第63巻2号

研究論文

単語認識によるトラクタの制御

佐藤邦夫,法貴 誠,八橋正明,ハリー G. ギブソン

キーワード:ニューラルネットワーク、エンジン騒音、単語認識、母音ピッチ、スペクトル積分関数、ケプストラム最大値関数

トラクタの制御を目的とする、大音量のエンジン騒音下における単語認識法を開発した。本認識法では子音と母音の特徴を、それぞれスペクトル積分とケプストラム最大値として計測する。これらの特徴量はニューラルネットワークに入力され、オペレータの発音する単語のカテゴリーを認識するのに用いられる。これに関連し、スペクトル積分を求めるのに必要なハイパスカットオフ周波数の値、さらに単語認識システムに必要となる時間軸マッチングについても論じた。理論の有効性を検証するために、トラクタを静置させた状態ではあるが、オンラインの制御実験を行い、本理論が有効であることを確認した。

繰返しねじりせん断のloading とloading-freeが土の締固めに及ぼす影響

P. ウサボリスット・小池正之・余田 章・長坂善禎・B. バハラヨーディン

キーワード:繰返しねじりせん断試験、ねじりせん断応力、ひずみ、側圧、間隙水圧、せん断係数、応力経路、loading-free

土への載荷(loading)と載荷のない状態(loading-free)の組合せ載荷過程が短期間に繰返し与えられる現象を対象として、土の締固めの観点から問題となる動力学的特性について考察した。供試体のねじりせん断変形は、間隙水圧の増加を伴って進行することが分かった。一方、乾燥密度と軸ひずみの増加は、loading-free の際に発生したが、これは直前の載荷過程で起った間隙水圧の増加に起因する現象と推察された。正規繰返しねじりせん断試験についても実施し、実用的観点から関与因子間の相互関連を明確にした。さらに、載荷の大きさ、組合せ載荷セットの載荷回数、乾燥密度が土の締固めに及ぼす影響度合いについて調べ、応力経路による解析手法が本現象の解明に有効であることを明らかにした。

自律走行車両のための超音波ドップラー速度計

芋生憲司・岡本嗣男・海津 裕・好井弘城

キーワード:超音波ドップラー速度センサ,超音波,対地速度センサ,速度計,自律走行車両

自律走行システムにおける速度測定精度を高めるため、高分解能の超音波ドップラー速度計を開発した。試作した速度計は、200kHzの超音波変換器と、プリアンプ、同調アンプ、周波数逓倍器などの電子回路から構成される。地面からの受信信号は分解能を高めるため5逓倍され、950kHzの参照信号と混合される。参照信号は送信用と同じ発振器から周波数シンセサイザを用いて合成した。4mの移動距離を持つリニアアクチュエータを使用し、5種類の擬似路面上で速度計の評価試験を行った。その結果、前後進とも比較的高い精度で測定でき、10mm/sという超低速度での測定も可能であった。

根菜類野菜の間引き作業の自動化に関する研究(第1報)― ダイコンの栽培様式の検討 ―

張 樹槐・高橋照夫・福地 博・嵯峨紘一

キーワード:ダイコン,間引き,栽培様式,ロボット

ダイコン生産の中で,もっとも労力と時間が必要となる作業は,収穫・調製及び間引き作業である。収穫・調製作業については,近年重量野菜用関連機械の開発などにより改善されつつある。しかしながら,間引き作業の省力化に関しては,精密播種機械などの利用によるいくつかの試みがなされているが,ロボット等による間引き作業の省力化に関する研究はほとんど行われていないのが現状である。そこで,本研究はダイコンの間引き作業用ロボットの開発を最終目的とし,今回それに適したダイコンの栽培様式を検討した。具体的には,慣行栽培方式と異なる新しい播種様式及び間引き時期を提案して,この栽培様式と慣行栽培様式によるダイコン生育に差異があるか否かを調査した。その結果,今回提案した栽培様式でも,ダイコンの生育に対して特に影響がないことがわかった。

オフセット放物型反射板を装着した超音波ドップラー速度計

芋生憲司・好井弘城・岡本嗣男・海津 裕

キーワード:超音波ドップラー速度センサ, 超音波,対地速度センサ,速度計,放物型反射板

超音波ドップラー対地速度計では通常、高周波で指向性の鋭いビーム用いられるが、減衰率が大きく照射面積が小さいため、特に滑らかな路面では受信強度が弱くなり大きい誤差を生じることがある。このため、本研究では比較的低い40kHzの周波数で作動する速度計を開発した。発信される音波の指向性は弱いが、強度が大きい。鋭いビームを用いる代わりに、オフセット放物型の反射板を用いて音波の進行方向を制限した。実験の結果、反射板の効果が実証された。速度計は、コンクリートのような滑らかな面でも、粗い路面の場合とほぼ同様の性能を示した。

貯蔵トマトの呼吸特性(第2報) −デシケータ実験とフィルム貯蔵試験比較−

ウィンウィンミイ・元永佳孝・橋本 篤・亀岡孝治

キーワード:トマト,追熟抑制,呼吸特性,低酸素貯蔵,フィルム貯蔵

農産物の呼吸特性を得るために,デシケータを用いて低酸素濃度下で温度条件を5,10,25℃に設定し,貯蔵実験を行った.実験試料として典型的な追熟現象を示す未熟と完熟のトマトを用いた.閉鎖系で低酸素貯蔵を行ったトマトは限界呼吸速度に達すると擬似休眠状態に入り,追熟現象が抑制されたことが確認された.また,温度5℃で貯蔵したトマトは低温により生理障害を受け,腐敗が生じたことも確認された.デシケータ貯蔵実験で得られた限界呼吸速度から最適な酸素透過量をもつフィルムを設計し,フィルム貯蔵試験を行った.その結果,フィルムで貯蔵したトマトの表面色変化が抑えられ,デシケータ内低酸素貯蔵実験と同様の傾向を示し,デシケータ貯蔵実験で得られた結果がフィルム貯蔵に応用できる事が確認できた.

グローサシューの最適形状に関する研究(第1報) ―3次元モデルによる推進力,転がり抵抗および牽引力の予測―

王 秀崙・伊藤 信孝・鬼頭 孝治

キーワード:クローラ,シングルグローサシュー、グローサ高さ、グローサ厚さ,走行性能

本研究ではクローラ車両の走行性能の向上を図るために,クローラを構成するシングルグローサシューによって発生する推進力,転がり抵抗および牽引力について3次元土壌剪断モデルを用いて解析した。最大牽引力を発揮するためにグローサシューのピッチに対するグローサ厚さの比率とグローサ高さを求めた。その結果,グローサ厚さと高さが推進力の発生に大きく寄与していることと,グローサ厚さが薄いほど大きな牽引力が得られ,そして最大牽引力を発揮できるグローサ高さが存在することがわかった。

環境調和型高効率バイオガス・コージェネレーションシステムの開発 (第1報) − バイオガス・軽油二燃料コージェネレーションシステムの製作および基本性能 −

朴 宗洙・石井耕太・寺尾日出男

キーワード: 環境調和型,バイオガス,メタン,二燃料運転,コージェネレーションシステム

本報では,家畜糞尿などの有機性廃棄物を嫌気性発酵させて発生するバイオガスの有効利用とエネルギーの高効率化を目的として軽油とバイオガスの二燃料で運転されるコージェネレーションシステム(CGS)を製作した。また,各種運転条件によるCGSの性能特性とエネルギー効率を検証した。CGSの燃料としてバイオガスを供給することで軽油の消費量を最大80%まで減らすことが可能で,軽油運転時より排気ガス中のNOx濃度低減および無煙運転が可能になった。電力負荷2.41kW,バイオガス供給量20L/min(メタン60%)の運転条件においてCGSの熱回収率は42%に達し,26%の発電端効率を加えた総熱効率は68%になった。しかし電力負荷が低い場合(負荷率75%以下)は供給メタンの未燃焼が発生し,これはCGS性能悪化の原因になると共に,CO2より数十倍強力な温暖化ガスの放出を意味するので,今後未燃メタンの低減対策が必要である。

水田におけるほ場情報マップの作成

李 忠根・矢内純太・下保敏和・飯田訓久・梅田幹雄・小崎 隆・松井 勤

キーワード: 土壌マップ,ほ場面高低差マップ,SPADマップ,収量マップ,ほ場管理マップ,ほ場情報マップ,精密農業

水稲における精密農業の在り方を検討するため,0.5haの水田における土壌化学特性値,ほ場面高低差,SPAD値及び収量に関する空間変動量を1999年に調査した。これらのほ場情報の内訳を明確にするため,記述統計とともに,ほ場内での空間依存性を解析するジオスタティスティクス手法を適用し,セミバリオグラムによる空間依存性の評価とそれに基づいたクリギングによるマップ化を行った結果,以下のことが明らかになった。1)水田内でのほ場情報は1.63%〜38.7%の変動係数を示した。2) セミバリオグラムから,ほ場情報の空間構造を示すQ値は0.31〜1であり,その依存距離を示すレンジは約15m〜60mであった。3)クリギングによりほ場マップを作成することによりほ場情報の視覚化と相互比較が可能となった。4)ほ場の履歴等をまとめたほ場管理マップの作成し,得られたほ場情報との因果関係を考察した。

マシンビジョンによるプラグ苗生産のための精密播種システムに関する研究(第1報) −グリッド法によるトレイ-セル内の種子検出について −

永田雅輝, ムガニルア Z.マブブ, 王 紅永, 御手洗正文

キーワード:精密播種,プラグ苗生産,マシンビジョン,種子検出,グリッド法

播種後のトレイ-セル内の種子の有無を検出するために、グリッド法の開発研究を行った。その特徴は、ウインドウズ処理、ノイズ処理およびグリッド処理から成る。ウインドウズ処理は、トレイの全画像を処理するのではなく、トレイ-セルの播種穴の一部分を処理するものである。ノイズ処理は、移動平均法を用いた。種子とみなす斑点はグリッド法を用いて検出した。種子であるかノイズであるかは、斑点が8近傍と16近傍で連続的であるかないかで判別した。開発したグリッド法の性能を試験するために、種子とノイズの形状特徴の抽出と解析を行った。その結果、ノイズの除去率は76.9%となり、種子の検出が良好となった。種子の検出率は、キュウリ、メロン、コーテングレタス、ナス、ピーマンでは100%、トマトでは99.2%であった。よって、開発したグリッド法はトレイ-セル内の種子検出に有効であることを認めた。

マシンビジョンによるプラグ苗生産のための精密播種システムに関する研究(第2報) −画像処理による補助播種法について−

ムガニルア Z.マブブ , 永田雅輝, 王 紅永, 秋永孝義

キーワード:精密播種,プラグ苗,マシンビジョン,補助播種法,野菜種子

本研究は、マシンビジョンによって移動中のトレイ内の種子の有無を検出して、播種ミスのあるセルへ直ちに補助播種を行う播種法の研究を行った。この播種法は補助播種用のソフトウェアとハードウェアから成る。ソフトウェアは画像処理を用いた種子検出プログラムと補助播種コントロールプログラムから成る。ハードウェアは市販播種機に取付けた補助播種用装置、コントロールボックス、CCDカメラ、パーソナルコンピュータ、フレームメモリ、I/Oボードで構成した。開発した補助播種法の検出ソフトウェアは、移動するトレイの播種穴内の種子をキュウリ、メロン、コーテングレタス、ナス、ピーマンでは100%、またトマトでは99.93%の高い精度で検出できた。補助播種用装置は、画像処理の出力信号を正確に受けて、播種ミスのセル穴へ99%以上の精度で補助播種を行うことが出来た。1つのセル穴へ補助播種を行うのに要した時間は0.6秒であった。よって、開発された補助播種法はプラグ苗生産への有用性が確認された。

農作業計画の最適化に関する研究(第2報)−圃場割り当ての最適化−

大土井克明・笈田 昭


キーワード:作業計画,最適化,作業時間,移動距離,遺伝的アルゴリズム

農作業の受委託等による営農規模の拡大に伴い複雑になる作業計画を最適化する手法について検討した。第1報1)では一台の機械が点在する圃場を作業するときの移動経路の最適化について報告した。本報では複数の機械に効率良く圃場を割り当てる手法について報告する。評価の対象として作業時間と作業する圃場の位置を考え,各機械の圃場での作業時間を均等にし,圃場間の移動距離が少なくなるように圃場を割り当てた。最適化の手法には第1報と同様に遺伝的アルゴリズムを用い,複数の機械に適用するためにコード化の方法を変更した。

技術論文

繋ぎ飼い用搾乳ロボットシステムの開発(第1報) ―ティートカップ装着に向けたシステム構成と動作計画の概念−

八谷 満・平田 晃・桑名 隆・荊木義孝・比佐慶夫

キーワード:搾乳ロボット、繋ぎ飼い、牛体位置追従機構、ティートカップ装着、乳頭位置検出

繋ぎ牛舎における搾乳作業の自動化をねらいとする搾乳ロボットシステムを開発した。牛体の臀部および腰角を機械的に捕捉し、一体化して牛体の動きに追従する機構を機軸として、これに搭載する以下のティートカップ保持アーム、平面内において3つの回転関節を有するACサーボモータ駆動による多自由度ロボットマニピュレータ、およびこれらの鉛直高さを調整する昇降軸から構成される。ティートカップ把握用エンドエフェクタには空気圧グリッパを用いて、その直上には10組の透過型光電スイッチを組み込んだ、80×66mm角のU字型乳頭位置センサを装備した。各乳頭へのエンドエフェクタのアプローチは、ティーチングデータに基づいている。センサ領域内に包囲した個別乳頭位置は、各光軸のon-off情報からリアルタイムで認識され、このセンサ情報から制御周期を20msとする位置制御により、ティートカップ装着動作を実現する。