第63巻3号

技術論文

太陽光発電を利用した農業バイオマスメタン発酵システムの構築

織田敦・榎阪淳・山崎稔・笈田昭

キーワード:メタン発酵,農業バイオマス,太陽光発電,代替エネルギ,廃棄物処理

従来,下廃水処理法の一つとして発展してきたメタン発酵を地域密着型のエネルギ生産技術として捉え,太陽光発電を補助エネルギ源として組み合わせた複合型エネルギシステムを構築した。メタン発酵施設の問題点である高繊維性バイオマスの発酵効率及び太陽光発電による発酵温度確保に基づく周年稼働率の向上を主な研究目的とした。システムの性能を検証するために,難分解性繊維質を多く含む農業バイオマスとして小麦製粉時の副産物であるフスマを原料基質として選定し,長期連続運転試験を行った。その結果,発酵システムではガス収率,有機物除去率などにおいて,他の原料を用いた一般的なメタン発酵と比較して遜色ない性能が得られた。また,システムの運転に必要なエネルギは試作した太陽光発電システムで年間を通じてほぼ全てを賄うことができた。

リアルタイム土中光センサーを用いた土壌マップ作成の評価

イマデ アノム ストリスナ ウィジャヤ・澁澤栄・笹尾彰・平子進一

キーワード:精密農法,土壌パラメータマップ,リアルタイム分光分析器

開発したリアルタイム土中光センサーを用いて,O.5ha水田における土中分光反射特性を計測し,水分,土壌有機物含量,硝酸態窒素,pH及びECの空間変動を解析した。実測した分光反射スペクトルの移動平均をとり,更にクベルカ・ムンク変換,乗法形局所補正を行った後,相関解析及び変数増減形重回帰分析を実施した。その結果,土壌反射スペクトルは水分及び土壌有機物含量と高い相関を示し,その2次微分が良好な回帰モデルを与えた。ブロッ
ククリギング手法により,水分と土壌有機物の空間変動をよく表現するほ場マップを得た。


マシンビジョンによるイネの窒素保有量の推定

村主勝彦・飯田圭亮・梅田幹雄・稲村達也・松井勤

キーワード:リモートセンシング,反射率,施肥,窒素保有量,頴花数

イネの収量を最適にする面積あたりの頴花数(モミ数)は出穂期にイネが保有する窒素量によって決まる。頴花数はほ場内でばらつきがあるため,頴花数を一定にするために葉色から出穂日約30日前(幼穂形成期)におけるイネの窒素保有量を推定し,施肥を行う必要がある。CCDカメラにバンドパスフィルタを装着して撮影した画像から植物体中に含まれる窒素保有量を推定した。535nmと670nmのフィルタを比較したところ,535nmのフィルタから得られた画像を用いたほうが,より高い精度で窒素保有量を推定することができた。全窒素保有量と植生指数(“Green”NDVI)の間で決定係数R^2=0.87の相関が得られた。


繰返し負荷を受ける平板下の地盤の弾塑性有限要素解析

岡安崇史・橋口公一・堤成一郎・尾崎伸吾・上野正実

キーワード:拡張下負荷面モデル,弾塑性有限要素解析,繰返し負荷,圧縮特性

繰返し負荷を受ける平板下の地盤の非弾性変形挙動を,拡張下負荷面モデルに基づく弾塑性有限要素(FE)シミュレーションにより予測した。塑性変形過程において正規降伏面と下負荷面の相似中心を移動させることにより,負荷回数の増加に伴い平板の沈下増分が減少しつつ,最終的に沈下が飽和状態に至る,いわゆるシェイクダウン現象が表現可能であることを示した。また,FE解析で得られた地盤の沈下ならびに圧縮特性は,定性的に実測値と一致することを明らかにした。


音波による果菜類の品質評価に関する基礎的研究(第2報) ー果菜類柔組織の組織内ガスが縦波音速と弾性的特性に及ぼす影響ー

西津貴久・池田善郎

キーワード:果菜類,組織内ガス,気泡分散系モデル,ガス体積分率,縦波音速,ヤング率,体積弾性率,密度

高含水率果菜類を用いて,組織内ガス体積分率,密度,縦波音速,準静的ヤング率を大気圧下及び加圧(0.1〜1MPa)下で計測し,前報で論じた縦波音速に関する気泡分散系理論の適用性を実験的に検証した。その結果,柔組織の縦波音速は組織内ガス体積分率が増すにつれておおむね理論曲線に沿って急減すること,さらに縦波音速は体積弾性率に支配され,準静的ヤング率の寄与は小さいことを明らかにした。また組織内ガス体積分率と密度には負の線形関係があり,縦波音速からは組織内ガス体積分率だけでなく,密度も推定できる可能性があることを明らかにした。


GAによる農作業計画における適応度について

大土井克明・笈田昭

キーワード:作業計画,最適化,移動距離,巡回セールスマン問題,遺伝的アルゴりズム

農作業の受委託等による経営規模の拡大に伴い複雑になる作業計画を最適化する手法を遺伝的アルゴリズム(GA)を用いて開発した。この手法では複数の機械で作業する時に,各機械の作業時間が均等で圃場間の移動距離が短くなるように,各機械が作業する圃場を決定する。GAの個体の適応度は,時間に関する評価と距離に関する評価を考慮して求めた。距離に関する評価は,ある機械が割り当てられた圃場を順に作業する時の最短巡回経路を用いるべきであるが,計算時間を短縮するために単純化する必要があった。本報ではこの単純化した距離に関する評価と最短巡回経路の関係を調べ,両者の間に高い相関があることを明らかにし,適応度の計算方法が妥当であることを証明した。


技術論文

米用色彩選別機分離部の最適設計(第1報) ー高速応答性電磁バルブの開発ー

佐竹覚・金本繁晴

キーワード:米,色彩選別,電磁バルブ,最適設計,応答速度,省電力,耐久性

米用色彩選別機は,不良米粒や異物粒などの不良品を正確に選別するため,高速で流れる粒体を全粒についてチェックし,分離している。良品の巻添え分離を行うことなく,不良品を空気噴射で選別するためには,各粒の流下速度に応じた電磁バルブの高速な応答性と噴射ノズルの最小動作量を解明する必要がある。そこで,本論文では,分離部を構成する電磁バルブと噴射ノズルについて機能を詳細に検討し,最適に選別できるように設計した。本報では,コイルの磁束密度を上げ,駆動回路を連続入力からパルス入力に変更することにより,省電力の高起磁カコイルを開発し,電磁バルブの応答時間の適値を得,耐久性の向上も確認した。第2報では,噴射ノズルの最適設計について検討した。


米用色彩選別機分離部の最適設計(第2報) ー噴射ノズルの解析ー

佐竹覚・金本繁晴

キーワード:米,色彩選別,分光選別,電磁バルブ,空気,流体,噴射ノズル

米用色彩選別機の噴射ノズルは,流下する米粒中の不良粒をセンサが検出し,信号処理回路で制御される電磁バルブから空気を供給され,不良粒を空気噴射で瞬時に吹き飛ばす装置である。本報告は,高速度で流下する粒に対応したノズル寸法を決定し,不良粒を除去するに必要な噴射空気量・圧力および作動時間などを明らかにした。ノズルには多様な要素が働くので,シミュレーション手法で試算した後,実験用ノズルを試作してその適否を評価し,最適寸法および空気圧力・空気量を決定することができた。


傾斜草地用無線操縦施肥機の開発

玉城勝彦・瀬川敬・澁谷幸憲

キーワード:傾斜地,草地,施肥作業,無線操縦,履帯車両,安全,省力

車輪形トラクタが走行困難な傾斜草地において,安全で省力的な施肥作業を行うため,無線操縦による施肥機を開発した。ゴム履帯式無線操縦車両に両側散布可能な空気搬送式の施肥装置を搭載した。15度草地ではO.5m/sで十分な走行性を有し,30度草地の登坂作業では0.5m/s以下の走行速度を選ぶことにより適応可能であった。平均粒径1.48mm,比重1.61の化成肥料の場合,散布パターンの変動係数の目標値を40%にした時,両側同時散布で54mの有効散布幅となる。最大傾斜27度を有する傾斜草地で作業を行った場合,1.9ha/hの作業能率が得られた。さらに牧区編成,肥料補給等の改善により作業能率が向上する可能性があった。延べ24.6haの草地で行った施肥作業から,本機は実用に供しうると判断できた。


循環式乾燥機を利用した大豆の乾燥調製技術 もみ殻混合による損傷の低減

井上慶一・大塚寛治・杉本光穂・村上則幸・黎文

キーワード:乾燥,大豆,もみ殼,乾燥機,損傷粒率

米麦用の循環式乾燥機を大豆に兼用するに当たり,損傷粒率を低減させるため,乾燥機のスクリューコンベア軸回転速度の減速と緩衡用乾燥もみ殻混合の効果を調べた。その結果,スクリュー軸の回転速度を米麦用の45%である200rpmにし,更に大豆に対するもみ殻の混合体積比を0.5以上とすることにより,循環式乾燥機での乾燥20〜26時間経過後の損傷粒率を2%以下に抑えることができた。

耕うんロボットの航法技術と作業性能(第1報) ー開発目標と3方式の航法システムー

松尾陽介・行本修・入江康夫・一杉則昭・野口伸

キーワード:無人作業,航法システム,電磁誘導,GPS,測量装置,作業ソフト

有人の場合と同程度の作業性能で無人作業が行える実用レベルの耕うんロボットを開発した。航法システムは,圃場条件や環境等,適応場面の多様性に対応できるように,(1)圃場周囲に電線を敷設するオフザワイヤ電磁誘導方式,(2)慣性航法装置を併用したGPS方式,及び(3)自動追尾測量装置を用いた光学測量方式,の3方式を開発した。開発した航法システムにより,走行車両の位置や進行方位を高精度で検出することが可能となり,検出された航法情報に基づき矩形区画の圃場内を無人作業するための作業ソフトを開発した。


耕うんロボットの航法技術と作業性能(第2報) ー車両等の仕様と作業性能の評価試験ー

松尾陽介・行本修・入江康夫・一杉則昭・寺尾日出男・芳賀泰典

キーワード:トラクター,自動制御,無人作業,評価試験,作業性能,耕うんロボット

市販の23.5kWのトラクターをべースに,各部を自動制御できるように改造し,コントローラを搭載して,耕うんロポットの車両(ROBOTRA)を製作した。耕うんロボットの性能を評価するために,無人作業の能率や精度を確認する作業性能試験や,機器の設営等の難易,安全性等を確認する取扱い試験などから構成される評価試験方法を策定した。この評価試験方法に基づいて,3方式の航法システムを適用した無人作業と慣行の有人作業について,評価を行った。その結果,耕うんロボットは,50×100mの矩形圃場において,有人の場合と同程度の作業能率,精度で無人作業を行うことが可能であり,直進性では有人作業を上まわる作業が可能であった。

電気トラクタの適用可能性に関する予備的研究(第1報) ーエネルギー消費量とけん引性能ー

アーターン,W.・小池正之・瀧川具弘・余田章・長谷川英夫申2・バハラヨーディン,B.

キーワード:電気トラクタ,電気自動車,農用トラクタ,密閉型鉛蓄電池,エネルギー消費量,けん引性能

市販のディーゼル機関搭載トラクタを改造して電気トラクタを試作し,そのエネルギー消費量とけん引性能について実験的解析を行った。供試した密閉式鉛蓄電池の容量を7.2kW・hとしたとき,エネルギー消費量と一回充電走行可能距離はそれぞれO.60kW・h/kmと8.35kmであった。その結果に基づいて,実用化に向けた一回充電走行可能距離の改善策について検討した。けん引性能は,アスファルト路面において滑り率14%で5.76kN,堅硬地において滑り率22%で3.89kNとなり,実用性に耐えうる性能を発揮するものと推察できた。総合エネルギー伝達効率についても,予測値に近い水準値を示すことが分かった。