65巻1号

研究論文

産業用無人ヘリコプタを用いた農地情報の

リモートセンシングシステム(第1報)

――ほ場空間データのGISマッピング――

杉浦 綾・野口 伸・石井一暢・寺尾日出男

キーワード:無人ヘリコプタ,リモートセンシング,GDS,マッピング

 

本研究の目標は,無人ヘリコプタに搭載されたマシンビジョンやレーザー測距器などのセンサから収集・抽出された作物情報を地理情報システム(Geographic Information System ; GIS)を用いてマッピングできるシステムの開発にある。本研究で用いたヘリコプタには慣性航法センサ及び地磁気方位センサ(Geomagnetic direction sensor ; GDS)が搭載されており,機体のロール角,ピッチ角および絶対方位が計測できる。さらに,ポジショニングセンサとしてRTK−GPSを採用し,絶対座標の計測が可能である。本報ではヘリコプタにイメージングセンサを装備したが,センサによって画像を取得する場合,機体姿勢によって画像に外部歪が生じる。その歪を取り除くために画像座標系を絶対座標系へ変換する必要があり,精度の高いマッピングにはヘリコプタの姿勢角センサの精度向上が不可欠である。本報はGDSと姿勢角センサのバイアス同定法を考案し座標変換精度の向上を目指した。高度30mから70mの範囲で撮影した画像を最大誤差で41cmの精度で絶対座標系に変換できた。

 

結束機を用いた自脱コンバインのためのワラ収量計測

下保敏和・飯田訓久・梅田幹雄・李 忠根

キーワード:精密農業,ワラ量マップ,結束機,GPS

 

イネは,土壌や肥料から吸収した栄養分を使って,モミだけでなくワラの生産を行う。したがって,イネの成長と吸収した栄養分の関係を調査するためには,モミとワラの収量を計測する必要がある。本研究では,自脱コンバインでイネを収穫しながらワラの収量計測を行うため,ワラ結束機を用いた計測装置を試作し,ほ場実験を行った。この結果,試作した計測装置では,結束機で結束するワラの大きさはワラ含水率による影響は見られなかったが,コンバインの作業速度による影響が大きかった。そこで,作業速度(0.35-0.94ms)に応じてワラ束の大きさを補正することで,ワラ質量マップを作成した。

 

水田におけるワラ量マップ

下保敏和・飯田訓久・李 忠根・梅田幹雄

キーワード:精密農業,ワラ収量マップ,イネの生育量

 

精密農法により,イネの生長をコントロールして均一で高いモミ収量を得るためには,定量的に生育期のイネの生長量と収穫期のモミとワラの量を計測し,それらの関係を分析する必要がある。本研究では,2年間にわたり同一水田ほ場のイネの生育量,モミとワラの収量の計測を行った。このデータをもとに,ジオスタティクスの手法により分析を用いて,モミだけでなく,ワラの収量に関して空間依存性の評価とクリギングによるマップの作成を行った。また,イネの生育量とワラ収量の関係についても考察を行なった。この結果,ワラ収量は平均6.8thaで,変動係数は9.53であった。ワラ収量の空間依存距離を示すレンジは13mであった。

 

環境調和型高効率バイオガス用コージェネレーションシステムの開発(第4報)

――BIOCGSの経済性評価――

朴 宗洙・寺尾日出男・石井耕太

キーワード:バイオガス用コージェネレーションシステム(BIOCGS),経済性評価,収益指数,環境性評価

 

バイオガス用コージェネレーションシステム(BIOCGS)の普及のためにはシステムの導入による経済性の成立が必要である。本報ではBIOCGSの経済性を評価する目的で経済性を決定する主要パラメータを設定し,容易に評価できる式を作成した。また,各パラメータの変化が経済性に及ぼす影響を検討した。BIOCGSの経済性向上のためにはバイオガスと軽油単価の低下,電力単価の上昇,BIOCGS性能の向上が最も重要な条件であることが明らかとなった。乳牛100頭を飼育する畜産農家に20kW(72MJh)級のBIOCGSを導入する場合,年間の収益指数は約48万円kWh(13.4万円MJ)となり,投入資本の回収年数を15年とした場合,投入資本の回収ができるBIOCGS設定価格は960万円となった。さらにこの場合,BIOCGSの導入によってCO2排出量は年間約87tonの削減効果が期待され,これは約3.0haのブナ林が1年間に固定する二酸化炭素量に相当する。

 

2Dトラクター作業機系衝撃頻度解析シミュレータの開発

甫守仁士・酒井憲司・笹尾 彰・澁澤 栄

キーワード:トラクタ,道路走行,衝撃振動,非線形振動,シミュレータ,タイヤモデル,フラクタル路面

 

今回開発したシミュレータは,様々なパラメータ条件におけるトラクタ作業機系のダイナミクスをシミュレートし,道路走行時の安定性判定を行えることを目的として開発した。本論文では,まずシミュレータの基本構成について述べ,次にシミュレータ入力路面について述べた。数値実験ではシミュレーション値とモデル実験値との比較をおこなった。その結果Modified Footprint Tire Modelをタイヤモデルに用いることによって,路面入力に対する発生衝撃振動の正確な記述が可能となった。また本シミュレータでのパラメータスタディーにより,作業機質量に対してトラクタ質量が小さい場合には前輪が路面から離れやすい状態になることが示された。

 

太陽光発電併用メタン発酵システムのエネルギシミュレーション

織田 敦・山崎 稔・笈田 昭

キーワード:地域分散型エネルギ,メタン発酵,農業バイオマス,太陽光発電,シミュレーション

 

環境負荷の少ない地域分散型のエネルギ生産システムを構築することを目指し,太陽光発電を補助エネルギ源として併用した農業バイオマスメタン発酵システムを試作した。試作システムは当初の設計方針通り,年間を通して,運転に必要なエネルギのほぼ全てを太陽光発電によって賄うことができた。本報では,システムの実用性や汎用性を検討するため,発酵槽の諸元と気象条件をもとにした,発酵槽運転のための消費エネルギとソーラーセルによる発電エネルギに関するシミュレーションを行った。その結果,シミュレーション値は実測値とよく一致し,このモデルによって実用化への指針が得られることが明らかになった。

 

ゴム履帯の走行抵抗に関する研究(第3報)

――転輪荷重の実測による走行抵抗シミュレーションの検証――

稲葉繁樹・井上英二・光岡宗司・橋口公一・松尾隆明

キーワード:ゴム履帯走行装置,転動抵抗,走行抵抗,転輪荷重計測,シミュレーション,転輪配置,力学モデル

 

1報ではゴム履帯走行装置に発生する転輪の履帯に対する転動抵抗について報告を行い,第2報では転動抵抗に起因する走行抵抗について,力学モデルに基づくシミュレーション法を提案し,走行抵抗と密接な関係を持つと推察される動力負荷変動との関連性について論じた。しかし,提案したシミュレーションの適応性について更に詳細な検証を行う為には,ゴム履帯装置の走行抵抗で重要な役割を持つ履帯からの転輪荷重を走行中に直接測定することが必要不可欠である。

 そこで本報では,実機にて測定しうる転輪荷重計測システムを提案し,実測値とシミュレーション結果との照査により,実走行の走行抵抗予測に関する適応性について検証した。その結果,実験条件として与えた転輪配置において各配置の差による走行抵抗の影響を検証することが可能となった。

 

地磁気方位センサとジャイロスコープの航法センサ複合化による自動直進アルゴリズム(第3報)

――振動ジャイロスコープによる方位推定――

水島 晃・野口 伸・石井一暢・寺尾日出男・松尾陽介・山本聡史

キーワード:自動直進走行,地磁気方位センサ,振動ジャイロスコープ,適応線スペクトル強調器,最小二乗法

 

本研究は,極力低コストに自動直進走行システムを開発することを目的としている。航法センサとして地磁気方位センサとジャイロスコープを採用した。本報では,地磁気方位センサの傾斜補正用の傾斜計に静電容量タイプの傾斜計を,ジャイロスコープに圧電振動ジャイロスコープを採用し,高精度な方位推定法を提案した。はじめに,傾斜計のノイズを適応線スペクトル強調器によって除去することを試みた。次に,圧電振動ジャイロスコープのドリフトを最小二乗法を適用することで推定した。さらに,地磁気方位センサと圧電振動ジャイロスコープの補正出力を融合し,高精度な方位推定法を構築した。最後に構築した手法の精度を評価するために自動直進走行試験を行った。その結果,地磁気方位センサと光ファイバージャイロスコープを使用した自動直進走行と同等の精度が達成された。

 

負イオンとオゾンの混合ガスによる青果物の腐敗防止

谷村泰宏・広淳二・田中敬一・朝倉利員

キーワード:ポストハーベスト,貯蔵,負イオン,オゾン,真菌,殺菌,農産物,果実

 

我々は負イオンとオゾンの混合ガスによる殺カビ特性,および青果物貯蔵への本殺カビ技術の適用の可能性を調べた。基礎試験の結果,温度293K,相対湿度90%において,濃度3.0×1012ionsm3での負イオン処理,もしくは濃度0.05ppmでのオゾン処理をそれぞれ単独に行った場合,寒天に植え付けた黒こうじカビ胞子の殺菌効率は非常に小さかった。しかし,上述の濃度の負イオンとオゾンを混合して処理することにより劇的に殺菌効果が増大することがわかった。また,実用規模の冷蔵庫においてブドウなどの代表的な青果物の品質に悪影響を与えることなく表面においてカビの成長を抑制でき,負イオンとオゾンによる殺カビ方法は青果物の貯蔵に適用できることが明らかになった。

 

技術論文

田植機の植付苗量制御技術の研究(第1報)

――マット苗の少量掻取り――

窪田 潤・小西達也

キーワード:田植機,苗量制御,掻取り,マット苗,一株本数,欠株

 

本研究は,マット苗を用いた田植作業の軽労化,省力化のために,所要苗枚数を減ずる安定した少量掻取りによる細植えおよび農道上への苗の計画的配置を可能とすることを目的とする。本報では,現行田植機を用いて少量掻取りを行い,その植付状況から,苗使用量を半減することによる欠株の増加および苗載台苗残量の減少に伴う一株本数の減少が生ずることを確認した。少量掻取り技術として,欠株減少のために掻取り口および植付爪について検討を行い,試作爪をほ場試験に供試した結果,掻取り精度向上の見込が得られた。

 

田植機の植付苗量制御技術の研究(第2報)

――植付状況の検出と苗送り量の制御――

窪田 潤・小西達也

キーワード:田植機,苗量制御,掻取り量,マット苗,一株本数,欠株,苗送り量,株間

 

本研究は,マット苗を用いた田植作業において,省力化,軽労化のために安定した細植えおよび所定の面積を設定枚数で過不足なく植付けることを目的とする。前報では,現行田植機による細植え試験,安定した細植えのための少量掻取り技術について報告した。本報では,作業中の植付状況把握を目的とした株間検出センサ,苗使用量検出センサをほ場で供試した結果,実用に耐えることを確認した。また,苗載台苗残量に応じた苗送り量制御を行うことによって苗使用量が減少することを確認した。

 

高精度水稲湛水条播機の開発(第4報)

――開発機の地域適応性――

西村 洋・林 和信・後藤隆志・堀尾光広・市川友彦

キーワード:水稲直播,条播,大面積,地域適応性,実用化

 

水稲湛水直播の苗立ちの安定化に大きく影響する表面出芽や浮苗・転び苗を減少させて,安定した播種深さに高い精度で播種できる,湛水土壌中条播機を開発した。開発した8条又は10条の高精度水稲湛水条播機を円滑に実用化へ結びつけるため,開発促進評価試験に供試し,現場における厳しい評価のもとで,開発機の地域適応性,取扱性及び耐久性等を中心にその性能を調査した。その結果,高い播種精度のもとで大面積の播種作業を行い,開発機の安定した性能が実証された。また,取扱性及び耐久性等に関わる改善点が明らかとなった。これらの結果を踏まえ,開発機は2000年春より市販化された。

 

小規模連棟ハウスに対応したレール式薬剤散布機の開発

――走行装置の開発について――

長裕司・野中瑞生・川嶋浩樹・井澤誠一・西澤準一

キーワード:連棟ハウス,レール走行式,薬剤散布機,DCモータ駆動,省力化

 

1棟当たりの面積が概ね10a以下の小規模連棟ハウスにおいて,梁構造を利用して設置したレールに懸架し,自動往復作業ができる薬剤散布機用のDCモータ駆動走行装置を開発した。開発装置は,作物畝方向のみ自動走行作業を行い,棟間の移動はハンガーレール懸架の簡易な手押し台車で行う。農家が既に所有している動力噴霧機,薬液ホースに接続して利用し,軽量であることから1台で複数のハウスにつけ替えて作業が行える。散布作業能率は人力散布の約2.5倍であった。

 

伝統的パーボイリング加工の改善

ポリトシ ロイ・清水直人・古市伸吾・木村俊範

キーワード:伝統的パーボイリング,パーボイルドライス,パーボイルドライス品質,エネルギー消費

 

伝統的パーボイリング加工法を改善するための実験室スケールの研究を行った。電気炊飯器の上部が開放された条件(開放条件)と密閉された条件(密閉条件)の2つの方法でパーボイリング加工を行った。パーボイリングにおけるエネルギ消費量,パーボイル玄米品質,そして前蒸煮,浸漬,蒸煮中の試料温度を測定した。さらに蒸煮における籾層底部と表面の蒸煮時間毎のパーボイル籾水分とパーボイル玄米の硬度を測定した。密閉条件では開放条件と比較して,前蒸煮や蒸煮過程の早い温度上昇,浸漬過程では遅い温度低下が確認された。パーボイル玄米の硬度は籾層表面のものより低部が高く,密閉条件のパーボイル玄米の硬度は開放条件と比べて高かった。2つの加工条件で製造したパーボイル玄米品質には大きな違いがなかった。密閉条件を適用することによってエネルギ消費量が低減され,伝統的パーボイリング加工法が改善できる。

 

水稲打込み式代かき同時土中点播機の点播形状の改善

田坂幸平・吉永悟志・松島憲一・脇本賢三

キーワード:水稲,直播,点播機,点播形状,打込み播種

 

 水稲の打込み式代かき同時土中点播機における播種精度の一つである点播形状を改善するため,鋸歯型打込みディスクとディスクケースの形状及び種子繰出しロールの第2ブラシの有無等について検討した。点播形状の長径を短くするためには,種子繰出しロールから落下する種子群の広がりを小さくすること,種子繰出しロールから落下した種子が打込みディスクに跳ね返されずに下方に加速されることが重要であり,この2点の改良の結果,長径は9.7cmから6.4cmに短縮されるとともに,点播株率(長径10cm以下の株の割合)は55%から92%に向上した。