第63巻1号

研究論文

母音ピッチによるトラクタの音声認識制御

佐藤邦夫,法貴 誠,八橋正明,ハリー G. ギブソン

キーワード:トラクタ,エンジン騒音,母音認識,母音ピッチ,ケプストラム

母音の低周波成分であるホルマントの抽出を基に行う母音の認識が音声認識の基本技術であるとされてきた。しかしトラクタのエンジン騒音のように、広い周波数領域わたって連続的な成分を持つノイズが重合すると、母音のホルマント情報は破壊されてしまい、利用することが困難になる。一方母音のスペクトルには、ピッチ成分と呼ばれるピーク信号が存在し、各ピークの周波数値においてトラクタのエンジン騒音のレベルを上回るように入力することができる。本研究ではこの母音の特性を利用し、大音量の騒音下で母音の種類を認識するシステムを構築した。さらに、実際に母音によるトラクタの制御系を構成して走行実験を行い、良好な結果を得た。

家畜糞の堆肥化におけるアンモニア揮散(第2報) 畜糞の違いが揮散に及ぼす影響

前田武己・松田従三・近江谷和彦

キーワード:アンモニア揮散,家畜糞,堆肥化,C/N比,送風量,窒素組成

畜糞の違いが堆肥化中のアンモニア揮散に及ぼす影響を検討した。堆肥化試料は,豚糞,乳牛糞,鶏糞にそれぞれおが屑を混合したものを用いた。アンモニア揮散率は鶏糞試料の堆肥化で最も高く,乳牛糞試料の堆肥化では最も少なかった。有機物分解率とアンモニア揮散率には,3種の畜糞別に直線的な関係があった。畜糞によるアンモニア揮散の違いは,堆肥化前試料のアンモニア性窒素含量と有機態窒素の無機化難易性によるものと考えられる。

鶏胸肉のマイクロ波加熱過程における熱・物質同時移動モデルの構築

田中史彦・マリカルジュナン, P.・洪延康

キーワード:マイクロ波,モデリング,3次元熱・物質移動,鶏胸肉,収縮

鶏胸肉のマイクロ波加熱過程における3次元熱・物質同時移動モデルを構築し,コントロールボリューム法による数値計算を行うことで,この機構解明につとめた.本モデルは,マイクロ波加熱解析で報告例の少ない,熱と物質の同時移動を解析したもので,加熱過程で起こる試料の収縮までを考慮した点に特徴がある.マイクロ波加熱過程における鶏胸肉整形材料(10x5x1.5cm)の内部温度分布および水分変化の実験結果と計算結果を比較したところ,両者はよく一致し,モデルの妥当性が実験的に検証された.また,温度分布の計算結果から,過加熱点の発生など不均一加熱に関する有益な情報が得られた.

ロール籾すり機による長短粒種米の脱ぷ特性(第1報)― 穀粒運動の動力学的解析 ―

ダグラス シタンダ・西山喜雄・小出章二

キーワード:曲率半径、接触距離、接触長さ、接触面積、せん断応力、ロール籾すり機

 ロール籾すり機を用いて長短粒種米(あきたこまち,Delta,L201)運動の動力学的解析を行った。単粒籾を垂直姿勢および水平姿勢でロールに挿入した。米粒挿入時の粒の向きと米粒形状を考慮し、米粒の曲率半径から接触距離を求める新たな式を導出し、ビデオカメラによる実測値とよく一致を見た。ロール中の米粒の運動を、ハイスピードカメラにより実測し、穀粒速度は主ロールよりも副ロール回転速度に近く、副ロール周速度に対する周速度差率の妥当性が示された。米粒に加わるせん断力は引張試験器を用いて測定し、投影接触面積からせん断応力を算出した。脱ぷエネルギー効率の最大値近辺でせん断応力は最大値となった。

茎の曲がりによる切りバラの品質評価(第3報)−弛緩法による茎の検出と例外値にロバストなパラメータ推定法−

森尾吉成・池田善郎

キーワード:コンピュータビジョン,切りバラ,茎の3次元形状,弛緩法,SNAKES,例外値,Least Median of Squares

XYZ表色系から求めた茎のxy色度分布から茎を抽出し,弛緩法の一つであるSNAKESを利用することによって茎の2次元形状を測定する方法を提案した。SNAKESは,前報で報告した方法と比較して,ノイズの存在下で茎の輪郭線を精度良く検出でき,茎の2次元形状および3次元形状の測定誤差を小さくすることができた。Least Median of Squares基準によって,茎の回転運動のパラメータを推定する方法は,最小2乗基準を使用するよりも例外値に対してロバストであった。


貯蔵トマトの呼吸特性(第1報) −実験用貯蔵装置の試作と大気下での貯蔵特性−

ウィンウィンミイ・元永佳孝・橋本 篤.亀岡孝治

キーワード:デシケータ,未熟トマト,通常大気貯蔵,糖濃度

農産物の貯蔵に関して,温度,ガス組成を変えた貯蔵実験が可能な実験用貯蔵システムを構築した.この装置を用いて,常温,大気圧下(O2濃度20.9%,CO2濃度は無調整,相対湿度は約80%RH)におけるトマトの貯蔵特性を計測した.実験試料として典型的な追熟現象を示す未熟トマトを用いた.貯蔵特性のうち,ガス特性としてO2濃度,CO2濃度,全圧,温度,相対湿度の連続データの取得,エチレン,アルコール濃度のサンプリングによる測定,トマト個体の特性として表面色,糖成分変化の計測を行った.その結果,通常大気下における貯蔵では追熟につれてO2,CO2濃度呼吸速度は大きく減少し,エチレン濃度は増加する傾向を示した.表面色もダイナミックに変化する傾向を示した.さらに,トマトの内部の糖成分含量を赤外分光法を用いて計測した結果,追熟過程において呼吸基質であるグルコ−ス,フルクト−ス,スクロ−ス含量は大きな変化を示さなかった.

圧縮法によるキャベツ収穫適期判定の基礎的研究

佐藤禎稔・宮本啓二・松田清明

キーワード:結球野菜,選択収穫,圧縮試験,熟度判定,結球の硬さ,植物計測

近年,キャベツ収穫には一斉方式の収穫機が導入されているが,実際には生育差が大きいために生産者からは3回程度に分けて選択収穫することが望まれている。本研究は選択収穫機のための適期判定装置の開発を目的とし,結球頂部を2段階圧縮して変位と荷重の関係から適期判定する方法について検討した。結球は,熟度が進むほど変位荷重曲線の傾きは大きくなり,収穫適期となるランク3で最も変位が小さく硬くなる。本判定法の荷重35〜40Nの場合,未熟なランク2では「アーリーボール」で16%,「金系201号」で8%のキャベツを収穫適と誤判定したものの,収穫適となるランク3では両品種とも81%の精度で適期判定した。


三次元視覚センサによるキャベツ結球の形状計測と収穫適期判定


佐藤禎稔・宮本啓二・松田清明

キーワード:結球野菜,選択収穫,三次元形状計測,熟度判定,球径,半展開葉,植物計測

キャベツ選択収穫機のための収穫適期判定を目的とし,レーザ距離センサによる三次元視覚センサを開発した。三次元視覚センサは,外葉を含めたキャベツ結球全体の三次元形状を非接触で検出し,また結球頂部の半展開葉の状態も計測できた。「アーリーボール」の場合,計測波形をもとに球径と半展開葉の有無で判定すると収穫適期のランク3では77%のキャベツが収穫適と判定され,適期前のランク2では8%の誤判定が見られた。さらに,圧縮法の硬さを組み合わせた場合,ランク2の誤判定とランク3の判定精度は,それぞれ8%,95%であった。また,「金系201号」では球径のみの判定法で,それぞれ7%,91%の値を示した。

技術論文

近赤外分光法による高水分小麦の品質測定(第1報)――高水分小麦の水分,タンパク質の測定――

夏賀元康・川村周三・伊藤和彦

キーワード:近赤外分光法,高水分小麦,水分,タンパク質

乾燥調製過程の水分範囲の広い小麦の水分とタンパク質を精度良く測定することは従来困難であった。そこで本報文では,近赤外分光法を用い,まず,乾燥過程における小麦水分の測定精度の検討を行った。ついで,乾燥調製施設の荷受けにおける小麦の水分とタンパク質の測定精度の検討を行った。その結果,小麦の水分とタンパク質は,18%を境界にして高水分域と低水分域とに分けることにより,精度の良い測定が可能であった。乾燥過程の水分の測定精度は高水分でSEP=0.48%,低水分でSEP=0.32%であった。乾燥調製施設の荷受け小麦の水分とタンパク質の測定精度は,水分では高水分でSEP=0.41%,低水分でSEP=0.11%,また,タンパク質は高水分,低水分ともSEP=0.13%であった。

搾乳ロボットの搾乳性能に及ぼす要因とその普及の可能性

干場秀雄

キーワード:L社製搾乳ロボット, 搾乳性能,搾乳ストール入室回数, 搾乳ロボット償還年数

L社製搾乳ロボットを導入している三牧場の搾乳性能に及ぼす要因とその普及の可能性について明らかにした。
1)飼料の給飼方式が朝夕集中給飼の馬場牧場より不断給飼の吉田牧場の方が搾乳性能は安定していた。
2) L社製搾乳ロボットの目標値は 60頭の乳牛を一日3回搾乳し, 180回搾乳することである。しかし, 三牧場共その値まで到達していなかった。
3) 搾乳能率は搾乳頭数に比例していた。
4)搾乳ストール入室回数と一回当たり搾乳量は反比例していた。
5)搾乳ロボットは人件費の削減と多頻度搾乳による搾乳量の増加をもたらし, 約 5年でその償還が可能と推定した。


精麦製粉における小麦粒分離の製粉への効果

佐竹 覚・福森 武・宗貞 健・柴田恒彦・目崎孝昌・池田善郎

キーワード: 小麦粒,精麦製粉,小麦粉品質,NMG試薬

これまでの小麦粒の粉砕方式に代わる新しい製粉技術として期待される精麦製粉は,高灰分の表皮を前もって除去した精麦粒を粉砕することを特徴としており,効率良く良質な小麦粉を生産できる可能性を持っている。そこで本研究では精麦製粉の性能を高めるため,基礎実験として原料小麦粒中に含まれる未熟粒,萎縮粒などの小さい粒を精麦作用と同時に金網のスリット開口部から回収し,分別粉砕する方法を試み,精麦性能および製粉効率などに対する有効性を確認した。さらに操業ミルによる実証実験では,目幅1.6mm金網を使用し,回収した小麦粒を3番目のブレーキ工程(3B)に投入することで粉採取率は0.8%向上し,灰分値特性が改善されることを明らかにした。