第63巻6号

研究論文

トラクタ車体部の固有振動数の決定

L.ガルシアノ・鳥巣 諒・武田純一・吉田 純

キーワード: トラクタ、周波数応答法、スペクトル解析、固有振動数、キャンベル線図

 トラクタの固有振動数は,乗り心地振動の低減や中高速域で走行中の前輪浮遊による操舵不能等の問題に対して重要な役割を果たす。アングルを並列に配列した人工路面と非舗装農道を利用し,その上を速度を変えた走行を行い周波数応答試験を実施した。その際,人工路では左右両輪がその上を走行する両側輪走行と,片側輪走行を行い,それぞれバウンスとピッチモード,ロールモードを行った。非舗装路試験は,実際の圃場や道路の状態でのトラクタの振動に近づけるために行った。パワースペクトル値を利用したキャンベル線図を用いて結果を解析した。本試験で使用したトラクタ車体の固有振動数は,バウンスとピッチモードで,4.0〜5.3Hz,ロール固有振動数は3.2Hzであった。

人間工学に基づくトラクタの設計要素に関する研究(第1報) 一座席とペダル配置について一
J.C.X. シキャツト・御手洗正文・木下統・木田博隆

キーワード: 人間工学、4輪トラクタ、座席、ブレーキペダル、クラッチペダル、操作・操縦性

 本研究の目的は、トラクタの運転操作、特に事故防止のための緊急操作等における最適な座席高とブレーキペダル、クラッチペダルの配置を明らかにすることである。まず、設計要素の異なる3種類の市販トラクタ(大、中、小型)を用いて、ブレーキ並びにクラッチ操作所要時間を解析した結果、操作所要時間は座席からペダルまでの距離、操縦者の性別、背丈、さらにペダル配置の違いによって大きく異なる事が明らかになった。そこで、次に座席高さとペダルの配置を任意に変えることのできる運転操縦装置を試作し、緊急操作を想定した操作所要時間を解析した結果、緊急操作に最適なペダル配置はトラクタの中央(座席背面中央)から±15oの角度で、座席高410 mmとペダルと座席背面中央との距離900 mmの場合と座席高470 mmでペダルとの距離が800 mmの組合わせである事が明らかになった


バイオガス燃料の乱流燃焼特性に関する研究

田上公俊

キーワード: バイオガス,内燃機関,乱流燃焼速度,希薄燃焼,水素利用
バイオガスを燃料として内燃機関に適用し,より高効率,低公害な燃焼法を検討するため,その主成分であるメタンの基本的な乱流燃焼特性に関して実験的に詳細に調べた。その結果,メタンはプロパンなど他の炭化水素系燃料と比較して希薄燃焼に適した燃料であることが分かった。また二酸化炭素での混合気の希釈は窒素希釈に比べて,乱流燃焼特性を改善する効果のあることが分かった。さらに混合気中に少量の水素を添加することで希薄燃焼時の乱流燃焼が促進されることが分かった。

研削式精米に関する研究(第2報)― 精米動力・精米エネルギ予測モデル ―
小出章二・西山喜雄
キーワード: 研削式精米,歩留り,精米動力,精米エネルギ,酒造精米

本研究では,研削精米工程において米粒に加えられる必要動力や消費エネルギについて検討した。測定では,醸造用小型精米機を用いて研削砥石の回転数を(800, 1000, 1200, 1400, 1600 rpm)と変化させることにより,各々の条件における精米時間と歩留り,精米動力,精米エネルギを求めた。その結果,精米動力は,回転数一定の条件のもとで精米時間とともに減少した。更に,測定結果より,以下の予測モデルを提案した。
精米動力予測モデル:

 精米エネルギ予測モデル:


馬鈴薯加工工場における浸漬工程後排水からの電気透析による還元型アスコルビン酸の濃縮
小出章二・颯田尚哉・小藤田久義
キーワード: 電気透析,排水,COD,馬鈴薯,アスコルビン酸,水環境

 馬鈴薯加工工場における浸漬工程後排水に溶解している還元型アスコルビン酸(ビタミンC, ASA)の濃縮を電気透析により試みた.その結果,電気透析法は排水中の還元型アスコルビン酸を濃縮できることが示された.併せて,原排水,前処理溶液,電気透析後の処理溶液の水質特性について定量化を試みた.電気透析後の希釈溶液は,原排水と比較して生物化学的酸素消費量(BOD)で71.0 %,化学的酸素消費量(COD)で73.7 %,蒸発全残留物(TS)で81.0 %,強熱減量(VS)で75.2 %の減少が見られた.さらに本研究では,種々の電流密度条件下,還元型アスコルビン酸の濃度変化の測定値をモデルにより解析した.結果として,モデルによる計算値は実測値を精度良く表現した.


修正ガス環境下におけるエダマメの呼吸速度予測モデル

中野浩平・中村宣貴・椎名武夫・前澤重禮

キーワード: 呼吸速度,修正ガス環境,Michaelis-Menten式,モデリング,エダマメ

本研究では,エダマメの修正ガス環境下における呼吸速度予測モデルを構築することを目的とし,種々の温度,O2濃度下でのO2吸収,CO2排出速度を通気法により測定した。過去に報告されているMichaelis-Menten酵素反応速度論に基づくモデルに実測値をあてはめたところ,極めて高い適合性が認められた。反応動力学定数Km,VmaxがArrhenius型の温度依存性を示したことを考慮し,呼吸速度に対する温度効果についても記述できるようモデルを拡張した。このモデルによって,種々の温度,O2濃度下でのエダマメの呼吸速度が予測可能となった。

生シイタケの呼吸速度におよぼす酸素濃度,二酸化炭素濃度および経過時間の影響
胡 文忠・秋元浩一・内野敏剛・安永円理子・濱中大介・黒木信一郎・堀 善昭

キーワード: 生シイタケ,初期酸素濃度,呼吸速度,重回帰分析, 動的ガス環境

初期酸素濃度を低下させて生シイタケの呼吸反応を検討した。その結果,低酸素濃度が生シイタケの呼吸を顕著に抑制することが認められたため,その環境を早期に創出することが品質の維持に有効であると考えられた。また,呼吸速度に影響を与える要因として酸素濃度,二酸化炭素濃度,経過時間を取り上げ,その影響を有気呼吸の範囲で考察するため,酸素濃度,二酸化炭素濃度,経過時間を各要因として重回帰分析を行った結果,酸素濃度が大きく呼吸速度を支配することを明らかにした。また,温度が高くなるに従い酸素濃度に次いで経過時間の影響が大きくなった。


技術論文

平板希釈法によるコンポスト化微生物計数を目的とした培養条件の検討

岩渕和則・宮竹史仁

キーワード: コンポスト、生菌数、乳牛ふん、平板希釈法

 コンポスト化反応に関わる細菌および放線菌の生菌数を把握するために、平板希釈法における培養条件(寒天培地、培養温度、培養時間)を検討した。生菌数計測用試料は乳牛ふんを断熱型リアクタで強制通気を行いながら作成したコンポストを用い、種々の培養条件のもとで生菌数を測定し、それが最大となる条件を探索した。供試した寒天培地は細菌、放線菌とも各4種類で、設定温度は20から70|まで5|間隔で行った。その結果、細菌数および放線菌数を測定する場合の最適な培養条件が見いだされ、特に中温性細菌の培養温度については広く受け入れられている温度より高い約43|が適温であった。

水稲散播直播栽培のためのトラムライン走行作業方式の開発
澤村宣志・大黒正道・佐々木豊

キーワード: 水稲直播,管理作業,農作業,トラクタ

水田作の低コスト化を図る手段として,大型機械の効率的利用を目的に30a区画を越える大区画圃場が整備されてきた。しかし,区画の大型化は,従来の背負動力散粒機等を利用した畦畔からの肥料や薬剤の散布作業が困難になる等の問題点が生じている。また,育苗・移植作業を省略できる直播栽培技術,中でも稲の散播直播栽培技術は播種作業の大幅な省力化が可能で省力・低コスト栽培技術として確立が期待されている。しかし,大区画水田での散播直播栽培における生育期間中の管理作業の困難性が新たな問題として指摘されている。本論文は,これらを解消するキーテクノロジを提供しようとするものである。
ここに提案する「トラムライン走行作業方式」は,水稲の散播直播栽培を対象に軟弱地盤の水田における播種作業及び肥料散布等の中間管理作業の乗用化を実現する新しい作業法であり,トラムラインの路床を強化することにより乗用作業機が安定的に走行できる。

水稲種子自動コーティング装置の開発(第2報)−作業性能試験と実用化−
後藤隆志・堀尾光広・西村 洋・林 和信・市川友彦・出野俊次・佐藤 巖

キーワード: コーティング,水稲種子,水稲直播,自動作業

 試作した開発機を供試し,現行機を対照機として作業精度及び作業能率を調査した。その結果,現行機では作業者の熟練度により1粒コーティング種子の質量変動が大きく異なること,開発機の1粒コーティング種子の質量変動,湛水条播機で繰出された種子の被覆層のはく離状態及び出芽勢は,現行機で熟練者が作業した場合と同程度であること,開発機の作業能率は現行機の1.7倍〜2倍であることなどを明らかにした。さらに,モニタ試験を行って摘出した問題点,改良を加えた市販機の普及状態について報告する。

噴射ノズルタイプの違いが植物油の噴霧粒径に及ぼす影響
富樫千之・松森一浩・上出順一

キーワード: ディーゼル機関,代替燃料,植物油,液浸法,噴霧粒径,ノズルタイプ

 ディーゼル噴射ノズルから噴射される噴霧液滴の大小は,機関性能に影響を及ぼす。一方,ディーゼル機関の噴射ノズルとしてピントルタイプのほか,スロットルタイプやホールタイプがディーゼル機関の燃焼室の形態に合わせて使用されている。そこで,代替燃料として検討している植物油を供試して各種噴射ノズルによる噴霧粒径を測定した。
 その結果,供試ノズル全てにおいて,平均噴霧粒径は高動粘度になるにつれて大きくなるが,動粘度20〜40mm2/sから漸増傾向となる曲線で整理できた。また,噴射圧力が低くても後半に多く噴射するスロットルノズルの噴霧粒径はピントルノズルより小さくなった。さらに,噴射圧力が高く,噴射口径が小さいホールノズルの噴霧粒径はスロットルノズルより小さく,ホールノズルの中では噴孔径が小さいほど噴霧粒径が小さくなった。

高精度水稲湛水条播機の開発(第1報)−土壌表面硬度測定機器の開発−
西村 洋・林 和信・後藤 隆志・堀尾 光広・市川 友彦・上田 吉弘

キーワード: 水稲直播,代かき,土壌硬度,計測,リアルタイム計測

 水稲湛水直播において問題となる,表面出芽や浮き苗・転び苗の減少を図ることを目的として,安定した播種深さに播種できる,湛水土壌中条播機を開発した。第1報では,播種精度に影響する土壌表面の硬度を,正確かつ安定して測定する目的で開発した土壌表面硬度計とリアルタイム土壌表面硬度センサの性能を報告する。土壌表面硬度計は,下げ振り先端を地表面に接する位置から自由落下させ,貫入深さを読みとる方式で,精度よく能率的に測定することができた。また,土壌表面を追従する基準輪と土壌硬度に応じて変化するセンサ輪のそれぞれの支持軸の角度差を検出して,土壌表面硬度を検出できるリアルタイム土壌表面硬度センサは,土壌表面硬度計と高い相関を示した。

高精度水稲湛水条播機の開発(第2報)−開発機の概要と覆土量制御−
西村 洋・林 和信・後藤隆志・堀尾光広・市川友彦・浅野士郎・上田吉弘・福間英明・中尾敏夫

キーワード: 水稲直播,条播,土壌硬度,播種深さ,制御

 水稲湛水直播において,安定した播種深さに高い精度で播種できる,湛水土壌中条播機の開発を行った。開発した条播機は水田用栽培管理ビークルなどに直装する,側条施肥装置付き8条又は10条播きの播種機で,繰出部と作溝・覆土部からなる。作溝・覆土部は追従性を向上させたフロート,2段階に深さを調節できる作溝器及び土壌表面硬度に応じて覆土量を制御できる覆土装置等を備えている。土壌の硬軟に左右されず安定した覆土性能を発揮させるために,覆土板形状と制御方法を検討する基礎試験を実施し,良好な覆土性能を持つ覆土板形状,土壌硬度を4段階に分けて覆土板角度を制御するアルゴリズムの有効性を明らかにした。

高精度水稲湛水条播機の開発(第3報)−開発機の作業性能,水稲の出芽・苗立ちと収量−

西村 洋・林 和信・後藤隆志・堀尾光広・市川 友彦・浅野士郎・上田吉弘・福間英明・中尾敏夫

キーワード: 水稲直播,条播,ほ場試験,播種深さ,作業能率

 水稲湛水直播において問題となる,表面出芽や浮き苗・転び苗の減少を図ることを目的として,安定した播種深さに播種できる,湛水土壌中条播機を開発した。開発した8条又は10条の高精度水稲湛水条播機は,1997年及び1998年の2カ年にわたり,全国延べ14カ所で播種試験を行った。その結果,@安定した播種深さが確保できること,A作溝器の調節によって2段階の播種深さに調整できること,B安定した苗立ちが得られること,C高い作業能率を達成できること,などを明らかにした。開発機は2000年春より市販化された。

可搬型茶摘採機の振動軽減に関する研究(第2報) −フレーム構造諸元が振動特性に及ぼす影響−
高橋省三・宮部芳照・阿部正俊・福元 勇・小池正之
キーワード: 茶摘採機,振動解析,伝達マトリックス法,モード解析,強制振動

本報は可搬型茶摘採機フレームの振動特性を把握するため,フレーム構造を単純化したH型モデルについて,伝達マトリックス法により数値解析を行いフレームの構造諸元が固有振動数および振動モードに及ぼす影響を検討した。その結果,主部材の外径が増加するに従って固有振動数が増加することが判明し,固有振動数を制御する構造諸元としては,主部材の外径が最も有効であり,主部材の外径を22mmから25mmにすることで,把持部の振動を効果的に軽減することが可能であることが明らかになった。

可搬型茶摘採機の振動軽減に関する研究(第3報) −集中質量付加による振動軽減効果−
高橋省三・宮部芳照・阿部正俊・福元 勇・小池正之

キーワード: 茶摘採機,振動解析,伝達マトリックス法,振動の節,付加質量

本報では,茶摘採機フレームの自由端に集中質量を付加することにより把持部の振動軽減をはかるため,まず片持ち梁の自由端に付加した集中質量が振動に及ぼす影響を理論的に検討した。さらに,市販の茶摘採機のフレームを単純化したH型モデルの自由端に付加した集中質量が振動に及ぼす影響を,伝達マトリックス法により解析し検討した。その結果,集中質量の付加が把持部振動軽減に有効であることが期待できた。そこで,実際に市販の摘採機に集中質量を付加した結果,把持部の振動軽減効果が認められた。