65巻5号

研究論文

履帯式車両のコンピュータ制御ピボット旋回装置の応用

デスリアル・伊藤信孝

キーワード:履帯車両,旋回性能,ピボット旋回,コンピュータ制御

 

 これまでの報告において,一文字グローサ・パターンを有する履帯を装備した履帯式車両の旋回性能の改善には履帯接地面積(接地長)を制御して旋回するピボット旋回方式が効果の高いことを検証した。しかし履帯接地面積(長)を少なくすると履帯載荷重が集中し,接地圧力が高くなり履帯の沈下量が増す。したがって路面の種類に応じて履帯の支持高さの設定を行う必要があり,それによって履帯接地長を制御できる。これまではリミットスイッチを用いて,その高さを固定設定してきたが,より多くの路面の種類に対応するためには,自在にすばやく支持高さを設定・調節変更できる機能を有することが望ましい。
 本報はコンピュータ制御によりその支持高さを自在に設定可能な制御装置の開発について報告する。この装置によって支持高さが容易にまた迅速に設定できるばかりか,路面状態に応じて車両の沈下を克服することができる。

 

寒冷地における籾貯蔵技術の確立(第3報)
――カントリーエレベータで貯蔵した籾の品質――

竹倉憲弘・川村周三・伊藤和彦

キーワード:寒冷気候,自然エネルギ,籾貯蔵,超低温貯蔵,カントリーエレベータ,通風冷却,穀温,水分,発芽率,脂肪酸度

 

 カントリーエレベータで自然放冷と冬季通風冷却によるサイロ貯蔵を行い,同時に行った−5℃貯蔵,低温貯蔵,室温貯蔵とサイロ貯蔵の品質保持効果を検証した。その結果,自然放冷によるサイロ貯蔵は低温貯蔵と同等の品質保持効果があること,冬季通風冷却によるサイロ貯蔵は低温貯蔵や自然放冷によるサイロ貯蔵よりも品質保持効果が高いことを明らかにした。通風冷却に利用するのは冬季の寒冷な外気という自然エネルギであるため低コスト省エネルギであり,冬季通風冷却によるカントリーエレベータでのサイロ貯蔵は寒冷地の自然環境を利用して高品質米の供給を可能にする貯蔵技術である。

 

寒冷地における籾貯蔵技術の確立(第4報)

――貯蔵中の籾の穀温差が品質に与える影響――

竹倉憲弘・川村周三・伊藤和彦

キーワード: 寒冷気候,自然エネルギ,籾貯蔵,超低温貯蔵,カントリーエレベータ,通風冷却,穀温,水分,発芽率,脂肪酸度

 

 カントリーエレベータで超低温貯蔵を行った際の夏季におけるサイロ内壁付近の穀温上昇や内壁付近と中心部の穀温差が品質に与える影響を明らかにするため,貯蔵終了時のサイロ内各部の籾の品質測定をするとともに,排出時に約10tごとに籾を採取して品質を測定した。その結果,夏季の穀温上昇や穀温差が品質に与える悪影響はないことが確認された。カントリーエレベータでの超低温貯蔵による籾貯蔵技術は,寒冷地の自然環境を利用した米の貯蔵技術として確立した。。

 

規範モデル追従制御による前後輪自動操舵(第3報)

――定数スケールドH∞制御状態フィードバックによるコントローラ設計――

西池義延・梅田幹雄

キーワード:規範モデル追従制御,定数スケールドH∞制御状態フィードバック問題,LMI(行列不等式)

 

 考案した規範追従制御系の設計手法について報告する。車両のモデリングに関しては,事前情報および推定されたコーナリングパワーから得られる等価二輪車モデルに基づいた車両モデルを公称モデルとした。また,走行実験より得られた入出力データから,コーナリングパワーの変動による車両システムのパラメータ摂動のスペクトルノルムを測定し,それを考慮する制御系設計を試みた。制御系設計は,定数スケールドH∞制御状態フィードバック問題の解法を利用して行なった。設計した制御系の性能を確認するため,コンクリート路面において走行実験を行い,実車の横速度およびヨー角速度を2種類の規範モデルのそれらに追従させることが可能であった。

 

グローサシューの最適形状に関する研究(第3報)
――牽引力の予測値と実測値の比較――

王 秀崙・伊藤信孝・鬼頭孝治・佐藤邦夫・山下光司

キーワード:クローラ,シングルグローサシュー,グローサ高さ,グローサ厚さ,走行性能

 

 本研究では,最大牽引力を発揮できるグローサシュー形状を見出すため,グローサ厚さと高さによるグローサシューの牽引力への影響を調べ,3次元せん断破壊モデルによる予測値とグローサシューを用いた実験による実測値を比較し,3次元せん断破壊モデルの妥当性を検討した。理論解析結果と実験計測結果より,グローサ厚さと高さが推進力の発生に大きく寄与することが分かった。また,グローサ厚さが薄いほど大きな牽引力を発揮でき,最大牽引力を発生するグローサ高さが存在することが確認された。また,3次元せん断破壊モデルによる予測値が実測値とほぼ一致しており,モデルの妥当性が確認された。

 

画像処理によるブームスプレーヤの走行制御

鳥居 徹・手島 司・岡本嗣男・芋生憲司・ 海津 裕・谷脇 憲・長坂善禎

キーワード:画像処理による走行制御,作物列追従制御,自律走行,透視変換,HSI変換,水平操作法,最小2乗法,水田

 

 本研究は,ブームスプレーヤーの画像処理による走行制御に関する研究である。水田画像から稲列に対するカメラ位置情報を検出する新しい方法を提案する。良質の2値化画像を得るために,水面の面積生育ステージに応じて2値化の閾値を動的に変化させた。その結果,動的な閾値決定法が有効であることが判明し,移植後の初期から時間経過した段階までオフセット誤差で20mm,方位誤差で0.2°の範囲で求めることが出来た。本アルゴリズムにより走行実験を行い,偏差の標準誤差26mm以内で走行が可能であった。。

 

フレール式ロータベータによる湿地の整地に関する基礎研究

バンバン プルワンタナ・堀尾尚志・庄司浩一・ 川村恒夫

キーワード:草切断,湿地,フレール刃,切断速度,所要エネルギ

 

 湿地において雑草の刈り倒しと表土の砕土を同時に行う整地作業にとってフレール式ロータベータは有効である。禾本科雑草の茎の切断実験を室内で行いフレール刃が有効であることを検証し,種々の条件において所要エネルギの特性を検討した。切断速度が10m/sに対し25m/sでは比切断エネルギが58%増加するが,茎が十分切断されるためには20m/s以上が必要であることが判明した。フレール刃の曲げ角度について,比切断エネルギには顕著な影響は見られなかったが,90°から102°において所要エネルギが少なくなる傾向が見られた。茎が刃に向かって傾いているときの方が比切断エネルギは小さかった。茎が密集しているときよりも単独で存在するときの方が比切断エネルギは小さかったが,密集させた茎の数が多くなると切断速度の増加に伴い比切断エネルギは減少した。

 

3自由度フロントローダ用制御システムの開発
――農業用車両のハンドリング機能高度化――

張  強・本間 毅・瀧川具弘・小池正之

キーワード:ハンドリング装置,機能高度化,軌道追従制御,運動特性,操作性

 

 農業用車両のハンドリング能力向上を目的として,コンピュータ制御フロントローダの開発を行った。従来型のフロントローダに1回転自由度を付加した実験用フロントローダを試作した。次にフロントローダのバケット取り付け点を直線上や曲線状の軌道に沿ってガイドする制御系を設計した。実験の結果,フィードフォワード制御を用いた制御系により,バケットが指定した軌道を3cm程度の誤差で追従することを確認できた。追従精度を向上するために電磁比例弁の制御遅れを考慮したフィードバック系を追加した。フィードバック制御によって軌道からの誤差は2cm以下に減少した。続いて,作業者の操作による重量物ハンドリングに,開発したコンピュータ制御系を応用した結果,操作に習熟していない作業者でも,ジョイスティックを用いることで容易に重量物を精度良く取り扱い可能であることがわかった。

 

技術論文

畦畔草刈機の開発(第1報)
――刈取装置及び基本性能――

宮原佳彦・戸崎紘一・市川友彦・黒見晃志

キーワード: 畦畔,水田,除草,草刈機,歩行形

 

 水田畦畔の除草作業には刈払機が使われることが多いが,作業能率の低さと不安定な作業姿勢による労働負担の大きさ等が問題となっている。そこで,畦畔の上面と片側法面の雑草を二面同時に刈り取る方式の自走式歩行形草刈機を開発した。
 開発した畦畔草刈機は,上面が30cm,法面が30〜70cm程度の幅の畦畔において,法面の刈幅を調節しながら雑草を刈り取ることができる機構を有している。また,畦畔上での安定した作業及び走行を可能にするため,前輪舵角調節機構を持つ前後両輪駆動方式の走行部を採用した。開発機を供試して,上面45cm,法面30〜70cmの畦畔等で試験した結果,作業は円滑に行うことができ,その際の作業能率は刈払機の約2倍であった。

 

 

近赤外分光法による高水分小麦の品質測定(第2報)
――高水分小麦の容積重,デンプン粘度(フォーリングナンバー)の測定――

夏賀元康・仲村彰敏・川村周三・伊藤和彦

キーワード:近赤外分光法,高水分小麦,容積重,デンプン粘度(フォーリングナンバー)

 

 小麦の品質評価基準である容積重とデンプン粘度(フォーリングナンバー)の測定は,現在はそれぞれ専用の装置で測定しているが,高水分小麦の水分とタンパク質含量の測定に導入が進んでいる近赤外分析計がこれらの推定にも利用できれば,現場での省力化に大きく寄与する。このため1999年から2001年の3年にわたり北海道産小麦の収集を行い,これら容積重とデンプン粘度(フォーリングナンバー)の推定精度の検討を行った。その結果,容積重ではr2=0.77,SECV=18g/Lが得られ,これは低品質小麦の仕分けには十分な精度であると判断された。一方,デンプン粘度(フォーリングナンバー)ではr2=0.49,SECV=63sが得られ,これは容積重の推定精度より劣り,また,実用的な精度を求められる300s以下で精度が劣ったが,低品質小麦の予備選別には利用可能な精度であると判断された。実用化するためにはさらにデータを蓄積する必要はあるものの,荷受け段階で近赤外分析計により1次選別を行い,疑わしいもののみを専用機により測定するという2段階選別を採用することにより,小麦乾燥調製施設での作業の大幅な省力化への可能性が示された。

 

イチゴ栽培用ガントリシステムの開発研究(第2報)
――ガントリの耕うん及び畝立て作業への適用性と隣畝への自動移動――

山下 淳・湯木正一・有馬誠一・玉井大輔・佐藤員暢

キーワード:ガントリ,イチゴ栽培,耕うん,畝立て,作業性能,自動移動

 

 第1報では,ガントリとこれに搭載する作業機として,薬液散布システム及び摘取り作業台を試作した。これらは病害防除及び摘取り作業者の負担軽減に有効であったので,本報では,さらに本ガントリシステムの汎用性を高めるため,市販の耕うん用ロータリ及び畝成形ロータリを装着し,それぞれ耕うん及び畝立て作業への適用性について検討した。この結果,7kW程度の原動機を使用し,走行速度をロータリ耕うんの場合は30cm/s以下,25cmの畝立ての場合は14cm/s以下とするなら,本ガントリで支障なく作業できることが分った。また,砕土性,作業能率,畝成形性の面でも一般農家で使用される現行機と色ないことが分った。さらに,ガントリを隣畝へ移動させるための自動移動台車を試作し,確実に自動移動できることを確かめた。

 

レタス収穫機の開発(第1報)
――レタス収穫作業の現状分析と切断機構の検討――

鈴木尚俊

キーワード:レタス,収穫機,IE,切断機構,ディスクガイド

 

 レタスの収穫作業は屈み姿勢による手作業で行われ,多くの労力がかかっている。本研究は,その省力・軽作業化のために実用的なレタス収穫機を開発することを目的とした。本報告では主産地である長野県におけるレタス収穫作業の現状をIndustrial Engineering(IE)手法を参考に調査分析し,実用的な収穫機開発のためのコンセプトを策定した。また,レタス収穫機開発のための最も重要な要素技術である切断機構として「ディスクガイド方式」に実用化の可能性があることを明らかにした。

 

レタス収穫機の開発(第2報)
――切断機構の改良と搬送装置の開発――

鈴木尚俊

キーワード:レタス,収穫機,ハクサイ,ディスクガイド,平行リンク,切断機構,搬送装置,円滑搬送

 

 レタス収穫機の開発で最も重要である切断機構を開発した。開発した「平行リンク・ディスクガイド方式」は簡易な機構であるが,固定刃および支持部の位置を工夫することによって,ほぼ損失なくレタスを切り取ることが可能であった。また,この切断機構は調節によりハクサイの切り取りも可能であった。高精度で切断するために,刃の高さを微調節可能にしてほ場試験したが,適切りのみを増加させることは困難であった。既往の結球野菜収穫機の搬送装置の特徴を整理したうえで,レタスを円滑に持ち上げる搬送装置を開発した。これらを組み合わせた試作機はレタスを損傷なく切り取って持ち上げ可能なことを実証した。

 

ローカルパーボイリング加工におけるエネルギ消費

ポリトシ ロイ・清水直人・木村俊範

キーワード:エネルギ消費,ローカルパーボイリング加工,初期コスト,パーボイルドライス

 

 インド共和国(西ベンガル地方)におけるローカルパーボイリング加工法(ベッセル,小規模ボイラ,中規模ボイラ)の評価を行った。パーボイルドライス製造のための3手法のエネルギ消費量と,得られたパーボイルドライス品質を測定した。パーボイリングプロセス施設の初期投資額についても算出した。製法の違いによってパーボイル玄米の硬度には違いが確認されなかった。パーボイル精白米表面の明度及び彩度は,製法による差がなかった。小規模ボイラと中規模ボイラで製造されたパーボイルドライスの品質は,ベッセルで製造されたものと比べて消費者にとって受け入れられやすく,市場価格が高いが,初期投資額が大きい。小規模ボイラと中規模ボイラプロセスは,ベッセルプロセスと比べて労働環境条件が良かった。中規模ボイラプロセスは,最もエネルギ消費量(1,659MJ/t)が低かった。ローカルパーボイリングプロセスは中規模ボイラプロセスを適用させることによってパーボイルドライス製造のエネルギ消費量と市場価格が改善される。<

 

ナス科接ぎ木ロボット開発のための基礎的研究

山田久也

キーワード:接ぎ木ロボット,ナス科,トマト,胚軸切断,圧着力,切断刃

 

 ナス科全自動接ぎ木ロボットの設計・開発に際し,トマトを供試材料とし,穂木・台木切断面の合わせ割合・接ぎ木資材による圧着力・接ぎ木切断刃の耐久性などについて,基礎的な試験と確認を行った。その結果,上記各項目について,接ぎ木苗生産現場で経験的に言われているノウハウについて,定量的なデータ収集と定性的な解析を行うことができた。そして,その結果をロボットの開発に反映させた結果,実用化に結びつけることができた。