64巻2号

研究論文

 

画像処理による運搬車両の自律走行(第1報)―境界線検出による直進走行制御―

村主勝彦・森本英嗣・梅田幹雄

キーワード:画像処理,自律運搬車両,XYZ変換,大津の方法,座標変換

 

本研究では,例えば,稲作における苗や肥料,収穫物の運搬を農道において無人走行する運搬車両によって行う方法を開発した。農道とほ場間の境界線を画像処理によって検出することにより車両の位置姿勢検出を行った。画像情報にXYZ表色系を適用し,平滑化,2値化処理,Hough変換を行うことで境界線を検出した。検出法は無人走行開始時のように境界線の存在域が未知の場合に適用する全画面型境界線検出法と,車両走行時のようにある程度境界線が把握でき,高速画像処理が要求される場合に対応した高速型境界線検出法との2つから構成しており,後者は前画像から取得した境界線を基に次画像での画像処理範囲を限定する手法である。両処理法を適用した自律走行車両は走行速度0.8m/sでの100m直進走行実験の結果,進行横方向誤差0.2mであった。高速型境界線検出法の画像処理速度は10.1Hzで,全画面境界線検出法の1/5の処理時間であった。

 

画像処理による運搬車両の自律走行(第2報)―衝突回避のための障害物検出―

森本英嗣・村主勝彦・梅田幹雄

キーワード:画像処理,自律運搬車両,HSI変換,大津の方法,座標変換

 

本報は自律走行の安全面を考慮した画像処理による障害物検出手法について報告する。障害物検出のパラメータとして色相,彩度,明度を使用し,平滑化,2値化処理,微小画素群の除去を行い,障害物の画素群を検出した。さらに画像座標系と車両座標系間の座標変換を行うことで検出した障害物と車両の距離を推定し,危険度の判定に用いた。農道での検出実験の結果,開発した障害物検出手法は最大誤差0.4mで障害物を検出し,障害物検出にかかる画像処理速度は5.9frame/sであった。

 

地磁気方位センサとジャイロスコープの航法センサ複合化による自動直進アルゴリズム(第2報)―地磁気の時間・空間変動を考慮した直進制御器の構成―

水島 晃・野口 伸・石井一暢・寺尾日出男・行本 修・山本聡史

キーワード:自動直進走行,地磁気方位センサ,ジャイロスコープ,センサーフュージョン

 

本研究の目的は,地磁気方位センサ(Geomagnetic Direction Sensor ; GDS)とジャイロスコープを使用した自動直進走行システムの開発である。第1報において目標方位を一定とする従来の自動直進方式では地磁気の時間・空間変動及びジャイロドリフトにより高精度な自動直進走行が実現できないことが明らかとなった。そこで本研究では,地磁気の時間・空間変動とジャイロドリフトを動的に補償した自動直進アルゴリズムを考案した。有人直進走行時のデータを使用してシミュレーションを行った結果,GDSに比べてR.M.S.で約70%精度が向上した。また,考案したアルゴリズムを適用して自動直進走行試験を行った結果,高い再現性が確認された。

 

根菜類野菜の間引き作業の自動化に関する研究(第2報)―自動2値化によるダイコン幼苗の認識方法―

張 樹槐・高橋照夫・福地 博・嵯峨紘一

キーワード:ダイコン,間引き作業,自動2値化,ダイコン幼苗の認識

 

本研究は,根菜類野菜であるダイコンの間引き作業の自動化を図ることを目的とし,前報ではそれに適したダイコンの栽培様式及び間引き時期について検討した。本報では,間引く対象となるダイコン幼苗の良否を自動的に判定する方法を提案した。具体的には,まず取得したダイコン幼苗画像に対して,緑色の画像情報を強調したExG(Extra Green)と輝度データを用いて大津の自動2値化手法を応用し,ダイコン幼苗の2値化画像を得た。次に,その画像をX軸方向へ射影して,すなわち全画素のY軸方向の合計値を計算し,その大小に基づいてダイコン幼苗の良否を判定する方法を提案した。その判定方法を,ほ場から取得した計439組のダイコン幼苗画像に応用した結果,約97%の画像について本手法の有効性を確認した。

 

LEDの拡散光による車両間の相対距離測定装置

芋生憲司・佐々木毅有・岡本嗣男・海津 裕

キーワード:測距装置,赤外線,拡散光,強度変調,トランスポンダ,LED

 

二台一組の車両で行う圃場作業の省力化と安全性向上のために,伴走車両もしくは先行車両の自動運転を行うシステムが研究されている。このシステムでは車両の相対位置をリアルタイムで高精度に測定する必要がある。このため著者らは,LEDの拡散光による相対位置測定システムを提案した。また研究の第一段階として距離計を開発し,試験を行った。試作した距離計は2局から成り,高周波で変調された光信号を互いに送信する。2局間の距離は両局で発生する低周波ビート信号の位相差から求められる。直射日光下で性能試験を行った結果,回帰値からの最大誤差と標準誤差は1から10mの距離で,それぞれ約5cmと3cmであった。

 

KL展開を利用した斑紋による乳牛の個体識別

森尾吉成・池田善郎

キーワード:コンピュータビジョン,乳牛,斑紋,個体識別,Karhunen−Loeve展開(KL展開)

 

乳牛の個体識別は,血統登録,人工授精,家畜衛生,食品安全性の問題から重要であり,欧米諸国をはじめ我が国において耳標による識別が広く行われている。本研究ではより簡便で効率的な個体識別システムを構築するため,コンピュータビジョンを利用した斑紋による個体識別法について検討した。ホルスタイン20頭についてKarhunen−Loeve展開により作成した固有空間を用いて斑紋を表現し,識別にEuclid距離を使用する方法は,画像撮影時の牛の姿勢および照明条件が変化しない状況において100%の識別を行うことができた。しかし,画像中の牛を計算機内で2度回転した場合に,識別が完全に行えないことから,牛およびカメラ相互の姿勢変化に対して安定した識別方法を検討する必要があった。

 

形状特徴によるテンサイと雑草の識別

寺脇正樹・片岡 崇・岡本博史・端 俊一

キーワード:テンサイ,雑草,画像処理,2値化画像,形状特徴量,判別分析

 

テンサイと3種類の雑草,アオビユ,ソバカズラ及びスギナの形状の違いによる識別を試みた。6つの形状特徴量を用いて線形判別関数を導き,識別を行なった。テンサイの識別正答率は85.7%であったが,テンサイをアオビユ,ソバカズラをテンサイと誤識別するものがそれぞれ11.3%,13.6%存在した。これらの誤識別を低減させるために,アオビユと識別されたものについては再度同じ形状特徴量を用いて再識別し,テンサイあるいはソバカズラと識別されたものについては誤識別と疑われるものを推定して,葉先角度により再識別を行なった。その結果,テンサイの識別正答率は87.2%となり,雑草をテンサイと誤識別するものを8%以下に低減させることができた。

 

RTK−GPSとFOGを使用したほ場作業ロボット(第3報)―拘束条件を有した経路生成による枕地旋回精度の向上―

木瀬道夫・野口 伸・石井一暢・寺尾日出男

キーワード: 旋回経路生成,スプライン関数,運動拘束条件,前進旋回,切り返し旋回

 

ロボットトラクタのための枕地旋回アルゴリズムを考案した。前進のみで旋回する場合,前進と後退を用いて旋回する場合の2種類の旋回法に対して,旋回経路を3次スプライン関数を用いて生成した。トラクタの最小旋回半径と最大操舵速度に関する拘束条件を設け,これらの拘束条件を満たさない場合は経路を再計算して,走行可能な経路を生成する機能を有する。旋回経路に2つの拘束条件を適用することの有効性をコンピュータシミュレーションによって確認した。最後にほ場で実機実験を行い,従来法と比較して開発したアルゴリズムが有効であることを確認した。

 

技術論文

 

強制デフ式操舵システムの開発(第1報)

日高茂實

キーワード:強制デファレンシャル,遊星ギヤ,HST,逆ハンドル,旋回半径,スピンターン,自動減速

 

コンバインの操舵システムに,デファレンシャルギヤを強制的に駆動する強制デファレンシャル方式を採用し,丸ハンドルによる自動車感覚の操作性を実現した。このシステムは,直進用と旋回用の二つのHSTを用い,トランスミッション内の遊星歯車機構部で差動回転を作り出すことにより,ハンドルの切れ角に応じて旋回半径を自在に変えられるものである。本報では,コンバインを始め,履帯車両に強制デファレンシャル方式を採用するにあたり,直面する問題点について言及する。

 

強制デフ式操舵システムの開発(第2報)

日高茂實

キーワード:円錐,自動減速,強制デファレンシャル,HST,逆ハンドル,旋回半径,スピンターン

 

履帯車両に強制デフ方式を採用し簡易な操作システムを構成すると,車速により旋回半径が異なったり,前進時と後進時で旋回方向が異なりアブノーマルな旋回操作となってしまう。自動車感覚の操作性を確保するには,旋回操作システムのなかに演算機能をもたせることが必要である。本報では,円錐の頂点と底円周上の点までの距離は,常に等しくなることを基に,円錐の底面の傾きを前後進用主変速レバーの操作と連動させ,ハンドルの切れ角を底円の回転に変換させる円錐リンク機構を用いて,自動車感覚の操作性を実現できる操作システムについて報告する。

 

イチゴ栽培用ガントリシステムの開発研究(第1報)―ガントリの試作と病害防除及び摘取り作業への適用性―

山下 淳・湯木正一・有馬誠一・松本 勲・鶴崎 孝

キーワード:ガントリ,イチゴ栽培,省力化,病害防除作業,摘取り作業

 

イチゴ栽培における作業の省力化のため,4畦及び2畦を跨ぐ形の2台の軌道式広幅作業台車(ガントリ)と,これらに搭載する作業機として,薬液散布システム及び摘取り作業台を試作し,それぞれ病害防除及び摘取り作業への適用性について検討した。また,畦端で隣畦へ移動させるための補助手段として簡易な手押し式移動台車を試作した。散布薬液の付着程度及びイチゴのうどんこ病に対する防除効果を調べた結果,ガントリによる散布法は一定速度で散布できるので,慣行の手散布による散布量より少量で高い効果が得られること,散布作業の所要時間は約58%と短縮できることが明らかとなった。また,摘取り作業台搭乗による作業では,身体負担が軽減できた。