66巻6号

研究論文

サトウキビ生長モデルの開発と評価

鹿内健志・上野正実

キーワード:シミュレーション,光合成,LAI,収量予測,ロジスティック関数

 

サトウキビ生産においてより効率的な栽培管理のために生長予測の必要性が高まっている。研究者は生長予測の効果的な手段として植物生長モデルの研究を行っている。生長解析の一つとしてロジスティック曲線に基づく方法がある。しかし,ロジスティック関数は老化による葉の重量が減少する現象を表現できない。我々はできるだけ簡単な式で表現されるサトウキビ成育予測のためのサトウキビ生長モデルを開発した。モデルは実測値と良い一致を示した。成育の最後の段階で予測値と実測値のあいだに小さな差が見られたが,これは成熟の過程のモデル化が不十分なためである。

 

超低温貯蔵によるの長期品質保持

竹倉憲弘・川村周三・伊藤和彦

キーワード:氷点下,備蓄,発芽率,脂肪酸度,硬さ粘り比,食味

 

超低温貯蔵の長期間の品質保持効果を確かめるため,を4年間にわたり氷点下で貯蔵する基礎試験を行った。その結果,貯蔵温度5℃以下での貯蔵では,4年にわたる長期間でも貯蔵前の品質や食味を保持できることが明らかになった。本試験の結果および実用規模の施設で超低温貯蔵試験を行った結果から,貯蔵期間中の平均穀温を5℃以下に保つことにより,長期間にわたるの品質保持が可能であると考えられる。

 

直播テンサイ用自動間引き・除草機の開発(第1報)
――間引き・除草シミュレーションによる識別正答率の評価――

寺脇正樹・片岡 崇・岡本博史・端 俊一

キーワード:テンサイ,雑草,直播栽培,コンピュータシミュレーション,間引き,除草

 

本研究の最終的な目的は,直播テンサイ用自動間引き・除草機の開発である。本報では,ほ場内でのテンサイと雑草の識別に必要とされるそれぞれの識別正答率を導くため,コンピュータによる間引き・除草シミュレーションを行った。シミュレーションの条件を平均株間12cm, 目標株間24cmに設定した場合,強制間引き距離(基準株から空けるべき株間距離の最小値)は10cmが適当であった。強制間引き距離を10cmとし,現在までに得られている識別正答率(テンサイ87.2%,雑草94.4%)を用いて,間引き・除草シミュレーションを行った結果,テンサイ株損失は5%以下となった。また,間引き・除草作業の精度は,テンサイ株の識別正答率よりも雑草の識別正答率に依存することが明らかとなった。

 

産業用無人ヘリコプタを用いた農地情報のリモートセンシングシステム(第2報)
――画像データの3次元マッピング――

杉浦 綾・野口 伸・石井一暢・寺尾日出男

キーワード:産業用無人ヘリコプタ,リモートセンシング,レーザ距離計,3次元GIS

 

本研究の目標は産業用無人ヘリコプタから作物及びほ場情報をセンシングできるシステムの開発にある。地表高度が一様のほ場をセンシングする場合,機体の位置や姿勢を用いればヘリコプタから取得した画像を高精度に絶対座標系へ変換できる。しかし,傾斜や凹凸を含むほ場では高精度を維持できず,地形を考慮したシステムでなければ有効ではない。本研究ではレーザ距離計を採用することで地形測量も併せて行い,取得された地形をもとにセンシング画像を3次元マッピングできるアルゴリズムを考案した。傾斜を含むほ場で地形データ及び画像を取得し,精度評価を行った結果地形測量精度は9cm, 画像マッピングの空間精度が41cmを得た。最後に,ほ場の3次元マップを生成することでシステムの有効性を実証した。

 

転輪動荷重データを用いた農用ゴム履帯車両のパラメータ同定

井上英二・光岡宗司・原 定広・紺屋秀之・森  健・橋口公一

キーワード:ゴム履帯車両,転輪動荷重,ゴム履帯のkとc, パラメータ同定,レーベンベルグ・マルカート法

 

本研究では,従前の研究よりフーリエ級数で表現されるゴム履帯の動ばね定数kと粘性減衰係数cについてレーベンベルグ・マルカート法を用いて同定した。まず,加振実験より得られたk, cを用いた農用ゴム履帯車両の振動特性のシミュレーション値と実測値との比較から第2,第3転輪の動荷重データを同定に採用した。本同定の妥当性について実測値と同定後のk, cを用いたシミュレーションの比較から考察した結果,シミュレーション精度の向上が確認された。さらに,正確なゴム履帯車両の走行シミュレーションの確立には線形モデルから非線形モデルへの拡張が必要であることが明らかとなった。

 

知的作業支援のための手振り認識

森尾吉成・堀部和雄

キーワード:知的作業支援,手振り認識,コンピュータビジョン

 

農作業現場において作業者と対話できるシステムを構築することは,作業者と機械が協調して作業を行う作業体系を実現する上で重要である。本稿では,作業者が機械と手振り動作を用いて対話を行う方法について検討し,圃場のような複雑な撮影環境下においても手振りが認識できる手法として,フレーム間差分を用いて求めた動物体すべての移動軌跡から,円弧往復運動を行う軌跡のみを抽出することにより手振り動作を認識する方法を提案した。実験では,被験者6人に対して,背景が一定でなく,影の影響がある自然環境下において認識を行ったが,画像中の被験者の大きさが約60%(300画素)で,手の振る速さを約1秒に1回に設定すれば,2回の手振りで手を振っていると認識することができた。しかし,画像中の被験者の大きさが30%,20%のように小さい場合や,手の振る速さが2秒に1回と遅くなると,認識することが困難になったことから,より安定した認識方法について検討する必要があった。

 

レーザ変位計による土壌破砕度計測システムの構築
――レーザ変位計出力とロータリ耕うん効果の関係の解明――

泉 貴仁・笈田 昭・中嶋 洋・宮坂寿郎・伊藤博通

キーワード:土壌破砕度,粗さ(Roughness),レーザ変位計,表面凹凸,MWD

 

本研究では,ロータリ耕うんによる既耕うん土壌の土壌破砕度を,非接触かつ非破壊で計測する技術の確立を目的とした。センシングデバイスとしてレーザ変位計を利用した定置型表面凹凸計測装置を作製した。土の表面凹凸データより土壌破砕度の指標を導出し,加重粒径平均(MWD)との関係を解明するための較正実験を行い,ついで,圃場において耕うん実験を行った。その結果,表面凹凸から得られた粗さ指標(Roughness)とMWDは線形関係を示すことがわかり,レーザ変位計の出力から土壌破砕度の推定が可能であることが確認された。

 

製茶工程の自動制御(第3報)
――統轄制御システム――

吉冨 均・角川 修・深山大介

キーワード:製茶,フィードバック制御,ファジィ制御,グラフィカル・ユーザー・インターフェース,インタラクティブ

 

6工程から成る煎茶の製造工程全体を一括して制御できるシステムを開発した。システムのソフトウェアは,機能別に分かれた3層から成り,最上位のスーパーバイザ層は,ハードウェアに依存しない。制御は,茶葉の状態を基に最適な制御量を決定するフィードバック方式であるが,その制御量の決定には,ファジィ制御理論を用いた。システムの操作は,グラフィカル・ユーザー・インターフェースにより,インタラクティブに行なえる。

 

リアルタイム土壌スペクトル計測の精度評価

下保敏和・澁澤 栄・森本英嗣・平子進一・大友 篤

キーワード:リアルタイム計測,土壌スペクトル,土壌パラメータ,土中観測

 

リアルタイム土中光センサの試作を行い,反射スペクトルの連続計測における観測精度と安定性について検討した。その結果,550−1,650nmの波長領域では安定した土壌反射スペクトルが得られることを確認した。またほ場実験により入射及び受光センサプローブと土壌観測面との距離を観測し,857観測点における平均距離86mm,標準偏差3.3mmを得た。入射および受光シミュレーションの結果,観測距離55−90mmが安定した反射スペクトルを得る条件であることを示すとともに,見かけの吸光度は観測距離の影響を受けることを解明した。土壌成分推定には,本装置独自の検量線が必要であることを示した。

 

果菜類用簡易接ぎ木器具の開発に関する研究(第3報)
――割り接ぎ用簡易器具の実用化――

森川信也・西浦芳史・藤浦建史・高浦裕司

キーワード:接ぎ木,割り接ぎ,ナス,穂木,台木,胚軸,切断器具

 

割り接ぎの省力化を目的に台木切断器具と穂木切断器具の実用機を開発して作業性,耐久性などの検討を行った。開発した実用機は,ユニット式の切断刃を採用したことで,既に報告した試作器具と比べ,切断刃の交換が容易になるとともに安全性が向上した。実用機は試作器具と同等の切断精度,作業能率を有し,手作業に比べ,台木切断時間を6割程度に,穂木切断時間を4割程度に短縮できた。また,切断本数の増加に伴う操作抵抗力の増加と切断部不良苗の発生率から,切断刃の耐久性は切断本数2,000本程度と考えられた。

 

技術論文

サイロ詰め込み前の材料草に対する水分調整材添加混合装置の開発

松尾守展・天羽弘一・喜田環樹・市戸万丈・村井 勝・重田一人

キーワード:混合サイレージ,超音波式距離センサ,予乾作業,水分調整材,発酵品質,乾物消失率

 

高い水分含量の牧草を安定的に高品質サイレージに調製するために,サイロ詰めの際に低水分の水分調整材を牧草に添加混合し,平均水分を低下させた混合物をサイロに投入する装置を開発した。開発装置は2つのコンベヤおよび材料草の流量の計測と水分調整材の添加を行なう装置から構成される。ベルトコンベヤに設置した超音波式距離センサで牧草の流量を推定し,牧草の流量に対して一定の比率で水分調整材を添加する。スクリュピッチを漸増させた2軸スクリュコンベヤで牧草と水分調整材を混合し,材料の混合を連続的に行なうことが可能である。開発装置の平均処理能力および消費電力はそれぞれ17.9t/h, 1.5kWであった。開発装置を供試して収穫直後の高水分材料草に水分調整材を添加して貯蔵したスーダングラスサイレージは,添加しないで貯蔵した場合と比較して,発酵品質は良好で乾物消失率は低かった。本開発装置により,50m3クラスの地下角型サイロにおいて,圃場での予乾作業を省略した牧草を省力的に高品質サイレージに調製できた。

 

GPSを使用した車両方位計測法

水島 晃・野口 伸・松尾陽介

キーワード:GPS,GPSアプリケーション,方位計測,ARモデル

 

GPSを利用した農業用アプリケーションの開発が国内外で盛んに行われている。本研究では方位センサなどを使用せずGPSのみを使用して方位を計測する手法を考案した。方位角推定には車両のステアリングなどの車両情報も使用できない環境であることを想定した。まず,直線走行,曲線走行試験を行いGPSの測位点から直接方位を計算して精度を評価・検討し問題点を明らかにした。その結果,GPSによる方位計測はノイズが大きく,時間遅れの影響も無視できないことが明らかとなった。そこで,自己回帰モデル(ARモデル)による方位推定手法を考案し,方位計測精度の改善を試みた。その結果,直進走行における方位計測で30%,曲線走行における方位計測で50%精度を改善することができた。

 

コンバイン用インパクト式穀粒流量センサ

飯田訓久・姚  勇・野波和好・木村 敦・下保敏和・梅田幹雄

キーワード:精密農業,収量マップ,流量センサ,ロードセル

 

コンバインに取り付けて収量を計測するため,穀粒流量センサの開発を行った。開発した流量センサは,穀粒がセンサに衝突したときの力を検出して流量を推定するインパクト式である。本報では,4条刈自脱コンバインを供して,揚穀オーガからグレーンタンクに排出される穀粒流量を計測した。室内実験によって,穀粒流量0.1〜1.6kg/sの範囲でセンサを較正した。この結果,センサ出力と穀粒流量の間の決定係数は,小麦で0.995,モミで0.993であった。次に,収穫作業により収量を推定する実験を行ったところ,センサで推定した質量とロードセルで計量した質量の間には高い相関があり,決定係数は小麦で0.945,モミで0.986であった。