67巻1号

研究論文


有限体積法によるコンバイン脱穀部選別風速の数値流体解析

松井正実・井上英二・森  健・古野裕子・平井康丸

キーワード:選別風,流体解析,可視化,有限体積法,自脱コンバイン

 

 コンバイン脱穀部の選別精度を向上するためには,穀粒や藁の飛散特性を把握すること,および唐箕ファンからの選別風を適切な風速ベクトル分布に調節することが必要である。特に選別風の分布改善のために風速ベクトル分布を把握することは重要な課題となっている。本研究では選別室内の風速ベクトル分布を明らかにすることを最終的な目的として,穀粒の飛行に大きな影響を与えると考えられる選別室内部を想定したモデルを構築し,その数値解析を試みた。解析では,選別風の流れを2次元定常の非圧縮性粘性流体と仮定し,有限体積法を用いたプログラムを開発して計算を行った。得られた結果をPIV(粒子画像流速測定法)解析結果および熱線風速計による実測値と比較したところ,十分な精度を有することが判明し,FVM解析結果の妥当性が確認された。


ローカルプロセスにより生産された米のライフ・サイクル・インベントリ分析

ポリトシ ロイ・清水直人・木村俊範

キーワード:米,加工,ライフ・サイクル,インベントリ分析

 

 米の加工プロセスは,農業分野において最も重要な領域の一つであり,相当な量のエネルギを消費することから環境汚染の原因になっている。環境にやさしい米生産プロセスを見出すためにインド西ベンガル州における3つのパーボイリング方式(ベッセル方式,小規模ボイラ方式,中規模ボイラ方式),対照としてパーボイリングを施さない方についてライフ・サイクル・インベントリ分析を行った。インベントリ(エネルギ消費,大気への排出物質および固体廃棄物)の結果では,小規模ボイラ方式>ベッセル方式>中規模ボイラ方式>パーボイリングを施さない方式の順位で減少した。また,パーボイリングを施さない方式の場合には,水系への排出物質はなく,パーボイリング方式と比較して環境への負荷が小さいが,ヘッドライス歩留(搗精後の精米の整粒割合)が最も低かった。中規模ボイラ方式は,他の2つのパーボイリング方式と比較して最も低いインベントリ(エネルギ消費,大気への排出物質および固体廃棄物)結果を示し,環境にやさしいプロセスであることが分かった。米の炊飯プロセスで消費される一次エネルギをバイオマス利用によるものから電気(IGCC技術によってバイオマスから発電されたものと仮定)に切り替えることで,大気への排出物質(CO2, CO, CH4, TSP, NOx, and SOx)が減少することが明らかになった。


スクミリンゴガイ防除ロータリ耕うん技術の開発

高橋仁康・関 正裕・東 定洋・三池輝幸

キーワード:スクミリンゴガイ,ジャンボタニシ,ロータリ耕うん,防除,湛水直播,水稲

 

 ロータリ耕うん機のなた爪間に直刃を付加し,慣行の耕うんと同じ作業でスクミリンゴガイ〔Pomacea canaliculata (Lamarck)〕の殺貝効果を高める技術を開発した。異なる土壌硬度での耕うん爪による打撃速度と殺貝効果の関係を明らかにするとともに,土槽試験の結果を用いて直刃配列を最適化し,防除ロータリの設計・試作を行った。試作機で圃場試験を行ったところ貝の生息密度が慣行のロータリ耕うんと比較しておよそ半減した。


果菜類用簡易接ぎ木器具の開発に関する研究(第4報)
――割り接ぎ用簡易器具の効率的利用方法――

森川信也・西浦芳史・藤浦建史・高浦裕司

キーワード:接ぎ木,割り接ぎ,ナス,穂木,台木,切断器具,組作業

 

 本報では,実用化した割り接ぎ用簡易器具をナス接ぎ木作業に導入した場合の作業能率を調査し,実用機としての効率的な利用方法を検討した。実用機を使用した場合,1株あたりの作業時間は手作業の6〜7割程度に短縮でき,接ぎ木苗の活着率も手作業と同等以上であったことから,実用機は慣行の作業体系に導入可能であることが明らかとなった。また,作業者が複数の場合は,作業工程を分担する組作業により,1台の実用機を有効に利用できるだけでなく,それぞれの作業者がすべての工程を行う場合に比べ,高い作業能率が得られた。農家等では実用機を導入することで,作業能率が大きく向上し,接ぎ木に要する時間をおよそ半分に短縮できた。

 

技術論文


高速耕うんロータリによる耕起・砕土が代かき・田植作業に及ぼす影響

後藤隆志・堀尾光広・市川友彦

キーワード:ロータリ,高速耕うん,耕起,砕土,代かき,田植え

 

 試作した高速耕うんロータリを供試し,市販対照機の1.6〜2.2倍の作業速度で耕起・砕土を行った区を設け,代かき作業や田植作業の精度に及ぼす影響を3箇所の水田で調査した。その結果,開発機区の耕起後の全層平均土塊径は対照機区より0〜40%大きくなったが,代かき後の表層砕土状態は対照機区と同程度であった。また,田植えの作業精度も両区で同程度であった。


培土と施肥を中心とした長ネギの省力・高品質化技術(第1報)
――歩行用管理機を利用した長ネギの品質向上技術――

片平光彦・林 浩之・武田 悟・加賀屋博行・斉藤健悦・森川吉二郎・田村保男

キーワード:長ネギ,歩行用管理機,培土,黒ボク土,砂質土,ロータリづめ,軟白長

 

 長ネギ栽培では,30cm以上の軟白長を形成するため歩行用管理機を用いた培土作業が行われている。軟白長など長ネギの品質は最終培土の影響が最も大きいため,黒ボク土と砂質土で行った歩行用管理機の培土放てき特性を基に,培土を株元まで堆積させる方法を提案し,現地で実証した。その結果,屈曲角εが35°程度,切削幅Wcが60mm以上を有するロータリづめは,側方放てき土の分布範囲を広くし,放てき高さを高くした。それに伴う側方放てき土全量の減少は,前記したロータリづめを組み込んだフランジを並列にすることで改善できた。提案方法を用いた実証試験では,黒ボク土・砂質土ともに長ネギの軟白長を30cm以上に保ち,葉緑部長を短くできた。


高速代かきロータリの開発(第1報)
――大型レーキの開発と仕様の検討――

後藤隆志・堀尾光広・市川友彦・長屋克成

キーワード:代かき,代かきロータリ,高速作業,ロータリづめ,砕土,埋没,均平,所要動力,所要エネルギ

 

 リヤカバー前方にレーキを新設するとともに,つめ配列等を見直すことにより,残さの埋没性能,砕土性能,均平性能などを向上させた高速代かきロータリを開発した。本研究の成果をもとに市販機が商品化され,全国的に広く普及しつつある。本報では,良好な性能を示す大型レーキの横方向平均間は37mm〜45mmであること,土壌条件に応じて大型レーキの取付け位置を調節すると良いことなどを明らかにしたレーキに関する試験結果を報告する。


高速代かきロータリの開発(第2報)
――つめ仕様の検討と開発機の概要――

後藤隆志・堀尾光広・市川友彦・長屋克成・久慈良治

キーワード:代かき,代かきロータリ,高速作業,ロータリづめ,砕土,埋没,均平,所要動力,所要エネルギ

 

 代かきロータリのつめに関する基礎試験を行い,一対のつめが同じ横方向位置に取付けられている従来のつめ配列より,15mm横へずらす配列の方が砕土性能,埋没性能が良好であったこと,切削角が95°のつめでは105°のつめに比べ,PTO比動力が5〜10%低かったが,埋没性能が劣ったこと,つめ回転速度を8%高めると埋没性能が低下し,PTO比動力が約14%増加することを見出した。基礎試験の結果を踏まえ,リヤカバーの前方に新たに大型レーキを取付けたこと,つめ配列を変更したこと,リヤカバー内の容積を広くしたことなどを特徴とする開発機を試作した。


高速代かきロータリの開発(第3報)
――開発機の作業精度と所要動力――

後藤隆志・堀尾光広・市川友彦・長屋克成・久慈良治

キーワード:代かき,代かきロータリ,高速作業,ロータリづめ,砕土,埋没,均平,所要動力,所要エネルギ

 

 試作した開発機と市販対照機を供試し,6箇所の水田で作業精度を,4箇所の水田で所要動力を調査した。その結果,開発機の株やわらの埋没性能及び砕土性能は同じ作業速度の対照機に比べ良好であったこと,開発機の株やわらの埋没性能及び砕土性能は作業速度が20〜30%低い対照機とほぼ同じであったこと,2回作業した開発機の株埋没性能及び砕土性能は3回作業した対照機と同程度であったことが明らかになった。開発機のPTO比動力は,荒代,仕上げ代とも,平均すると対照機とほぼ同じであった。

 

資  料


モロッコの農業機械化からアフリカ小規模農家の機械化への応用(第1報)
――小規模農家における農業生産の重要性――

辻本壽之・櫻井文海・米山正博

キーワード:モロッコ,小規模農家,アフリカ,天水農業地域,農業機械化システム

 

 アフリカ諸国の穀物自給生産は,主にその国の小規模農家が生産を担っていると言っても過言ではない。自給を支えている小規模農家は重要な存在であり,重視する必要がある。小規模農家に対する適切な農業技術が導入されることにより,農業生産が向上し,農家経営が安定し高収入が得られることが不可欠である。
 伝統的な農業形態を維持しながら,アフリカ独自の開発技術と手法を取り入れながら小規模農家への適正な農業機械化システムの改革が求められている。
 本論は,モロッコ王国の天水農業地域小規模農家の調査をもとに,その実態を明らかにし,現在まで見放されていた小規模農家に対する人力,畜力等を含めた適切な農業機械化システムへの応用技術を提案する。


モロッコの農業機械化からアフリカ小規模農家の機械化への応用(第2報)
――小規模農家の農業機械化の現状と問題点――

辻本壽之・櫻井文海・米山正博

キーワード:モロッコ,小規模農家,アフリカ,天水農業地域,農業機械化システム

 

 アフリカでは,先進国からの輸入農業機械に頼る農業機械化は小規模農家にとって非常に高価な農業経営である。請負作業においても,料金は高く,機械が不適正な利用であり,作業の質も悪いとの農家からの指摘が多い。現実の小規模農家は非常に貧しい農業経営を行っている。アフリカでは,トラクタ,コンバインなどの請負農業が小規模農家の農作業に適していないと言う実状を理解しなければならない。
 モロッコの畜力利用技術を他のアフリカ諸国へ紹介することによって現代アフリカにおける小規模農家への適正技術の発展に寄与できるものと思われる。畜力利用農機具はトラクタなどと比べ,製造コストが安く,工業生産技術が未熟でも十分に国内での地場産業として生産が可能である。人力,畜力及び小型の機械力を組み合わせた段階的な農業機械化システムを構築していくことが不可欠である。