67巻2号

研究論文


マシンビジョンを用いた作物生育量マッピングシステムの開発(第2報)
――画像からの作物生育量の推定および作物生育量マップの作成――

片岡 崇・金子利弘・岡本博史・寺脇正樹・端 俊一

キーワード:精密農業,マッピング,マシンビジョン,画像処理,植被面積,作物生育量,成長曲線

 

 作物列の画像から作物生育量を推定する方法および作物生育量マップの作成について検討した。供試作物は,テンサイと大豆である。カラーCCDカメラで撮影された画像をCIVE(Color Index of Vegetation Extraction)により2値化し,作物個体の植被面積を算出した。そして,実測した作物生育量(葉長,根長,草高および乾物重)との関係から,作物の個体植被面積と生育量の間に近似曲線を導出した。最大葉長や根長,草高などの「長さ」を表す生育量については指数曲線で,また,乾物重という「重さ」を表す生育量については成長曲線(Gompertz曲線)で近似できることが示唆された。これらの近似曲線にもとづいて,作物列の画像から作物生育量マップを作成するソフトウェアを開発した。


調理用トマトの乾燥特性
――体積変化,断面積変化および乾燥速度の推算――

折笠貴寛・田川彰男・中村俊輝・飯本光雄

キーワード:調理用トマト,乾燥速度,恒率乾燥期間,減率乾燥第一段,収縮,硬化,Arrhenius型の式

 

 調理用トマトを乾燥し,収縮を伴う乾燥特性について検討した。測定は質量変化,体積変化,断面積変化および温度変化について行った。その結果,体積は乾燥初期から含水率100%(d.b.)付近まで含水率に対し1次の関係であることが分かった。この関係を基に,断面積を含水率の関数として検討したところ,含水率の指数関数で近似できた。含水率変化は乾燥における指数モデルで近似され,乾燥速度定数にはArrhenius型の温度依存性が確認された。


小麦の有効熱伝導率
――小麦粒子熱伝導率の推算と伝熱モデル――

田川彰男・村松良樹・笠井孝正・飯本光雄・村田 敏

キーワード:小麦,有効熱伝導率,穀粒の熱伝導率,非定常双子型プローブ法,伝熱モデル

 

 非定常双子型プローブ法により小麦の有効熱伝導率を測定した。測定は,小麦層中の空流体を空気と食用油(コーン油)の2種類に変え,数段階の水分および温度条件下でそれぞれ行った。これより試料の有効熱伝導率に及ぼす水分,温度の影響を調べた。また,直列モデルと並列モデルの複合モデルを利用して小麦粒子の熱伝導率を推算し,水分,温度双方の関数として表した。さらに,そのモデルにおいて並列部空の割合を示すパラメータを水分,温度,空率の関数として表し,小麦の有効熱伝導率を精度良く推定することができる伝熱モデルを提案した。


農用車両にけん引されるトレーラのための軌跡制御(第1報)
――軌跡制御の開発――

ジュンユセン パユンサク・瀧川具弘・小池正之・長谷川英夫・バハラヨーディン バンチョー

キーワード:フィードバック,誘導システム,多項式,シミュレーション,トラクタ・トレーラ システム,軌跡制御

 

 本論文では,農用車両にけん引されるトレーラの地点への誘導のために利用できる軌跡制御器の開発を報告する。この制御器は,軌跡を直交座標での多項式で表現するフィードフォワード制御を行う。制御の目的は,トレーラを与えられた地点まで軌跡に追従走行して到達することである。トラクタ・トレーラの運動モデルを用いてエラーが存在しない条件で行ったシミュレーションでは,このフィードフォワード制御は目的地点への走行可能であることを確認できた。しかし,誤差がある場合,後退時には目的地点での位置誤差が無視できない程大きくなった。そこで,軌跡周りに線形化したシステム方程式を用いて設計したフィードバック制御を,後退時の走行安定化と目的地点での誤差縮小のために導入した。フィードバック系の設計には極配置法と最適制御とを用い,両者を比較した。シミュレーションでは両フィードバックともシステムを安定化できたが,最適制御理論により設計した制御器が極配置法に比べ優れていた。


農用車両にけん引されるトレーラのための軌跡制御(第2報)
――開発した軌跡制御の検証試験――

ジュンユセン パユンサク・瀧川具弘・小池正之・長谷川英夫・バハラヨーディン バンチョー

キーワード:自律走行車両,フィードバック,誘導システム,トラクタ・トレーラ システム,軌跡制御

 

 第1報で提案した軌跡制御を,実規模のトラクタとトレーラを用いて試験した。トラクタ・トレーラの位置はデッド・レコニング法で計算し,試験はコンクリート路面上で行った。試験の結果,後退時にはフィードフォワード制御のみではトレーラを目的地点に誘導できないが,フィードバック制御の導入により誘導が可能となることを確認した。フィードバック制御では,極配置法と最適制御との比較も行った。目的地点での位置誤差については両者に大きな差はみられなかった。しかし,(8m, 3m)地点への誘導中にみられた軌跡からの位置誤差は,極配置法で14cm, 最適制御で9cmであった。これらデータより,軌跡追従性では最適制御が優れることを示していた。


移動土中応力と乾燥密度の応答に関するニューラルネットワーク解析

ワンラット アブドゥラカシム・小池正之・瀧川具弘・長谷川英夫・余田 章・バンチョー バハラヨーディン・プラティアン ウサボリスット

キーワード:ニューラルネットワークモデル,乾燥密度,八面体応力変換器,車両移動応力,感度解析

 

 本研究は,移動中の車両荷重によって変化する土中応力を,乾燥密度の変化として把え,土壌の締固め状況を予測することを目的としている。土中応力は,八面体応力変換器を用いて実測した。またニューラルネットワークモデルは,乾燥密度が土の物理的特性と応力関連変数の関数であるとして構築した。乾燥密度の予測では,rms値誤差は4.28%,相関係数は0.838であった。さらに感度解析により,垂直応力とせん断応力は,土の締固めの主要な影響因子であることが分かった。締固めの発生し易さは,主に初期乾燥密度と含水比に依存した。

 

技術論文


ヘリコプタベースリモートセンシングのための飛行モニタリングシステム

杉浦 綾・野口 伸・石井一暢・寺尾日出男

キーワード:産業用無人ヘリコプタ,作業支援,モニタリングシステム,3次元グラフィックス

 

 産業用無人ヘリコプタにおけるリモートセンシング作業は地上のオペレータによって行われるため,作業の進行具合をその場で正確に把握できない。したがって,飛行状態や作業状況を飛行中に確認できなければ,効率の良い作業は見込めない。そこで,本研究ではRTK-GPSによる機体位置や慣性センサ,地磁気方位センサによる姿勢情報を無線によって地上局に伝送し,作業中に飛行状態やセンシング状況をリアルタイムモニタリングできるシステムを開発した。飛行中のヘリコプタは画像を取得すると位置,姿勢データを同時に計測し,各計測値は機体に搭載した無線機によって地上に伝送される。地上局ではこれらのデータを受信し,開発したソフトウェア上で機体の姿勢や位置などが視覚的に表示される。また,センシングした領域をその都度確認することができるので,効率良くむらのない作業が可能となる。開発した飛行モニタリングソフトは仮想的な3次元空間で作業状態を表示し,ほ場やヘリコプタを自由な角度から視認できる。さらに,センシング作業のみならず,本来の使用方法である農薬散布作業にも対応できるよう工夫した。


ウォータージェットによる物理的除草に関する研究

石田恭正・岡本嗣男・芋生憲司・海津 裕

キーワード:ウォータージェット,除草,物理的除草,機械除草,無農薬除草

 

 本研究では新しい無農薬除草法の開発を目的として,ウォータージェットにより植物を切断する実験を行った。実験には雑草に代えて,実験条件を整えやすいイネの苗を供試した。実験のパラメータとして,ポンプ圧力,対象との距離,ノズル径,切断角度,切断速度を設定した。その結果ポンプ圧力が実験の最高値で,ノズル径が0.4mmのとき最もよく切断された。また水噴流の拡散開始位置付近で切断能力が高いことが分かった。切断の俯角は約45°が適切であり,今回の実験条件の範囲では切断速度はあまり影響がなかった。


太陽光発電エネルギーで作動する省電力型ハウス側窓開閉制御装置の開発

谷野 章・土屋 和・西 和夫・森山友幸・井手 治・石坂 晃・外谷 優

キーワード:太陽光発電,アモルファスシリコン,エネルギー,園芸施設,側窓換気,気温制御

 

 太陽光発電エネルギーで作動する,省電力型ハウス側窓開閉制御システムを開発した。2003年4月26日〜5月26日の期間(期間A)および2003年7月2日〜8月3日の期間(期間B)にハウスでの実証試験を実施した。側窓の開/閉設定気温を期間Aでは25℃/20℃,期間Bでは30℃/25℃とした。期間Aは晴天日が多く,最高気温が30℃を超える日もあった。これに対して,期間Bは記録的な冷夏であり,快晴日は少なく,日射エネルギーは期間Aの64%しか得られなかった。受光部面積0.078m2で定格最大出力3.2Wのアモルファスシリコン太陽電池と5時間率容量28Ah(12V)の蓄電池を電源として用いることによって,両期間とも一度の停電もなく,ハウス内気温に応じた側窓開閉が行われた。ハウス内気温に応じて側窓を開閉することにより,日中のハウス内気温が側窓開閉設定気温の範囲になる時間が多かった。


イチゴ栽培用ガントリシステムの開発研究(第3報)
――車輪の脱線――

湯木正一・山下 淳・有馬誠一・酒井俊典・佐藤員暢

キーワード:ガントリ,脱線,軌道狂い,輪圧,横圧,脱線係数,走行電力

 

 軌道式台車ガントリをハウス圃場へ導入する際に問題となる走行用レールの軌道狂いについて,ガントリが走行可能な軌道狂いの許容範囲を検討した。室内実験において走行時の輪圧及び横圧を求めた結果,現行の両フランジ付き車輪(フランジ角90°)を装着したガントリは,走行部のフレーム変形によって,軌道狂い量16mmまで走行できた。また,これと比較したフランジにR形状を設けた片フランジ付き車輪(フランジ角65.3°)は軌道狂い量12mmで脱線し,これは理論限界の脱線係数1.02からの推測値11.7mmとほぼ一致した。しかしながら,片フランジ付き車輪は走行電力の軽減に有効で,フレーム変形も小さいことから,実用上適していると考えられた。


高速代かきロータリの開発(第4報)
――開発機の作業能率と代かき後の田植精度――

後藤隆志・堀尾光広・市川友彦・長屋克成・久慈良治

キーワード:代かき,代かきロータリ,高速作業,ロータリづめ,砕土,埋没,均平,田植え

 

 試作した開発機と市販対照機を供試し,作業能率と代かき後の田植精度を調査した。対照機より24〜30%高速で作業した開発機のほ場作業量は対照機より21〜22%高く,開発機の燃料消費量は対照機より13〜15%少なかった。対照機と同じ作業速度の開発機区では,代かき後の稲株露出数,砂壌土水田における田植時の浮苗株率及び埋没株率が対照区より少なかった。対照機より20〜30%高速作業した開発機区及び作業回数を対照機より1回減らした開発機区の代かき精度と田植精度は,対照区と同程度であった。