第63巻5号
研究論文

キュウリ果実の呼吸に及ぼすガス濃度変化の影響

安永円理子・濱中大介・黒木信一郎・胡 文忠・内野敏剛・秋元浩一

キーワード: キュウリ果実,呼吸,限界酸素濃度,鮮度,アスコルビン酸

既報で動的ガス環境下でのキュウリ果実の呼吸抑制に対しCO2よりO2濃度の変化が支配的であることを示唆したが,支配的要因がガス濃度値と濃度の変化速度のいずれであるかを明確に出来なかった。そこで本研究では,キュウリ果実の呼吸抑制効果に及ぼすこの二つの要因の寄与を明確にするため,ガス濃度の変化速度を3種類設定して検討した。また,アスコルビン酸含量をキュウリ果実の鮮度指標としてとりあげ,ガス濃度の変化速度の影響を調査した。その結果,呼吸の抑制や異常呼吸の誘発には濃度の変化速度というよりは,むしろ濃度が特定値に達したことに支配されることが明確となった。また,アスコルビン酸含量にはガス濃度の変化速度の影響は認められなかった。

水田におけるほ場情報マップの作成
李 忠根・矢内純太・下保敏和・飯田訓久・梅田幹雄・小崎 隆・松井 勤

キーワード: 土壌マップ, ほ場面高低差マップ, SPADマップ, 収量マップ, ほ場管理マップ, ほ場情報マップ, 精密農業

 水稲における精密農業の在り方を検討するため,0.5haの水田における土壌化学特性値,ほ場面高低差,SPAD値及び収量に関する空間変動量を1999年に調査した。これらのほ場情報の内訳を明確にするため,記述統計とともに,ほ場内での空間依存性を解析するジオスタティスティクス手法を適用し,セミバリオグラムによる空間依存性の評価とそれに基づいたクリギングによるマップ化を行った結果,以下のことが明らかになった。1)水田内でのほ場情報は1.63%〜38.7%の変動係数を示した。2) セミバリオグラムから,ほ場情報の空間構造を示すQ値は0.31〜1であり,その依存距離を示すレンジは約15m〜60mであった。3)クリギングによりほ場マップを作成することによりほ場情報の視覚化と相互比較が可能となった。4)ほ場の履歴等をまとめたほ場管理マップの作成し,得られたほ場情報との因果関係を考察した。

音波による果菜類の品質評価に関する基礎的研究(第3報)
――バイモルフ型振動子を用いた果菜類柔組織の振動伝播速度の計測――
西津貴久・池田善郎

キーワード:果菜類,組織内ガス,ガス体積分率,バイモルフ型振動子,衝撃応答,ヤング率

バイモルフ型振動子を利用して気泡分散寒天ゲル及び果菜類柔組織片に衝撃振動を与え,試料中の伝播速度を計測した.その結果,この伝播速度と準静的ヤング率の間には強い相関があり,また組織内ガスの体積分率が,この相関関係に及ぼす影響はほとんどないことを明らかにした.

サツマイモの発芽抑制のための熱水処理モデルの構築
田中俊一郎・R.L.ウラサ・田中史彦・守田和夫・菅原晃美

キーワード:数理モデル,熱水処理,サツマイモ,発芽,デンプン粒,オリゴ糖類

 サツマイモの貯蔵で問題になる塊根の発芽や病原体の侵入による損傷は一般に化学的処理法により処置されている.本研究は,品質への影響無しにこれらの問題に対処しうるサツマイモの熱水処理モデルの構築を目的とする.本モデルはサツマイモの加熱・冷却工程における表面および中心温度を2〜5%以内の誤差で予測することが可能である.熱水処理後20週目のデンプン粒子は,未処理区と比べて有意な差はみられなかった.オリゴ糖類について有意差はみられたが,発芽や病原体の侵入ほど深刻な問題ではなかった.無処理区では試料の90%に発芽が観察されたが,熱水処理区では発芽は完全に抑制することができた.

高圧下における食品の凝固点降下の推算と計測
和泉 徹・相良泰行・瀬尾康久・大下誠一・川越義則

キーワード:高圧,水溶液,凍結点,凝固点降下,凝固点降下定数

食品を擬二成分系とみなして高圧下におけるその凝固点降下を予測するために,適正な圧力および食品の条件を明らかにした。水の凝固点降下定数は圧力の上昇とともに増大し,196MPaでは大気圧の値(1.86K・(mol/kg)-1) より約20%大きい値(2.22K・(mol/kg)-1)となった。得られた凝固点降下定数を用いてグルコース水溶液(濃度10,20,30%)の凝固点降下を推算し,実験により求めた凝固点降下と比較した。大気圧および49MPaにおけるすべての濃度と98MPaにおける20%以下の濃度とにおいて,推算値は実測値とほぼ一致し,凝固点降下を推算することの可能性が示された。

RTK-GPSとFOGを使用したほ場作業ロボット(第1報) センサフュージョンによる絶対方位の推定
木瀬道夫・野口 伸・石井一暢・寺尾日出男

キーワード:センサフュージョン,RTK-GPS,光ファイバージャイロ,最小二乗法

本研究はRTK-GPSと光ファイバージャイロ(Fiber Optical Gyroscope; FOG)を航法センサとする農用ロボットシステムの実用化に資する基盤技術の開発を目的としている.特に本報では高精度センサの使用を前提とし,GPS座標系における車両の絶対方位推定手法を考案した.最小二乗法を適用して絶対方位に対するFOGのバイアス値を逐次推定することによって,車両の絶対方位を算出できる方法を開発した.考案した手法を有人走行で得た軌跡データに適用してその手法の妥当性を検討した.直線走行,曲線走行,旋回動作など様々な走行軌跡に対してシミュレーションを行った結果,精度よくバイアス値を推定できることがわかった.また実作業に本手法を適用して無人作業を行った結果,目標経路に対してr.m.s.で4.5cmの走行誤差で走行させることができた.

RTK-GPSとFOGを使用したほ場作業ロボット(第2報)  −作業計画マップによるほ場作業の自律化−
木瀬道夫・野口 伸・石井一暢・寺尾日出男

キーワード:作業計画マップ,ほ場作業ロボット,RTK-GPS,FOG

 ロボットトラクタが通年でほ場作業を行うには,作業に応じて経路,走行速度,PTO,3点ヒッチの操作などを設定Xしなくてはならない.このような軌道生成と作業計画の2つの問題を解決するために,経路情報のみならずPTOのオンIフ,変速段数などのロボットへのコマンド情報を含んだ,「作業計画マップ」を考案した.
開発したシステムはナビゲーションセンサにRTK-GPSと光ファイバージャイロスコープ(Fiber Optical Gyroscope; FOG)を採用した.無人ロータリ耕うん作業を行った結果,1.5m/sの作業速度で目標経路からの偏差が6cm (r.m.s.値)で作業することができた.

葉菜類の貯蔵に関する基礎研究 ―モデル試料を用いた実験―
五月女格・大下誠一・瀬尾康久・川越義則

キーワード:オオムギ、NMR、スピン−格子緩和時間、プロトプラスト、液胞膜、細胞膜

 葉菜類の品質に関わるとされる生体内水の状態の経時変化を検討するため、オオムギ子葉をモデル試料として、1H‐NMRにより生体内水の動的状態を反映するスピン−格子緩和時間T1を測定し、またオオムギ子葉プロトプラストの低浸透圧耐性の測定により、生体膜の状態を検討した。これらの実験結果から貯蔵中のオオムギ子葉細胞内部では液胞膜の機能低下が起こることにより、液胞から細胞質へ水が移動している可能性が示された。液胞からの水の漏出は膨圧の低下とこれに続く萎れを招く。したがって、全体的な水分損失(いわゆる目減り)のみならず液胞からの水の漏出が葉菜類の貯蔵性を左右する重要な要因である可能性が示された。

技術論文

電気トラクタの適用可能性に関する予備的研究(第2報)
―蓄電池の配置がけん引性能に及ぼす影響―

アーターン,W.・小池正之・瀧川具弘・余田 章・長谷川英夫・バハラヨーディン,B.

キーワード:電気トラクタ,農用トラクタ,蓄電池ビルトイン式フレーム,けん引性能,質量分布,動的荷重分布

車体構造の変革を目指して,電動駆動車両の車体に蓄電池ビルトイン式フレーム(BBF)を採用する実用化研究が既に行われている。本研究では,けん引負荷に応じたけん引効率の最大化を図るため,フレーム位置の調節による効率向上への影響度合いについて予備的実験を実施した。供試直流モータのトルクの立上り時間は,ディーゼル機関のそれの約1/20と短いことが確認できた。前後車軸分担荷重を3段階に変化させ,後車軸分担荷重,滑り率とけん引効率の3要因間の関係を特定し,けん引効率が最大となる要因間の規定条件を調べた。これらの規定条件を模擬する理論的解析を行い,形態設計のための技術情報に係る適用可能性の検討も併せ行った。

水稲種子自動コーティング装置の開発(第1報)  −基礎試験−
後藤隆志・堀尾光広・西村 洋・林 和信・市川友彦・出野俊次・佐藤 巖

キーワード:コーティング,水稲種子,水稲直播,自動作業

 過酸化カルシウムを有効成分とする被覆剤の水稲種子へのコーティングを自動的に行う装置の開発研究を実施した。本研究の成果をもとに,自動コーティング装置が1999年より市販・実用化され,湛水直播時のコーティング作業に利用されている。第1報では,基礎試験を行い,軸径60mmのアジテータを繰出スクリュの上に取付けることで,時間経過に伴い被覆剤の繰出量が漸減する問題を解決できたこと,熟練者による手動作業時の水と被覆剤の投入時期と投入量の推移を参考にしてシーケンス制御のプログラムを作成し,シミュレーションと試験により改良したことなどを報告する。

傾斜草地における広幅施肥作業に向けた自動走行制御技術(第1報)−内界情報のみに基づく自動走行−
玉城勝彦・瀬川敬・澁谷幸憲・飯嶋渡

キーワード:傾斜地,草地,地磁気方位センサ,速度センサ,傾斜センサ,自動走行,施肥作業

 傾斜草地において,安全かつ能率的で省力的,高精度な施肥作業を行うことを目標として,自動走行技術を開発した。履帯車両に地磁気方位センサ,レーダドップラ速度計,傾斜センサ,並びに制御装置を搭載し,各種センサから計算した自己位置により自動走行制御を行った。平均11°の傾斜不規則地形の草地において広幅施肥を前提にした走行経路を設定して自動走行を行った結果,設定経路に対して左右方向の偏差は2.5m以内で,かつ設定終点に対して総走行距離の1%程度の誤差で走行可能であった。これは人の行う慣行作業と遜色のない走行精度であった。

可搬型茶摘採機の振動軽減に関する研究(第1報)  −伝達マトリックス法による振動解析−
高橋省三・宮部芳照・阿部正俊・福元 勇・小池正之

キーワード:茶摘採機,振動解析,伝達マトリックス法,振動モード形,振動試験

可搬型茶摘採機を使用する作業者において,エンジンの振動に起因する局所振動障害がみられ,手腕系振動障害の対策が望まれている。本研究は,摘採機把持部の振動軽減を目的として,その主要部材であるフレーム構造に着目し,フレーム構造諸元が振動に及ぼす影響を調べた。本報では,摘採機のフレームを単純化したはしご型モデルについて伝達マトリックス法により振動解析を行い,台上実験結果と比較検討した。その結果,要素長さを5mmと設定した場合,伝達マトリックス法による振動解析値は実験値とよく一致しており,伝達マトリックス法は摘採機の設計段階における振動解析に有効であることを確認した。