65巻4号

研究論文

寒冷地における貯蔵技術の確立(第1報)

――カントリーエレベータでの自然放冷による貯蔵――

竹倉憲弘・川村周三・伊藤和彦

キーワード:寒冷気候,貯蔵,超低温貯蔵,カントリーエレベータ,サイロ,穀温,水分,胴割,昇温工程

 

寒冷地のカントリーエレベータでの貯蔵技術の実用化に向けて自然放冷による籾貯蔵試験を行った。その結果,貯蔵中のサイロ内壁付近の籾の穀温が氷点下になること,および結露防止用ファンにより貯蔵中のサイロ内での結露を防止できることを明らかにした。さらに,低温の籾をサイロから排出する際に乾燥機で常温通風する昇温技術を検証した。その結果,サイロからの籾排出時に結露にともなう籾への水分吸着が認められるが,水分は先ず籾殻に吸着し,その後ゆっくりと玄米に水分が移行するために,胴割の発生はないことを確認した。

 

寒冷地における貯蔵技術の確立(第2報)

――カントリーエレベータでの冬季通風冷却による超低温貯蔵――

竹倉憲弘・川村周三・伊藤和彦

キーワード:寒冷気候,自然エネルギ,貯蔵,超低温貯蔵,カントリーエレベータ,サイロ,穀温,水分,胴割,昇温工程

 

サイロ全体の籾の穀温を氷点下に低下させてカントリーエレベータで超低温貯蔵を行うことを目的として,冬季通風冷却による籾の貯蔵試験を行った。その結果,冬季に通風冷却を行うことにより,サイロ内の籾の穀温はすべて氷点下となり,実用規模のサイロ貯蔵において超低温貯蔵が可能であることが実証された。また,低温の籾をサイロから排出する際に,乾燥機で常温通風して穀温を上昇させて玄米の胴割発生を防止する技術を確立した。

 

遠赤外線放射セラミックスによるメタン発酵の効率化に関する実験的研究

織田 敦・山崎 稔・笈田 昭

キーワード:メタン発酵,遠赤外線セラミックス,代替エネルギ,廃棄物処理

 

従来,有機廃棄物の処理方法として用いられてきたメタン発酵は,燃焼性ガスを発生するため,代替エネルギ生産プロセスとしても利用されてきた。しかし,メタン発酵は発酵速度や有機物除去効率の点でまだ問題も多く,簡便な方法でこれらを改善することが必要である。著者らは発酵効率向上のための微生物活性化手法として遠赤外線セラミックスに着目し,まず,回分式実験で発酵槽にセラミックスを投入することによってガス生成量が増加することを確認した。本報では,より実際的な連続式発酵実験によって同様の発酵促進効果を確認した結果を報告する。すなわち,この効果は,セラミックスが菌体保持担体として働いただけではなく,放射する遠赤外線が微生物の増殖に寄与したことにもよると推察された。

 

穀粒流量の変化に基づくプレートファンの速度制御に関する研究

松井正実・井上英二・桑野朋子・森  健

キーワード:脱穀制御,穀粒流量,自脱コンバイン

 

自脱コンバインでは,穀粒を精選回収するために唐箕による風選別が行われている。唐箕から吐出される選別風はオペレータによって調節が可能となっているが,穀粒流量の変動を認識して最適な風速に常に調節することは困難である。本研究では流量変化に伴う穀粒損失の低減を目的として,市販の選別用唐箕を用いて,ファン回転速度毎の穀粒流量と穀粒損失の関係を明らかにした。また,所定の穀粒損失が得られるように穀粒流量に応じたプレートファンの回転速度制御を行った。その結果,ファン回転速度毎の穀粒流量と穀粒損失の関係を得て,これを基に目標とする穀粒損失を得るためのファン回転速度に制御することが可能となった。

 

規範モデル追従制御による前後輪自動操舵(第1報)

――前後輪舵角位置サーボ系の開発――

西池義延・梅田幹雄

キーワード:規範モデル追従制御,H∞制御,予測誤差法,水田管理ビークル

 

操縦安定性向上のために,車両運動の規範モデル追従制御系を構成するには,マイナーループとして,前後輪舵角を制御する位置サーボ系の構築が必要となる。そこで,水田管理ビークルに油圧ポンプおよび油圧シリンダを取り付け,前後輪を電気信号により駆動できるようにした。また,前後輪舵角を制御するフィードバックコントローラは,プラントモデルの変動を考慮できるH∞制御により設計した。ステップ応答実験結果は,前輪で0.5s以内,後輪で0.3s以内に指令値に到達し,安定化が達成された。耕うん後および代かき後の圃場における走行実験の結果も,本位置サーボ系の追従性能は良好であった。

 

規範モデル追従制御による前後輪自動操舵(第2報)

――カルマンフィルタによる横速度観測器の構成――

西池義延・梅田幹雄

キーワード:規範モデル追従制御,拡張カルマンフィルタ,カルマンフィルタ,横速度観測器

 

規範モデル追従制御系を構成するには,横速度の推定が不可欠である。そこで,拡張カルマンフィルタにてコーナリングパワーの代表値を求め,その値を用いてカルマンフィルタによる横速度観測器を構成し,横速度を推定する手法を検討した。シミュレーションによる検討の結果,カルマンフィルタによる横速度推定および拡張カルマンフィルタによるコーナリングパワー推定の有効性が確認された。また,拡張カルマンフィルタによるコーナリングパワー推定実験を,コンクリート路面および耕うん後,代かき後の圃場において行い,それぞれ具体的なコーナリングパワーの代表値を得た。

 

枝豆のレーザセンサ識別システムの開発

佐々木 豊・鈴木正肚・齋藤友宏

キーワード:枝豆,等級選別,レーザセンサ,遺伝的プログラミング

 

枝豆の等級選別は,現在人の視覚選別に頼っているため,多大な作業時間を要する。このため,作業時間の短縮と自動化が望まれている。本研究では,形状情報により識別可能な等級選別を対象に,レーザセンサを用いた識別部を構築した。本報では主に次の結果を報告する。1)レーザセンサ識別システムの開発,2)自己解体型遺伝的プログラミングの導入,3)多段識別システムの構築

 

農業ロボットのための重量物ハンドリングマニピュレータ(第1報)

――機構設計――

酒井 悟・飯田訓久・梅田幹雄

キーワード:農業ロボット,重量物ハンドリング,運動学,平行形マニピュレータ,スイカ,収穫

 

農業用重量物ハンドリングマニピュレータの第1段階の研究として,マニピュレータの機構を議論する。まず,マニピュレータの新たな運動学モデルを提案し,従来の運動学モデル(極座標形,多関節形,円筒座標形,直交座標形,SCARA形)と比較して,農業分野における重量物ハンドリングに適切であることを運動学解析によって示した。次に,提案したモデルの技術課題としてスイカ収穫作業を選定し,油圧モータ,油圧シリンダ,DCモータをアクチュエータとする実機を試作した。最後に,試作機を用いて屋外でのスイカ収穫実験を行った。実験の結果,作業成功率は規格外のスイカを含めて86.7%,作業時間40sであった。規格内のスイカに対しては全て成功した。

 

農業ロボットのための重量物ハンドリングマニピュレータ(第2報)

――LQ制御系設計とμ解析――

酒井 悟・大須賀公一・福島宏明・飯田訓久・梅田幹雄

キーワード:農業ロボット,スイカ収穫,LQ,ロバスト制御理論,μ解析

 

農業用重量物ハンドリングマニピュレータの第2段階の研究として,マニピュレータの制御系を議論する。まず第1報の実験結果に基づき,作業速度を改善するための戦略を定めた。次に,制御対象のモデル化とパラメータ同定を行った。そして,定めた戦略に基づいてLQ制御を用いた切替制御器を設計した。続いて,想定される構造的不確かさのもとでの,閉ループ系のロバスト安定性を解析した。最後に,設計・解析した制御系を用いて屋外スイカ収穫実験を行い,作業速度が約3倍になったことを確認し,制御系の有用性を示した。作業時間は14sであった。

 

真空冷却中の青果物の熱画像による温度計測

土谷英範・大下誠一・川越義則・五月女 格・瀬尾康久

キーワード:真空予冷,熱画像,熱電対,水分蒸発,熱伝導,非接触計測

 

真空冷却中の青果物の温度を熱画像によって非接触で計測可能な装置を構築し,レタス表面の温度分布の連続的な変化を計測した。レタスは,葉部では急速に,葉肋部では徐々に冷却される様子が,熱画像によって面的に計測された。また,真空冷却時のレタスの品温を熱電対によって計測する際,計測部位からの水分蒸発によって周囲の領域よりも温度が低く計測されることを示すとともに,熱電対による温度計測上の問題点を指摘した。熱電対の設置に由来する水分蒸発が明らかとなり,葉肋において熱電対の挿入部分のみが急速に冷却したことから,レタスの真空冷却プロセスは,葉では水分蒸発,葉肋では熱伝導による冷却であることが明瞭となった。

 

技術論文

呼吸特性計測・制御装置の試作とブロッコリーへの適用

疋田慶夫・安部武美

キーワード:高温炭,ボード,シート,農工産廃棄物,糊料,不織布,光触媒,二酸化チタン,エチレン,リサイクル材

 

CA貯蔵やMA包装の際の適切なガス組成を自律的に探索するシステムの構築を目的として,N2及びCO2ガスボンベ,空気コンプレッサーを成分ガスの供給源とし,アクリル製貯蔵容器(10.4L)に必要なガス組成を形成する計測・制御システムを試作した。また,O2吸収速度,CO2排出速度,呼吸商の計算式を導き,これら呼吸特性の計算に必要なガス移動係数の測定法と併せて,本システムによる呼吸特性の計測方法を示した。また,試作したシステムをブロッコリーに適用し,3種類の大気組成下における呼吸特性を計測した結果,O2吸収速度はO2濃度の減少によって支配的に抑制された。また,CO2濃度の増加によるCO2排出速度の抑制効果が認められた。

 

4輪操舵車両のアクティブ制御に関する研究(第1報)

――横変位・姿勢角独立制御特性――

佐藤邦夫・宮本秀樹・井上紀夫・法貴 誠・中沢正明

キーワード:トラクタ,4輪操舵,アクティブ制御,直進性,横変位,姿勢角

 

作業車両の姿勢制御性を向上させることを目的として,4輪操舵車両のアクティブ制御システムを構成し,制御特性計測実験を行った。実験車両は,前車軸操舵機構と後車軸操舵機構を別々に制御する2軸独立制御型4輪操舵車両である。本研究で構成した制御システムは,横変位と姿勢角を独立に制御するための制御量を線形に結合して前後の各操舵量を制御する方式とした。走行実験の結果,機構の制約による干渉はあるものの,横変位と姿勢角を独立の制御変数として制御できることが確認された。