65巻6号

研究論文

 

ウンシュウミカン隔年結果現象のモデリング
――果数のアンサンブルデータを用いた線形ダイナミクス同定――

野口優子・酒井憲司・浅田真一・Leroy GARCIANO・笹尾 彰

キーワード : ウンシュウミカン,大津四号,隔年結果,カオス,ダイナミクス,RRMSE,クロスバリデーション

 

 線形ダイナミクスモデルを用いて,ウンシュウミカン隔年結果現象のダイナミクス同定を行った。葉内無機成分N,P,K,Ca,Mgのデータと,収量データを対象にして,ダイナミクスモデル,ダイナミクス−葉内無機成分融合モデルの2種のモデルを作成し,有効なモデルの選択と隔年結果現象のアンサンブルデータによるダイナミクス同定を試みた。モデルの適合度はクロスバリデーションによって評価した。その結果,ダイナミクスモデルでR2=0.66の予測精度を得た。この解析から,隔年結果が決定論的なダイナミクスによって駆動されていることが示唆された。

 

車輪走行性能の有限要素法による3次元解析
――車輪幅のけん引性能に及ぼす影響――

広間達夫・及川 理・太田義信

キーワード : 有限要素法,3次元解析,けん引性能,車輪幅

 

 有限要素法を用いて車輪の走行性能の3次元解析を行い,車輪幅がけん引性能に与える影響を検討した。  接地荷重一定の条件で車輪幅を変えて実験及び有限要素解析を行ったが,車輪幅を広くすると,接地法線応力が減少して土中の鉛直垂直応力が減少し,けん引力やけん引効率が増加すると共に,最大けん引効率に達する進行低下率が減少することが明らかになった。

 

汎用Linuxを用いた高次動的補償器の実現化誤差

酒井 悟・飯田訓久・梅田幹雄

キーワード : 実現化誤差,Linux,農業ロボット,2自由度制御,H∞制御

 

 汎用Linuxを用いた高次動的補償器の実現化誤差について報告する。まず,汎用Linuxを用いて補償器を実現し,等周期性を確認した。次に,農業用重量物ハンドリングロボットの2関節系を制御対象に,ロバスト安定性と外乱抑制性能を達成するためのH∞補償器を設計した。最後に,LQ制御器との比較のもと,H∞補償器をもつ閉ループ系の安定性と制御性能を評価し,実現化誤差の影響が極めて小さいことを確認した。

 

マイクロフォンペアによるトラクタ搭乗者発声源の識別

佐藤邦夫・法貴 誠・波多江博樹・ハリー G. ギブソン・王 秀崙・鬼頭孝治・山下光司

キーワード : トラクタ,エンジン騒音,母音ピッチ,マイクロフォンペア,ケプストラム

 

 本研究はマイクロフォンペアを用いトラクタ搭乗者の発声源を識別することを目的とする。まず,マイクロフォンペアの軸上距離特性を計測し,音響原理と比較した。次に2つのマイクロフォン間のピッチレベル比の有効性を検証するために,マイクロフォンペアを用い,人工的に作られた矩形波の計測実験を行なった。その結果,搭乗者位置から発せられた音声は,トラクタキャビンの外部から発せられた音声と区別できることが分かった。また母音ピッチレベル比を用い搭乗者の母音を検出し,トラクタキャビンの外部で発声した音声と区別する実験を行なった。最後に母音ピッチレベル比の計測法を改善し,搭乗者音声検出システムの精度を向上する手法について論じた。

 

トラクタ非常停止のための母音連続性に関する研究

佐藤邦夫・縣 克司・法貴 誠・鬼頭孝治・山下光司・王 秀崙・森尾吉成

キーワード : トラクタ,エンジン騒音,安全,非常停止,母音,ケプストラム

 

 異常長母音をトラクタの非常停止などに応用するために,人音声の母音連続性について研究した。まず,騒音に影響されにくい母音区間評価関数を定義し,母音区間を峻別するしきい値を定めた。次にこれを用い,24人の被験者から収録した2音節音声に関し,母音区間の連続性について解析した。その結果,2音節とも母音が検出された音声のうち,98.6%の音声において母音区間に不連続な区間が見出され,その不連続時間が計測された。さらに,実際のトラクタ騒音下における音声収録実験の結果,故意あるいは偶発的に発声される異常長母音を通常音声から区別することが可能であることが確認された。

 

過給とEGRの組合せによるバイオガスコージェネレーションシステムの性能特性

朴 宗洙・寺尾日出男

キーワード : バイオガス,メタン,デュアルフューエル,過給,EGR(排気ガス再循環),コージェネレーションシステム

 

 バイオガスと軽油をコージェネレーションシステム(CGS)の燃料として利用する場合,低負荷時における着火遅れの増加,熱発生率の低下,バイオガス中のメタン未燃焼等の原因によってデュアルフューエルの燃焼効率が顕著に低下する。本研究ではデュアルフューエルの燃焼特性を基に,過給,または過給と排気ガス再循環(EGR)の組合せによる燃焼効率および排気特性の改善効果を検討した。  過給圧が高くなると着火遅れは短くなり,バイオガスと空気の混合が促進されるので熱消費率は減少した。また,過給によって混合気が希薄化するのでNOx排出量は若干減少する結果となった。過給とEGRを同時に適用すると吸気温度の高い条件下では熱消費率の低減率は高くなったものの,NOx排出量の減少効果はEGRのみを適用した場合より大きくなかった。しかし,同じ条件で吸気温度を下げると大幅なNOx排出量を削減することが可能であった。この結果からデュアルフューエル運転の燃焼効率改善を目的とするか,あるいは有害ガス排出削減を目的にするかによって適切な方法の選択が重要であると考えられる。

 

廃発泡スチロール容器のサーマルリサイクルに関する研究(第1報)
――卸売市場における発泡スチロールの廃棄処理と低温油化法の開発――

柏嵜 勝・中島教博・木村隆夫・伊庭慶昭

キーワード : 発泡スチロール容器,マテリアルリサイクル,サーマルリサイクル,省エネルギ,熱分解,油化,再生油

 

 近年,農水産物の流通資材として発泡スチロール(EPS)容器の需要が高まるとともに,卸売市場等に集積する大量のEPS廃棄物の処理が問題になっている。本研究では,国内の中央卸売市場に対し,EPS廃棄物の発生量およびその処理方法,再資源化の意向などを把握するためにアンケート調査および現地調査を行った。この結果から,新たなEPS容器の減容方法および再資源化法の開発が求められていることがわかった。そこで,圧縮・加熱・溶解の3種類の減容法についてその効果を検討した。また,再資源化法として油化に注目し,従来400℃程度で行われていた熱分解処理を,200℃以下で数平均分子量5,000以下に低分子化する低温油化法を開発した。

 

廃発泡スチロール容器のサーマルリサイクルに関する研究(第2報)
――低温油化再生油の粘度および燃焼の特性――

中島教博・柏嵜 勝・木村隆夫・上園治郎・伊庭慶昭

キーワード : 発泡スチロール,油化,再生油,粘度,燃焼

 

 近年発泡スチロール(EPS)を燃料油として再生する油化装置の開発が進められ,一部で実用化されている。しかし,これらは既に市場や量販店に普及している廃発泡スチロールの溶融減容機と比べて規模が大きく,非常に高価であるため,一般的な普及は困難である。そこで,溶融減容機に代替するような規模の油化システムの開発を目的に,従前の油化方法に比べて1/2程度の低い温度(200℃以下)でEPSを油化することを試みた。このような油化装置の実用化は省エネおよび安全性を向上させ,かつ油化装置の小型化を可能にする。本報では,この手法で油化した再生油の平均分子量や油温に対する粘度特性,および既製のバーナ等による燃焼を目的に重油程度の粘度特性が得られる生成条件について検討し,加えてこの再生油の燃焼特性を検討した。

 

農用トラクタの実作業における排出ガスの実態に関する研究(第1報)
――ほ場作業の再現運転による排出ガス質量の推定――

積  栄・落合良治・橋弘行・古山司・日吉健二

キーワード : 排出ガス,トラクタ,ロータリ耕うん,再現運転試験,PTO

 

 近年ディーゼルエンジンの排出ガスが問題視されており,農業機械においても例外ではない。このため,農用トラクタのほ場作業時の排出ガス実態を把握し,作業方法との関連から排出ガスの低減方法を検討した。本報では,一般的な作業であるロータリ耕うんについて,ほ場作業時の排出ガス濃度の測定と,PTO性能試験装置を用いた再現運転時の排出ガス濃度及び質量の測定を行った。その結果,再現運転時の換算エンジン軸トルク及び回転速度は,ほ場作業時に測定した実際の値と同様の結果を示し,排出ガス濃度も概ね同様の傾向を示した。そこで,再現運転によりトラクタのロータリ耕うんの様々な負荷条件による排出ガス質量を調査した結果,所要動力の違いにより,仕事量当たりの排出量が変化する可能性が示唆された。

 

農用トラクタの実作業における排出ガスの実態に関する研究(第2報)
――作業方法による排出ガスの低減法の検討――

積  栄・落合良治・橋弘行・古山司・日吉健二・遠藤 準

キーワード : 排出ガス,トラクタ,ロータリ耕うん,作業負荷,機関回転数,C1モード

 

 農用トラクタのほ場作業時の排出ガス実態を把握するため,第1報では,ロータリ耕うん時の排出ガス濃度の測定試験及びPTO性能試験装置による当該作業の再現運転試験を行い、再現運転試験による実作業時の排出ガス質量の推定を行った。本報では,第1報の実験結果について,一定面積のほ場を耕うんした場合の総排出ガス質量について試算を行い,更に作業時の調速レバー位置を変えて行った同様の実験から,調速レバー位置と排出ガス質量の関係を調査した。加えて,トラクタによる作業一般における作業方法(作業負荷および機関回転数)と排出ガス質量の関係を,排出ガス質量分布図とC1モード試験値の推定により検討した。その結果,作業負荷や調速レバー位置を変化させることによる排出ガス質量の変化の傾向はトラクタによって異なり,トラクタそれぞれの排出ガス特性を把握し,それに合わせて作業方法を選択することで,排出ガスの各成分を低減可能であることが推察された。

 

レタス収穫機の開発(第3報)
――要素技術組み立てのための工程分析と乳汁処理方法の検討――

鈴木尚俊

キーワード : レタス,収穫機,作業工程,作業体系,記号化,運搬状態,レタス乳汁

 

 レタス収穫作業を工程と運搬状態に注目して記号化し,配列することで,作業体系を表現する手法を考案した。この手法を用いて,効率的な作業体系・要素技術の組み合わせ・具体的収穫機を検討した。レタスの乳汁処理を検討するため切り取ったレタスから乳汁が滲出する時間について検討したところ,褐変程度が一定になる最短静置時間は品種によって異なるため一概に決定できないが,滲出時間は1分以上で長いほど良いと判断された。本研究におけるこれまでの成果から切断,搬送,調製,乳汁処理,箱詰め,等を擁した試作6号機を製作して,実証試験をし,十分に実用の可能性があると判断された。

 

レタス収穫機の開発(第4報)
――実用化試作機の開発と現地検討――

鈴木尚俊・斉藤康一・塩川勝也・佐藤宏道・岡田敬司・水谷憲司・大和克彦・堀 直弘・赤羽光男

キーワード : レタス,収穫機,実用性,マルチフィルム,作業姿勢改善,自走式

 

 レタスの収穫作業を省力化するため,要素技術を結合して,実用的なレタス収穫機を開発した。開発したレタス収穫機は2人組作業でほとんどの作業が立位姿勢で行え,作業精度にも問題のない一斉収穫機である。実用化試作1号機としてトラクタ直装式レタス収穫機を開発し,産地にて試験したところ,作業姿勢の改善と実用的に問題のない精度,及び慣行とほぼ同等の作業能率を得たが,トラクタに起因するマルチフィルム適応性などに問題があった。そこで,実用化試作2号機として自走式レタス収穫機を開発し,レタス産地で検討したところ,精度,現地適応性が高く,実用的なレタス収穫機であることを実証した。

 

4輪操舵車両のアクティブ制御に関する研究(第2報)
――ヨーレートセンサによる半自動直進制御――

佐藤邦夫・柳田金幸・菰田隆裕・王 秀崙・法貴 誠・中沢正明

キーワード : トラクタ,4輪操舵,アクティブ制御,直進制御,半自動制御,遠隔操作

 

 本研究では,4輪操舵車両の半自動直進制御系を構成し,その基礎特性を調べた。本研究の目指す半自動直進制御系は,人が操縦する作業車両の直進性を向上させることを目的とし,操縦者は横変位の制御にのみ専念して操舵し,車両の姿勢角が自動制御される方式である。このような方式で必要となる方位センサとして,振動型ヨーレートセンサを応用した。  実験車両は第1報で用いた前後2軸独立操舵型4輪操舵車両である。本報では横変位のずれを操縦者の目により計測し,姿勢角を振動型ヨーレートセンサにより計測,計算する。車線乗替えなどの走行実験の結果,操縦者による操作を横変位の制御のみに限定しても所期の目的の通り直進性を確保できることが分かった。このような技術は,今後,遠隔操作型農用車両の普及に役立つものと考えられる。

 

ポテトハーベスタ用収量センサおよび収量測定システムの開発

原 令幸・竹中秀行・関口建二

キーワード : ポテトハーベスタ,光学式収量センサ,精密農業

 

 本研究は,北海道で多用されているけん引式ポテトハーベスタに装着可能な収量センサの開発を目的とし,ばれいしょの収量測定に複数の投光器と受光器を持つ光学式センサを用い,その有効性を検討した。ばれいしょが光学式センサの光軸をる時,光されたセンサ数とばれいしょ質量との間には,正の相関が認められ,この事実はコンベヤにより搬送されるばれいしょの収量を連続的に測定することが可能で,収量センサとして有効であった。光されたセンサ数とばれいしょ質量に,ばれいしょ品種の形状の相違による固有の関係が認められた。また,測定精度は落下姿勢や1個重などの影響を受けるが,光軸間隔を狭くし,サンプル間隔を短くすることで,推定精度の向上は可能である。

 

落葉系果実選別ロボット(第1報)
――供給・選果ロボットの開発――

石井 徹・戸井田秀基・近藤 直・田原直行

キーワード : 選果,直角座標型マニピュレータ,吸着パッド,マシンビジョン,ロボット,情報付き農産物,トレーサビリティ

 

 モモ,ナシ,リンゴ等の落葉系果実を対象として,コンテナから自動的に果実を供給するロボットと,果実全面の計測可能な選果ロボットを開発した。これは,12個の果実を吸着パッドで吸引し,3自由度直角座標型マニピュレータが果実を持ち上げ,搬送する途中で,底面1画像を撮像し,その後リスト関節を270度回転させる間に,側面4画像を撮像するものである。マニピュレータのストロークは約1.2m,所要時間は約4.3秒であることより,ほぼ1秒間に3個の選果能力を有する。12個の吸着パッドに対して,定格排気量1.3m3/minのブローワー2台を用い,モモでは30kPa,ナシ,リンゴでは45kPaの圧力で吸引することにより,損傷を与えることはなかった。

 

落葉系果実選別ロボット(第2報)
――画像処理システムの開発――

石井 徹・戸井田秀基・近藤 直・田原直行

キーワード : 選果,画像処理,カラーTVカメラ,マシンビジョン,ロボット,トレーサビリティ

 

 前報で報告した選果ロボットのための画像処理システムは,12台のカラーTVカメラと28台の照明装置とから構成された。カラーTVカメラにはランダムトリガ機能を有し,プログレッシブタイプ,VGAクラスのRGB出力用アナログカメラで,照明には直接照射方式のダイレクトライトが使用された。  この画像処理システムを用いて,色,形状に関わる特徴量および3段階に分類された傷,病虫害の面積から,モモ,ナシ,リンゴの9品種を5等級に選果した。その結果,4台のロボットの選果に大きなばらつきはなく,果実の上半球と下半球に対して異なる判定基準を設けることで人間に類似した判定が可能であった。

 

傾斜地用トラクタの三点リンクヒッチ姿勢制御機構

田尻功郎・佐藤邦夫・王 秀崙・山下光司・鬼頭孝治

キーワード : トラクタ,傾斜地用トラクタ,姿勢制御,三点リンクヒッチ,傾斜地,車両

 

 傾斜地用トラクタの実験機は,通常のトラクタ走行装置を改造してすでに試作されたが,姿勢は,トレーリングアーム後輪懸架装置を油圧シリンダで駆動することによって横方向で自動的に水平に制御される。トラクタの後部には,三点リンクヒッチを装着するための作業機用平行四辺形リンクが増設されている。このリンクを傾斜面に平行にする機構として,油圧シリンダの変位をワイヤで平行四辺形下部リンクに伝える方法を採用した。ロータリ耕などを行ったが,ワイヤの連結位置を設定するために調節しなければならず,連結の合理的な方法,原理が不明であった。そこでトラクタの姿勢制御補正角と油圧シリンダの変位などで構成される関係式をリンクで表すことにより,補正角の測定を可能にすると共に,リンクの一辺が傾斜面に平行になる機構を検討して,三点リンクヒッチの姿勢制御機構を明らかにした。

 

自脱コンバイン用収量計測システムに関する研究(第2報)
――刈り取り位置と穀粒流量計測位置とのずれの解析――

帖佐 直・柴田洋一・小林 恭・大嶺政朗・大黒正道

キーワード : 二番還元,換算,自脱コンバイン,収量計測,精密農業

 

 本研究は,自脱コンバインのための収量計測システムを確立するうえで,穀粒タンクで検出した収量を,刈り取り位置での収量へと換算するために,二番還元の影響による,刈り取り位置と穀粒流量計測位置とのずれの様子を明らかにした。  圃場試験において,マーカーとして栽培された紫黒米は,刈り取り位置から0〜60mずれた位置で穀粒タンクにおいて検出され,その傾向は,作業速度や選別の設定によって変化した。また,定置試験によりその結果を再現することができた。  以上の結果に基づき,穀粒タンクで計測された収量を刈り取り位置からの相対位置によって決まる定数に応じて比例配分することで,刈り取り位置での収量へと換算することができた。