64巻1号

研究論文

 

テクスチャ画像解析によるシロクローバとイネ科雑草群落の判別

田村 仁・阿刀田央一・酒井憲司

 

キーワード:植生分布図,画像処理,テクスチャ解析

 

 テクスチャ画像解析による植物混合群落の優占種判別手法を提案する。本手法は,植物群落の画像を不規則テクスチャとして扱い,汎用の形状通過型非線形フィルタバンクによって抽出した微小形状要素を特徴量として統計的に選択し,判別関数を構成する。この手法を,イネ科雑草とマメ科カバークロップの代表であるクローバ(主にシロクローバ(Trifolium repens L.))の判別に適用し,群落内の小領域の画像毎に「シロクローバ優占」「イネ科雑草優占」「裸地」に分類する実験を行った。実験では,小領域の寸法を380mm×250mmとし,それに対応する画像について,予め用意されたサンプルを正答率98%で判別し,またシロクローバとイネ科雑草が混在する実際の画像では,人間による判定と88%一致する結果を得た。

 

米の貯蔵環境と米品質に関する研究(第1報)

―貯蔵後に搗精した精米の品質に及ぼす影響―

劉 洪津・渡辺兼五・東城清秀・杉山隆夫・牧野英二

 

キーワード:籾,玄米,精米,貯蔵形態,貯蔵方法,品質

 

 本研究では,籾と玄米を対象として,その貯蔵方法及び貯蔵形態が貯蔵後に搗精した精米の品質に及ぼす影響を調べて,貯蔵環境と精米品質との関連性を検討することを目的とした。3品種の供試試料を用いて,温度と湿度を変えて,4つの貯蔵区分を設定した。計測器として近赤外線分析計を利用し,一部は化学分析を行って,精米の水分,粘り指標値,食味推定値,脂質等の経時変化を1年間にわたって調べた。その結果,貯蔵経過時間とともに精米の粘り指標値,脂質及び食味推定値は減少し,水分の変化は常温開放区以外ではほぼ一定に保持された。また,籾貯蔵と玄米貯蔵の間での精米品質の変化は同じ傾向であった。さらに,低温貯蔵は常温貯蔵より,常温貯蔵では密閉状態は開放状態より,精米にしたときの品質の変化は小さかった。

 

環境調和型高効率バイオガス用コージェネレーションシステムの開発(第2報)

―バイオガス・軽油二燃料CGSの燃焼解析―

朴 宗洙・寺尾日出男・石井耕太

 

キーワード:環境調和型,バイオガス,二燃料運転,筒内圧,燃焼過程,コージェネレーションシステム

 

 バイオガスと軽油の二燃料でコージェネレーションシステム(CGS)を運転する場合,バイオガスの供給によってCGSの性能が低下することは前報で明らかにした。本報ではCGS性能低下の原因究明を目的に二燃料燃焼過程の解析を行った。また,排気中の未燃メタン濃度を測定して二燃料の燃焼特性および排気管内での再燃焼に関する検証を行った。バイオガスを供給した場合,軽油が噴射され着火が始まる時期までの着火遅れ期間は長くなり,最高燃焼圧力と熱発生率が低下して燃焼過程が非常に緩慢となることが明らかとなった。しかし,電力負荷が高くなると着火遅れは短くなり,供給したバイオガスの燃焼が活発になって燃焼効率も改善された。この結果からバイオガスの完全燃焼には燃焼温度が重要な因子となることを確認した。排気中の未燃メタン濃度はバイオガス割合が高くなると増加するものの,電力負荷を高くすることによって排気中の未燃メタン濃度を減少させることができた。また,4/4電力負荷においては供給したバイオガスをほぼ完全燃焼させることができた。燃焼室から放出される未燃メタンは排気マニホールドと排気熱交換器の間で再燃焼することを確認した。

 

小麦粉の有効熱伝導率

村松良樹・田川彰男・笠井孝正・武谷宏二・福島正義

 

キーワード:小麦粉,有効熱伝導率,非定常双子型プローブ法,伝熱モデル

 非定常双子型プローブ法により3種類の小麦粉(薄力粉,中力粉,強力粉)の有効熱伝導率を,数段階の水分,温度,かさ密度においてそれぞれ測定した。これより有効熱伝導率に及ぼす水分,温度,かさ密度の影響を調べた。また,空気と小麦粉の熱伝導率の値を用いて数種類の伝熱モデルから有効熱伝導率を推算し,測定結果と比較した。さらに,直列モデルと並列モデルの複合型で,その割合を表すパラメータを水分,温度,空隙率の関数として表し,小麦粉の有効熱伝導率を精度良く推定することができる伝熱モデルを提案した。

 

繊維膜被覆による植物の水需要低減の研究

吉田瑞穂・木谷収・キンシュク ロイ・川西啓文・鳥居 徹

 

キーワード:植物システム,水分環境,水需要,繊維被膜,蒸散量,乾燥地

 

 植物の葉面の一部を繊維膜で覆って,蒸散に及ぼす影響を検討した。草本類のラディッシュの実験では,常に繊維膜被覆をしたときのほうが蒸散が減っており,総量として11.2%の減少となった。膜被覆の有無の蒸散量への影響は5%の危険率で有意であった。イネは被覆したほうが蒸散が抑えられているが,生長の後半では傾向が逆転した。木本類のバラでは,ほとんどの測定で繊維膜被覆による蒸散量の減少が見られ,有意差が認められた。

 

階層型ニューラルネットワークによる二元調湿換気式低温貯蔵庫内温湿度変化の予測

―ハイブリッド・クーラ出口温湿度変化の予測―

ウラサR. L.・田中俊一郎・田中史彦・守田和夫

 

キーワード:シミュレーション,準定常,非定常,ハイブリッド・クーラ,誤差逆伝播法,階層型ニューラルネットワーク

 

 二元調湿換気式低温貯蔵庫(以下,二元庫)は,著者らが青果物の中・長期貯蔵を目指して開発した低温高湿度環境安定保持型貯蔵装置である。この二元庫内の温度制御は,庫内に設置したハイブリッド・クーラによって行っている。ハイブリッド・クーラ内部には冷却コイルと加熱コイルの2系統が組み込まれており,両者を制御することによって吹き出し温度を調節する仕組みとなっている。このため,この吹き出し空気の温湿度をシミュレーションにより予測する場合,モデルが複雑となることは避けられない。本研究では,準定常および非定常状態におけるハイブリッド・クーラ出口の温度および絶対湿度を誤差逆伝播アルゴリズムによる階層型ニューラルネットワークを用いることで予測した。学習済みのネットワークを用いて温湿度変化の予測を行った結果,準定常および非定常状態で予測誤差3%以下の適合性が得られ,特に準定常状態のみでは予測誤差1.5%以下の結果を得た。本ネットワークによるハイブリッド・クーラ出口における温湿度予測では,システム操作による膨張弁出口温度や過熱温度の急激な変化にも前述の誤差の範囲内で対応しうる。本ネットワーク解析では,膨張弁出口温度,過熱温度,温水出入り口温度およびハイブリッド・クーラ吸い込み口における温湿度の測定値を入力値として与えることによって先の予測精度を得た。本研究成果を基礎として,将来的にはニューラル・ファジィ制御法による二元庫内温湿度の高精度制御と予測が可能になるものと考える。

 

農用トラクタのランダム,準周期,カオス振動

ガルシアーノ リロイ・鳥巣 諒・武田純一・酒井憲司

 

キーワード:非線形トラクタ・ダイナミックス,カオス時系列解析,アトラクタ再構成,準周期振動,ランダム振動,カオス振動

 

 トラクタ走行速度を制御パラメータとして周波数応答実験を実施し,大型トラクタの非線形ダイナミックスを検討した。カオス時系列解析手法を採用し,主に時間領域のデータ解析を行った。相図とポアンカレ断面図の2つの定性的解析から中速域(1.50〜3.08m/s)で非線形共振が発生し準周期振動となった。定量的解析である相関次元解析とリヤプノフ指数解析から,定性的解析では分離できなかった2つの速度領域の振動が,それぞれ,低速域(0.63〜1.42m/s)では非舗装路面の影響が強く受けたランダム振動であること,高速域(3.32〜4.50m/s)では決定論的なカオス振動であることが確かめられた。

 

近赤外分光法による玄米の高速選別に関する研究(第1報)

――玄米1粒成分自動選別機の開発――

夏賀元康・仲村彰敏・河野澄夫

 

キーワード:近赤外分光法,玄米,単粒,タンパク質含量,高速選別

 

 自然界に存在する変異あるいは人為的な変異を生じさせた原試料の中から育種に必要な成分(たとえばタンパク質)の粒のみを選別するには,大量の原試料を短時間で処理する必要がある。また,単品種として市販されている玄米の中には意図的に他品種を混米したものがあり,このような手段により不当な販売利益を得ようとしている業者も存在するといわれている。大量の原試料を水分やタンパク質などの成分により高速に選別できれば,このような不正な混米がされた玄米かどうか,容易に判定できる。このような選別や判別を行うため,小麦と米は市販の分析計による1粒測定の研究が行われてきているが,測定に時間を要し,また取扱いも非常に煩雑であるのが現状である。このため,水分とタンパク質含量に基づく高速な玄米1粒成分自動選別機を開発した。装置は試料供給部,測定部,選別・貯留部,演算制御部で構成されている。試料供給部は最大5kg容量のホッパーから玄米を1粒ずつ取り出して測定部に送る。測定部では3つの近赤外アレイセンサにより玄米のスペクトルを測定する。演算制御部のPCが算出したタンパク質含量の推定値に基づき,玄米は選別・貯留される。スペクトル測定時間は500ms,総合選別速度は1粒当たり2.8sであった。

 

近赤外分光法による玄米の高速選別に関する研究(第2報)

――玄米1粒成分自動選別機の成分測定精度――

夏賀元康・仲村彰敏・河野澄夫

 

キーワード:近赤外分光法,玄米,単粒,水分,タンパク質含量,高速選別,キャリブレーション,精度

 

 玄米をタンパク質含量などの主要成分に基づいて1粒ずつ高速に選別することができれば,育種の精度が向上するばかりではなく,混米の検出など広い応用分野が考えられる。このような目的で開発した玄米1粒成分自動選別機について,第1報では装置の概要と動作について報告し,総合選別速度が2.8秒/粒であり,実用的な選別速度が得られたと報告した。本報では,うるち玄米(品種 : ひとめぼれ)と酒玄米(品種 : 山田錦)を用い,水分とタンパク質含量のキャリブレーションを作成したのでその推定精度について報告する。

 

技術論文

 

エステル化した廃食用油燃料による小型ディーゼルエンジンの動力と排気ガス特性について(第1報)

――廃食用油エチルエステル化燃料油と軽油を燃料とした時の比較――

冨田節雄・木谷 収・Kingshuk ROY

 

キーワード:廃食用油,エステル化燃料油,軽油,ディーゼルエンジンの性能試験,排気ガス試験

 

 エタノールでエステル化処理した廃食用油を小型ディーゼルエンジン用燃料として使用し,軽油を燃料とした場合と対比して動力試験と排気ガス試験を行った。その結果特に排気ガスの清浄度において処理油が有効であることがわかった。動力試験については軽油を燃料とした場合に比較して遜色は認められなかった。

 

近赤外透過型分析計による米の成分測定の精度とその改善

川村周三・竹倉憲弘・伊藤和彦

 

キーワード:近赤外分光法,NIR,米,水分,タンパク質,脂肪酸度,アミロース,穀物共同乾燥調製施設,自主検査

 

 穀物共同乾燥調製施設での自主検査における実用的な使用を想定し,市販の近赤外透過型分析計による米の成分測定の精度を検証した。さらに分析計のフィルタ部およびキャリブレーションの改良をおこない,測定精度の向上を試みた。その結果,水分の測定精度は決定係数(r2)が0.98,標準誤差(SEP)が0.13%,バイアス(Bias)が−0.02%であり,タンパク質の測定精度はr2=0.90,SEP=0.17%,Bias=0.01%であった。すなわち,水分とタンパク質の測定値は基準分析に換えて利用できる良い精度であった。この分析計は,温度が10℃から30℃までの範囲の玄米,および籾混入率が10%以下の玄米に対して,水分とタンパク質を精度良く測定することが可能であった。

 

水稲の局所栽培管理のための画像マッピングシステム

柴田洋一・佐々木良治・鳥山和伸・荒木 幹・浅野 修・広川 誠

 

キーワード:精密農法,マッピング,局所管理,画像処理,植被率,苗立数,窒素吸収

 

 カメラとGPSを搭載したトラクタで,連続的に圃場の局所撮影を行い,GPSからの位置情報に基づき,圃場全体の平面画像として合成・表示する画像マッピングシステムを開発した。本システムを利用して,水稲群落の植被率を測定した結果,移植,直播に関わらず,葉面積指数ならびに栽培面積当たりの窒素吸収量と高い相関が認められ,穂肥設計に活用できる見通しを得た。また,散播直播水稲を対象に苗立数計測を試みたところ,目視計測の結果とよく一致し,苗立ち数を数段階に階層分けし,苗の疎密に応じて施肥量や除草剤散布量を変える管理法に活用できる見通しを得た。これらから,本システムは,大区画圃場における局所栽培管理のための生育状態の情報収集手法として有効であると考えられた。

 

速報

 

細断ロールベール用ベールラッパの開発

山名伸樹・志藤博克

 

キーワード:ロールベール,ベールラッパ,細断飼料作物,青刈りトウモロコシ