時に,先行車両との相対的位置・姿勢を認識し,農用車両が追従走行できるシステムを構築した。あらかじめ取得した先行車両の外形ラインプロフィールをもとに,先行車両との相対距離・方位を認識して追従するアルゴリズムを考案した。開発したシステムを検証するために実機による追従制御走行試験を実施した。その結果,横方向偏差0.11m, 縦方向偏差0.15mの走行精度が得られた。


圃場作業車の音響パワーレベル予測手法の開発
――コンバインのダイナミック騒音レベル測定と音響パワーレベルの予測――

幹雄・笹尾 彰・酒井憲司

キーワード:自脱型コンバイン,ダイナミック騒音レベル,音響パワーレベル,シミュレーション,圃場作業車

 

 自脱型コンバインのダイナミック騒音レベルを,建設機械にて確立している測定方法を用いて計測した。これにより,コンバインの実作業中の周囲騒音レベルを把握し,オペレータに加えて周囲作業者への騒音の影響を解明する事ができた。更に,先に建設機械にて研究を進めてきた音響パワーレベルのシミュレーション手法をコンバインに適用して,コンバインの音響パワーレベルを予測し,同時にそのダイナミック騒音レベルを外装カバーにより遮音または吸音することで低減する対策案を提案した。今後,農業機械に於ける本シミュレーションの適用と計算精度の向上により,農業機械の急速な騒音対策が期待される。


青果物の呼吸速度計測法に関する研究(第1報)
――環境制御下における呼吸速度計測システム――

川越義則・瀬尾康久・大下誠一

キーワード:CO2放出速度,O2吸収速度,呼吸商,CA貯蔵,MA包装,密閉法,通気法,フィルム透過法

 

 試作した呼吸速度計測システム(環境制御型密閉法)は,密閉法に換気を組み合わせることで,密閉中に呼吸により変化した気体組成を換気により速やかに回復させ,CO2,O2の分圧変化を0.5kPa以内とすることで,密閉中の気体組成を一定とみなした。さらには換気気体組成および温度を任意に変更可能とすることで,CO2濃度,O2濃度,温度を制御下におき,一定あるいは変動環境下においても一定間隔で連続して呼吸速度を計測するものである。また,従来の呼吸速度計測法において,考慮されていなかった水蒸気圧および加湿のための水への気体の溶解量についても計測値に与える影響を示し,呼吸速度計算式に含めることにより計測システムの再現性を向上させた。


ロータリ耕うんにおける土壌破砕度の非破壊リアルタイム計測

泉 貴仁・笈田 昭・中嶋 洋・宮坂寿郎・伊藤博通

キーワード:土壌破砕度,リアルタイム計測,レーザ変位計,表面凹凸,粗さ(Roughness)

 

 レーザ変位計を用いた表面凹凸計測システムをトラクタに搭載し,耕うん時のリアルタイム計測を試みた。また,リアルタイム計測後に,同一レーンの表面凹凸を定置型システムによって計測し,導出した土壌破砕度を比較対照とした。さらに,耕うん時の振動のシステム搭載部およびレーザ変位計出力への影響を把握するために計測時の振動加速度の計測も行った。その結果,システム搭載部の防振効果が認められ,実機搭載型,定置型システムから得られた両土壌破砕度はともに近い値を示した。


自脱コンバインによる高水分小麦収穫
――作業条件と品質――

金井源太・玉城勝彦・長崎裕司

キーワード:高水分小麦,自脱コンバイン,作業条件,乾燥条件,小麦品質,粉色

 

 自脱コンバインを用いて穀粒水分30〜45%の高水分小麦の収穫試験を行い,収穫時期,作業条件及び乾燥条件の影響を,作業精度,製粉性,粉色,加工適性等の面から検討した。試験結果より穀粒水分45%程度の高水分小麦は機械的に収穫可能であり,作業精度は穀粒口へのワラ屑の混入率が最大約5%,穀粒損失が最大約2%,損傷率が最大約1%であった。品質面では粉色,加工適性について,40℃の通風乾燥を行った場合,穀粒水分40%程度での降雨前収穫の方が穀粒水分30%程度での降雨以後収穫より品質の高い小麦を得られた。また,扱胴回転数を低速に設定し通常の作業速度で収穫することにより,バインダ収穫と同程度(色差0.6以内)まで粉色を向上させることが可能であった。


青刈りトウモロコシの省力化収穫調製技術の開発(第3報)
――試作2号機の開発と実用化試験――

志藤博克・高橋仁康・山名伸樹・澁谷幸憲・奥村政信・正田幹彦・
福森宏一・上村雄二・只野克紀・玉森幸雄・高田雅透・福森 功

キーワード:青刈りトウモロコシ,省力化,省人化,細断材料,ベールラッパ,ロールベーラ

 

 飼料用トウモロコシの収穫調製作業を省力化するために開発した細断型ロールベーラとベールラッパの試作1号機について,実用化を図る上での問題点を整理し,ベール形状の安定化や定置作業への適用化,密封時間の短縮化等を図った試作2号機を開発した。その実用性を検証するため,作業条件が異なる全国10箇所の試験地において実証試験を行った結果,試作2号機は安定した性能を発揮し,枕地処理等の現行作業方法への適応性も高く,省力的で高品質なサイレージ調製が可能であった。また,トウモロコシ以外の飼料作物にも適用可能であるなど,実用性が高いことが検証され,平成16年春に市販化するに至った。


軟X線を用いた透過画像による果実の内部品質評価

小川雄一・近藤 直・澁澤 栄

キーワード:軟X線,品質評価,安全性,内部品質,画像処理,CCDカメラ

 

 果実の内部品質を評価する技術の開発を目指し,国際的に安全と評価されている照射量の軟X線で内部透過画像の取得を試みた。X線発生器,蛍光板,モノクロCCDカメラを用い,オンラインかつリアルタイムで透過画像が得られるシステムを構成した。その結果,モモの核割れやナシの芯腐れといった内部障害が非破壊で検出可能であった。また,出力可変のX線発生器とラインセンサを組み合わせたシステムを利用し,リンゴの内部品質を評価するために適した出力を検討した結果,X線発生器の出力は電圧70kV, 電流3mA程度が適当であった。果肉の変色部は正常部と比べて水分含量に差が少ないため,X線透過画像による判別が困難であった。


自律走行車両によるコンテナ拾い上げ実験

張  強・瀧川具弘・小池正之・本間 毅・ジュンユセン パユンサク

キーワード:ハンドリング装置,ハンド,コンテナ,農業用自律走行車両

 

 従来型のフロントローダに1回転自由度を付加した実験用ハンドリング装置(3自由度フロントローダ型ハンドリング装置)を開発した。この装置により20kgのコンテナを架台に三段に積み上げた分の荷重を取り扱えることを実験により確認した。続いて,このハンドリング装置を15.4kWの農業用自律走行車両に搭載し,目標地点への車両誘導制御を利用することで,コンテナの拾い上げを行った。コンテナの位置及び姿勢を変えて12条件で拾い上げを試みた結果,11条件ではコンテナの拾い上げに成功した。以上の検討から,コンテナの拾い上げ自動化の可能を示すことができた。しかし,操舵速度が大きくなると誘導誤差が増大して,拾い上げに失敗することがあり,誘導精度の向上が必要であると考えられた。


搾乳ユニット自動搬送システムの開発(第1報)
――自動搬送・2頭同時搾乳の省力効果の推定――

平田 晃・後藤 裕・荊木義孝・涌井明男・岡谷利幸・
大日向好治・細井研一・松岡 巧・竹前昭宏

キーワード:繋ぎ飼い式牛舎,搾乳作業,搾乳ユニット,自動搬送装置,2頭同時搾乳

 

 繋ぎ飼い搾乳作業の大幅な省力化を図る手段として,牛舎内で搾乳ユニットを2つずつ自動搬送するシステムを提案した。次に,本システムの試作に先立ち,タイムチャート分析を行い,自動搬送装置4台・8ユニットを1人で用い2頭同時搾乳を行うことで約50頭/人・hの作業能率が期待できること及び,その時の適正搬送速度を明らかにした。さらに,自動化要素を含めて搾乳作業を定式化し,一定条件で従来方式との能率を比較し,本システムの省力効果を示した。


搾乳ユニット自動搬送システムの開発(第2報)
――システム構成各部の検討――

平田 晃・後藤 裕・荊木義孝・涌井明男・岡谷利幸・
大日向好治・細井研一・松岡 巧・竹前昭宏

キーワード:搾乳ユニット,自動搬送システム,分岐ポイント切換え,配管接続部,2連ミルクタップ

 

 懸架式ミルカ用レールを利用した自動走行は,搾乳牛間の分岐レールへの進入が不安定であり,また,ミルクタップ1カ所での2頭同時搾乳は,真空度低下による搾乳ユニット落下の可能性が高く困難と認められた。そこで,新たに分岐ポイント切換式の専用レールと走行部及び2連ミルクタップ配管接続部を試作し,分岐レール進入と2連ミルクタップ接続動作が良好であることを確認した。これらを実際の搾乳牛舎に設置して乳牛反応を観察し,実地適用の見通しを得た。加えて,走行部同士の衝突回避,ホームポジション,搭載搾乳ユニットなど本システム構成各部の課題と設計方針を明らかにした。