66巻1号

研究論文

選別風を受ける籾の飛行に関する研究(第1報)

松井正実・井上英二・桑野朋子・森  健

キーワード : 抗力係数,揚力係数,選別風,終末速度,脱穀部

 

自脱型コンバインの脱穀部の選別精度を向上させる為には,穀粒や藁の飛散特性を把握し,送風量を制御する事が重要である.本研究では,選別部内における穀粒の飛散軌跡の解明を目的とし,籾の抗力係数・揚力係数を求め,籾の姿勢変化による各係数の変化の状況について調べた.その結果,抗力係数は投影面積の関数として,揚力係数は籾の姿勢の関数として表すことが可能であることを示した.また,流れの方向を含む鉛直2次元平面での釣り合いから,実用に即した飛散に関する運動方程式を立案した.この方程式から籾の終末速度を求めたところ,従来の研究成果と比較して僅かに低い値となったが,概ね妥当な結果を示した.

 

選別風を受ける籾の飛行に関する研究(第2報)

松井正実・井上英二・桑野朋子・森  健

キーワード : 抗力係数,揚力係数,選別風,終末速度,脱穀部

 

選別風を受ける籾の飛行を流体力学的に解析する事を目的として,風速が既知でかつ安定している風洞内での籾の飛行の様子を高速度カメラを用いて撮影し,同条件における籾の飛行のシミュレーションを行った.シミュレーションは選別風を受ける籾に作用する力の釣り合いから飛行中の籾の運動方程式を導き,ルンゲ・クッタ法を用いて解を得た。その結果,飛行途中の籾の姿勢を逐次把握してシミュレーションを行う事によって,籾1粒の飛行を再現し得ることが明らかとなった。また,風洞内に落下する籾の初速度の最大値・最小値を用いてシミュレーションを行うことによって,飛行途中の籾の姿勢によらず,籾1粒の飛行範囲の予測が可能となった。更に,籾の飛行を再現する球の導出を行った結果,質量と投影面積の比は1.00であったことから,入手容易な樹脂球を用いて籾の飛行が再現可能であることを示した。

 

規範モデル追従制御による前後輪自動操舵(第4報)
――水田圃場における走行実験結果――

西池義延・梅田幹雄

キーワード : 規範モデル追従制御,耕うん,代かき,方向安定性,パラメータ摂動

 

本報告では,第3報の手法に従い構築した,規範モデル追従制御系の圃場における走行実験結果について報告する。耕うん後および代かき後の圃場における規範モデルへの追従性能実験結果については,実車の横速度およびヨー角速度を,規範モデルのそれらに追従させることは可能であった。また,代かき後圃場における方向安定性実験結果についても,規範モデル追従制御を行った場合,約40mの定常走行中に大きく曲がり始めることはなく,路面外乱および路面特性変化の影響の抑制が可能であった。さらに,蛇行幅の平均は0.24mであり,直進走行性の向上を確認した。

 

ダイズの呼吸に及ぼす貯蔵条件の影響

スロウラ フセイン・内野敏剛

キーワード : 呼吸,二酸化炭素生産量,サンプル貯蔵,ダイズ,温度

 

貯蔵温度,ダイズの水分を変化させ,二酸化炭素発生量から呼吸速度,単位質量あたりの二酸化炭素生産量を求めた。水分は14, 18, 22, 26%w.b. の4水準,温度は15,20,25,30℃の定温と15,25℃あるいは20,30℃を24時間周期で12時間ごとに変化させる変温の6水準とした。呼吸速度は貯蔵温度および水分の増加によって増加したが,低温では経時的変化はほとんど見られなかった。ダイズの二酸化炭素生産量の経時変化は3次式で表すことができた。貯蔵温度は呼吸速度に最も影響を与える要因で,貯蔵温度の増加により乾量当たりの呼吸速度は増加した。

 

小型発酵リアクターによる牛糞コンポスト化中の微生物叢の変化

椎葉 究・小峰法子・神前 健・木村俊範

キーワード : コンポスト化,微生物叢,リアクター,増幅,制限DNA,小麦フスマ

 

小型発酵リアクター(SCR)を用いて,牛糞の生物分解とコンポスト化を行った。コンポスト化が進むにつれて,熱と二酸化炭素の発生が上昇した。コンポスト化中の微生物の全16SrDNAは,SCRによりコンポスト化されたサンプルより直接抽出され,ARDRA(増幅リボソームDNA制限分析)法により解析された。二酸化炭素の発生は,微生物菌数には関係がなく微生物菌叢の変化に相応した。牛糞をコンポスト化するとき,小麦フスマの添加は,微生物菌叢の重要な変化を引き起こしながら二酸化炭素と発酵熱の発生を促進した。

 

果菜類用簡易接ぎ木器具の開発に関する研究(第1報)
――割り接ぎ用台木切断器具の試作――

森川信也・西浦芳史・藤浦建史・高浦裕司

キーワード : 接ぎ木,割り接ぎ,ナス,台木,胚軸,切断器具

 

果菜類,特にナス栽培農家において広く行われている接ぎ木方法の1つである割り接ぎ作業の省力化を目的に,慣行の作業体系に導入可能な簡易接ぎ木器具の開発研究を行った。  本報では,割り接ぎにおける一連の接ぎ木工程のうち,台木苗の上部を切断し,胚軸に縦の切り込みを入れる台木切断器具を試作した。材料試験機等を用いて,切断精度及び作業能率について測定した結果,試作器具は,苗の胚軸径,胚軸硬さ及び操作速度に関係なく,常に手作業と同等以上の切断精度を有し,また1本当たりの作業時間は10秒程度と,手作業の6割程度に短縮できる実用的な器具であることが明らかとなった。

 

技術論文

ダイズの穴播き式不耕起播種機の開発(第1報)
――穴播き式不耕起播種機の原理と構造――

松森一浩・三枝正彦・伊藤豊彰

キーワード : 穴播き式不耕起播種機,株間変動,けん引抵抗,圃場攪乱,環境負荷

 

トラクタ進行方向と同一方向に回転するドラムの外周0.35rad(20°)ごとに突起を装着し,けん引すると突起が圃場表面に刺さって播種用の穴を形成するダイズの穴播き式不耕起播種機を試作した。同機の作動では作業速度の変化にかかわらずトラクタのけん引抵抗は同等で小さく,一定間隔に同等の大きさの播種穴を形成できた。播種作業後の圃場表面攪乱割合は,慣行播種体系の4.7%に激減した。種子と肥効調節型肥料を交互に配置する栽培法では,速効性肥料を使用する場合に比べ増収が期待できたことなどから,試作の穴播き式不耕起播種機は作動時のけん引抵抗と圃場表面の攪乱割合を小さくでき,環境負荷軽減に適応する播種機といえる。

 

施肥マップに基づく可変施肥機の開発

原 令幸・竹中秀行・関口建二・遠藤雅博

キーワード : 可変施肥,てんさい,マッピング,精密農業

 

北海道で多用されている4畦用施肥機を改良し,施肥マップに基づき2種類の肥料の可変施肥を行う施肥機を開発した。本機は土壌分析から求めた施肥マップ,RTK-GPSで測位した圃場内のトラクタ位置,作業速度を変数とした可変施肥が可能である。北海道芽室町のてんさい圃場において,窒素およびリン酸の土壌成分に基づく施肥マップを作成し,可変施肥の実用性を検討した。可変施肥を行う「マップ施肥区」の施肥量は設計施肥量の約96%,定量施肥を行う「慣行区」の施肥量は設計施肥量とほぼ同じであった。「マップ施肥区」の窒素施肥量を「慣行区」の80%としたが,「マップ施肥区」と「慣行区」におけるてんさいの修正糖量はほぼ同じであり,修正糖量のバラツキは「マップ施肥区」が少なかった。

 

高品質穀物乾燥貯蔵装置の開発(第1報)
――紫外放射を用いた穀物付着菌の殺菌――

久保田興太郎・日高靖之

キーワード : 紫外放射,微生物制御,貯蔵

 

本研究は,ポストハーベスト農薬を用いることなく,穀物を安全に環境にやさしく乾燥して貯蔵するため,品質劣化の原因である微生物を制御する乾燥貯蔵装置を開発することを目的としている。  本報では,穀物を撹拌しながら紫外放射(UV)照射を行う実験装置を用い,乾燥後のと小麦に対し,穀物付着菌の殺菌実験を行った。殺菌実験の結果,UV照度5.3W/m2で穀物付着菌を90%殺菌するために必要な照射時間は,26〜55時間であった。発芽試験の結果,UV照射による穀物の品質劣化を認める発芽率の変化はなかった。

 

高品質穀物乾燥貯蔵装置の開発(第2報)
――紫外放射と二酸化チタンを用いた穀物付着菌の殺菌――

久保田興太郎・日高靖之

キーワード : 紫外放射,二酸化チタン,微生物制御,貯蔵

 

本報では,穀物循環型紫外放射(UV)照射装置を試作し,小麦付着菌の殺菌実験と小麦の品質試験を行った。また,光触媒として注目されている二酸化チタンを用い,二酸化チタンの酸化還元作用とUVの直接殺菌を併用した殺菌実験も行った。  殺菌実験では,UV照度97W/m2で,90%の殺菌率を得るために必要な時間は,UV照射区では,細菌で6.3時間,カビで5.6時間であった。二酸化チタン併用区では,細菌で4.8時間,カビで4.5時間となり,処理時間を短縮することができた。品質試験では,今回の実験範囲で,UV照射による穀物品質への影響は少ないと判断できる結果を得た。  実験結果より,30t規模の殺菌システムに必要なエネルギは84MJと試算した。

 

高機能性米の調製加工技術の開発(第1報)
――玄米の浸漬条件がGABA成分の生成等に及ぼす影響――

佐竹利子・福森 武・劉 厚清・河野元信・佐々木泰弘

キーワード : 玄米,調製加工,機能性,浸漬,GABA,ギャバ,必須アミノ酸,ビタミンB1,Mg,移行

 

玄米の水浸漬条件が,米粒内のGABA(γ−アミノ酪酸)と遊離必須アミノ酸の生成量,並びにビタミンB1とミネラルMgの含有量に及ぼす影響を明らかにし,高い機能性を有する主食用米の調製加工技術の開発を図る。本報では浸漬工程における処理条件を解明することに主眼を置き,続く蒸熱,加湿熱風,通風冷却,精米,通風乾燥の一連の工程については同一条件で処理した。試験の結果,GABAと遊離必須アミノ酸の生成量は浸漬条件によって大きく異なり,ビタミンB1とミネラルMgについては,粒内各部位の含有率に変化が生じた。試験条件の範囲では,水温30℃で2時間浸漬後に水切りし,吸水玄米が乾かないようにして雰囲気温度30℃で22時間放置した場合に,GABAと遊離必須アミノ酸が最も顕著に増加し,ビタミンB1とミネラルMgと同様に胚乳部に移行することを認めた。

 

春キャベツ用地床大苗の分級の自動化

重田一人・行本 修・建石邦夫・黎  文

キーワード : キャベツ,苗齢,分級,平行平板コンデンサ,静電容量,赤外線

 

地床苗が用いられる神奈川県の春キャベツ栽培では,大きさが不揃いの苗を識別し,何段階かに分級する技術開発が求められている。キャベツ苗の性状調査で,苗齢と全長との相関が高いことを明らかにした。開発した平行平板コンデンサ方式の静電容量計測装置で,静電容量の比C/C0と全長との関係は,指数回帰曲線のR 2値が0.90〜0.93と高く,苗の大きさ識別に利用可能であった。さらに,開発した赤外線方式の苗の大きさ計測装置では,計測された苗最大幅と苗齢との相関が高く,最大幅を検出することにより安定して苗の大きさを検出できた。