64巻3号

研究論文

 

コンバインの選別性能に関する研究(第1報)―選別風路における空気流動の解析―

野波和好・梅田幹雄・湯崎芳啓・木村 敦

キーワード:自脱コンバイン,選別性能,選別風路,空気流動,横断流ファン,水モデル

 

本研究では,選別風路における選別風の流れを把握するため,選別風路に被選別物のない無負荷状態での空気流動について解析を行った。空気流れを水流れに置き換えた水モデルを用いて可視化実験を行い,主選別ファンから吸引排塵ファンへの選別風の流れを明らかにした。また,吸引排塵ファンについては吸込み側および吐出側に逆流がみられ,水モデル上で流れを適正化することによってケーシング形状の改良を行った。この形状を実機単体で性能確認した結果,流量係数および圧力係数は大幅な増加となり,最高効率は約5倍となった。

 

コンバインの選別性能に関する研究(第2報)―籾およびワラ屑の終端速度―

野波和好・梅田幹雄・湯崎芳啓・木村 敦

キーワード:自脱コンバイン,選別性能,選別風路,空気流動,終端速度

 

1報では,選別風路に被選別物のない無負荷状態での選別風の空気流動について解析した。空気流動の中で被選別物が如何なる挙動を示すかを考察する上で,被選別物の終端速度を把握することが必要である。本報では,被選別物である籾および屑について,終端速度の測定を行い,空気流による飛散の容易さについて考察した。この結果,穀粒タンクの貯留物に含まれる小枝梗付着籾と切れワラは,籾に比べて終端速度が大きく,空気流れによる籾との分離が困難であることを実証した。また,吸引排塵ファンから排出されたワラ屑の終端速度最大値は2.3m/sであり,籾の終端速度最小値は6.5m/sであったことから,2.3〜6.5m/sが選別に適した風速範囲であることが明らかになった。

 

 

コンバインの選別性能に関する研究(第3報)―選別風路における被選別物の挙動解析―

野波和好・梅田幹雄・湯崎芳啓・木村 敦

キーワード:自脱コンバイン,選別性能,選別風路,空気流動,数値解析,被選別物の挙動

 

1報では,選別風路に被選別物のない無負荷状態での選別風の空気流動について解析を行った。第2報では,被選別物である籾および屑について,終端速度の測定を行い,空気流による飛散の容易さについて検討した。本報では,第1報,第2報の結果をもとに選別風路における籾および屑の挙動を数値解析によって予測するとともに,二次元選別風路模型を用いて実際の挙動について検証・解析を行った。この結果,全体的な籾および屑の挙動については数値解析による予測が可能であることを見出した。また,籾と屑はチャフシーブ上でほとんど分離されたが,その後の1番口および2番口へのワラ屑の混入や,籾の3番口飛散ロスは,チャフシーブの開度によって強く影響を受けることが明らかになった。

 

木質系バイオマスの炭化とインピーダンス特性

小林有一・柏嵜 勝・芋生憲司・竹永 博

キーワード:バイオマス,炭化,インピーダンス

 

バイオマスの炭化過程を直接計測する方法を開発することを目指し実験を行った。木材片を供試試料として加熱炉内で炭化させ,反応中の電気的特性の変化をインピーダンスにより解析した。加熱中には掃引周波数100Hz〜15MHzでインピーダンスを計測したと同時に,温度,発生ガス成分の計測を行い,熱分解反応の開始点・終了点を確認した。インピーダンスを複素平面上で表し,ベクトル軌跡の分類分けを行った結果,熱分解の段階に応じて,その形状は大きく3種類に分類できた。また3種類の軌跡は,基準となる1つの形状の変形で表すことが出来,1つの等価回路の仮定により炭化の進行を知る可能性が認められた。

 

動力学モデルに基づいた養殖用ホタテ稚貝の左殻上向き運動の解析

戸田勝善・林 艾光・矢田貞美

キーワード:ホタテ稚貝,耳吊り養殖,左殻上向き運動,動力学モデル,パラメータ同定

 

本研究は,ホタテガイの耳吊り養殖における自動開孔のための左右殻の方向制御方法を開発するために,着目した力学的現象の解析を行ったものである。著者らは,適当な条件の下で貝を静水中に投入した場合,水中において左殻が鉛直方向上側へ向くように回転することを発見し,この現象を動力学的に解析することによって左右殻の方向制御に対する適用可能性を検討した。この運動を表現する動力学モデルを構築し,運動計測実験により同モデルにおけるパラメータを同定した。同定したパラメータに基づくシミュレーション結果は計測結果と良く一致しており,動力学モデルの妥当性が確認された。また,同運動を本モデルに基づいて解析し,その力学的原理を明らかにした。さらに,構築した動力学モデルをもとに種々の条件下でシミュレーションを行い,左殻上向き運動の左右殻の方向制御に対する適用の可能性を示した。

 

環境調和型高効率バイオガス用コージェネレーションシステムの開発(第3報)―吸気加熱とEGRによる低負荷時の燃焼特性―

朴 宗洙・寺尾日出男・石井耕太

キーワード:地球温暖化,バイオガス,メタン,デュアルフューエル運転,吸気加熱,EGR(排気ガス再循環),コージェネレーションシステム

 

デュアルフューエルコージェネレーションシステム(CGS)の燃料としてバイオガスと軽油を利用する場合,特に低負荷時においてデュアルフューエル運転時の熱効率が顕著に低下する。これは着火遅れの増加,熱発生率の低下,バイオガス中のメタン未燃焼等の結果による。第3報では第2報で明らかになったデュアルフューエル運転の燃焼特性を基に,吸気加熱と排気ガス再循環(EGR)によるデュアルフューエルの燃焼効率および排気特性の改善効果を検討した。吸気を加熱すると着火開始が早くなり,メタンの燃焼率が上昇するのでCGSの熱効率は高くなるが,他方NOx排出量の増加ももたらすのでその排気対策が必要である。従って,NOx排出量の低減に効果的なEGRをかけると高温の排気ガスによって吸気温度が上昇し,吸気加熱と同様な効果が得られる。また,吸気中の酸素濃度が減少するのでNOx排出量を低減させることも可能になった。この結果からデュアルフューエル運転の熱効率改善と有害ガスの排出削減効果のためにEGRが効果的であるとの知見が得られた。

 

水田の土壌パラメータマッピングにおけるサンプリングサイズの影響

イマデ アノム ストリスナ ウィジャヤ・澁澤 栄・笹尾 彰

キーワード:サンプリング戦略,マッピング,リアルタイム分光分析器

 

京都府の100m×50m水田及び石川県の156m×77m水田において,リアルタイム土中光センサーを用いたほ場実験を実施した。京都及び石川の水田ではそれぞれ1m×5m及び1m×10mの間隔で土壌反射スペクトルを観測し,水分,土壌有機物含量,硝酸態窒素,pH及びECの空間変動をほ場全面にわたって推定した。さらにサンプリング間隔を変えて試験標本を作成し,クリーギング誤差を計算した。その結果,積算クリーギング誤差はサンプリングサイズの増大と共に減少して最小値を示し,その後わずかに増加するかほぼ一定の値を示した。またそれぞれの土壌パラメータにつき,最適なサンプリングサイズの存在をつきとめた。

 

籾と玄米の揺動選別の離散要素シミュレーション―楕円要素モデルの有効性について―

鈴木基勝・坂口栄一郎・川上昭太郎・玉木浩二

キーワード:穀物調製加工,籾,玄米,揺動選別,シミュレーション,離散要素法,楕円要素

 

穀物調製加工技術の開発や改良に有用な情報を得ることが可能なシミュレーションモデルの構築を試みた。そのため,楕円要素を用いた離散要素シミュレーションを複雑な数値計算を用いずに開発できる接触点簡易決定楕円要素モデルを用いた。既存の調製加工技術である籾と玄米の揺動選別を対象にして,実機による実験とシミュレーション結果を同一のスケールで比較した。円要素よりも楕円要素を用いた離散要素シミュレーション結果の方が,選別容器の傾斜角の大きさによる選別状態の変化をよく再現した。

 

製茶工程の自動制御(第2報)―製茶工程のセンシング―

吉冨 均・角川 修・田中伸三・中野不二雄

キーワード:製茶,自動制御,センシング,茶葉温度,含水率,しとり度,電気抵抗,かさ

 

前報に引き続き,製茶工程の自動制御システムに必要な工程中の茶葉の状態をリアルタイムで検出する方法を示した。本報では,茶葉の電気抵抗値から含水率を推定する方法や,乾燥と同時に整形を行なう精揉工程で,整形程度を推定するために,茶葉のかさを検出する方法について述べる。また,前報で述べた給・排気の湿度差から含水率を推定する方法において,計測誤差が含水率の推定値に与える影響についても検討した。

 

運搬車のための積載量計測装置

下保敏和・飯田訓久・梅田幹雄・李 忠根

キーワード:精密農業,収量計測,ロードセル,傾斜センサ

 

穀物の収量を収穫作業と同時に計測して,一筆の圃場内での収量変動を調査する研究が行われている。しかしながら,計測誤差も同時に積算してしまうので,正確な収量を求めることが困難である。そこで,別の方法で収穫したモミ収量を計測するために,運搬車に搭載して使用する積載量計測装置の開発を行った。3個のロードセルにより積載したモミの質量を計測し,2個の傾斜センサにより運搬車の姿勢を計測した。実験の結果,開発した積載量計測装置は車両の傾斜が2度以内の場合に±9kg以下の誤差でモミ質量を計測することができた。

 

生分解性プラスチック(ポリ乳酸)製品の分解性

木村俊範・石田頼子・井原 望・斎藤由香

キーワード:生分解性プラスチック,ポリ乳酸(PLA)製品,農業資材,コンポスト化,迅速分解

 

農業資材として普及し始めた生分解性プラスチック(ポリ乳酸(PLA))製品の分解性を知るためにコンポスト化プロセスを用いた分解試験を行った。コンポスト化の主原料として食物残さを用い,実験室規模リアクタでコンポスト化初期過程を繰り返し,PLA製品を20〜45日間曝した。分解評価として試料を直接回収し,分析する方法を採用した。その結果,ごみ袋やマルチングフィルムとして用いられる柔軟フィルムはおよそ3週間で,0.5mm厚の荷造り用バンドや誘導紐はおよそ6週間で分解,消滅するに至った。また,PLAは,一次生分解が支配的である特異な分解特性を有するが,本報の結果は従来のPLAの一般分解過程と同様の傾向を示し,PLA製品は何れもコンポスト化環境下で迅速に分解することが判明した。

 

生分解性プラスチック(ポリ乳酸)製品の簡易分解評価法

石田頼子・井原 望・斎藤由香・清水直人・木村俊範

キーワード:ポリ乳酸(PLA)製品,PLAの生分解特性,簡易分解評価法,コンポスト化

 

近年,農業資材等の用途を目指した種々のポリ乳酸(PLA)製品が出回りつつある。本研究では,一次生分解過程におけるPLAの特異な分解特性を利用し,生分解性プラスチックの実用分解方法と目されるコンポスト化による分解所要時間を予測できる簡易な分解評価法を提案した。その結果とコンポスト化による検証結果とを比較し,何れのPLA製品も予想した期間内で分解するという結果を得た。またPLAの一次生分解特性には試料形態と高次構造等が大きく影響し,これに続く完全生分解にはそれらの影響は小さかった。以上の結果,この簡易分解評価試験はコンポスト化環境下における分解所要時間を知る有効な手段となるものと考えられた。

 

繋ぎ飼い用搾乳ロボットシステムの開発研究(第2報)―乳頭追従のための制御系とロボットマニピュレータの可操作度―

八谷 満・平田 晃・桑名 隆・荊木義孝・比佐慶夫

キーワード:搾乳ロボット,追従,位置フィードバック,逆運動学,可操作度

 

1報で報告した平面3関節型ロボットマニピュレータについて,各軸ごとの周波数応答法による解析結果に基づいて乳頭への追従制御系の設計を検討した。位置制御時の第1, 2および3関節の固有周波数の実測値は,それぞれ3.5Hz, 4.5Hzおよび4.5Hzであった。この値に基づき,ゲインレートを5として,第1, 2および3関節の位置ループ系の交差周波数をそれぞれ0.7Hz, 0.9Hzおよび0.9Hzとし,サンプリングタイムを20msと決定した。乳頭挙動に関するこれまでの基礎調査結果から,本システムは乳頭に対して実時間で追従可能であると判断した。また,XY平面におけるマニピュレータの運動学においては,エンドエフェクタが牛体軸と平行姿勢を維持する条件に拘束することにより,逆運動学問題は本質的に2自由度機構と同様となり,比較的容易に解き得ることを示した。これを踏まえて,マニピュレータの操作能力を検討した結果,80%以上の高い可操作度でティートカップ装着作業が可能であることを明らかにした。