66巻3号

研究論文

 

接線付着力によるグローサシューの牽引力への影響について

王 秀崙・伊藤信孝・鬼頭孝治・佐藤邦夫

キーワード:接線付着力,付着相,牽引力,グローサシュー,クローラ車両

 

シングルグローサシューと土との接触面に生ずる推進力は,土とのせん断作用によって発生し,単純な摩擦ではなく,接線方向の付着力と摩擦が並存しているという観点から,摩擦実験とモデルグローサシューによる推進力測定実験を行い,接線付着力による牽引力への影響を調べた。その結果,接線付着力は含水比によって変化し,接線付着力の大きさによって区分される含水比領域をそれぞれ乾燥相,付着相及び潤滑相と呼ぶ。また,接線付着力の異なる供試土壌におけるグローサシューの牽引力の測定結果より,牽引力は接線付着力の増加につれて増え,接線付着力が牽引力の発生に寄与していることが明らかとなった。さらに,3次元せん断破壊モデルを用いた牽引力の予測値が実測値とよく一致していることより予測モデルの妥当性が確認された。

 

籾摺方式が貯蔵後の玄米の品質に与える影響

竹倉憲弘・川村周三・伊藤和彦

キーワード:ロール式籾摺機,インペラ式籾摺機,脱ぷ率,脱芽粒,砕粒,玄米貯蔵,休眠性,発芽勢,発芽率,脂肪酸度

 

 ロール式籾摺機とインペラ式籾摺機で籾摺した玄米の品質を比較するとともに,籾摺後の玄米を貯蔵して籾摺方式の違いが貯蔵後の玄米の品質に与える影響を調べた。ロール式籾摺機に比べてインペラ式籾摺機では脱芽粒と砕粒の発生が多かった。また,インペラ式で籾摺した玄米は,貯蔵による発芽勢,発芽率,白度,透光度の低下および脂肪酸度の増加がロール式で籾摺した玄米に比べて顕著であった。したがって,籾摺後に玄米形態で貯蔵を行う場合には,インペラ式籾摺機を用いることは適当でないことがわかった。

 

知的作業支援のための作業者の追跡および動き表現

森尾吉成・堀部和雄・佐藤邦夫

キーワード:知的作業支援,行動認識,フレーム間差分,オプティカルフロー

 

 本研究では,農家の子供のように作業者の行動に合わせて気の利く行動を考えることができる行動認識システムの開発を目指す。本稿では,基本的な動作パターンを行う作業者に対して,フレーム間差分を用いて作業者の移動軌跡を求め,さらにオプティカルフローを用いて作業動作を速度ベクトルで表現することにより,両手法の有効性を示した。照明変動が激しい屋外においてリアルタイムによる作業者の追跡を可能とし,空間的に滑らかなオプティカルフローを求めるためには,各種パラメータの調整を行うとともに,フレームレートの向上および計算コストの削減が課題となった。

 

農業機械騒音の可視化による低減化に関する研究
――自脱型コンバインの騒音特性と音の流れ――

金 学先・笹尾 彰・酒井憲司

キーワード:音響インテンシティ,音の可視化,音シート,アクリル音板,コンバイン

 

 騒音可視化技術による農業機械騒音の低減化を試みた。具体的には,@三次元音響インテンシティ計測システムを用いて自脱型コンバインの騒音源探査及び音の発生,伝播の状況をマップの表示により可視化して騒音実態を把握した。さらに,Aオペレータ頭部周辺の騒音の音響インテンシティ計測を実施し,その音の流れを解明した。これらの結果を踏まえて,伝播経路対策として明らかになった音のりを試みた。主に音板形状と音の流れの関係を中心に計測を行い音板形状・材質等について検討した。

 

バイオガスプラント消化液の栽培利用と環境負荷

美保雄一郎・東城清秀・渡辺兼五

キーワード:バイオガスプラント,消化液,栽培利用法,小麦,水稲,環境負荷

 

 日本各地(北海道を除く)で計画されているバイオガスプラントの多くは,発酵残渣である消化液を固液分離したあとに浄化処理する方式である。しかし,この場合には浄化処理のコストが大きな負担となると指摘されている。そこで本研究では消化液の農業利用性について検討した。水田作物の肥料としての施用実験を行って,米麦の生育・収量・品質とともに,消化液を施用することにより発生するアンモニア等の環境負荷物質について測定し,消化液の施用方法について考察した。その結果,米麦の生育に対し消化液は化学肥料とほぼ同等の効果があることを確認し,土中施用することでアンモニアの発生を抑えることができることを示した。

 

フレール式ロータベータによる湿地の整地に関する研究(第2報)
――衝撃剪断切削条件下でのルートマット状土壌の挙動――

バンバン プルワンタナ・堀尾尚志・庄司浩一・川村恒夫

キーワード:湿地の整地,ルートマット状土壌,衝撃剪断,切断力

 

 ルートマット状土壌を一枚の刃板にて衝撃剪断切削した場合の挙動について調べた。根の代替として繊維を埋め込んだ土壌を用いたところ,密度0.09本/mm2にて挙動をよく表していることが判明した。刃の作用速度,土壌含水比,繊維の構造,繊維の密度を変えた場合の結果は次のようであった。繊維を埋め込んだ土壌の切削反力は繊維なしの場合よりも大きく,約15m/sまで切削速度とともに増大した。刃の進行方向に繊維が傾いている場合には切削反力が増大した。作用力は繊維密度とともに増大したが,含水比の増加とともに減少した。高含水比時の作用力は,主として繊維密度に左右されることがわかった。

技術論文

高機能性米の調製加工技術の開発(第2報)
――胚芽米の水浸漬条件がGABA生成等に及ぼす影響――

佐竹利子・福森 武・劉 厚清・河野元信・佐々木泰弘

キーワード:胚芽米,胚芽残存率,吸水,機能性,GABA,必須アミノ酸,生菌

 

 玄米では胚芽の生理活性により,機能性成分GABA(γ−アミノ酪酸)や遊離必須アミノ酸等が生成されることを第1報で明らかにした。第2報では胚芽に損傷を受けている胚芽米についてもGABA生成が可能で,その生成量は胚芽残存率によって異なることが明らかになった。胚芽残存率が同程度の胚芽米では,洗米水温,雰囲気温度あるいは浸漬温度,処理時間等がGABA及び遊離必須アミノ酸の生成量に影響を与えた。実験の範囲では,水温20℃前後で洗米した後,水切りして雰囲気温度20℃の条件下で1時間程度放置すれば,GABAが7mg/100g以上生成され,遊離必須アミノ酸の生成も良好であった。また,その炊飯食味値は精白米に比べて遜色なく,生菌に関わる安全性も確認された。

 

塩化マグネシウム凝固豆腐のレオロジ特性及び中国における硬い豆腐の製造条件

程 永強・清水直人・木村俊範

キーワード:硬い豆腐,レオロジ特性,破断応力,凝固剤,タンパク質濃度

 

 豆腐産業においてよく使われている凝固剤の一つである塩化マグネシウムにより凝固した豆腐のレオロジ特性と塩化マグネシウム濃度及びタンパク質濃度条件について検討した。7,8%タンパク質濃度の場合に,凝固剤添加量の増加により,破断応力は上昇し,その後減少した。凝固剤量が30mMのときに,6%,7%タンパク質の豆腐の破断は延性破断であり,タンパク質濃度が8−9%に増加のときに,脆性破断様式を示した。凝固剤とタンパク質の最適濃度は,20mMで6−9%,25mMで7−9%,30mMで8−9%であることを見出し,最適な塩化マグネシウムの濃度範囲が他の凝固剤と比べて非常に狭いことが分かった。二つのマクスウェル模型を含む四要素模型はグルコノーデルターラクトン(GDL),硫酸カルシウム豆腐と同様に塩化マグネシウム豆腐の応力緩和曲線に合い,豆乳濃度の増加に従って,四要素模型のパラメータ,特に粘性パラメータと応力緩和時間は増加することを見出した。凝固剤の違いが豆腐の味やレオロジ特性に影響することが知られており,各種凝固剤の特性を活かした凝固剤の混合,そして豆乳濃度を増加させることにより,絹ごし豆腐製造法で中国の市販豆腐に近い硬い豆腐を製造できることを示唆した。

 

青刈りトウモロコシの省力化収穫調製技術の開発(第2報)
――ベールラッパの開発と収穫調製体系の作業能率――

志藤博克・山名伸樹

キーワード:青刈りトウモロコシ,省力化,省人化,細断材料,ベールラッパ,ロールベーラ

 

 前報で報告した1cm前後に細断されたトウモロコシを直径90cmのロールベールに成形できる細断型ロールベーラに加えて,崩れ易い細断ロールベールを拾上げ密封調製できるベールラッパを開発した。このベールラッパをトウモロコシの収穫調製作業に供試した結果,22kWクラスのトラクタでの作業が可能で,拾い上げ及び密封時に生じるロスが平均0.3%と少なく,所要動力は拾い上げ時で1.6kWであった。また,細断型ロールベーラとの組作業では,作業者2名で収穫から密封作業までを円滑に行えることが明らかになった。試作ベールラッパを22kWのトラクタに装着し,細断型ロールベーラを1条刈フォレージハーベスタを装着した44kWトラクタにけん引した場合の作業能率は9.3a/hであった。

 

高速耕うんロータリの開発(第1報)
――つめの形状と配列に関する基礎試験――

後藤隆志・堀尾光広・市川友彦・小林智夫・仁尾征夫・須藤孝明

キーワード:ロータリ,高速耕うん,なたづめ,所要動力,所要エネルギ,砕土,反転,基礎試験

 

 従来機と同程度の作業精度を維持しつつ所要動力を低減することにより,より高速で作業できるロータリを開発した。本研究の成果をもとに,高速耕うんロータリが市販化され,水田を中心とした耕うん整地作業に利用されている。本報では,1回転当たり3回切削するつめ配列より2回切削するつめ配列の方が土の抱込みが少なく,水田の耕うんに適すること,つめ切削幅の増大により所要動力の低減が可能であるが,砕土性能の向上が課題であること,つめわん曲部の切削角を大きくすることにより,つめ切削幅を広げた場合の砕土性能を向上させ得る可能性があることなどを見出した基礎試験の結果を報告する。

西洋ナシの食べ頃判定技術の開発(第1報)
――打音・振動による食べ頃判定――

大森定夫・平田 晃・中元陽一・藤岡 修・鷹尾宏之進・駒林和夫

キーワード:西洋ナシ,ラ・フランス,追熟,食べ頃,果実バネ定数,打音振動

 

 西洋ナシのラ・フランス果実を対象として,食べ頃(果実硬度で判断)を非破壊で評価する装置の開発を行った。追熟程度の評価指標には,果実を軽く叩いたときの固有振動数と果実質量から求めた「果実バネ定数」を用いた。果実の軽打時に適正波形を得るためには,果実質量に適応した質量のハンマーの必要性を確認したことより,開発装置には質量の異なる2種類のハンマーを装備し,果実質量に合わせて自動で選択する機構とした。この装置を用いて食べ頃判定試験を実施した結果,果実バネ定数での食べ頃判定の可能性を見いだした。

資料

木製牛耕用犂の特性
――形状と粘土分含有量――

西村 功・ティネケ マンダン

キーワード:木製畜力けん引用プラウ,形状解析,粘土分含有量,インドネシア