64巻5号

研究論文

 

タイの稲作におけるコントラクタ農業の展開(第1報)

――Nong Pla Mor区でのコントラクタ作業の実態――

瀧川具弘・バンチョー バハラヨーディン・小池正之・

プラティアン ウサボリスット・佐久間泰一・楊 印生

キーワード:タイ,中央平原,コントラクタ・システム,コントラクタ,コンバイン,トラクタ,農業機械化,東南アジア

 

タイでは,経済発展に伴い農村での労働力減少,高齢化が進行しており,併行して大形農業機械を使用する受託農作業システムの普及が着実に進んでいる。本研究では,中央平原のNong Pla Mor区を対象とした調査に基づき,このような受託農作業者(コントラクタ)の運用実態を報告する。ここでは,Nong Pla Mor区でのコントラクタ利用の特徴的な状況についてアンケート調査により農民意識と技術受容構造の関係について調べた。調査地では,全農家が耕起から収穫までの諸作業でコントラクタを利用していた。こうした受託農作業では,小形農業機械を利用した互助的形態と,高価な大形機械を利用する半専業的形態とがあった。後者には,乗用トラクタによる耕起作業受託とタイ製普通コンバインを用いた収穫作業受託が該当した。

 

タイの稲作におけるコントラクタ農業の展開(第2報)

――稲収穫コントラクタの活動実態――

瀧川具弘・バンチョー バハラヨーディン・

小池正之・プラティアン ウサボリスット

キーワード:タイ,中央平原,コントラクタ,コンバイン,トラクタ,農業機械化,東南アジア

 

タイ製コンバインを用いた稲収穫作業受託者の役割と活動状況についてタイ国中央平原のNong Pla Mor区での聞き取り調査結果を中心に報告した。タイ製コンバインは普通コンバインの一種で,価格は輸入製品に比べ安価であった。このコンバインは,1990年代初めから普及し始め,現在は約3,000台程度が稼働している。収穫作業委託は,経費が安価で,かつ適期に短時間で作業が実施できる点で評価されていた。Nong Pla Mor区では後継者がいる農家は少なく,将来はコントラクタへの作業全面委託を選択肢と考える農民が多かった。この種のコントラクタは100km以上に及ぶ地域を移動しながら年間7月以上にわたって受託収穫作業を行っていた。このような広範囲での活動は,作業受委託を仲介する地域の実力者でもある仲介者(タイ国でナイナーと称する)によって支えられていた。

 

高水分籾の高精度水分測定技術に関する基礎研究(第1報)

――高周波容量式コンバイン水分計の精度要因と嵩密度補正電極――

加藤宏郎・杉山隆夫・牧野英二・市川友彦

キーワード:精密農法,コンバイン水分計,高周波容量式,嵩密度補正,高水分

 

精密農法に必要なコンバイン用水分計の開発を目的として,非破壊計測可能な高周波容量式水分計の基礎的研究を行った。コンバイン水分計には高水分域での測定が要求されるとともに,高周波容量式では嵩密度や電極容器内の穀物量の変動に対する補正が重要である。そこで,平行平板電極と嵩密度補正機能を持つ電極を試作し,広い水分範囲の籾について10MHzまでの周波数で誘電特性を測定し,嵩密度や穀物量を変化させて水分測定精度に与える影響について実験を行った。その結果,嵩密度補正電極と穀物重量補正式を用いることにより,電極容器が満杯でない場合を含め嵩密度の影響を補正できた。また,周波数が高いほど感度は低くなるが直線性が増加するため高水分域に適用でき,10MHzでは32%w.b. 程度の籾をほぼ実用レベルの精度で,測定できることが明らかとなった。

 

超高輝度型の発光ダイオード(LED)によるヤガ・カメムシ類の防除装置の開発

光刺激の波長およびパルス光の網膜電位(ERG信号)応答特性

平間淳司・荒永 誠・中出智己・宮本紀男・薮 哲男・伊澤宏毅

キーワード:害虫防除,網膜電位,光刺激,LED,パルス光, 波長依存特性

 

害虫防除方法の主流は農薬散布であるが,近年,消費者の農作物の安全性に対する意識が高まり,化学農薬に替わる物理的な防除方法が求められている。筆者らはこれまで昆虫の色覚の反応を利用した超高輝度型の発光ダイオードLEDを用いた光線利用による害虫防除装置の開発に着手してきた。本研究ではその基礎実験として,ヤガ類・カメムシ類に対する網膜電位(ERG信号)の光波長依存特性とパルス光による周波数応答特性について計測した。その結果,以下のことが明らかとなった。

 ERG信号の波長依存特性では可視域前半(約490〜520nm)にピークを示した。

 周波数応答性実験により,ERG信号の最大周波数応答fmaxはハスモンヨトウが約45Hz,オオタバコガが約50Hz,チャバネアオカメムシが約32Hzであった。

 上記の結果に基づき害虫の光受容特性を踏まえた,防除光源装置の開発のための基礎資料を得たので報告する。

 

近赤外分光法における測定波長範囲と光路長が生乳成分の測定精度に与える影響

夏賀元康・川村周三・伊藤和彦

キーワード:近赤外分光法,生乳,測定波長範囲,光路長,精度

 

近赤外分光法による乳成分のオンラインモニタリング技術開発のための基礎試験を行なった。生乳成分の測定を行なう際の測定波長範囲と光路長が測定精度に与える影響を調査するため,近赤外分析装置としてNIRS6500を用い,光路長(試料セル厚さ)1mm,4mm,10mm,波長範囲400〜1,098nm,600〜1,098nm,1,100〜2,498nmで生乳の主要成分である乳脂肪,乳タンパク質,乳糖のキャリブレーションを,乳成分分析計MilkoScan−S54Aを基準として作成した。その結果,乳脂肪では光路長1mm,波長範囲1,100〜2,498nmでSEP=0.17%,光路長10mm,波長範囲400〜1,098nmでSEP=0.38%,乳タンパク質では光路長1mm,波長範囲1,100〜2,498nmでSEP=0.15%,光路長10mm,波長範囲400〜1,098nmでSEP=0.14%,乳糖では光路長1mm,波長範囲1,100〜2,498nmでSEP=0.10%,波長範囲1,100〜2,498nmでSEP=0.07%の測定精度がそれぞれ得られた。短波長域(400〜1,098nm)でも光路長を大きくすれば長波長域(1,100〜2,498nm)と同様な精度のキャリブレーションが作成できることが確認できた。

 

レーザ誘起蛍光法によるレタス生育モニタリング

石澤広明・斉藤保典・雨宮貴明・小松和彦

キーワード:非破壊計測,レタス,レーザ誘起蛍光法

 

現在,農産物の品質管理として実施されている目視検査や化学的な破壊検査方法などの方法は,野菜類が短期間で生育を終え,流通・消費が数日で終了する実態に対応できず,消費者の求める品質要因と必ずしも合致していないなどが指摘される。さらに,栽培の省力化や生産基盤の脆弱化等の問題に対して技術的手段による解決への期待は極めて高い。本研究では,レーザー誘起蛍光(LIF)法を用いた農産物の生育診断法を提案し,実栽培されたレタスを用いて実験的に検討した。その結果,レタスのLIFスペクトル短波長側(460nm)の変化から収穫時期の予測や生育状態計測についての可能性が得られた。また,レタスの糖やポリフェノールなどが短波長側の蛍光帰属について,液体クロマトグラフによる測定値をもとに考察した。

 

脱穀制御のための穀粒流量センサに関する研究

松井正実・井上英二・桑野朋子・平井康丸・橋口公一・森  健

 

キーワード:脱穀制御,穀粒流量,圧電素子,カウント式センサ,自脱コンバイン

 

自脱コンバインで収穫作業を行うとき,脱穀部内を通過する穀粒の量はコンバインの刈り幅,作業速度や圃場の作物の収量によって大きく変動している.本研究では流量変化に伴う穀粒損失の低減,並びに選別性能の向上を目的として,脱穀制御を行うための穀粒流量を把握すべく,圧電素子を用いたカウント式センサを自脱コンバインの穀粒貯留タンク内に取り付けて実験を行った。その結果,センサからの出力と収量との間に高い相関(R=0.92, 0.97)が見られ,制御を行うにあたっては十分な精度を有していることが明らかとなった.

 

市販ロータリ耕うん機によるスクミリンゴガイ被害の軽減

高橋仁康・関 正裕・西田初生

キーワード:スクミリンゴガイ,ジャンボタニシ,ロータリ耕うん,防除,湛水直播,水稲

 

ロータリ耕うんによるスクミリンゴガイ〔Pomacea canaliculata(Lamarck)〕の効果的な殺貝方法を検討するため土槽実験装置を製作し,土壌や耕うん条件を変えて精密な殺貝実験を行った。その結果,硬い土壌で耕うんピッチを小さく一度に砕土する条件で殺貝効果が高いことなどが明らかとなった。その耕うん条件を圃場へ適用したところ慣行の耕うんより14〜35ポイント殺貝効果が高く,殻高10mm以上の中・大貝をほぼ殺貝した。試験圃場への湛水直播水稲栽培試験では,耕うんによる防除を行った場合被害面積が2.3%であったのに対し,慣行の耕うんを行った場合48.1%であり,防除効果を確認した。

 

振動補償付きインパクト式収量センサについて

庄司浩一・川村恒夫・堀尾尚志

 

 振動補償およびドリフト補正ができる収量センサを開発し,コンバインに搭載して圃場実験に供した。センサは拡張四角形リング型ロードセルにアクリル板を取り付けたもので,振動による影響の補償は固定フレームに取り付けた加速度計の出力によりおこなった。これを穀粒タンク入口付近に取り付け,穀粒搬送オーガ先端の羽根から投てきされる穀粒の衝撃力を検出した。しきい値を設定してこの衝撃波形を抽出し,また非抽出部分の出力を用いてセンサ自身の零点を逐次補正することで収量の推定精度を高めた。実測値との標準誤差は0.067kg,相対二乗平均誤差は0.18%であった。

 

水稲の脱粒力の測定

川村恒夫・庄司浩一・徳田 勝

キーワード:水稲の脱粒特性,脱粒力,引っ張り速度,及び稈の水分,品種

 

本研究では,水稲の脱粒特性として1粒の引っ張り試験を行い,を小枝梗から外すのに必要な力を測定した。実験には小型引っ張り試験機と空気圧シリンダによる試作試験機を用い,枝梗を固定してを引っ張った。引っ張り試験機の速度は0.17mm/s, 0.33mm/s, 0.67mm/s の低速度での3段階,空気圧シリンダを用いた場合はやや高速な0.14m/sと0.37m/sの2段階である。供試水稲は粳米,酒米,糯米の20品種である。測定の結果,低速時は速度の影響が少ないこと,脱粒時のと稈の水分が大きく影響すること,品種間の差はかなり大きいこと,品種によっては低水分時の方が脱粒力が大きいことが分かった。

 

ロボット収穫システムに適応するリンゴ果実認識の色モデル

デューク ブラノン・片岡 崇・太田義信・広間達夫

キーワード:農業用ロボット,リンゴ,色モデル,果実収穫,画像処理,マシンビジョン

 

果実の収穫ロボットにおける最初の重要な作業は,果実の認識である。本報では,マシンビジョンシステムを用いたリンゴ(品種 ; フジ)果実の認識のために適応可能な色モデルを異なる照度条件下で検討した。RBGモデル(RGB model),赤と緑の色度による方法(rg−chromaticity method),輝度と赤の色差による方法(LRCD method)の3種類の色モデルについて,画像からリンゴ果実を識別するためのそれぞれのしきい値を,論理的数値決定法を応用して導き出した。色度による方法は,照度条件の影響をほとんど受けず,特に逆光条件下では,最も高い認識率及び最も低いエラー率を示した。これから,色度による方法が,ロボット収穫におけるフジリンゴ果実の認識に適応可能であると結論づけられた。

 

株形成に対応した水稲乾田直播用点播機の開発

片平光彦・久米川孝治・若松一幸・三浦恒子・

松橋秀男・金田吉弘・鎌田易尾・児玉 徹

キーワード:乾田土中早期湛水直播,回転式播種口,リンク機構,収量性

 

 秋田県で普及を進めている乾田土中早期湛水直播栽培では,株形成が可能な点播直播機の開発が望まれている。そこで,多点式接線カムと二段式リンク機構,回転式播種口で点播機構を構成した水稲の多粒点播機の開発を行った。開発播種機は,鎮圧ローラの回転で多点式接線カムを動かし,それをリンク機構から回転式播種口に伝える形式にした。回転式播種口は,外形部と内部バルブで構成し,それを差動させることで水稲の多粒点播を行い,株形成を可能にした。その結果,開発播種機は,作業速度0.53m/s,播種間隔23.7cm,縦7.8cm,横2.8cmの株状に播種することができ,収量が59.1kg/aと潤土条播よりも高くなった。