第63巻4号

研究論文

小麦粒粉砕と製粉ロール性能の研究

目崎孝昌・福森 武・池田善郎

キーワード:小麦粒挽砕,製粉機,製粉ロール,摩耗特性,共焦点レーザ走査顕微鏡,自家蛍光


別報1)ではチルド鋳鉄ロールの摩耗現象を微視的観点から考察した。本報告では軟質小麦の1B工程の粉砕ストックに及ぼすロール摩耗の影響について調べた。その結果,摩耗ロールの使用の影響は小麦粒のせん断面の切り口の形状に現れ,圧片状小麦粒を増加させることが明らかとなった。さらに125μm以下の細粒を調べると,ロールの摩耗につれて損傷デンプンおよび微粉の割合がわずかに増加する傾向を示した。このほか,ロールの歯先形状の変化は灰分値に影響し,自家蛍光像を利用した共焦点レーザ走査顕微鏡による小麦粒表皮および糊粉層などの高灰分物質の検出量と相関性が認められた。

多孔質モデルを用いた流路抵抗を有する施設内気流の解析

田中 晃・田中 俊一郎・田中 史彦

キーワード:予冷・冷蔵施設,気流設計,数値予測,k-?型乱流モデル,多孔質モデル,差分法

予冷・冷蔵施設内の冷却むらを防止する適正な気流設計を行うには,施設内気流の予測が重要である。本研究では,流路抵抗体を含む施設内の気流分布を数値予測するために,k-?型乱流モデルに多孔質モデルの概念を導入した。この数値予測モデルの有効性を検証するために,流路抵抗体の開口比と気流分布との関係を模型実験によって求めた結果と予測結果とを比較検討した。計算では,多孔質モデルを考慮したk-?型乱流モデルを差分法で二次元的に解いた。実験では,風向角度分布をタフト法で調べた。その結果,流路抵抗体の開口比を変えた場合の速度分布と風向角度分布の予測結果は実験結果とよく一致し,本数値予測モデルの適用性が高いことが分かった。

無人追走方式の研究(第3報)
飯田訓久・工藤壮司・小野圭太・梅田幹雄

キーワード:農業ロボット,追走制御,ほ場実験,自脱コンバイン,収穫作業

農作業の能率向上や省力化を行うため,一人の作業者が2台以上の農業機械を同時に運行する方法として無人追走方式の研究を行った。この方式は,超音波センサを用いて車両間の相対的な位置を検出し,作業者が運転する先行車両の後ろをコンピュータ制御の追走車両が追従走行するものである。本報では,第2報で述べた追走方式を適用した2台の自脱コンバインを用いて,ほ場で稲の収穫作業実験を行った。実験では,追走制御の性
能評価のため,リアルタイム・キネマティックGPSを用いて,コンバイン2台の走行軌跡を計測した。この結果,無人追走により2台のコンバインで稲を収穫することが可能であった。

Bacillus subtilis胞子の死滅と損傷に及ぼす繰り返し加圧除圧回数の影響
古川壮一・下田満哉・早川功

キーワード:細菌、胞子、加圧、除圧、静水圧、失活、損傷

Bacillus subtilis胞子の死滅と損傷に及ぼす繰り返し除圧回数の影響を、死滅率の上昇は顕著であった400 MPaの処理において検討した。25、35、45℃の処理において、2回以上の繰り返し除圧処理は、胞子の死滅率の上昇には寄与しなかった。しかし、損傷胞子数の割合は、除圧回数の増加に伴いわずかに増加する傾向にあった。これらの結果は、大部分の発芽胞子は1回目の除圧によりその大部分が損傷し、2回目の除圧により大部分の損傷発芽胞子が死滅することを示している。従って、2回以上の繰り返し除圧を行うことは、細菌胞子を殺菌する上で有効な手段ではないと結論づけることができた。

画像処理による黒大豆しわ粒の判別(第2報)−ニューラルネットワークによる判別−
伊藤博通・山本博昭・徳田 勝

キーワード:画像処理,黒大豆,しわ粒,自動判別,ニューラルネットワーク

本研究の目的は黒大豆(丹波黒)乾燥処理後に発生する被害粒の自動判別である。デジタル静止画像から得られる画像情報を使用して被害粒の一種であるしわ粒と整粒の判別アルゴリズムを作成した。第1報では線形判別関数による判別法を報告したが,誤判別率が18.0%であったため非線形判別関数を使用して判別精度を向上する必要があった。そこで判別手法にニューラルネットワークを使用して新たに判別アルゴリズムを作成した。その結果,誤判別率が11.0%になり高精度な判別が可能になった。

地磁気方位センサとジャイロスコープの航法センサ複合化による自動直進アルゴリズム(第1報)―カルマンフィルタによるセンサフュージョン―
水島晃・野口 伸・石井一暢・寺尾日出男・行本 修・山本聡史

キーワード:自動直進走行,地磁気方位センサ,ジャイロスコープ,センサーフュージョン,カルマンフィルタ

本研究は内界センサによる推測航法を採用することで極力ローコストな自動直進車両の開発を目的としている。航法センサとして地磁気方位センサ(Geomagnetic direction sensor;GDS)とジャイロスコープを使用し,センサを複合化することでセンサ精度,直進精度の向上を図った。第1報では,ジャイロスコープに比較的精度の高い光ファイバージャイロ(FOG)方式を採用し,センサ精度の評価と複合化手法を検討するために,自律走行トラクタによる自動直進走行試験を行い,その性能を評価した。センサの複合化にはカルマンフィルタを適用し,車両の運動モデルを構築することで車両方位と横方向偏差を推定した。カルマンフィルタによってGDSとFOGを複合化することで,個々のセンサ単独による推測航法よりも精度の高い自動直進走行システムを開発することができた。

ロータリ耕うん刃配列データベースの構築と評価
野口良造,竹永 博

キーワード:配列,データベース,動的計画法,パレート最適,ロータリ耕うん,ロータリ耕うん刃

ロータリ耕うん軸に対する耕うん刃の角度と位置を決定するためのロータリ耕うん刃配列データによって構成される,実用的なパレート最適データベースを構築した。データベース構築手法として,設計上のいくつかの拘束条件を用いてロータリ耕うん刃の配列可能数の減少が検討され,動的計画法の応用によるアルゴリズム開発が行われた。データベースにおいて,12本から40本のロータリ耕うん刃数で構成される31の配列パターンの性能傾向は,ロータリ耕うん軸の7つの耕うん性能評価項目の観点から,市販軸の性能より優れた配列データを含んでいることが示された。

技術論文

小麦粒粉砕用製粉ロールの摩耗特性

目崎孝昌・福森 武・池田善郎

キーワード:小麦粒挽砕 ,製粉機,ロール材料,摩耗特性,ロール品質

小麦粒の製粉時における破砕性能は,粉砕ロールの歯形の摩耗によって変化することが予測される。そこで本稿では,従来から製粉機用ロールとして一般的に使用されているチルド鋳鉄ロールについて微細構造的観点から摩耗現象を考察した。チルド鋳鉄ロールは軟質小麦の最初の粉砕工程(1B)に装着してロール歯形状の摩耗変化と挽砕時に及ぼすストックへの影響について調べた。その結果,高速側と低速側ロールでそれぞれ特徴的な摩耗形態を示すことが判明した。また,摩耗したロールの使用はロール表面温度および
粉砕ストックの温度を上昇させることが明らかとなった。

殖魚の自発摂餌システムの開発研究(第1報) −触覚センサに関するシステムの開発とマダイの養殖実験−

山下光司・市川眞祐・日高磐夫・神原 淳・古川 清・会田勝美・田畑満生

キーワード:自発摂餌,養殖魚,触覚センサ,マダイ

本研究は,魚が空腹感を覚えたとき,魚の学習能力を利用して自らがセンサに働きかけて餌を摂取するシステムすなわち自発摂餌システムの開発を目的に行ったものである。開発したシステムは,コンピュータがセンサからの信号を受けて摂餌要求と認識したとき,給餌装置に指令信号を送って給餌するものである。このシステムは,魚へ給餌した時刻と回数が分かるようにプログラムを作成した。このシステムの有効性を検証するために,供試魚としてマダイの稚魚を採用し,手給餌の場合と生育に関する比較実験を行った。その結果,自発摂餌の方が手給餌に比べて大差ないかやや有効であることが分かり,マダイ養殖の可能性が示された。