66巻5号

研究論文

 

中国製トラクタの使用信頼性に関する研究(第1報)
――ニューラルネットワークに基づく信頼性モデルの検証――

敖 長林・中野和弘・ 先哲・

キーワード:トラクタ,使用信頼性,ポアソン過程,故障強度,ニューラルネットワーク

 

本報では,中国製トラクタの圃場での使用時における信頼性を検討するため,圃場作業における故障発生までの作業時間を測定した。これに確率過程の非定常ポアソン過程を適用して故障強度関数と初回故障までの作業時間の信頼度関数を求めた。ニューラルネットワークを用いたワイブル過程とワイブル分布のパラメータ推定値は,確率紙法や統計的方法による結果とほぼ一致した。故障強度関数の形状パラメータはβ<1であり,平均故障間隔時間は単調増加する。初回故障までの作業時間はワイブル分布に従い,その形状パラメータはβ=1.24>1であり,初回故障までの作業時間は短いことがわかった。

 

収量変動削減のための可変施肥が食味値に及ぼす影響の分析

柳 讚錫・飯田訓久・村主勝彦・梅田幹雄・稲村達也・井上博茂・真常仁志・森塚直樹

キーワード:空間変動,可変施肥,食味値,タンパク質,生育指数

 

本研究は,圃場内の収量変動を減少させて,施肥量を削減することを目的とした可変施肥の食味値,タンパク質,生育量及び収量等への影響を考察したものである。本試験においては可変施肥によって収量の空間変動を抑えることは難しかった。しかし,可変施肥区の施肥量を均一施肥区に比べて約15%削減したが,同収量を確保することができた。可変施肥区では,窒素肥料を2kgN/10a散布した試験区のタンパク質が,3kgN/10aの施肥区より低かった。食味値マップでは,可変施肥による食味値への影響を推定することは難しかった。生育量調査では,出穂期の分げつ数,登熟期のSPAD値及び草丈とタンパク質の相関が高かった。また,可変施肥区の生育値とタンパク質の相関が,均一施肥区より高かった。登熟期の生育指数とタンパク質が高い相関(全試験区R=0.41,可変施肥区R=0.68)を示した。可変施肥区の生育指数とタンパク質の相関も高かった。登熟期の生育指数とタンパク質のマップを見やすくするため,各要素を各々3段階(高い(多い),平均,低い(少ない))に分類して比較した。可変施肥区中の2kgN/10aを散布した試験区は,タンパク質が生育指数ともに平均より低くなり部分的に一致していた。3段階に分類した収量,食味値,タンパク質,登熟期の生育指数のマップを相互に比較すると,圃場の北部の生育指数及び収量が低かった。さらに,可変施肥を行った圃場の東北部の試験区では,タンパク質,生育指数及び収量が低くなり,食味値は高くなった。これは,可変施肥によってタンパク質,生育指数及び収量がより低くなって食味値が高くなったと考えられる。

 

顕微鏡画像による植物気孔の環境応答の計測

難波和彦・近藤 直・門田充司・笹尾 彰

キーワード:気孔,環境応答,画像計測,植物成長制御,一次遅れ要素

 

本研究は,植物の成長制御を行うシステムを想定し,環境条件を入力に,気孔の開度を出力とするプロセスをモデル化することを目的としている。そこで,環境制御室に入れられた植物の気孔を,光学顕微鏡に装着されたTVカメラを用いて連続的かつリアルタイムで計測するシステムを開発した。環境制御室において,温度,湿度,CO2濃度及び光量を変化させた16種類の実験区を設け,明期,暗期共6hの環境下でポトスの葉の気孔開度を計測したところ,環境条件によって大きく変化した。さらに開度を1次遅れ系で表現したところ,高光強度,高温度の環境条件において予測が可能であり,CO2濃度が低いときには目標値(開度)が大きくなることが計測された。

 

マシンビジョンを用いた作物生育量マッピングシステムの開発(第1報)
――連続画像の結合による作物列全体画像の作成――

片岡 崇・金子利弘・岡本博史・寺脇正樹・端 俊一

キーワード:精密農業,マッピング,マシンビジョン,画像処理,画像結合

 

本研究の目的は,ほ場作物の生育量マップを作成することである。本報では,農用車両に搭載したカラーCCDカメラによって連続的にほ場の作物列を撮影し,その画像を結合することによる作物列全体画像の作成方法について検討した。画像中の作物部分の特徴量抽出にはCIVE(Color Index of Vegetation Extraction)と名づけた指標を用いた。そして,画像中の作物の出現パターンから,隣り合う画像の重複部分を検出し,画像結合を行った。さらに,作物生育マップの作成のために必要なほ場内での作物の位置の推定精度について検討した。約160mの作物列において,約640枚の画像を結合した結果,最大の誤差は±約1.5m, 誤差のR.M.S. の平均は0.8m以下であった。作物生育マップの作成のための十分適応できる位置推定精度であった。

 

トラクタ・作業機系の自動装着のための誘導の実現

陳  軍・鳥巣 諒・井前 譲・武田純一

キーワード:トラクタ・作業機系,自動装着,誘導制御,二段階制御

 

本報では非ホロノミック系にフィードフォーワード制御とフィードバック制御とを融合させた2自由度制御手法を適用し,トラクタを作業機の位置へ誘導制御する問題を検討した。誘導精度を向上させるため,曲線路と直線路を組合せた二段階制御を実施した。その際,最大操舵角に関する拘束条件を満たす誘導軌道を算出した。設計した誘導制御器の有効性をシミュレーションによって確認し,アスファルト路面で実車実験を行った。その結果,0.5m/sの運動速度で作業機の位置を通過するとき,横方向とトラクタ姿勢角の偏差はそれぞれ0.03mと−1.09°であった。

 

技術論文

 

重粘土水田転換圃場での野菜の機械化作業技術(第1報)
――殻補助暗渠の施工法と効果――

片平光彦・太田 健・新山徳光・舛谷雅弘・小笠原伸也・久米川孝治・渋谷 功・鎌田易尾

キーワード:重粘土水田転換圃場,殻補助暗渠,畑地化指標,野菜

 

低湿地重粘土の水田を転換利用して露地野菜栽培を行うには,排水性と砕土率の早期改善が不可欠である。慣行の明渠と弾丸暗渠の施工に加えて,疎水材心土充機で深さ30〜40cm, 幅10cmに殻補助暗渠を施したところ,転換初年目から畑地化指標と砕土率が慣行よりも高まり,エダマメの収量が向上した。殻補助暗渠は,施工4年経過時点で殻層が厚さ20〜30cmから7cmに縮小されたが,殻の分解率は約40%であり,排水効果が持続していた。

 

重粘土水田転換圃場での野菜の機械化作業技術(第2報)
――乗用形管理機を利用した省力化――

片平光彦・太田 健・新山徳光・舛谷雅弘・小笠原伸也・久米川孝治・渋谷 功・鎌田易尾

キーワード:重粘土水田転換圃場,エダマメ,ネギ,キャベツ,乗用形管理機,W型ノズル,負担面積

 

明渠と弾丸暗渠に加えて殻補助暗渠を施工した低湿地重粘土の水田転換圃場では,乗用形管理機を基幹とした機械化体系でエダマメ,ネギ,キャベツの栽培ができる。エダマメは,施肥同時播種機に作円板を取り付けることで,重粘土水田転換圃場でも播種精度と作業能率を高めた。ネギは,乗用形管理機を利用することで培土と防除の省力効果を高めたが,生育後半になると最低地上高が不足して利用できなかった。キャベツは,施肥同時畝立て機や全自動移植機を利用することで,管理作業等の省力化率を慣行よりも高めた。また,ブームスプレーヤから懸垂したホースの先端に取り付けたW型ノズルは,キャベツ生育後半の薬液付着度と防除効果を高めた。乗用形管理機を利用した機械化体系の負担面積は,エダマメで19.1ha, キャベツで4.1haであった。

 

代かき同時土中点播機の播種深度決定要因の解析

田坂幸平・吉永悟志・松島憲一・関 正裕・高橋仁康・脇本賢三

キーワード:水稲,直播,打込み点播機,播種深度,土壌硬度

 

打込み式代かき同時土中点播機で播種した水稲種子の播種深度制御を目的とし,種子の質量と打込み速度,土壌硬度が播種深度に及ぼす影響を検討した。寒天ゲルの播種床に打込まれた種子の播種深度は上記3つの要因で説明でき,重相関係数は0.95であった。代かき土壌に播種された種子は土壌乾燥と種子移動により播種直後の深度の53〜92%にあたる深さまで浮上した。1株内の播種深度の分布は平均播種深度が7〜9mmの時に浅播きおよび深播き種子の出現頻度が最も少ないことを示したが,種子の質量と速度及び土壌硬度が同じでも土質が違うと播種深度が異なった。これらの結果は播種深度を制御することがある程度可能であることを示すとともに,正確な播種深度制御のためには土壌に関わる指標を土壌硬度の他にも求める必要があることを示唆すると考えられた。

 

高機能性米の調製加工技術の開発(第3報)
――微量加水による玄米のGABA生成について――

佐竹利子・福森 武・劉 厚清・目崎孝昌・河野元信・佐々木泰弘・石渡健一

キーワード:玄米,微量,加水,機能性,GABA,移行,胚芽米,精白米

 

玄米を微量加水(玄米水分約17%以下までは加水速度約0.5%/h, 17%以上では0.5〜1.2%/h)で水分23%程度まで調質し,その後約12h放置すると,GABA(γ−アミノ酪酸)含有量が15〜20mg/100gにまで増加し,しかも重胴割れ率が低いために搗精にはほとんど支障がなかった。この玄米を搗精した精白米(精米歩留り約90%)と胚芽米(精米歩留り約95%)のGABA含有量は,それぞれ玄米の約83%と約91%を示し,高い含有量であった。これより,GABA成分が高くてしかも発芽玄米に比べて食べやすい高機能性米を調製加工できる新たな方法が見出された。

 

キク挿し芽装置の開発

林 茂彦・太田智彦・伊吹俊彦・安食惠治・大森弘美・山本和彦・木下榮一郎・吉成賢治

キーワード:キク,挿し芽,セルトレイ,下葉除去,欠株

 

手作業で供給されたキクの穂の下葉を除去し,200穴のセルトレイに植付けるキク挿し芽装置を開発した。本装置は,供給部,下葉除去部,搬送部および植付け部から構成され,輪ギク,スプレーギクおよび小ギクに対応でき,10株1組で挿し芽処理を行う。下葉除去部はブラシの回転と穂の上下移動により下葉をスリットの下に送り込んだ後,スリットのせん断力を作用させて下葉を除去する。性状の異なる品種を用いて性能試験を行った結果,一株あたり0.5枚程度の下葉を除去でき,欠株率は0.3〜4.3%であった。また,作業能率は約2,000株/(時・人)で手挿し作業の2倍程度であった。

 

粒厚選別と色彩選別とを組み合わせた玄米選別技術の開発

竹倉憲弘・川村周三・竹中秀行・伊藤和彦

キーワード:粒厚選別機,色彩選別機,選別歩留,整粒割合,品質,搗精特性,食味

 

玄米選別時の選別歩留の向上と高品質米の調製を目標とし,粒厚選別と色彩選別とを組み合わせた新しい玄米選別技術の開発を行った。その結果,粒厚選別の篩の網目幅を現在の標準的な網目幅より0.10mm小さくした上で色彩選別機を用いて未熟粒を除去することにより,選別歩留を向上させるとともに高品質の米を得ることが可能となった。この玄米選別技術は,生産者の収入増加と消費者への高品質米の供給を可能とする選別技術として有用である。

 

化学肥料と有機肥料兼用散布機のための繰出装置の開発

モアテス キラエリ・飯田訓久・梅田幹雄

キーワード:精密農業,有機農業,粒状散布機,可変量施肥,出ローラ

 

本研究では,化学肥料と有機肥料を同じ施肥機で施用するため,化学肥料と有機肥料をき出すことができる装置の開発を行った。開発した出装置は,大容量ながら小出力モータによって駆動でき,化学肥料のような小径で球状の肥料から10mm程度の異形の肥料まで,設定量に応じて可変的にき出すことを目標に開発した。実験では,4つの異なる形状の肥料を供して出ローラの回転数と軸トルクの関係,回転数と出量の関係を測定して装置の性能を評価した。この結果,試作した出装置が形状や大きさの異なる肥料を安定してき出すことができることを示した。

 

高品質米の省力安定生産のための局所施肥管理システム

国立卓生・工藤卓雄・桶  敏・澁澤 栄

キーワード:大区画水田,直播,地力,局所管理,高品質米,肥料,精密農法

 

大区画水田内の土壌中腐植含量のバラツキに対応して緩効性肥料を可変施肥することにより,高品質米の安定生産と環境負荷軽減を実現する,直播水稲・全量基肥施肥方式を導入した省力的な局所施肥管理システムを開発した。このシステムでは,まずリアルタイム土中光センサーにより連続計測した土壌中腐植含量を10mメッシュ単位で平均化し,土壌中腐植含量に対応したほ場施肥マップを作成する。次に,粒状肥料可変散布機を用い,全量基肥肥料を施肥マップに従って可変施用する。最後に,収量計測コンバインにより作成した実際の収量マップと全量基肥施肥マップの関係を検証し,次作の施肥マップを改善するという手順で作業が実行される。