65巻3号

研究論文

野菜の養液栽培における海洋深層水の利用

繆 冶煉・橘 昌司・三浦正伸

キーワード:海洋深層水,電気透析,養液栽培,培養液,野菜,ホウレンソウ

 

野菜の養液栽培に海洋深層水を有効的に利用するための基礎データを得ることが本研究の目的である。まず,一価イオン選択交換膜を用いた電気透析により,深層水に含まれるNaClを選択的に除去した。次に,電気伝導度5〜25dS/mの電気透析深層水で培養液を調製してホウレンソウの養液栽培を行い,その収量と栄養成分含量を調べた。電気透析深層水は電気伝導度10〜50dS/mの範囲において,K濃度とNa濃度が電気伝導度の一次関数で表された。深層水を電気伝導度16dS/mまで電気透析して10倍希釈すれば,海水塩類によるホウレンソウの生育障害がなく,電気伝導度5dS/mまで下げれば比較的高い収量が得られた。電気伝導度10dS/mの電気透析深層水を11倍希釈して使用した場合,ホウレンソウの蛋白質,粗灰分,還元型ビタミンCなどの含量が脱イオン水関連の対照とほぼ同じであった。

 

サトウキビ梢頭部の分別システムに関する研究

黄 立翰・岡本嗣男・芋生憲司・海津 裕

キーワード:サトウキビ,梢頭部,表面粗さ,反射光強度,レーザ,尖度

 

日本では各地のサトウキビ生産圃場において,ハーベスタによる機械収穫が導入されている。これにより作業効率が向上したが,一方で製糖歩留りを低下させる頭部が原料茎に混入して工場に持ち込まれるようになった。本研究ではこの頭部と原料茎を分別するシステムについて検討した。収穫されたサトウキビに緑色レーザビーム(出力4mW,波長543.5nm)を照射してその後方反射光の強度を光センサ(アバランシェフォトダイオード)で測定した。頭部と原料茎では表面粗さが異なるので,反射光強度分布のパターンの違いから両者を区別することが可能である。頭部22本,原料茎32本を供試して実験を行った。強度分布パターンの尖度をパラメータとして判別した結果,頭部正答率は90.9%,原料茎正答率は71.9%,全正答率は79.6%であった。

 

農用車両における規範モデル追従制御の検討(第1報)

――シミュレーションによるシステム同定の検討――

西池義延・梅田幹雄

キーワード:規範モデル追従制御,システム同定,シミュレーション,横速度,ヨー角速度,有界時変な不確かさ,コーナリングパワーの摂動

 

本研究は,規範モデル追従制御系を構成することで,操縦安定性の向上を図ることを目的としている。本報では,ロバスト制御のためのシステム同定法の適用による,コーナリングフォースの非線形性および変動を考慮した車両運動特性のモデリングの可能性を,シミュレーション上で検討した。その結果,横速度,ヨー角速度および前後輪舵角から,車両の代表的な運動特性およびコーナリングパワーの摂動の大きさがパラメータ集合の幅と

して推定可能という知見が得られた。

 

農用車両における規範モデル追従制御の検討(第2報)

――制御系設計およびシミュレーションによる性能確認――

西池義延・梅田幹雄

キーワード:規範モデル追従制御,定数スケールドH制御状態フィードバック問題,シミュレーション,横速度,ヨー角速度,有界時変な不確かさ,コーナリングパワーの摂動

 

1報では,コーナリングフォースの非線形性および変動を,有界時変な不確かさを持つ変動パラメータとしたコーナリングパワーの摂動とみなして,システム同定を行なった。その同定結果を対象とした規範モデル追従制御系の設計問題を,定数スケールドH制御状態フィードバック問題として解いた。第1報で報告したシミュレーションにより,制御性能を確認した結果,規範モデル追従制御系の実現の可能性が示唆された。規範モデル追従制御系の実現は,車両の運動特性を自由に変更でき,また,タイヤ−路面特性によるその変化を抑制できるということを意味するため,本手法は,農用車両の操縦安定性の向上に有効であると考えられる。

 

マイクロチャンネル内の二層流を利用した細胞膜水透過係数測定法の開発

五月女格・大下誠一・瀬尾康久・川越義則・鳥居 徹

キーワード:浸透ストレス,水分損失,青果物,ホウレンソウ,水移動

 

細胞膜水透過係数は,青果物の品質に影響する青果物内部の局所的な水移動に深く関わっている。細胞膜水透過係数の測定においては,細胞に外部浸透圧変化を与えるため,細胞周囲の溶液を速やかに置換する必要がある。しかし既存の測定法では,溶液置換に時間を要することによる誤差が大きい,もしくは多数の試料細胞を必要とする等の問題があった。本研究では既存の測定法の問題を解決した,新たな細胞膜水透過係数測定法である二層流法を考案し,測定装置を開発した。二層流法と既存の測定法の一つであるマイクロピペット法にてホウレンソウ葉細胞の細胞膜水透過係数を測定した結果,二層流法により精度の高い測定が行えることが確認された。

 

砂地盤における剛性車輪下の土の変形(第1報)

――土の変位特性と変位増分のモデル化――

深見公一郎・上野正実・橋口公一・岡安崇史

キーワード:車輪走行性,砂地盤,土の変形,変位増分モデル,ガウス関数

 

車輪走行性の解明やその向上に関する研究では,車輪近傍の土の変形やそれに伴う応力分布を正確に把握する必要がある。本研究では,剛性車輪を砂地盤上で走行させ,変位計測システムを用いて一定時間間隔で土の変位を測定し,土粒子が円弧状の軌跡を描くことを示した。変位特性をより詳細に把握するために,車輪の鉛直中心線から土粒子までの相対水平距離に対する変位増分の大きさ,その水平成分および鉛直成分の分布特性を検討し,これらはガウス関数と密接な関係があることを明らかにした。その結果に基づいて,ガウス関数をベースとする水平変位増分および鉛直変位増分の数理モデルを提案し,これらは実測値を高精度で表現できること示した。

 

砂地盤における剛性車輪下の土の変形(第2報)

――変位増分モデルの拡張と地盤ひずみの予測――

深見公一郎・上野正実・橋口公一・岡安崇史

キーワード:車輪走行性,変位増分モデル,拡張モデル,ひずみ増分,ひずみ分布,ガウス関数

 

1報では,車輪の鉛直中心線から土粒子までの相対水平距離をパラメータとして水平変位増分および鉛直変位増分をモデル化し,土の変位を高精度で予測できることを示した。本報では,本モデルの深さ方向への拡張をねらいとして,土の変位軌跡が土層深さの増加に伴って相似形を保ったまま指数関数的に縮小することを明らかにした。これに基づいて,ガウス関数をベースとした変位増分モデル中の諸未定係数を地表面からの深さの関数として表し,2次元状態への拡張を行った。これによって地盤内の任意の位置におけるひずみ増分の定式化が可能になり,走行実験に合わせて地盤ひずみの予測を行い,実測値との比較によってその適合性を明らかにした。

 

近赤外分光法による玄米の高速選別に関する研究(第3報)

――玄米一粒成分自動選別機の改良と測定精度の検証――

夏賀元康・仲村彰敏・河野澄夫

キーワード:近赤外分光法,玄米,単粒,水分,タンパク質含量,高速選別,キャリブレーション,精度

 

自然界に存在する変異あるいは人為的な変異を生じさせた原試料の中から育種に必要な成分の粒のみを選別するには,大量の原試料を短時間で処理する必要がある。このための玄米一粒成分自動選別機の開発を行い,第1報では装置の概要をまとめ,粒送り速度は2.8s/粒で,選別速度は実用レベルに達したことを報告した。また,第2報では装置の精度について論じ,タンパク質(DM)の推定精度がSEP=0.43%であり,育種目的には十分な精度が得られたことを報告した。本報では,目標である選別速度1.0s/粒に近づくため粒送り機構の改良を行い,また,精度のさらなる改良を目指して光学系の改良を行った。その結果,総合選別速度は1.3s/粒が,タンパク質(DM)の推定精度はSEP=0.39%がそれぞれ得られた。これらは開発の目的のためには十分な速度と精度であり,今後育種や混米の検出などへの応用が期待される。

 

弱光照射貯蔵中のサラダナのCO2吸収速度予測

内野敏剛・原田文香・胡 文忠

キーワード:弱光照射,サラダナ,CO2吸収速度,予測,光補償点,貯蔵,光合成,暗呼吸速度

 

弱光照射貯蔵中のサラダナのCO2吸収速度は,チャンバ内のガス環境や呼吸速度の変化によって,経時的に変化する。CO2吸収速度の変化を予測できれば,条件に合わせた最適照射光強度の算出が簡便に行えるため,以下のCO2吸収速度変化の予測式を提案した。

ここに,k : 比例定数(4.87×10−3mol・m−2),[C] : CO2濃度(ppm),t : 時間(h),f : 葉緑体によって吸収されない光の割合(0.23),I : 照射光強度(μmol・m−2・s−1),Γ* : 呼吸速度を無視したときのCO2補償点(21.5ppm),a, b : パラメータ(0.308μmol・m−2・s−1,0.010h−1)。照射光強度Iが3.4,6.5μmol・m−2・s−1のとき,上式による計算値は実測値と一致し,CO2吸収速度の予測が可能であることが示された。

 

技術論文

再利用生物資源と光触媒とのハイブリッドリサイクル材の試作

木幡 進・梅田靖二・秋岡桂悟・緒方 淳・道脇準一・泉しのぶ・山本栄人

キーワード:高温炭,ボード,シート,農工産廃棄物,糊料,不織布,光触媒,二酸化チタン,エチレン,リサイクル材

 

既報に引き続き,主原料の高温炭粉に天然物由来糊料(アルギン酸ナトリウム,工業用スターチ糊)を用いて農工産廃棄物バインダ(イ草,焼酎廃液,ヒノキ樹皮ほか)及びTiO2光触媒をハイブリッドさせたリサイクル材(シート及びボード)の試作を行い,配合比や製造条件,成形法を検討し,土壌中での分解性と光触媒機能の発現を確認した。常温乾燥タイプの光触媒を担持したシート及びボードはエチレンガスを吸着し,シートは1.5時間までに約15%,ボードは0.5時間までに32〜45%のエチレンを光分解した。光触媒による有機物バインダの光分解を抑制する目的で改質光触媒(TiO2を水酸アパタイトで被覆)担持シートを製造したが,そのエチレンガス分解能は低かった。

 

粒状物散布機のマップベース可変制御システム

帖佐 直・柴田洋一・大嶺政朗・小林 恭・鳥山和伸・佐々木良治

キーワード:GPS,粒状物散布機,散布マップ,可変制御技術,精密農業

 

GPSから得られる位置情報に基づき,粒状資材の散布量をマップベースで制御するシステムを開発した。 システムは,粒状物散布機および専用のマップ編集プログラムで構成される。散布量の調節は,繰り出しロールを駆動するモータの回転数制御による。作業幅は10mで,4つのモータで2.5m毎に制御される。散布作業にあたっては,マップ編集プログラムを用いて,あらかじめ散布マップを作成する。作業中は,GPSで圃場内の位置を認識し,散布マップを参照しながら,散布量を制御する。 本システムを水田の散布作業に適用し,±0.6m未満の誤差で可変散布できることを実証した。

 

大型法面草刈り作業技術の開発

吉田智一・亀井雅浩・土屋史紀・石田茂樹

キーワード:畦畔,法面,草刈り,草刈機,雑草管理

 

中山間田地域に多く存在する伝統的畦畔法面や,基盤整備の進展に伴って増大している大型法面を維持管理していく上で大きな問題となっている草刈り作業を軽作業化するために,親機と子機からなる吊り下げ式法面草刈機を試作し,その作業性能を調査した。本機は,畦畔天端を走行する親機が,1本のロープを介して,草刈りを行う子機を吊り下げ,親機と子機がそれぞれ移動しながら法面の草刈りを行う。性能試験の結果,本機は刈払機と同等以上の作業能率(3〜6a/h)を示し,なおかつ軽作業化が可能であった。

 

速  報

播種前後の鎮圧による整列播種精度向上効果の検討

藤井桃子・小林 研

キーワード:播種,整列播種,鎮圧,播種位置,種子方向

 

乳牛ふん堆肥化反応に寄与する微生物種の組み合わせによるスーパーオキシドジスムターゼ活性の変化

宮竹史仁・岩渕和則

キーワード:堆肥化,乳牛ふん,微生物,UPGMA系統樹,スーパーオキシドジスムターゼ活性